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2016年11月20日 (日)

五輪トライアスロンは既にスプリント勝負 〜リオ男子バイク勝負の「140秒」を徹底分析

前2回からの続き。五輪トライアスロン距離半減化案は、やはり既にIOCの根回しも済み、あとはミックスリレーをどうすれば正式導入できるか? くらいの進捗感 (英文記事より)のようだ。ITU総会での決定待ちではあるが。

ただ、リオ男子を映像と記録からみてゆくと、既に「スプリント種目」になっている、と思った。この作業は単なるエクセルいじりではなくて、レースのスリリングさが伝わってきて、興奮した。

映像はこちらダイジェストのYoutubeが見やすい。「NHK見逃し」でフル中継  も見れる。

<記録の見方>

記録を順を追ってみていこう。順とは、ゴールから逆算するということだ。

まず注目するのは右端のゴール地点。メダル、入賞、と分類して色分け。

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バイク終了時点での第一集団10名に残ることがメダルの絶対条件。Joao Pereira/POR,  Richard Murray/RSAが第二から猛追したが、それぞれ7〜9秒だけ届かなかった。

そこでバイク終了時点で並べ替える。(画像は入賞圏内のモーラまで切り取ってみた〜バイク第二集団は19名、ここまでで29位)

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バイク開始(=Swim+T1)15位=18:18の銅スクーマンまでが、バイク終了時の第一に残れた最終ライン、同タイムのDodds/NZL以下は、まるごと第二に落ちている。この数字の雄弁さ&冷徹さ、ヤヴァすぎ。

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<五輪バイクはスプリント勝負>

動画で見ていこう。まず、バイクスタートは18:07ヴァルガから18:23まで16秒間の26名がひとかたまり。金さん銀さんご兄弟が仲良く18:14(6-7位)、銅スクーマン18:18(15-16位)、田山選手は23位に入っていてさすがだ。なおスイム第一集団は27名といえるが、その27位はバイクスタートで5秒という致命的な差を付けられ脱落している。

1分後(右下のタイム参照)のコーナーでは、第一集団は縦一列20名。この最後尾から3秒遅れでスタートしたモーラは後ろの集団にいると推測される。

B1

つまり、バイク最初の60秒間で6名がトーナメント敗退したということだ。

そして20秒の直線の後のコーナーを、20人目が1秒ほど遅れ始めており、彼はこの直線での1秒差によりトーナメント敗退したと思われる。スクーマンは16位通過。順位的には、彼がいわゆる「最終列車」ラインとなる。

Bike2

ヤヴァいのはここから。急坂に入り、待ってましたとブラウンリー兄弟が猛ダッシュ。50秒後の20:33-37にかけて15位までの集団が通過。金銀ご兄弟のバイクスタートから140秒ほど、ここまでに勝負のかなりな部分が決している。

B3

スクーマンはこの8〜12位集団の後ろに付けている。坂で順位を上げたわけだ。さらに2秒差で13-15位の3人集団が追うが、彼らはこの2秒差により、既に敗退している。(少なくともウェアからわかる二人、カナダとオーストラリア2人目は第二に落ちている)

以上はYoutubeダイジェストでも確認できる。フル動画みると、22分時点=スタートから3分半=では既に10名に絞られ、そのまま最後まで後続に差を広げていった。

バイクは40km、55分(平均時速44kmくらい?)だが、現実に勝負を決めたのは、スタートからの3分ほどだ。メダル争いの大きな部分もね。

(じゃバイク残りの50分以上は意味ないじゃん、半分に削ってOK、と思う一般TV視聴者がたくさんいても不思議ではない…)

<スクーマン危機一髪!>

スクーマンはスイムアップは17:25、金銀兄弟に次いで7位。ただトランジションに53秒=最速より8秒も余分にかけてしまったため、バイクスタートが15-16位に落ちてしまった。おそらくバイクスタート順を概ね崩さずに最初の急坂に入っていると思われる。

差がつきやすい急坂だが、前を塞がれることもありえるし、入った時の位置取りは無関係ではない。やはり前にいたほうが残りやすい。

16位から10位までジャンプアップできたのはかなりなグレートジョブで、これによりトランジットの失敗を取り戻すことができた。

この程度の「敗者復活」ならありえる。

逆にいえば、敗者復活は、この程度以上には、起こらない。

同様に、モーラは46秒の超速トランジションで猛追を狙うも、バイクスタートでの3秒差を追いつくことができなかった。ここに成功していたら、金銀兄弟は「銀胴兄弟」に降格した可能性もあるだろう。

<スイムの要件>

ふたたびタイムに戻ると、結局、スイムアップで先頭11秒差の15位(Kanute/USA)までしか、バイク第一に残ることはできなかった。

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上のタイムで、1つの注目はバイク20位スタートのRyan Bailie/AUS。急坂前の第一にはいたと思われるが、第二に落ち、バイク終了前に小アタックして9秒リードした3名の一人。つまりバイク力は本来は高いはず。それでも落ちてしまうのが、集団最後尾のデメリットなのかもしれない。

