カテゴリー「◆***耐久スポーツの理論」の29件の記事

2018年1月 3日 (水)

駒大・工藤も"ぬけぬけ病"? 「反復性のトレーニング原則」に潜むリスク

箱根駅伝2018、最も応援するのは大学院の法政でも東大近藤(一区予定がインフルエンザで流れた〜ま来年またチャレンジの方が注目されて美味しいとおもう)でもなく練習パートナー(自称)である駒澤大さんだったのだが、7区でエース工藤選手が「脚が抜ける」という症状に襲われてしまった。この差でシード落ち。残念。

この症状を、箱根駅伝OB俳優さんがツイートしている。

まだ断片的な報道しか出ておらず、工藤選手の本当のところはわからないのだが、ランナーに多い症例であることはわかった。以下、一般論として話を進めよう。

そのツイートで紹介されて突如注目されているのが、福岡の治療院の西山理学療法士による「足が抜ける陸上長距離選手の為のからだドック公式ブログ」の記事

足が抜けたら最初に読むブログ

さっそく翌朝の「めざましテレビ」に電話出演されていた。速!

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それによると、長距離ランナーの足が抜ける症状とは、

カックン病、ローリング病、ランナーズジストニア、足に力が入らない、ふわふわする、棒になる、足を前に持ってこれない、踏ん張れない、ぬけぬけ病…

といった表現をされているようで、過去多くのトップランナー達をひきずりおろしてきたらしい。

この症状の特徴とは、モモを前に出そうとする(=股関節を前側に曲げる)と、土台である骨盤が後ろに下がってしまうこと。それが上記ブログの動画。筋肉の部位でいえば、本来使われるべき腸腰筋に指令が渡らずに、モモ(ハムストリングス)だけで動かそうとしてしまう。無意識に。

腸腰筋にダメージを受けているわけではないので、間違った動作意識が脳に刷り込まれてしまった、ということだ。

西山療法士の見立てによれば、

  • 原因: 繰り返しのトレーニング刺激
  • 対策: 動きのリズムを変える
  • 理想: 症状が出る前に走るのをやめる

とのこと。

やめる、とは、間違った動き(の指令)を脳と神経回路に刷り込まないためだろう。この間もスイムやバイクでクロストレーニングは可能だ。

迷いがあるならサボる、はトレーニングの基本、だと僕は思っている。「迷いがある」とは、つまりなにかが引っかかっていて集中しきれない、という心身の状態をいう。

こんな話、室伏広治さんも新著『ゾーンの入り方』で書いていた。繰り返し練習から脱却しろと。

この本は、体力的にかなわない若いライバル達(=その幾らかはケミカル製)に対して中年がオーガニックに対応するための考え方についてのもの。体力勝負をかければ過労故障は必至。そこで室伏さん、反復的トレーニングをしない、という選択をした。意識を変え、様々な身体部位を活用しながら、潜在能力を引き出すのだ。

その中で、トレーニングの大原則である

  • 反復性の原則=同じ動作を繰り返せ
  • 斬新性の原則=負荷を上げ続けろ

にツッコミを入れる。

これら伸び盛りの若者ならまだよいのだが、あるところから生理的限界にぶちあたる。とくに30過ぎてこの勝負にこだわると、過労故障は必至なのだ。

そこで彼は、単純反復の動作から離れて、不規則な動きに即興的対応をする、という動作感覚を磨いてゆく。「感覚が常に内在する動き」という表現をしている。感じ続けなければ成立しないようなヤヤコシイ動きにより、体を慣れさせる、ということをしない。

筋力のない赤ちゃんが、生まれてから立ち上がれるようになる1年間の動きをマネして、そこに人間本来の動作がある、なんてこともしている。筋肉ムキムキの大男がハイハイの実践研究。

「安定した人工的状態でしかトレーニングしてないから、体性感覚を失い、怪我をする」という室伏さんの仮説は、長距離ランナーにもあてはまるのかもしれない。

自分を成長させるために、あるレベルを超えた先に必要なのは、変化し続けること。 地道な繰り返しは、成功体験を得やすいし、努力という社会全体の価値観にかなうものでもあるけど、どこかで手放してみるべきなのだろう。

・・・

<おしらせ:愛知・三河な方へ>

本屋さん少人数トークショーやります。

日時: 2018/1/7 (日) 14:00-15:30ごろ

会場: 幸田駅前書店(愛知県JR幸田駅前)

料金: 900円、ワンドリンク付き(ビール、コーヒーなどなど)

定員: 10名程度(先着順)

詳しくはこちら: https://www.facebook.com/events/1495205834114131/

(フェイスブック見れない方は http://morrisseyhonwatomo.wixsite.com/kotabooks からお問い合わせを)

 

<ついでのおねがい>

在庫あれば売れるのに蘇生気配ない(から仕方なく私が割高なマーケットプレイス販売してる)Amazonページ→  ←よろしければ「ほしいものリストに追加する」に登録くださいませ(注文不要ですモチロン)、世界最級高性能であろうはずのAIちゃん気付いてほしい〜〜orz

2016年6月17日 (金)

【スポーツ動作の原理】 筋力発揮は一瞬、もしくはリレー

まずはランニングコーチ岩本さんブログより:
 

「RUNが生活に浸透している人にとって、1・立つ 2・歩く 3・走る の順にダメージが大きい」 (非エリート向け現実的対応が得意な方ですね)

本日の結論1: 立つ、歩く、もトレーニング

立つ、歩くのダメージの仕組みとは、筋肉の継続使用、だと僕は思っている。歩く動作は筋稼働時間が長いが、ランでは接地の一瞬だけ。接地以外の時間とは、マペットの如く、上体によって釣り上げて操作してるようなものだ。その操作レバーが「腕振り」であるわけだ。
 
そもそも動物は、力入れっ放しという動作はしないと思う。人間でも子供はしない気がする。例外は人間の大人。器用な腕と、文明&文化の中、そうゆう動作を後天的に学習しているんではなかろうか? たとえば子供が学校で学ぶ「きおつけ!前へならえ!」とかで静止し続ける動作なんて、まさに文化的なものだ。(たぶんルーツは軍事訓練)
 
そしてスポーツでも、教科書の中途半端な理解によって、力を入れようとしてしまう。たとえば、ランでは蹴って進み、バイクでは下死点まで踏み込み、スイムではストローク中ずっと力を入れようとする。だから、がんばっても、速くならない。
 
一方で、速い人は「蹴らない、踏まない、かかない」(竹内鉄平さんコメントより)。動物の身体で、筋力とは、一瞬でしか発揮されないものだからだ。
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そんなことをFacebookに書いたら、岩本さんブログ更新され:
 
 
と解説される。 このゆっくり弱い筋収縮は、本来はダメージが少ないが、身体が慣れてないレベルで繰り返すと、ダメージになると。適当というのはそうゆうものだ。
 
つまり、高効率なスポーツ動作において:
 
結論2: 出力は一瞬
 
では、継続出力が必要な場合はどうするか? 例えば、バイクは常に脚を回し続けるし、クロールでも1ストロークでおおざっぱに1秒くらい水を押していたりする。そこでも、ランの「事前反射収縮」の仕組みは共通するはず。そこで、こう考えられる:
 
結論3: 継続出力はリレー
 
個々の筋肉が発する一瞬の力を、複数筋群でチームを組んでリレーさせればいい。 そのつなぎ方で差が出るわけだ。(クロールの場合は講習会で説明している通り)
 
その際に、筋肉によってタイプがあり、胴体側の筋肉ほど、耐久性が強い。(でないと姿勢維持とか呼吸とかできないからね!) そこで、こうした継続出力が得意な筋力は、より長いリレー区間を担当すべきだ。そこで:
 
結論4: リレーのベースは体幹
 
これが昨今のスポーツにおける「体幹ブーム」の真の仕組みは、ここにあると思う。
 
最終結論: トライアスロンの技術とは「つなぎ方」
 
以上!
(めずらしくシンプルな文章を書いた笑)
 