つまり、スイムは先頭集団ならOKなのでもなくて、その中での位置取りも大事になる。こちら5分30秒頃、第一ブイ手前の先頭集団。

Swim1b

仮にこのままゴールしたと仮定してだが(実際、そんなに大きな変動は無いような気がする)

  1. 上位3名のスイム・スペシャリストは、このまま最後まで固定して引き続け
  2. その後ろにメダル組=バイク第一に残れた10名ほどのグループ
  3. 直後に、あと一歩で逃したグループ(ほぼ全滅かと思われる)
  4. ついてるけど、まったくかからなかったグループ(左上)

と分かれるわけだ。

 
この差はどう着くのか? 何があれば上記2.のグループに入れるのか?と考えれば、答えは明らかだよね。
 

<まとめ>

五輪トライアスロン、特に男子は、既に「スプリント動作」の勝負。急坂というリオ特有要因もあるけど、この戦法の有効性が明らかになった以上、この展開は何度と見ることになるだろう。

もはや、「耐久スポーツ」として見ると、間違うことが多いのではないだろうか?

2016年11月19日 (土)

2016リオ女子(いまさら)分析 〜五輪トライアスロン距離半減化 vol.2

五輪トライアスロンとは、既に敗者復活のないトーナメント戦だ。スイムバイクで2連勝すれば決勝のランに進出できる。この傾向は、一発勝負のオリンピックではより鮮明になる。それがリオ2016男女の展開だ。
 
3種目全てに「勝てる力」が要求される、とさえ言える。シドニーの五輪初開催から16年、水泳とランを兼ね備えた当時のキッズ達が、3種目を意識しながら育ってきたんだろう。バイクは欧米には競技文化が根付いているし。
 
では、半分のスプリント化したら、どうなるか?
 
と未来予測をするには、まずは現状分析からだ。リオ女子の録画を見直しながら、公式記録: http://www.triathlon.org/results/result/2016_rio_de_janeiro_olympic_games/305291 をExcelダウンロード。
幾つか列追加して並べ替え、集団ごとに色をつけてみた。
 
<スイム終了時>
スイムは、大舞台で存在アピールしたいスイマー選手がここぞと先頭を引きまくることが多く、その背後の集団に表彰台レベルが入る。
 
リオ女子では、大西洋からの、低いが大きめなウネリの海面のため、体重が軽く身長(+腕リーチ)の短い選手ほど悪影響を受けただろう。上田藍選手が決定的な差を付けられてしまった。
20161119_134512_2(←クリックで拡大)
先頭ではクサビ型に展開した大集団ができた。第一集団は19:01〜19:21までの34名。19:13=25位まで水色、19:16からの26−34位を黄緑に変えた。後半9名中、バイク第一集団18名に残れたのが2名だけだから。「真の第一集団」と「敗者復活組」に分かれたわけで、この差なんと3秒だ。
 
<T1終了時>
だから、T1=トランジットが致命的に重要だった選手も何人か。T1終了後のタイムで並べ替えてみた。
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その敗者復活組の一人、Jolanda Annen SUI はT1最速の51秒、もう一人は8番目に速い53秒。54〜56秒かかった全員が第二集団に落ちている。
 
T1終了時、20:10までの28名がバイク第一集団に残る権利を得て、20:12以降はみな第二集団へ落ち、メダル&入賞(&18位以内に入ること)の可能性が消えた。この差2秒。
 
スイムで34名に選抜され、T1で6名をふるい落とした、ということだ。もちろんT1ラインを通過した後の、シューズを踏んづけながらのスタートダッシュを含めてのことだが、その時点で2秒差が開くと、もう追いつけない、ということ。
 
もう1つの注目は最後、加藤友里恵選手。黄色のバイク第二集団まで12秒差だ。
第二集団は人数が多くて最後までついていきやすく、ここに追いついていれば、バイク終了時点で3分30秒以上早く上がれた可能性が高い。第三集団は8名ほどでふるい落とされてしまい、単独走で脚を削ることになった。追いつけていれば、4分以上のゴール短縮ができたかな。T1で5秒、バイク序盤で7秒削ることができていれば。
 
T1は、こうしたボーダー域では、本当に重要。
 
<バイク終了時>
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T1で残った28名から、10名がふるい落とされた形。うち一人は急坂でモモを攣ったSarah True USA。
 
録画を見ると、急坂でふるい落とされた場合も多そうだけど、海沿いの直線往復も効いていそうだ。横風が強いと思われ、集団のメリットはあまりない。距離も短いからエシュロン隊列とか作ってる暇もない。だからバイク強者のSpirigらが展開を主導できたんだろう。先頭を引いたときのダメージが皆に平等に行き渡る。お台場ではこうはいかない。(と思っていたら、距離半分という…)
 
なお見たのはゴルフ中継のため前半のみ。まあどうせ後半やっててもこんなもんだろう感は否めず、だったら半分でいいじゃん派が多数を占めるであろうことも想像されるのであった。
 
<ラン>
トライアスロンのランは、バイク終了時点である程度は決まっている。「トライアスロンのランの実力」=「(バイク+ラン)の実力」という面がある。
リオでは、残った18名の中でも、ランの脚を残せたかどうかで明確に差がついていた。もちろんそこに本来の走力も加わってのこと。そして、最初の数百mで、1-2位争い組、3位争い組、入賞狙い組と、あらかた分かれてスタートした印象。
 
この3位組との格差が明白だったから、グウェンちゃんとニコラちゃんが仲良く並んでお喋りジョグ(笑)する余裕もあったわけだ。
 
「ジョーゲンセンがバイク第一集団にいると100%優勝できない」というのは、それだけ、彼女のバイクが安定して強いということでもある。
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ゴールでは、バイク第一集団の18名が、そのまま上位18位に。まさにバイクは敗者復活のない準決勝。
 
先にだした加藤選手の例では、バイク開始12秒差次第では、この黄色グループの中で戦うこともできた。最高19位ってことだ。こうみれば、十分な健闘を果たしたといえる。少なくとも、リオに向けて十分に戦える状態を作ってきたといえるだろう。
同時に、この12秒だけで、ここまでレース展開が変わるのも(エリート&ショートの)トライアスロンだ。
 
<日本のメダル獲得シミュレーション>
ついでに、日本女子のメダル獲得を思考実験してみた。
  1. 選考: 佐藤&高橋と、W長身スイマーを上田アシスト専門に
  2. スイム: 上田を両サイドから引っ張る形で、少しでもスイム位置を引き上げ
  3. バイク: 三人ローテーションでのロングスプリントで第一集団に追いつく(でWアシストはお役目終了)
  4. 終盤までアシストが残っていれば、ゴール前にスパートをかけて集団前側に位置どり
  5. 上田が単独でラン勝負
ここでの実現性は、上記2に尽きるだろう。あくまでも、リオのコース限定での、メダル獲得を至上目標とした場合の思考実験。東京2020では海面フラットだし、前提が全く変わる。
 
日本の長期戦略>
もう少し長い目線から、日本のトライアスロンの課題を考えてみる。
 
まずは、水泳もランも、それぞれには世界で戦える競技力を持ちながら、個々の競技内に囲い込まれていて、出てこないことかな、と思う。それでJTUの施策につながっている。
 
萩野公介なら400Frに集中すべきだが、日本で3位でもオリンピックには行けない。中には走力も高いアスリートは多いはず。(三浦広司コーチは水泳しかしていない高校の体力測定で1500m走4分20秒くらいだったそう。「ビート板キックのつもりでバタバタしてみた」とのこと\@@/)
 
ランニングはメダル級こそ今は居ないが、男子マラソン2:10前後の層の厚さは、ケニア系(=細すぎてトライアスロンに不適そう)を除けば世界トップレベルだ。これは駅伝人気のために大学・実業団とキャリアパス的に有利なせいだが、そこに囲い込まれがちだ。そこからのチャレンジャーの層がほしい。
 
そして、バイクね。
 
・・・
 
では、 「五輪トライアスロン距離半減」後の戦術はどうなるのか? を考えるのだが、長くなったので続きは次回。その前に、男子のデータはもっとすごい!
 
←ダイヤモンド社から同時発売される2冊! いかにも、自分の時間を取り戻すには、生産性を上げることから。

2016年11月16日 (水)

「2020東京五輪トライアスロンの距離半分」との英国タイムス紙報道について

※結局、ミックスリレーは導入されたが、距離は維持された。エリートでは半分距離のが定着し、一方で、エイジ層はやはり「51km走らないとトライアスロンじゃない感」が強いかな。以下、2016年当時の記録として残しておこう。
_______


東京五輪でトライアスロンの距離半分に、とITUカサード会長がイギリスの有力新聞「タイムス」に明言したようだ。

Olympic triathlon distance could be halved for Tokyo 2020 (The Times 2016.11.13)

 
51.5kmから25.7kmへ。噂には聞いてた話で、非公式とはいえ、 ついに表になった。
併せて予選(1回)やミックスリレーも導入可能性あり。アスリートの疲労が減るためで、全部実現すれば男女計6レースが開催されて、盛り上がる。ミックスリレーは見たことないけど、見てて楽しいらしいし。
 
<スプリント
25.7kmの「スプリント」形式は、既にオリンピックに次ぐ重要度のワールド・トライアスロン・シリーズには導入されていて、2016年では、エドモントン大会ケープタウン大会 がスプリント形式。51.5kmの呼称も以前の "Olympic distance" から "Standard distance" へと変更されている。
記録(↑リンクしてあります)は男子で、スイム8-9分、バイク20数分、ランは14分20秒台での勝負になっている。この競技時間は耐久動作としての最小単位で、純粋な「技術」がより重要になるかな。ゴールタイムは男子で50分ほど、ほぼ真田丸一回分のスピード感だ。