<以下、参考文献>
ランで接地時間を短くする話は常識だよね? レース前日は走らず、歩かず、立たず、脚を温存」とは岩本さんの本で。
(右は電子版) ペダリングの強パワーが「一瞬」なのは、例えば2016年6月号サイスポの特集キーワードは「独走力」 自分史上最速になる!」参照。
 
スイムはわたくしにて作成中(いろいろあって進んでませんが)

2016年4月18日 (月)

これが世界の強豪エイジ! 宮古'16総合2位ヒューム選手は週14時間練習の40歳医師

<お盆?>

国内トライアスロン界が一年で最も盛り上がるのは10月の日本選手権(51.5km)&アイアンマン世界選手権(226km)ウィーク。同じ週末に重なることが多く、土曜がクリスマスで(この競技にとってのイエス様のような存在だし)、日曜お正月(お台場だけに)的な。その次に盛り上げるのが4月の宮古島大会ではないだろうか。申込3,231名から参加1,700名が決まるクリスマスからじわじわはじまる国内最大規模のお祭り。こっちは日本のトライアスロン人気の「ご先祖様」のようなものだから、お盆と認定しよう。暑いし。

今年の僕はパンフレットにだけ登場して→13022279_10209144921999197_14554479 気楽なネット観戦。40代選手の表彰台の行方を一部友人にネット解説しながら。

<経過>

2016年大会の結果は、超おおざっぱに書くと、

現役国内プロ > 海外勢 > 国内超ベテラン > 沖縄勢 > 国内ベテラン

て勢力関係かな?

戸原さんが二連覇(or '15デュアスロン & '16トライアスロン二冠)へ独走。海外の3名が続く。

去年深夜ギリギリに苦悶の完走を果たしたベテラン松丸さんが5位、見事な復活を遂げた。次いでM45-49カテゴリのお二人が強さを見せ、48歳の谷さんが6位、おそらく翌年の招待選手対象に滑りこむ。去年に長いブランクを経て復活した強豪エイジ松田さんの8位も素晴らしい。

これら展開は、以前書いた「トライアスロンSwimパートは「初回限定の先発投手」 〜本当の重要度&練習頻度を考えよう」 に沿っている。「バイクで上げ、ランで逃げ切る」のが長距離トライアスロン。バイク終了時点での位置は、野球でいえば「6回終了し、7回から最強クローザーが相手」という状況で、ランからの大逆転は難しい。

ちなみに谷さんのバイクフレームはたぶんTNI "Fighter" 19万円なり(=安いという意味ですm(__)m一般人のみなさん)。車体が幾らしようが結局エンジンだ!

さらに沖縄の30代3名が絡む。おもしろいのはみな内地からの移住組なこと。常連の地元エネルギー企業ヤマモトさんも関西&東北大出身だったのは始めて知った。

そして総合10位表彰台への最後1枠は、M40-44森田・西内さんvs.地元30代の桑原さんの争い。いずれも長距離レースの走り方を知っている元プロだ。この結果次第で、少し離された秦(=かぼすくん)・星さんの両方がM40-44年代別表彰台に乗れるか、片方だけかが決まる。そんなランの開始。みんな知っている僕としてはかなりおもしろい!

バイク終了時にかぼす君に5分差を付けられていた☆さんは、折り返しの計測地点で背後にまで追い着き、盛り上げる。1kmあたり15秒詰めたわけだ。丁度折り返しでネット中継に登場しており、雰囲気は対照的。かぼす君は力強さは感じないけど、余裕ありそうなリラックスした走りとも取れる。☆さんは気迫に溢れるが、既に30km過ぎのような余裕度でもあった。

そして30km計測地点では、桑原さんが森田さんを逆転する勢いで猛追し、M40-表彰台はかぼすvs.☆対決の勝者に絞られると予測。数分後の通過データで、かぼす君☆さんを突き放す。陥落の☆さんだが、その気迫はネットの短い画面からも、タイム推移からも、十分に伝わってきた。

桑原さんのラン逆転は、高難度だと思う。特に上位ほどランで崩れないし、しかも相手は森田さん。かぼす君は環境の変化で十分な練習ができなくなってしまったようだけど、ペース配分などの経験でギリギリの成果を得た形だ。そして去年ワタシが獲得した「表彰台を逃した中で最速王」の座は☆選手に移管されましたとさ。めでたしめでたし??

ところでこうゆう途中経過、もっと中継データが多ければ、みんなが勝手解説をSNSとかに持ち寄って、もっと盛り上がれそうだよねー笑。技術的にも、もっといろいろできそうなもんだ。タイム速報だけでも、「指定した選手がタイム計測ラインを通過すると通知されて、その少し後の定点カメラで姿を見れる」とか、「上位選手の位置関係が折れ線グラフでわかる」とか。さらにGPSまで絡めればすごい(けどシステム構築にカネかかりそう)

単純にタイム計測ラインや定点カメラを増やすだけなら、たいしたコストを積まずにできそう。あとはこっちが勝手に解説するので(出てなければね!)

かくして総合10位内に40代は4名。その筆頭が総合2位サム・ヒューム選手40歳、オーストラリアの招待選手だ。

<これが世界の強豪エイジ!>

ところで当ブログ読者のみなさまはここの筆者が検索魔であることにお気づきであろう笑。そして今回もまた例外ではないのであった! その調査結果を紹介しよう:

オーストラリアのウェブ媒体らしき2015年インタビュー記事: AGE GROUP FEATURE – SAM HUME

swimstyle-magazineとやらのFacebook2010年ノート: In Focus - "the Iron Doctor" - Dr. Sam Hume

彼はメルボルンの感染症の専門医さん。複数の病院を掛け持ちするフリーランスみたいな勤務形態かな? 娘さん二人がかわいい。そしてトライアスロンでは、2015年のアイアンマン・メルボルンで8:39でエイジ総合1位(KONAは不出場ぽい)。(なお今年はメルボルンが開催されないこともあって宮古に呼ばれたようだ) KONAでは2008年に総合27位(=プロの半分くらいに勝っていると思う!)、エイジ2位入賞歴もある。本物の強豪エイジだ。
 
興味深いのは、トレーニングの内容。2015年記事によれば:
  • ふだんトレーニングは週13−14時間
  • 平日は1回45−75分だけど、できる限り朝夕2回
  • 週末にはバイク3時間と90分ラン
  • 十分ではないけど、1年間しつこく続けるのが、結果につながっていると思う

ただ勝負レース前の強化週はたっぷりで:

  • スイム12km(1時間×3回) 〜これはふだんとそう変わらない、週3回
  • バイク300-400km(ポイント練習が180-200kmロングライド)、週4-5回
  • ラン65-80km(ポイント錬2時間00〜15分走)、週4-5回

テキトーに推計してみると:

  • ふだん週: 週末ポイント錬5h+平日1h×6コマ+スイム2h=13h
  • 強化週: ポイント錬(Bike6h+Run2h)+それ以外(Bike1.5h*3+Run1h*4)+Swim3h=20h(より少し多いかな?)