酷暑予想の東京大会で熱中症リスクが減るメリットもある。ブランウンリー兄弟の美談は一度きりだからこそ美談たりうるわけで、続出したらぶち壊しだから。

ITUのTV戦略>
カサード会長、"more appealing to television" とはなんとまあ正直な$$$
リオ五輪での現実として、オリンピック開催を4年後に控え、しかも男女とも代表を出している、という条件的にほぼ最高な国(じゃぱ〜ん)ですら、男子はダイジェストですら中継なし、女子は年間ランキング3位のメダル候補を抱えながらも、生中継の途中にゴルフを挟まれたわけですよ。
これがトライアスロンという競技の現実。まして、こうした条件が悪い国なら、なおさらTV放映権料が入らない。金を稼げないならオリンピックとしての意味がない。
 
※念のため、1984ロス以降の30年間、オリンピックは金を稼ぐために=つまりはTVファーストで運営されており、僕は「投資効果」を追求する方向性には全面的に賛成してる。事実として、こうしてお金が回ったからスポーツは栄え、社会にお金で測れない豊かさが拡がってきたわけだ。オリンピックのレガシーとはそうゆう全体の仕組みにある。
ついでに2020東京についていえば、事実上1度きりの箱に数百億円という競技が幾つかあり、この投資効果には「よくわからない」とでも言っておこうか。少なくともトライアスロンならば、ワンオフな捨て金がとっても少なくて、大勢がライブで見れて、あとは放映権料をしっかり稼いでいただけば完璧。
 
これで2020年にトライアスロンファンはゴルフを見せらることもないだろう。(まあトライアスリートの少なからぬ層はゴルフ経験があるわけで、単にそのエネルギーを投入する比重が変化しているに過ぎず、彼らには問題ないんだろうけども)
 
ITUのポジショニング戦略>
同時にこれは、ITUの生き残りをかけたポジショニング戦略でもあるかもしれない。この競技を実質的に創設したといえるアイアンマン(の主催団体であるWTC)に対して、ITUは歴史的に後発チャレンジャーなので、競争戦略が必要なのだ。
そのWTCは今、70.3マイルのハーフアイアンマンに注力している。ゴメスとか51.5kmのスターが、ほぼ倍距離のハーフなら活躍できるわけで、ある意味、51.5kmへの抱き付き=クリンチ戦法だ。強い立場=ボクシングなら体重の重い相手からマトモにされたら厳しい。
TV的な大衆アピールとしても、トライアスロン特有のアピール要素である「キツさ」は、アイアンマンが最上位に見られがち、51.5kmではある種の中途半端さがあるようにも思われる。25.7kmなら心拍MAX域を最後まで維持する、という異なるタイプの過酷さが新たにもたらされ、戦いを独自の土俵に持ち込める、というヨミもあるかもしれない。
 
<アスリートにとって:レース展開
スプリント形式のレース展開についてはあまり良く知らないのだけど、駆け引きなしのオールアウトアタックが最後まで続くようになるような気がする。スイムもバイクも攻めた者勝ち。バイク50分間は間延びするし、NHKが途中でゴルフをはさみたくなるのもわかる気が。リオ女子みたいにランで先頭がお喋りする余裕もない笑。
この距離に4年かけて最適化してくるわけだ。必要なスピードはさらに上がる。
スイム400m4分切りが必要かな、と福岡の樋口選手&コーチが書かれていた。もしくはバイクの超スピードで追いつくか。ランはレースでの(記録会ではなく)13分台=1km2:40台が基準になるかな。
 
<エイジ参加者にとって
以上の通り、「見るスポーツ」としては合理性がありそうなのだが、「参加するスポーツ」としては距離半分では、肝心の達成感も減ってしまいそうだ。
だから、たぶんJTUとかエイジ向け大会の基本は51.5kmであり続けるだろう。ランキング対象もそのままの気がする。
とはいえ、計25.7kmのスプリントで必要な「技術」は、全てのトライアスリートに有益だと思う。僕は出たことないけど、必要技術は、ロング226kmと同じだと思っていて、KONA出たいとかの方は、まずここを極めるのは有力な近道になるだろう。
少なくとも、距離が短いからといって格下ってことは全くない。たとえばウサイン・ボルトがたった9.5秒だから楽だと思ってる人間が地球上に存在する気がしないように。
まあこれも1つのきっかけに、25.7kmのパフォーマンスを追求するような取り組みをしてみるのも、悪くない選択だと思う。目標レースがなんであれ。
 
スプリントのもう1つのメリット
人気&激戦の横浜大会で、表彰台に上がりやすい! (抽選倍率もかな?)
20110918s1_2
(2011横浜Standard表彰台〜このポイントでJTU初王者に)
ジョーゲンセンやブランウンリーが上がってまもない全く同じ表彰台に上がれるチャンスなんてこの先の人生に何度起きることだろう?
・・・
とはいえ、まだ決定事項でもないし、ミックスリレーの導入と併せて、議論を楽しく見守るとしよう。
 
"The times they are a changin’"
 〜 時代とは変わり続けてゆくもの (ボブ・デュラン, 1963)
 
変化に正しいも間違いもなく、ただ適応するのみ。

2016年5月 9日 (月)

データから考える、トライアスロン「ドラフティング」違反の実態と対策

5/1、広島は廿日市でASTCアジアトライアスロン選手権が開催された。僕は4年前のアジア王者 だけど今回高見の見物。あんな速い人たちと競うの嫌!笑
 
そこでまたしても、というべきか、、
 
バイクに入ると半数近くの選手たちが集団走行状態に… 周回コースではそういう状況になりやすいのは想像できましたが、故意に前の選手についている選手も見かけました。前との間隔を空けずに走る男子選手、男子選手の後ろについて走る女子選手。意識すれば前との距離は空けられるはずですが…  (小原工さんFacebookより)
 
 
<データ>
これは前から書いているように、白か黒かで単純に線引できる問題ではない。ルールの厳密性を追求したいオリンピック(とその意を汲んだITU)が、ドラフティング許可することで曖昧さを(おもしろさとひきかえに)排除したのもやむを得ないと思う。(かわりに個人TTを検討している)
 
スポーツのルール問題は、トレイルランニング界を軽く揺るがせた 「ハセツネ30k問題」 にも見られるように、どうしても感情的になりがちなもの。そんな時は、まず事実を客観視することだ。データで整理できる部分があるなら、そうしておきたい。そこで公式記録 から総合上位60名をExcelに落とし、グラフ化してみた。
 
以下2つの2軸分布図は、どちらも同じデータ:
  • 青色:スイム終了時点
  • 赤色:スプリット=ラン開始時点
を使用し、その並び順だけ変えたもの:
  • 青い点が並ぶグラフ1つめ: スイム順
  • 赤い2つめ: バイク終了順
Sb_2Bs_2
 

左から右に通過順、上下がタイム差を示す。各グラフで左右の軸目盛=スイムとバイクのタイム差は合わせている。これくらいはExcelの基本操作。(なお僕の元データは上位60名だけなので、実際はもっといるけど、今回の目的には影響しない)

たとえば疋田さんはスイム・バイクとも1位通過したので左下に青と赤が重なる。バイク2−3位通過の高橋&野仲さんはスイム通過は遅いので、1つめのグラフの右側の底に赤い点が2つぽつんとある。
 
スイムは、ほぼ1直線の集団で終えていることがわかる。500mに短縮された7−8分間のスイムでは差がつかない。
 
バイクは60〜80分間、今回スイムの10倍ほどの時間をかけるので、差は当然開くわけだ。なんだけど、
  1. その割に、タイム差は開いていない
  2. 差の開き方が、段々畑のように偏っている
  3. 後半ほど「段々畑」が広くなる
といった特徴が見られる。すべて理由あってのことだ。
 
1. を逆に言えば、「スイムは競技時間が短い割に差が付く」ということ。以前、『トライアスロンSwimパートは「初回限定の先発投手」 〜本当の重要度&練習頻度を考えよう』  でも触れた話だ。つまりはスイム技術はそれだけ大事だということ。
 
 
<トップ選手と、それ以外の差>
2. はつまりはバイク集団が出来るということ。平坦の周回に脚力レベルの近い選手が200名集まれば、どうしてもかたまりがちではある。
 
それでも上位10名前後くらいの差が開くのは、実力者が攻めた結果。強いとはこうゆうことだ。僕の経験的にも、JTUエイジで総合優勝レベルで戦うには、バイクまでに飛び抜ける必要がある。今回では1時間4分ちょいまでの選手はやはり総合上位に入っている。
 
実例で見てみよう。JTUフォトギャラリー より1枚引用。
092撮影:Satoshi Takasaki/JTU
 
右の白線上に野仲さん。僕が2013天草大会で総合優勝(とJTUエイジ王者)を争った方。 ちなみに5,000mベスト14分台の元ランナーで大分県のJr.記録を20年くらい保持され、バイクも諫早100kmTTでAvg.40km超で総合表彰台に乗る実力者だ。
 
こうゆう位置から、前に固まり気味な集団をバビュ〜〜〜〜ンと抜いていけるのが、総合上位へのほぼ必須条件。実際彼は1時間2分台でバイク2位、こうゆうコース経験が豊富そうなエリートのトップデュアスリートであるエース栗原より1分以上速い。それくらいの走力差があれば、ああゆう集団に追い付かれることはまずないし、仮にそうなったら追い付かれた側には激怒する権利もあるだろう。(そうではない場合と違ってね、いろんな意味で)
 
問題は、そこまでの力はない場合。段々畑の断層部分で1人でがんばってる選手も、集団に追い付かれたら、その畑な一味に加入してしまう。大きな集団ほど速いので、普通にレースしていたら追い付かれ巻き込まれてしまうのだ。 嫌なら、その後ろに下がって、いわばフタをされた状態でバイクゴールまで我慢し続けるしかない。
 
 
統計学の「標本分布」から考える>
上記3.は集団のサイズの問題で、確率論でまっさきに出てくる「正規分布図」Standard_deviation_diagramsvg_2<画像はwikipediaより> を想定するとわかりやすい。 トップ層はごく少数なので固まりようがなく、平均レベルに近いほど大集団化しやすいのだ。上位10名くらいが固まらないのは、上位だから、という自己循環的な理由も影響するわけだ。そこから遅れるほど、集団に巻き込まれやすく、かつ抜け出しにくい。
 