くらいの練習コマの配分だろうか。

・・・

こうゆう「山頂の高さ」みたいなものが、大事なんだろうと思う。

世界強豪エイジの情報漁りはたまにやることがある。層が厚いだけにおもしろい作業だ。そしてこの情報を、長短の世界選手権で対戦した際の(圧倒的な実力差による)身体感覚とを突き合わせて考えるのは、とてもおもしろい。(だからブログで共有したい)

いまのところ僕は、ワールドクラスで戦うためのトレーニングとは、

  1. 「瞬間の強さ」が大前提
  2. それらが折り重なった「結果としての積算練習量」ならば、ある程度の意味はあるが
  3. 単純な足し算ではない

のだと思っている。その重要度は、1つめが過半数を占めるくらいな感じ。
 
たとえば今年1月に書いた:
 
も、これら情報と考察を踏まえたものだ。
 
宮古島トライアスロンで「招待選手の外国勢」は名物なんだけど、紹介のされ方は、それ止まりで、「黒船の異人さん」扱いのような気がしなくもない。ただそれは僕らの受け止め方、接し方の問題であって、こうゆう人達と一緒にレースでき、間近に見れる機会が現実にあるのもまた事実だ。そして、その差を詰めるきっかけともなりうるものだと思っている。
 
 
<災害に備えましょう>

2016年1月 1日 (金)

2016三大構想その1: 40代から世界で戦う方法論

2015年のブログ閲覧数は記事更新あたり5,000を超えた。記事別ベストテンはこちら。16あるのは、1位がトップページ、2014年記事4、2013年1が混ざるから。

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2年前のKONAシリーズは10月に入り検索経由のが急増した。過去記事を平均4-5分かけて丁寧に読んでくれるのは嬉しい一方で、どんなんだっけ?と読み返して昔の文章のだめさ加減にあきれる。特に4-5-8位の水泳記事は全削除して書き直したいくらいだ(=消さずに猛烈に書き直しまくるが)。て今のも3年後には笑って読むことになるだろうけど。

実質1位は7月の「水分補給と熱中症対策の新常識」、2位は10月の稲田弘さん(83)。瞬間最大風速は稲田さんが圧倒的だったが、熱中症シリーズの総合力で上回った。トップページやカテゴリ別でも読まれているのと思うので、実際に届いた数はもっと多い。

2014年まではもっぱら「自分のレース」を軸に調べ考えたことを書いていたのだが、2015宮古準備から、「普通のアスリート」目線で俯瞰して書くようになった。去年のアクセス急増はその結果。競技者と理論家とは両立しないとわかった笑。

2016年はこの3種目でトライし、2つ以上での国内王者を目指す。

  1. 40代過ぎで速さを保つ方法論 (プロトタイプ制作中)
  2. 体幹パワーを活かしたクロール技術 (量産化準備中)
  3. トライアスリートの経営+キャリア+社会学 (研究開発中)

宮古島にはハイキングにいきます!

・・・

てわけで早速2.からガンガンいこう。アイアンマン世界選手権KONA2015男子の優勝と入賞(Pro10, Age5)タイムをグラフ化している。

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年齢カテゴリ上昇によるパフォーマンス低下がよくわかる。加齢によって30代以降の生理的ベースは落ちてゆくのだろうが、30代以降から参加者が激増するのは世界共通なようで、層が厚く激戦となっていることが、1位と5位の差が接近していることに見て取れる。当然、5位と6位との差も近い。

その結果、50代前半まではタイムがあまり落ちてないようにみえる。これが世界のロングレース高速化だ。

実際には、50前半の1位だけが突出しており、入賞ラインは緩やかに落ちている。この異常値はデンマークのBent Andersen の仕業→  http://www.endlesssport.dk/profil/bent-andersen Google翻訳で英訳すると過去の凄まじい戦果がよくわかる。

彼は「故障でプロ活動を断念した元エリート選手が、大手企業で管理職をしながら、週12時間くらいの練習で、KONAのエイジ記録を30代あたりから塗り替えつづけている」という人っぽい(情報源は忘れた=暇ができれば調べなおそ)。本当の技術とはこうゆうものだ、という例だと思っている。

で、こうゆう人が一人いると、後に続くエイジのレベルはそこに迫ってゆくものだよね。人類には不可能と言われた1マイル走4分の壁も、一人が超えたら次々越えていったように。だから今後、グラフの水平に近い部分が、右にスライドしてゆくことも予想できる。

だとすれば、30年後にはM80カテゴリにまで高速化はある程度は及ぶことになる。いわゆる「80まで続ければKONA」説は、少なくとも今40代以下ならば、無理だろう。80歳でKONAに行きたいのなら、今から技術を磨き、スピードを上げておくべきだ。

この中で普通の日本人が世界で戦えるとすれば、どのような方法論がありうるのかを、お見せしたい。その名にふさわしい成果と共に。 (実験モルモットさんは僕とは限らない)
 
まずは概要だけお伝えしておこう。
 
複数の60代の著名強豪選手に伺うと、加齢と共に故障しやすくなるという。またタイムの落ちは、重力の影響が大きい順に大きい、つまり、ラン>バイク>スイム、の順に落ちるそうだ。
 
この問題への一つの対策は、「高強度トレーニング」にあると思っている。たとえば、
  • 高負荷練習は週2日
  • 短時間高強度の活用(筋力、心肺の両面で)
  • 技術改善と筋力アップは一体
  • 栄養休養もトレーニングの一部
  • などなど・・・
技術については、加齢とともに筋力は落ちてえゆくので、
  1. 高強度トレーニングにより筋力低下を防ぎながら、
  2. 低下した筋力を前提とした技術を見出す、
という二段構えが必要になるだろう。
 
Facebookでちょこちょこと書いてきたのを、しっかり書いてゆこう。別サイトたちあげようかな。
 
・・・
 
おまけ:最近読んで面白かった本。
表現方法についての2作は、毎週連載の少年マンガ=常に興味を維持するビジュアル勝負と、大人向け単行本=読後の口コミ勝負と、対象的な創作手法がわかっておもしろい。
岡田斗司夫のはネット時代の発信方法について。この人さすがだわ。
 
そしてJINSのPC用ブルーライト38%カット眼鏡、27インチMac作業での眼の疲労が明らかに減った。もう少しフレームが大きいといいんだけど、安いからOK。スポーツ用のもJINSにしようかな。

2015年12月16日 (水)

「体幹を使う」ためには「末端を動かさない」 〜蓋の開け方とクロールの共通点

おちゃらけニュースサイト「デイリーポータル」に「固い蓋を開けるコツを発見した」との記事。先週主催した「体幹パワーを活かすクロール」受講者さんが、同じだーとFacebookで紹介していた。 

「手首は「動かさない」事にだけ集中する。決して手首で開けようとしてはいけない。で、手首を固定したまま肘を曲げて瓶を体に引き寄せる。と、開く。」

そう、ここにも「体幹パワー」。

フタを握った手首は動かず、ビンを体幹側に引き寄せる。つまり、手=末端ではなく体幹=中心に意識をシフトさせれば、自ずとフタは開くのだ。

同様に、水を掴んだ腕も動かさない。固い蓋の開け方も速いクロールも、動作原理は同じなのだ。でもこれはまるで"コカインの入ったコーラ"のように不思議な存在だと思うので、しつこく書いておこう。 ス ト ロ ー ク す る 腕 は 動 か し て は い け な い 。

もちろんこれは「意識」のうえでの話。客観的には、たしかに腕は動いている。しかし、意識をどう置くかで、同じ蓋が開いたり開かなかったりするし、同じ身体能力のスイマーが速かったり遅かったりするのだ。

より一般化していえば、「体幹を使う」のではなく「末端を動かさない」ということ。「体幹を」使おう、という意識では普通、「体幹も」使う、と変換される(ある意味では常識的なことだ)。昔のクセも身体に染み付いている。すると「末端も」動かしてしまい、以前とたいして変わらない。

そうして劇的な変化を感じられないまま、練習スピードを上げていこうとすると、昔の慣れた動作の方がパフォーマンスは高いわけで、結局、元に戻ってしまうものだ。

このことは、BikeやRunでも同じ。

Runでは、蹴り足は蹴ってはいけない。蹴り脚は固定し、振り上げ脚を前に出すことで、重力を味方に走ることができる。

以前流行ったランニングの「フォアフット論争」の無意味さもこれで説明される。ケニア選手は、最も体幹を活かして走った時に、結果としてつま先=フォアフットが先に接地するというだけの話。

マラソンの名ランナー中山竹通さんは意識してフォアフット化していたけど、その際には、そうすることで体幹パワーを引き出せるだろう、という身体感覚が具体的にあったはずだと思う。フォアフットなんで言葉もなかった30年以上前に、自分で考えての話ね!