そこで例えば「練習不足や不調で実力を出し切れない名の知れた強豪選手」は、意識がどうであれ、「集団に巻き込まれやすく、かつ悪目立ちする」という状況に陥りがちだ。ただ、過去30くらいの僕のレース経験の中で、少なくとも名の知れた強豪選手に「ドラフティングしないとその成績を取れない人」などいない。たまにしか出ない無名な方が集団に乗って表彰台の隅に潜り込んでしまったケースなら目にした気もしないでもないけど。
 
個々のレースでの個々の局面に関しては、当事者でしか知り得ないものなので、大会運営者と出場者とで直接に話し合ってもらえればよい。ライブで見ていたリアル観客がヤジとばすくらいはありうるだろう。(その現実を正しく知っているのならば、伝聞ではなくてね)
 
そして、ひとたび名を知れたら、その名にふさわしいレースを続けねばならない。しかし「名にふさわしい」ってなんだ? て話だ。
 
「女子選手」はそのヤヤコシイ応用問題となる。当然ながら女子選手の「標本分布グラフ」は男子よりも後ろにあり、その先端=速い人たちは、男子では厚い層=集団ができやすい位置と重なる。つまりね、男子トップ選手は(仮に)ドラフティングをしたくても難しいが、女子トップ選手には(やろうと思えば)簡単。これは女子の層が厚い海外ではプロ含め大きな問題になっており、日本でも全くない話でもない。
 
なお、トップ選手といえども、やや上位レベルがトレインを組んで先頭交代してくれば逃げきれないが、実際そこまでのドラフティングは聞いたこともない。それは、ドラ集団の先頭はまじめに単騎で引いていて、それが集団の上限になるからだろう。(そして引率者が最後に疲れて少し下がって集団に埋没してしまう… 記録みるときはその可能性も考慮くださいな)

まとめ追記)

  • 男子の場合、ドラ集団にハマった時点で、上位争いから脱落、とみなして構わないので、カッコ悪いなーと一声かけて立ち去れば十分 (数名の少数数で回す場合は別)
  • 女子の場合、男子選手に混ざる走力があるとは、上位入賞レベルである可能性が高い。見つけたら、止めさせましょう。でないと不公平が続く
  • いずれにしても、「その場では放置しておいて後からネットで叩き始める」のは、同じくらいにカッコ悪いぞ
 
 
<運営とコースの問題>
今回の場合、個人の意識&行動だけでなく、環境要因も大きい。安全重視とせざるを得ないエイジのバイクコース設定、審判の「優しさ」、さらに今回特有のスイム短縮(=といっても十分に予想されたことではあるが、、2012館山同様に)
 
集団ができにくいコースとは:
  • 同時コースイン数が少ない (同一ウェーブ人数÷1周回の距離)
  • 上り坂
  • コース幅が十分なコーナーが多い
この点で優れているのが横浜大会かな。横浜は1周6kmくらいと短いが、同時コースイン数をうまく管理しているし、コース幅が広いので高速コーナリングで差をつけることができる。
愛南のように上りが厳しいと全く問題ない。ただ下りがジェットコースター化する。愛南の下りは一方通行で、危ない箇所には畳や体操用マットをたくさん並べて対策している。(小中学校の体育館からかき集めてきたかと思うと微笑ましい)
廿日市は全て悪条件。13151797_881838985271884_7934380046狭いコース幅で多くの参加者がいれば、コーナーで詰まる。エリートが使ったベタ踏み坂は、 狭いし対面で、トップ選手が時速70kmで中央を80歳おじいちゃん選手を追い抜いてゆくのでは危険過ぎる。
そうなると、やはり、審判さんにがんばっていただきたい。とはいえ、ボランティアの愛好者である運営スタッフさんに厳しさを求めるのもまた厳しな、とも思ったり。
 
 
<仕組みレベルでの改善案>
そこで、仕組みレベルで2つ。
  1. 個々の大会運営: 計測データを、時計ベースで、XLSで公表
  2. 競技団体レベル: バイクマーシャルへの支援。装備面と、取締のための実技講習
改善1.について、僕の上記2つのグラフには限界があり、固まって見えても「ラン開始時点でたまたま一緒になった場合」も含む。逆に、グラフに含まれない集団はもっと多い。数分遅れの一般部門を含め4−500名の参加者の、その60名だけだから。実際には周回遅れ組も混走しており、もっと酷い。
 
そこで、「周回」「スタート時刻の違い」という要因を加味するべきだ。「毎周回ごとのタイミングチップの通過データ」が公表されれば、
  • T2終了後にたまたま重なった(もしくはその逆=ずっと集団なのにT2までに離れた)
  • 周回遅れ組の便乗 〜とくに女子上位選手
という2つのケースを見分けることができる。データではこうだよね、という事実を提示される可能性があることは、一定の抑止力にはなりうる。(宮古とかも計測地点増やすといいだろう)
 