自転車のペダリングもそう。以前どこかで紹介したチーターの走り方もそう。

つまり、この体幹駆動のパワーは、トライアスロン3種目に限らない、地球の動物の共通原理。

僕は、まず水泳から順に説明してゆく。近いうちに詳細を発表します。

 

<スマホ防水シール登場>
知人の開発したiPhone5〜6用の防水シール売れてるようだ。ありがちなコーヒーこぼしで数万パーな悲劇を千円ほどで防げる。開発ストーリーもおもしろい→ http://miyako-sj.com/開発ストーリー/  

<ウェアもウェットも半額以下>
「uスーツ」は生地の耐久性が高く、ウェット前提にBike-Runパフォーマンスに絞ったユーティリティー高い一品。高価なウェットスーツも半額以下。サイズがあえば大チャンス。ただしこのショップはすぐに値上げするので注意。
 
「じゃいつ買うのか? いm・・・

2015年10月31日 (土)

NHK「アスリートの魂〜佐藤優香」 Bikeの描き方には大きな問題がある

NHK アスリートの魂「折れない心を トライアスロン 佐藤優香」 が先日放送された。

番組テーマは「折れない心」。多くの日本人が耐久スポーツ選手に対して期待するものだ。そんなストーリーラインをまず作り、それに沿って素材を貼り合わせている。そんな印象を受けた。

それだけなら、まあ構わない。しかし今回のは、実際の競技の中、重大な危険を招きうるものを含むと思う。以下指摘させて頂く。

<Bikeコーナリング克服、という物語>

佐藤選手は2014年10月のエドモントン大会で、バイクのコーナーで落車し、表皮組織(=皮の裏側の肉)が剥がれて白い腱か筋肉かが露出する酷い怪我を負った。僕も似た怪我を3年前のバイクレースで何かの金属板を相手に起こして救急車乗ったけど、あれはかなり痛い上に、気持ち的にショックがでかい。

そのトラウマの克服が、「折れない心」の象徴的な物語として描かれている。その流れは、「物語の作り方マニュアル」の基本に忠実なものといえる。まず番組の始めに、主人公のキャラクターが好人物であることを描き、視聴者が好感を寄せる、という前提を作った上で、

  1. 挫折 〜かつてコーナーでのツバ競り合いで転倒し、以来、苦手意識に苦しむ
  2. 努力 〜そこで長時間の苦しい特訓に耐え
  3. 戦い 〜9月のシカゴ大会では、外国人選手に声を荒げられながらも、コーナーで攻め続け
  4. 勝利 〜井出選手よりもブレーキを遅らせてコーナーに入り、抜いて前に出た (ここでお馴染みテーマソングちゃららーーん♪)

と、少年ジャンプかプロジェクトX的に完結する。

<3.集団内でコーナーを攻めてはいけない>

この最大の問題は3。これは成功例や美談というより、失敗例に近いと思う。しかも初歩的かつ義務的なレベルでの。自転車競技の経験がある方にはわかるだろう。

シカゴのような大集団では、「集団の先頭付近」の数人にとっては、コーナーで攻めることが有効な戦術・戦技となる。なぜなら、先頭にはそれが出来るスペースがある上に、後ろの大集団では、「コーナーを攻めることが許されていない」から、有効な差をつけることが出来るためだ。すぐに追いつかれる差だが、追いつく側に急アクセルを強いて、ダメージを蓄積できる。

この時、集団の中〜後方では、 「できない」でのはなく、「できるけど危険だからやらない」だけ。だから、攻めたい選手は先頭に出る。さもなくば、集団と同じペースを維持する。

自転車を使うレースでは、こうした暗黙のルールが幾つかある。そこが怪しい選手には、その場で「おい!あんた!」とベテラン選手から大声で熱いご指導を頂くことになる。明らかに繰り返すと、「てめー下がってろ!」級に昇格するだろう。

ただトライアスロン大会では、そのルールを知らない人たちが大挙して入っていて、かつ、誰にも指摘を受けずに走り続けてしまうことも多い。(で、たまに指摘する人がいると、暴言とか批判されたりしている!現実にFacebook上で見た話です)

番組のあの場面について言えば、佐藤選手個人にとっての意味はある。苦手克服できたかを実戦で確かめておくのは、必要なステップだ。ただし、他の選手に迷惑をかけない=気付かれない範囲内でやるべきだ。そこを指摘されたということは、その失敗を意味する。

つまり、佐藤選手にとってのコーナリングは依然として課題であり、引き続き練習していけばいい。課題のない選手はいないし、チャレンジは常に必要。スポーツとはそうゆうものだ。

 〜信頼の問題〜

ここからは、一般論として書く。

そこには、選手にとってもリスクが残る。「信頼を失う」ということだ。

その帰結を、自転車レースに詳しい方はよく知っているだろう。欧米での(新城・別府選手を除く)日本人選手の扱いを。「ふぁっきnジャパニーズ!」と怒鳴られながら体当たりされ倒される、なんてこともありうる。

ArashiroやBeppuは、高卒後すぐに海外で活動することで、そんな文化を肌感覚で吸収した上で、その中で勝ち上がってきたので、「弱い日本人」枠には入っていない。欧州シマノでアシストとして集団を引っ張りまくった土井雪広選手も「日本人ということで不愉快な思いをしたことはない」と言う。そこは実力で決まる世界だろう。

海外トライアスリート達も、その同じ文化の中で育っている。そのつもりで見ると、コーナーで外側にいるジョーゲンセン(金色の「1」シールを腕に貼った細くて長くて白い選手)は、佐藤選手を避けて大きく回っているようにも見えるけど、それは気にし過ぎかな? だとしても、バイク集団での位置取りは大きく不利になるだろう。

大集団の中でも、ジョーゲンセンは出ようとすればスペースを空けてもらえるが、悪いイメージがついた選手はブロックされ、不利な位置にしか付けない。

集団では、前の10人くらいが最も落車リスクなどの安全性が高く、またコーナー立ち上がりのストレスも低い。動きの無いうちは後ろで構わないが、レースが動き始めた時に、後方にいること自体がリスクとなる。またバイクゴール手前では、トランジションは混雑することもあり、ランスタートで軽く10秒以上の差がつけられる。

 〜語学力の問題〜

あと1つ付け加えると、 こうした場面では、英会話力が大きな差となりうると思う。

英語が十分に話せると、レース中に怒られた時に、その場でコミュニケーションが取れるだろうから、信頼低下はそもそも起こらない。またレース後に話しかけて、「あの時ああいったのは、詳しく教えて」と会話できれば、信頼回復できるだろう。

しかし、NHKのナレーションでは、「外国人に攻撃されたが、跳ね返した」的なニュアンス。方向がまるで逆なんだよ。この描き方は、ちょっと悲しいくらいだ。

 

<4.戦術としての重要度>

番組で描かれた点に戻る。上記4.の問題とは、その位置で抜いても大差無い、ということ。コーナーを抜けた時点で3m前に出てても、どうせ集団内に居るのなら無駄。むしろ、より力を使わずにやり過ごすことで、ランを伸ばすことができる。

それでも、個々の選手にとっては、実戦経験を積む意味で攻めてみたい場合はあるだろう。問題は、こうした戦術的価値のない細かな技を、重要な戦略として扱ってしまう番組の描き方は、強引だと思う。

<1.コーナリング技術>

そもそもの物語の発端(?)である去年のバイク落車についても解説しておく。

番組ナレーションの「ツバ競り合い」とは勇ましいけれど(NHKの主な客層である高齢者に合わせたのかな)、単にレースの基本ができなかっただけ。コーナーで前車真後ろに付けての「ハスり」は、位置取りの基本的ミスだ。

重要な基本なので説明しておくと、

  • 速度一定の直線なら、前車の後輪に、自分の前輪を出来る限り寄せるのは基本技術。近いほど力をセーブできる
  • ただし、絶対に接触させてはいけない。方向が固定され体重も乗った後輪に、動きやすくて軽い前輪が、お互いに高速回転しながら接触したら、後ろは一瞬で転ぶ(これがハスり落車、佐藤選手のケース)
  • 直線であれば、お互いの速度が一定である限り、問題はないはず
  • コーナーでは、減速と方向転換があるため、接触のリスクが高い。そこで少し位置をずらし、前がブレーキをかけても、自分の前輪が接触しないようにする