なお「写真や動画の公開」は(以前のブログでは書いたけど)、部分的なものでしかない。例えば、僕の2013セントレアでの僕の「引率」シーン、前から撮れば集団に見えるけど、横からは開いている。その時だけ詰まってる場合もあるし。
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改善2.は、審判にとって何かと難しいことだと思うから。
海外大会では、広いコース幅と見通しの効く長い直線で、二人乗りバイクで運転者と摘発担当が分かれている。簡単に発見し、両手でメモできるから、集団でも違反を出せる。日本の狭いコースで、1人で運転しながら、ではどうにも難しい。そこで装備面では
  • 無線で違反ナンバーを本部に読み上げて伝える
  • 動画撮影データもリアルタイムに送信して間違いを防ぐ
  • できれば二人乗り化
などできるといい。
 
それを、実際に10−20名が固まってる集団に対して現実に出せるためのシミュレーション=実技講習も必要だと思う。ぶっつけで1人で集団相手って、それは無理ってもんじゃない? 
 
これらのために必要なコストは、参加者は、喜んで負担すると思う。
 
 
<強くなろう!>
個々の選手の意識・行動については、2015年9月のこちら投稿で書いたのでご参照→ 『「トライアスロンにおけるドラフティング問題」 竹内鉄平さんの決定版まとめと、僕の意見
 
戸原開人選手の最新記事 良い子のノンドラフティング講座』 もご参照を。
 
要点:ドラフティングエリアには「追い越しをかける時以外、入ってはいけません」=「15秒間なら入ってもいい」のではない。なんだけど、前走車がペースを緩めるとあっという間に入ってしまう。そして抜かれたら減速しないといけないし、逆に集団を抜くときには一気に全員を抜かなくてはならない(途中でやめると「ブロッキング」の反則)。厳しい勝負なのだ、本来は。
 
今回の話に絡め追記しておくと、「正規分布」の先頭に出ることが手っ取り早い。バイク独走力に加えてクリテリウム的なコーナー脱出ダッシュに強い選手なら、今回の塊の速さならぶっちぎることができる。
 
まあ、そうゆう選手が数人も集まると(=正規分布の先頭少し後ろの状態)、規定の距離を保ってバトルを始めると、結果的に合法トレイン化したりもするだろうし、これはこれで微妙ちゃあ微妙なんだけど、それでも、レースのレベルは上がる。
 
そして、世界のトップエイジは、今回なら60分切るくらいのラップを叩き出すだろう。追いつけば、さらに抜け出すことができる。
 
それぞれに、誇ることのできる闘いをしてもらえればいい。レースの楽しさって、結局、そうゆうことだと思う。
 
 
最近よんだ一部→

2015年9月13日 (日)

「トライアスロンにおけるドラフティング問題」 竹内鉄平さんの決定版まとめと、僕の意見

竹内鉄平さんのブログ記事 『トライアスロンにおける「ドラフティング問題」について』 は、本件の現時点での決定版となるだろう。まずは以下リンク参照。長いが、ざっと目を通そう。
①歴史を紐解きながら、②ルールを解説し、③問題の核心である「グレーゾーン」に踏み込み、④どうすべきか示される。全くその通り。歴史はともかく、②以降はトライアスリートならば既に知っているべきであり、もしも「勉強になった」のならば、それはオノレの過去の不勉強を恥じていい。トライアスロンとは、このようにヤヤコシイ競技なのだ。
 
当ブログではこれら踏まえた上で、
  • トライアスロン・バイクの本質は「一騎打ち」である
  • 耐久アスリートとして「自分はどうありたいのか」という価値観について
  • お互い指摘し、文化を育ててゆくこと
  • テクノロジーの利用=動画撮影
と僕の意見を以下、書いてゆく。
 
<トライアスロン・バイクの本質は「一騎打ち」>
僕が強調したい1つは、②「ドラフティング禁止ルールを理解する」のこの箇所:
 
抜くときは15秒以内に一気に追い抜く。15秒以内に追い抜けなかった場合は、一旦加速をやめて、ドラフトゾーンの外に出る。逆に追い越されてしまった場合は、加速をやめて、先行者のドラフトゾーンから速やかにでなくてはいけません。ここを取り違えている選手が多いため、ドラフティングが起きるのだと自分は考えます。
 
これが意味するものとは、トライアスロン・バイクの本来的な在り方は「一騎打ち」であるということ。目の前の相手に勝つか、負けるか。オレはオマエより速いか遅いか。それをクリンチ禁止で行う。ボクシングではクリンチ=攻めてきた相手へ抱きつく防御法が認められてるけど、トライアスロンでは、そうではない。引き分けなし、決着はその場でつける。自転車の楽しみ方は人それぞれでいいのは当然だけど、トライアスロンのルールが定める競走のし方は、こうだってこと。
 
この「一騎打ち」が出来る条件とは、Swimをある程度上位で上がれて、Bikeで高い独走力があること。少なくとも国内レースでの現実としては。両方の合計点があるレベルを超えて始めて、その醍醐味を味わうことが出来る。これはSwimが本当は重要である大きな理由だと思っている。
 