ドラフティング禁止のレースでも、Uターンなどで起こる可能性があるので注意しよう。この基本を破ればたとえサガンでも転ぶだろう。サガンなら触らせないだけだ。

<2.対策>

このことに限れば、自転車レース、特にエリート・トライアスロンのバイクと似ているクリテリウム競技での経験が、直接の対策となるだろう。ベルギーやオランダで生活する友人によると、彼ら、毎週末そこらへんの公道をつかって自転車レースが普通に行われている。トライアスリートも、子供の頃からそうゆうのに出てたり、あるいは、そうゆう出身者と一緒に揉まれている。

日本には、その環境がない。本当は、日本選手権に出るレベルの選手は、オフに実業団クリテリウムレースの上位争いくらいしてくれると良いのだけど。

このことと、佐藤選手がコーナリング練習をしているのは別の話で、コーナー単体での練習は当然必要なのでやるわけだ。ただしそれは番組で用意したストーリーラインの上ではない、ということ。

・・・

このブログの読者は、自転車を競技で使う方が多いはず。これらのことはぜひ見抜いて欲しいと思う。とりわけ、知識・経験ともに不足しがちな日本のトライアスリートには。

<ランの失速の原因>

こうしたBike実戦技術の不足は、筋力を非効率に稼働させるため、Runの失速に繋がる。これはトライアスロンの超基本、バイクパートはランパートの一部でもある。けして心が弱いからではないし、持久力が足らないこととイコールでもない。

番組では、佐藤選手が「スイムとバイクが強い」と順位のグラフで紹介されていた。しかしグラフは時に真実をごまかす道具として有効となる。

事実は、「スイム得意だがバイク苦手な選手は、バイクではなく、ランの順位を落とす」のだ。スイムが速ければ’(集団走の)バイクの通過順位も自ずと上がる。上位集団はバイク単体のスピードも速いことが多い。順位が上であることは、得意を意味しない。

本当にバイクが強いかを知るには、バイク単独のレースとか、1時間タイムトライアルとかが必要だろう。

僕がまじかに観戦したエリート男子では、同じバイク集団を走っていた日本人選手は、ランでははなから勝負に乗せてもらえていなかった。上位争いの選手は、走り方が全く違う。目に見えない勝負が、同じバイク集団の中で繰り広げられているのだと思う。こちら過去記事ご参照→ シカゴ大会BS放映みどころ〜 トライアスロンRun10km28分台!その技術を解説しよう

<その他の注意点>

  • 1日8時間練習は、週に1日とか、特別な強化合宿とか、ふつう限定的なものです (番組の練習風景は合宿中)
  • 低酸素ベッドも、日常使用はしてないと思う。製品はたぶん "Higher Peak" 3,149ドルで買えます→ http://www.higherpeak.com/
  • クロールのストレートアームは、そうすることで「陣地が空く場合もある」という程度。海用の泳ぎは別にあるので、真に受けないようにね(なお僕はストレートぽいです)
  • ストレートアームは、同じ技を繰り出した同士では、より重くパワーのあるほうが勝ちます。スタン・ハンセンのウエスタンラリアットのようなもんだ
  • 脂肪分を控えた食事は、「ある日の晩ごはん」だからかな。少なくとも普通の耐久アスリートの、特に朝昼には、良質な脂肪は逆に必要なので、まんまマネしないようにね

・・・

<スポーツ・ドキュメンタリーについて>

僕はNHK大好きなのだけど、彼ら、わかりやすいストーリーへの強引な誘導を、一見シリアスなドキュメント番組でもやってくることがある。2015年5月に書いたブログのも一例→ 「アスリートの魂・萩野公介選手」の解説の欠陥と、より正しい理解 で、かつては、フェルプスの泳ぎの比較対象として「引退した選手をいきなり撮影」ということもしていたらしい。そら巧く見えるわ。

NHKがそうするのは、視聴者の大半が、「オリンピックのメダル」には興味があっても、「水泳やトライアスロンそのもの」にたいした興味はないからだろう。

そんな中で、「平均的な視聴者の頭の中にもともと存在しているストーリー」に沿って、取材した素材を編集する。NHKの取材力は見事なもの。実際、ブログにも書いた取材当日の仕事ぶりには感心した。だから、組み立てる材料、つまり説得力は十分だ。ただしその編集は、時に、行き過ぎる。

以上、全体に、番組に対して批判的に書いてきたけど、これは結局、多数派の日本人の意識の問題だとも思う。スポーツにドラマを投影しないと気がすまないという。

NHKのスタッフともなるとみな優秀で、こうした客観的事実を理解する力はあるはず。その上で、「どうすれば伝わるか」と考えた結果、こうなっているんだろう。

ただ、スポーツ・ドキュメンタリーというものは、別に結論というか、物語の完結がなくても、「ただ苦しんでいる途中です」と実態をただ正確に描くだけでも、意味はあると思う。それで視聴者がついてくるかどうかは、また別の問題だけれど。

選手やコーチは、いろいろな課題を抱えながら、いろいろな取り組みを試し、その多くは綺麗な物語として語れるようなものではない。ただ、視聴者はそのままには理解しきれないし、また満足もしない。その制約の中でも、より真実に迫ろうとするTVであって欲しいと願う。

・・・

それでも、「多少は歪んでいたとしても、伝えられないよりは、遥かにマシ」だから、全体として番組自体は評価したい。

その上で僕は、僕がより正しいと考える情報を、こうして届けてゆく。こうした積み重ねが、最終的に、日本のスポーツ理解力の向上へと繋がるだろう。

真に優れたスポーツドキュメントとは、視聴者の頭の中にあるストーリーに沿ったものを届けることではなくて、知らなかった新しい世界を見せる驚きにあると思う。

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・・・

追記:10/24韓国トンヨンでのワールドカップ最終戦で佐藤選手みごと優勝!

ただ、リオに向けて必要な情報なので書いておくと、年間ランキング30位以内の海外トップ選手は出場していないと思う。トップ選手が最後に集ったのが、9月のシカゴ。だからこその「グランドファイナル」であり、そこで上位に入ることが必要だった。シカゴで年間ランキング確定させた選手は既にオフに入り、リオに備えている。

こちら公式記録から、選手名をクリックすると、ランキングや戦績など選手情報を確認できる。主要メディアの報道は、残念ながら、少なくともトライアスロンに限っては、真に受けてはいけないということが判るだろう。

信頼できる情報源を持とう。

・・・

自転車レースを知るには「エスケープ」佐藤喬(2015)を。傑作。  

番組を見逃した方、「全番組全録画」型のレコーダーが便利です→ 時間と手間をおカネで買う仕組みだ。


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2015年7月21日 (火)

死の危険も招く「過呼吸」の誤解と対策、そしてトレーニング意識について

トライアスロンは、国内30年ちょっとの歴史の中で、毎年平均1名の大会中の死亡事故が起きてきた。大多数はスイム中だ。今年は既に5名が水死、ちょっと多過ぎる。さらに僕が目にしたニュースだけで2件の危険な救出事案があり、うち1つは館山で僕の目の前をタンカで心臓圧迫マッサージをされながら運ばれていった。翌日には無事に回復したようでよかったけれど。

なおアメリカでは2011年に12件のトライアスロン中の死亡事故、とのブログ記事がある→ 「〜トライアスロン中の死亡事故に関して、アメリカでの話〜」 また国内マラソン大会では年間37名もの心肺停止が報告されている。

オトコが4-50代にもなれば、ゴルフでも心臓発作死し始めるわけで、加齢とともに自然に高まる健康リスクを、トライアスロン、とりわけスイムパートは「大きく増幅する」のは間違いない。

JTU医科学担当チームでも、情報収集と分析はしているが、個々の原因はわからないケースが多いとのこと。つまり犠牲者の方が、「練習不足、睡眠不足、前日飲酒、当日の無理」等々の落ち度があったかも、わからない。軽々しく自己責任論を語れるものではないのだ(一部で目につくけど)。確かに言えることは、一人ひとりが、正しい医学知識を持ち、リスク要因を徹底回避すること、に尽きる。リスクはゼロにはならないが、極小化を目指すことなら出来る。