実際、複数の有名大会でオートバイ・マーシャルをされる方もこう仰る:
 
「エイジ世界選手権の権利が取れるような上位レベルでは、それは見事にバラけてます」
 
ここには、「見られているという栄誉 or 抑止力」も作用する。あるレベル以上では、選手同士お互いを知っているから、 「今日のオレはオマエより強い!」というバトルが成立しやすい。またその他の選手からも観客からも見られているから、カッコつけるために、強さをアピールしたい。(※そうならない人も居る)
 
<しかし、ルールを守るだけではダメだ>
もう1つ重要なのは、ルールの範囲内でもグレーゾーンが出来てしまうこと。7m空ける。その中に15秒だけ入る。これ守りながらでも、トレイン=先頭交代を繰り返すことも可能だ(※レフェリーに悪質と判断されたら違反となりうる)。それが③「ルールとモラル」での議論だ。
 
このグレーゾーンを減らすため、世界の最先端はドラフティング・ゾーンを12mへと拡大してる。車間距離は5mから10mへ倍増。ただし、それが出来るコース幅、参加人数、レフェリー配置が必要で、それは国内では実際難しい。
ルールを理解し、守っても、出来てしまうグレーゾーン。そこでは、価値観の問題へ行き着く。耐久アスリートとして「自分はどうありたいのか」というこだわりだ。
 
たとえば競泳では、鈴木大地さんは「現状ルールの裏をかく」(※バサロ泳法は生命を危険にさらすので禁止されて当然)ことで今に至る地位がある。サッカー・ホッケー・水球などは、レフェリーが見てないところでは格闘技、ほぼなにやってもOK!て価値観があるだろう。
 
つまり、「ルール」の位置付けとは、「その分野での価値観」次第であって、社会一律で通用するような「正々堂々とルールを守って」と言って解決するものでもない。
 
「自分は耐久アスリートである」、ということの本質の1つは、「自分はどうありたいのか」というこだわり、ではないだろうか? 自分はなぜこの競技をしているのか? その原点へ立ち返った時に、どうなのか?ということ。
 
<価値観を育てよう>
自分はどうしたいのか、を決める。そんな個々の価値観が空気のように集まって、文化は出来あがる。みんなで育てるものなのだ。特に、トライアスロンやトレイルなど新興競技では「運営者と競技者は一体」という歴史的な成立過程がある。
 
だから「レフェリー取り締まれよ!」とだけ言うのは、トライアスリートにふさわしくないと思う。それは「お客様気分」の表れであり、「当事者」になれていないから。それは自分自身の役割。その場で、自分が、言うべきことだ。
 
ただ、文化だけの問題でもなく、たとえば、国内有名大会へ招待出場する外国人選手も、レフェリーが居ないとくっついて来る、なんて国内上位選手の内緒の証言があったりもする。だから、「仕組み」によって対応するのは、両輪として必要だ。
 
現に、世界選手権レベルでは「ルールの範囲内のグレーゾーン」削減へと動いているわけだ。ただ、車間5mを10mへ倍増するにはコース幅が必要だし、取り締まるマーシャルも十分配置する運営は高コストで、現実の国内レースでは難しい。だから、片輪だとしても、選手と観客も含めた個々が、当事者として文化を育ててゆく、という姿勢が求められるのだと思う。
 
<即効性を求めるなら、撮影する>
そして文化が育つのには時間がかかる。即効性を求めるなら、テクノロジーを活用する。カメラ装着・動画撮影・早回し公開。前方撮影なら「ワタシやってません」と証明でき、取り締まるなら後方撮影。
 
なお、Ironmanのルールではカメラは禁止。思うにIronmanは、聖地KONAがNBC独占放映権への価値を高めたい(=放映権料を釣り上げたい)、またマーシャルも多いから問題ない、などの背景がありそうだ。このKONAルールを予選にも拡げたんだろう。(ただアジア開催ではマーシャルが追いつかない)
 
最も問題になるのは国内レース、特にシード権がかかるがマーシャルが少ない(かつての)宮古100位前後だろうか。だから宮古は2015からシード廃止したのかな?  あと、練習中から動画撮影すれば、万が一の事故時の責任明確化も出来る。自動車にも付けておきたい。(5,000円のでちゃんと撮れるのかな??)
 
<付記>
僕だと、今回の伊良湖でも狭く密集したところで距離が詰まる局面も実際あったし、100%クリーンですと言うつもりもない=過去グレーゾーンには居たこともあるかなと思う。僕のSwimとRunのレベルからは、Bikeは独走で順位あげてリード稼げないと、ここまでの成績はないとはいえね。
 
僕の姿はかなり知られてて、ほぼ常に見られてるわけで(だからレース中の写真を初対面の方からも頂ける)、それらトータルの評価へ委ねます。僕が変なレースしてないか、見てただけるとすれば、ありがたいこと。
フォト

『覚醒せよ、わが身体。〜トライアスリートのエスノグラフィー』

  • 初著作 2017年9月発売

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