奥井識仁医師のコラム「水泳中の突然死」 (2012年か?)は、原因となりうるものを整理される。昨日Facebookで紹介して過去最高いいね500超の反響。JTUサイトには2002年頃から同様の内容が載っており、標準的な見解だろう。このレベルの知識は、参加者全員が持つべきだ。

 

<「過換気」がもたらす「過呼吸」>

特に、5.の「過換気」=スタート前の深呼吸禁止は、知らない人が多い。もちろんスイムに限らない話だ。

ただ、説明が医学的で難しいので、まずはNHK「ためしてガッテン」サイトを読むといい。

過呼吸は激しい呼吸を繰り返すうちに血液中の二酸化炭素が不足してしまう状態。二酸化炭素は体にとって必要不可欠な物質で、不足すると頭痛、めまい、手のしびれ、筋肉の硬直などの症状が現われ、最悪の場合は心肺停止することもあるのです。
この二酸化炭素不足を解消するために、脳の延髄は呼吸そのものを止める命令を出し、二酸化炭素の放出を食い止めようとします。しかし、私たちの意識を司る大脳皮質は逆に息苦しさを感じて呼吸を続けようとする・・・これが過呼吸の状態です。
 
つまり、レース前に深呼吸を早いペースで繰り返すと、Co2濃度を下げ過ぎ、「過呼吸」のリスクを高める。
 
Co2濃度が下がると、苦しいと感じるまでの時間が延び、「息を止められる時間」なら延びる。ただし運動能力は上がらない。ここが勘違いのもとだ。蓄積酸素は6秒間しか運動効果がもたないので、耐久レースで行う意味は全くないのだ。呼吸で無理がきくと、突然の意識消失を起こしやすい。
 
これ私中学3年の時にプールで経験あり。水泳部を引退して2週くらいあとに、潜水75mにチャレンジして、50mのターンをしてそろそろ息が苦しくなってきたなあと思って、その次に気付いたら顧問教師が捕まえて水面に引き上げられていた。水中でバタバタし始めたらしいが、その記憶はない!
 
これ本当に直前までは苦しくなく、突然に意識消失が来た。「気がついたら意識消失」、と書きたい感じだけどそれは言葉の矛盾というものでw。水面に引き上げられたことで意識がふっともっどた感じ。
 
そもそも引退後に無謀であることはおいといて、、このイベントはみんな注目してて、即救助体制がある中でのこと。逆に言えば、この状況で、自分から助けを求めることは不可能だ。
 
これは極端な例だとしても、スイム初期に頑張りすぎて、脳が低酸素のまま、酔ったような気分で泳ぎ続けるケースは十分起こりうる。

またスタート後でも、後発の速い集団に抜かれたり、うねりがでてきたり、またそれが岸から離れて水深も深くなってるのに気付いて、後から呼吸過剰を起こすケースもあるだろう。

 
<過呼吸への対応>
過呼吸の原因は「二酸化炭素=Co2不足」であり、「酸素の過剰」ではないから、もし起きたら、袋を口に当てて呼吸制限するようなことは無意味で、窒息死の危険すらあるのは、ガッテンに書かれてるとおりだ。でも、こんな致命的に重要なことは知られておらず、僕が今年本人から聞いた例だけで、2名が間違った対応をしていた。しかもふたりともかなりの実力者だ。
一般的には、ゆっくり落ち着いて呼吸していれば、自然と戻る。なので、水中でもそうすればいい。トライアスリートに向けた奥井医師の推奨も、「スイムでの呼吸技術の向上」だ。
 
「クロールなら、左右両方で呼吸できるようにすることや、首をあげて呼吸ができる技術をみにつけてください。」

落ち着いて、ゆっくり呼吸をすること。それがレース中に出来るような「呼吸技術」を持つこと。

これは、「がんばることでタイムを上げる」というトライアスリートに多い練習法では、身につきにくい。「がんばらなくても楽に速く(=ほどほどに)進む」という技術重視のスイム練習が必要なのだ。

そしてそれは、他のリスク要因の対策にも効果があるだろう。原因が過呼吸ではないトラブルでも、落ち着いて息ができるだけで、和らぐものは多いだろうから。そして、速さ自体の追求にも。

 

<「錐体内出血」による「平衡失調」>

もう1つ注意すべき原因がこれ。呼吸の際に誤って鼻から水を吸い込み、吸い込んだ水が耳管の中で行き来して、圧変化により内耳の中にある錐体内に出血を起こし、平衡失調を起こすもの。これ自体で死ぬわけではないが、水中では泳げなくなってしまう。これは泳力に関係がない。(実際には、泳力のある人は、呼吸で鼻から水を吸い込むことはまず無いが)

また、冷水を気管内に吸引してしまうと、迷走神経反射で心拍数が低下し、意識消失につながる。これは過呼吸による「ノーパニック症候群」でも同様。
 
これも、呼吸技術の徹底によって防ぐものだ。
 
 
<アルコールと睡眠> 
酒を飲める体質の場合、ビール1-2本なら翌日に残らない、という人は少なからずいるだろう。僕もそうだ。でもこの場合に考えるべきは、睡眠の質を落とすこと。
 
眠れないからと酒を飲むのは、少量ならともかく、神経を麻痺させて意識を失わせるようなもので、寝たつもりになっていても、脳が休まっていない。
逆に、眠れないつもりでも、目を閉じて暗いところでじっと横になっていれば、レースに必要な休息は十分に取れる。これは瀬古利彦さんはじめ、ランニング系の情報源に幾つもでていると思う。
 
ただ、レース前夜に、睡眠不足の蓄積を持ち込んでしまうと、そうもいかない。そこで直前週からアルコールを控えることで、睡眠の質を維持し、コンディションを保つことも有効だろう。特に忙しい人の場合には。
 
 
<実戦的な対応: スタートで無理をしない>
レース中の対応としては、落ち着いてスタートすれば、たとえバトルになったとしても、より安全になるだろう。
 
本来バトルとは、ぶつりかりはするが、それでスピードを落とすことなく(ドラフティング効果でひっぱってもらえているはずだし)、自分の泳ぎができるべきだ。スイム上位でのバトルはそうゆうもの(僕が体験した限りでは)。それが出来るのは、それぞれが姿勢制御技術が高いから。
 
それが出来る技術がないのに、スイムバトルの中にいるのは、本来は極めて不合理なはず。当たり前で仕方ないものという認識があれば、改めたほうがいい。バトル自体が問題なのではない。その中での各人の認識と行動が問題なのだ。
 
そして、みんながそうゆう行動を取れば、バトル自体も沈静化される。
 
<対応2: 練習を変える>

  • 脱力してきちんと浮ける
  • 弱い力でも水を確実に捕まえれる
  • 姿勢を制御できる
等々が大事なわけだ。これらの基礎技術にたって、いろいろな状況下で落ち着いて呼吸できるようになる。

つまり、トライアスリートはまず「フォーミング」=ゆっくりと綺麗な姿勢で泳ぐ技術を、まっさきに身につけるべきだ。バイクやランのように、心拍数を上げて距離を稼ぐような練習は、レース直前2ヶ月で十分。でも、そればかりしている人も多いのではないだろうか?
これは、少なからぬトライアスリートにとって、大きな意識展開になるだろう。たぶん「自分が思うほど出来ていない」ものになる。
 
そして、スタート時を想定したダッシュ錬も必要。上記と矛盾するようだけど、練習では最悪のハードさを想定し、本番は最良のリラックスで。
 
 
<ちなみに奥井医師>
趣味が嵩じて健康ウォーキング、ランニング等々の本まで出す、スポーツ医学に通じた婦人科医さん。「15分間の速歩き」は、運動習慣のない人は本当にやるべきだ。また、糖質制限で痩せたい人は、原始人=パレオ式ダイエットがいいと思う。
 
<スイム技術>
今後しばらく、スイム中心に書いていこうと思う。OWS実戦テクなど次あたり。
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ところで、この撮影時に履いてたのはたしか20年前(笑)からのellesse(さらに笑?)。もさっとしてる(失笑)
ただいま最新のフランスZ3R0D-ゼロディ社のものに切り替えた。かっこいい!
 やはり2016五輪のブラジル!
 
なお次回の代々木プール練習会は7/26(日)午前、初の日曜都心開催。

2015年2月10日 (火)

 「痛み」を活かして「技術」を高める方法

抽象度の高いトレーニング哲学論は少々わかりにくいかもしれないけれど、まずは自分なりに考えてみることが大切。「わかりやすい正解めいたもの」があふれるネット時代だが、「哲学」にこそ価値があると僕は思う。

「哲学」とは、始まりの方向性をセットし、迷った時に立ち返る「考え方」。間違えると、無駄な努力もするし、怪我もする。だから、耐久スポーツで何かの目標を持った時に、最初に理解すべきもの。そこを間違わなければ、具体的な練習法も、テクニックも、後から付いてくる。
 
僕も5年前にそこから始めたし、そこで徹底して情報収集し考えたことは、今に至るまでの最短距離になったと思う。100m走が運動部現役時代に15秒の駄馬である僕がね。
 
など言い訳しながら今回も続けます。
 
〈日本の長距離界の思い込み〉
まず、サプリ会社DNSのコラムを紹介しよう。筆者は元短距離日本代表の早大元主将。
 
 
同記事では冒頭、長距離選手はメシを食え!と主張する。当然だよねー。読んでて大学生選手大丈夫かと不安になる。この点についての僕の見解は、シリーズ「耐久スポーツの理論 〜 体重編」 をご参照。まあでも未だにエリートランナー界でも続いているなんてがっかりだよ。
 
そして、それによる貧弱な身体がもたらすと思われる故障について語られる。以下引用:

痛みは自分から発せられたサインです。そこがなぜ痛んだのかを、考えなくてはいけません。そこで『ああ、こういう動作をしていたからかも...。』『こういう生活をしていたからかも』と考えることが大事です。

それをせず病院に頼り、間に合わせのような治療をする。それで痛い箇所は多少治るかもしれないけれど、原因は体のひずみですから、結局またケガをする。その繰り返しです。自分の身体の使い方が悪かった結果なんです。

走るとは、自分の身体を最大限に使うこと。だから、何かがおかしな状態にあることが負担となって表れる。その積み重ねがケガになるのだと思います

〈痛み、の意味〉
その通り。僕なりの理解では、「痛み」とは、「何かがおかしな状態にある」ことを、身体くんが親切にも語りかけているわけだ。
 
たとえば飼い犬は日本語を喋らない。一生懸命にワンワンと吠えているとき、何を言おうとしているのか、人間の側が考える必要がある。ただお腹が空いてたり、かまって欲しいだけなのかもしれないけど、もしかしたら病気で死んでしまうかもしれない。
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同じく、あなたの身体からのワンワン(=痛みの比喩です)を無視していると、いずれ、ぐしゃっと壊れたりしかねない。これはド基本だけれど、しつこく書いておく。だって出来てない人が多すぎる。
 
だからといって、いきなり休養に入る必要もない。これが、第二の僕の主張だ。
 
身体くんが言いたいのは、「ちょっとおかしいよ」というだけ。ただそれだけ。
 
これが日本の役所なら「そりゃあ大変だすぐに止めろ」となりそうなもんだが、僕らアスリートならば、自分の行動にはピュアな自己責任を100%貫徹できる立場にあり、そのおかしな箇所だけを探ればいい。
 
僕も、ランニング中、膝や腰や足底に軽い痛みを感じることは多い。それを、不合理な動作を示すサインと仮定し、その改善を試みる。どうゆう動作であれば、痛みは消えるか? それを、走りながら、ペースも落とさずにすることも多い。ただしスピード練習なら、レストを長くとり、十分にほぐし直す。
 
もちろん、その痛みが「物理的な損傷」が既に発生してしまった結果ではないことを入念に感じ取った上でね(言うまでもないド基本)。また、走りながらの修正はけっこうな高等技術かと思うので、自分のセンサーに不安があれば、一時停止した方がよい(言うまでもないか)。
 
〈具体例…〉
  • 膝の痛み… 「着地から蹴りだし」までの非効率な鉛直方向への力の大きさを物語る。これほどありがたいサインはない。ここで痛みをガマンしたまま走ってしまうランナーは、僕のブログ読者には居ないと信じるけれど、逆にそこで止めてしまう人なら結構いるかもしれない。それももったいない話なのだ。対応は、ベクトル成分を垂直から水平方向へとシフトさせる動作をその場で考えること、これに尽きる
  • 腰の痛み… 「骨盤から背骨まわりの骨の歪み」がたいてい伴っている。「蹴りだし動作」の非効率が作用している場合、「腕振り」が変=肩周りの固さを示す場合もありうる
  • 足底筋… 着地時の緊張を示す。やわらかい芝生でリラックスして走ってみる
あくまでも「僕の場合」であり、みなさんにとっての正解ではない。哲学は共通するとしても、個別解はそこからそれぞれに考えるしかない。
 
これらの対応で、「僕の場合」、100%痛みは消える。
のみならず、より楽に、ないしは速く、走れるようになってゆく。
 
ここでもしも痛みが消えなければ、その時点でトレーニング終了。
その場合を想定し、ラン錬は周回路が基本。そこまで2kmあれば自転車でいく。ランで遠出をして痛めると、痛い脚で戻らないといけないわけで、その事態を僕は徹底排除している。ただし、そうなったことは一度もない。
 
〈ケガをしないための哲学〉
こうして、「軽い痛み」が出た時点で「動作を修正」していけば、ケガ(=物理的な身体の損傷)を未然に防ぐことができる。
その奥にある哲学とは、「やると決めたことを や ら な い 柔軟性」だと思っている。僕はそもそも練習メニューを持たないし、なんとなくその場で決めても、やっていておかしければすぐに変えるし、スピードが出なければ、止める。がんばらない。
このイイカゲンさがケガを遠ざけ、レースでの成功への最短距離となる。というか、実際にそうなってきた。
 
僕らが最も避けるべきは、「やると決めたことはやり抜く」というスポ根漫画やらビジネス書やらにありがちなフレーズだと思う。
マジメな人、あるいは社会的に成功した人ほど、この罠にはまる。これは美徳のように見えて、実は、「自分の身体と対話する」という最も大事なことを放置しているだけ、「脳内の妄想」を現実の身体ちゃんに押し付けているだけだ。
 
他にも、
  • 「3種類のストレッチ」を、目的に沿って使い分ける
  • スピード走は、徐々に上げてゆく
  • 最終局面で、脚を使い終える
  • 途中で脚が終わったら、即中止
  • お腹が空いたら、即中止
といった個々のノウハウはあり、それで高負荷スピード錬もケガなくやり続けている。おいおい書いていこうと思うけど、今回書いたことは、トレーニング哲学として最重要レベルに位置づけられると思う。これは、僕のような勝利中毒者に限らず、楽しく完走したい人にも共通する基本だと信じている。
 
・・・おしらせ・・・
  • 痙攣防止には塩分に加えてマグネシウム(大豆とか)+カリウム(バナナとか)が有効で、錠剤なら数百円から。クエン酸は脂肪燃焼回路に、BCAAは、まあ牛乳や納豆でもいいんだけど、筋肉ケアに大事ですね。

2015年1月19日 (月)

BikeとRunの「動作特性」から考える、トライアスリートへのBikeレース効果

2つ前に書いた「トライアスリートは、フルマラソンしないほうがいい」 は過去最高量の反響。ページ閲覧数が2日続けて2,400を超えた。そこでの視点は「過労」だ。レースは極限まで追い込むものだけど、だからといって普段から追い込み続けてはいけない。かわりに僕が重視しているのは、フレッシュな状態で良質な動作を保ち、素早く回復させて、トレーニング頻度を上げること。この状態に対して、身体は確実に「適応」を進めてくれる。

マラソンを走る/走らない、という結論は個人の自由というもので、どっちだって良いのだ。僕が書きたかったのは、その奥にある考え方のほうだ。

さて今回の視点は、トライアスリートとしての「成長戦略」。ここで戦略とは、選択と集中であると定義する。すると、「平均的な日本人トライアスリート」にとって、Bikeレース出場が最も戦略的ではないだろうか。このことを、それぞれの競技動作の特性を踏まえて、考えてみよう。

 

<1.トライアスロンRunは「ゆっくり効率」を競う>

長距離トライアスロンのRunは、世界トップでも1km4分のスロー走行。最小限の体力でギリギリ維持可能な「ゆっくりラン」の勝負だ。マラソンが1km2:50に突入する時代に、4割も遅い。

そのブレーキ要素の多くはBikeに由来する。Bikeの筋疲労によりRun動作が変わる。エネルギー生産力も落ちてるので、走行速度はさらに落ちる。速度が変われば荷重も変わり、動作がさらに変わる。それが「トライアスロンRunは、Runとは別競技」と言われる所以。

ブレーキ4割増し分に占める上記バイク要素を7割と仮定するならば計28%相当(乱暴な計算だ…)、すなわち、「トライアスロンRunの2-3割は、Bike力である」くらいかもね?

だから、Runを戦略的に強化するのなら、レースならデュアスロン、練習なら連続させるブリック錬が、第一の手段となる。Run単独レースは、その戦略手段を補完する程度の位置づけではないだろうか。

 

<2.Bikeは「高速」が基本>

世界トップレベルでは(アマチュアであっても)、180kmでも「高速走行」が基本だ。多くの日本人トライアスリートはプロ・アマ問わず、ここで世界と一番差を付けられている。
 
Bikeでは、短距離でも長距離でも、動作は共通する。常に体重が道具によって支えられてるし、速度差もギア選択で打ち消されるためだ。またトライアスロンでは、前競技=Swim疲労の影響度は、Runとくらべて圧倒的に少ない。
だから、Runのような、「トライアスロンと単独競技の違い」も、「レース速度による動作の違い」も、はるかに少ないはず。よって、短距離のスピード練習には、長距離にも即通用する効果があると僕は思っている。(実際、1日50kmを超える練習は殆どしない)
根本的な違いは、エネルギー生産回路の違いくらい。それは後からトレーニングで適応させていけばいい。
 
つまり、「スピードを上げられるのならば、なんでもいい」のがBikeだ。
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<3.レースにしかない体験>
レースには、特別に設定された環境がある。道路を専用使用できるBikeレースでは特にそうだ。レース中でしか出来ない走りができる。その中で見えるもの、感じるものを探ってみるといい。
 
レース数が少ないし、移動も面倒だけど、競輪からの補助金(年々減っているけど)がある場合もあり、トライアスロンよりははるかに安く出れる。メーカーからの賞品も多いし。
 
冬はBikeレースは少なく、あってもクリテリウムのような短く特殊なものだけど、そこで集団走にびびったり、ちぎれる経験だけでも、十分な効果があるだろう。
 
 
<4.僕の経験>
ついでに書いておく。2年目の2011年秋に出たBikeレースのスプリント経験を通じ、僕のトライアスロン全体の競技力は、がくんとレベルアップした。
 
 
推定1分30秒ほどのアタック対応(=Vo2Max域) で勝ち残り、推定10秒ほどのスプリント(=クレアチンリン酸回路域)に絡む。そこには、レースという特殊な状況だからこそ踏み入れることができた極限域があった。
 
その中で、全身の筋力を余さず使い切る、という動作が始めてわかった。その時に高額レース用ホイール「BORA」はかつて見せなかった挙動を示した。バネがぱちーーーんと弾けて車体を押し出し始めたのだ。しかも、ペダルを回すたびに。そうして追いつき抜かす相手との速度差は圧倒的だった。追いついた先頭2名は、そのレベルでの動作感覚をわかっていた。濃密な数秒間で勝負は決着した。
 
そこで得た感覚は強烈だった。冬の終わり頃からトレーニングを再開した時に、その記憶を呼び起こし、再現するつもりでトレーニングを積んだら、2012年はBike中に総合2位にまで上がれたレースが3つ。この位置まで上がると、見える景色が違う。それが僕のセルフイメージというか、「ごく自然に目標設定されるレベル」をハネ上げた。てゆうか、「僕には総合優勝できる実力がある」とアタリマエのように思うことができた。翌2013年以降の成績は、その延長にある。
 
 
さあ、あなたに必要な成長戦略とは何だろうか?
 
 

2014年12月 2日 (火)

【動作原理】 BikeとRunに共通する「テコの原理」仮説

2つ前にも書いた「動作原理」とは、一体なんだろうか?

客観的には、Runは「重力」、Bikeは「骨格筋の作用」、 Swimなら「流体力学」が軸となるだろう。ただそれらは感覚によってしか捉えられないもの、人それぞれに違うもの。だから僕らにできるのは、いろいろな局面でのヒントを、断片として集めることだけ。それを練習で試し、自分なりの感覚を掴んでゆくわけだ。

そんな情報=断片ヒントの収集にFacebookは良い。相手の人物像が見えるので、「どうゆう経験と立場からそう言っているのか」、が明快だから。
とくにコーチ系の方々が断片的に上げる言葉。もちろんプロである彼らは全てを無料で書くことはないが、むしろその方が、自分なりに考えるきっかけになる。一方で、初心者なりの取り組みも「へー、そう捉えるのね」と発見があるし。(ちなみに現役プロ選手には僕は情報を期待していない。彼らの興味は競技成績に集中しているように見受けられる)
それは、匿名ネット掲示板の対極にあるもの。プレイヤーとしてスポーツに参加する人達は、それぞれの実力や立場が違うから、実名度の高いコミュニティほど栄えるだろう。観客として見る「芸能としてのスポーツ」の場合には匿名掲示板のが気楽に言いたいことを言ってるおもしろみもあったりするのだろうけど。
特にトライアスロン界のFacebook普及率は高く、効率的に情報収集できる。僕もこのブログに上げてる話はFacebookの1〜2割な感じだし。嫌いな人も、幽霊会員を登録して情報収集する価値があると思う。
 
で本題。竹谷賢二さんのFacebook投稿とコメントも、最近のヒントの1つ。
竹谷さんの発信をまとめると、
  • バイクとランでは、「骨盤と臀筋(おしり)を、どちらの側から固定するか」という方向性が逆
  • バイクでは、骨盤がサドルに固定されるので、臀筋がモモを動かす
  • ランでは、接地した脚が地面に固定されるので、臀筋が骨盤を前に押し出す
  • 共通するのは、動かない側があるから、動く側があること
なるほど。
考えを整理するために僕もコメントさせてもらいながら(=書くか話すかしないと考えは深まらない)、「一方を動かすためには、他方を固定しないといけない」という原理が馴染んでくる。
 
そういえば似たようなことは僕も以前『【理論】「4スタンス」の裏の仕組みと、自転車/水泳への応用可能性 』という記事で書いていた。
「関節を、交互に『支点』と『遊点』として機能する」ということだ(難しい表現をしてたなあ…)
 
そうしてるうちに思いついたのが、「バイク動作での骨盤」のような、動作における固定点とは、「テコの原理」の支点のようなもの、ということ。そう捉えることで理解が深まる動作感覚が幾つかあるなあと思った。
 
そもそも人体においてテコの原理が成立するためには、人体そのものが一枚の板であることが必要。つまり体全体を1枚の板バネとみなすということ。肩から足までの、漢字の「人」の形をした二股の板バネだ。
 
その板のどこか1点を固めて「支点」とする。そして、「力点」に入力/Inputすると、その反対側の「動点」で、増幅された推進力/Output として発揮される。
 
そのRunやBikeでの具体的・応用的な動作方法についてのアイデアの断片を、僕は幾つか持っている。次回にでも改めて書こう。それまでは、LIMINA最新号でも読んでおくか それとも、 Amazon冬のセール情報でも眺めておこうか、笑。

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『覚醒せよ、わが身体。〜トライアスリートのエスノグラフィー』

  • 初著作 2017年9月発売

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