アイアンマンKONA'16、直前にサーベロP5Xが発表され、計4種の異型バイクが投入されて注目されていたけど、主役は人間、という(当然の)結論が今年の結果だったといえる。(来年はまた別だが)。空力的にも重要なのは、まずもってライダーの姿勢。そしてレース結果は、その姿勢を作りながらパワー出力を上げてゆく、ライダー自身のものだ。
最新マシン、パーツに心躍るのは良いことだけど、もしも目的が「速くなること」なら、まっさきに見直すべきは練習環境であるべきだ。どんな最新器材でも時間が経てば陳腐化・劣化するが、練習環境とそこで磨いた技術の価値なら高め続けることができる。
例えば、東京近辺なら、湘南の134号線(箱根3-4&7-8区)の海岸線、相模原あたりの丘陵エリアなら、家を出てすぐに良質なトレーニングに入ることができる。愛知県幸田町の実家も、家を出て5分で三河湾スカイラインや幡豆農道(群馬のサーキットに似ててクルマのほとんど走らない〜じゃ何故つくった?てツッコミはおいといて〜良質なテクニカルコース)のアップダウンを出ることができる。そうゆうとこなら、ただただ走っていればいい。
僕が藤沢にいたのは2009.05-2011.05の2年間、引地川沿いに10分で134号線に(そしてライフガード常駐の海に)出ることができる最高の環境に育てられたのは間違いない。
家を出て20分以内(=アップ&ダウン時間)にそうゆう環境に入れないのなら、ローラーの室内練習を検討したほうがいい。練習場への往復に1時間以上かかるならその時間はジャンク・トレーニングで、プールかブリックランに回した方が速くなる。
<僕は固定ローラー派です>
ローラーは、三本か固定か、という議論があるのだが、僕の結論を先にいえば、固定ローラーが良い。2009年末に3万円くらいで買ったELITEのを使っている。パワー値もシミュレーターもないローテクな固定だけど、質実剛健、だから良い。それがゆえに、自分の身体との対話ができるから。
(図書館が放棄した大型本を積んでフォーク置いてます。水平器で位置確認)
<固定ローラーの優位性>
人気ブログ「ITU技術者ロードバイク日記」2015/03記事 「固定や三本ローラーを使った人達の体験談から見えた「違い」とは」 に両者が体験的に比較されている。文中、「トライアスリートと固定ローラー」の項のH・M氏とは我らがハッタリマスユキ氏であります。ここから引用:
長時間同じ姿勢で一定出力でいかにエコノミーに走るかが問われる。
これが第一の理由。レース想定錬として、レース時間の1/3以上、僕ならショートなら最低20分間、ロングなら100分間は、脚を止めずに回し続ける練習が必須。日本でそうゆう練習ができる場所は限られる。
固定なら、そうゆう長時間の練習がしやすい。 三本で2時間回し続けようとすると、バランス確保に意識を回さざるをえないのではないだろうか?(やったことないので知らないけど)
そして最大のメリットは:
固定ローラーは「安定」したトレーニングマシン 〜 「筋肉」を注意深く観察するには持ってこいの装置
実走中に感じられない細かな点を固定ローラーならば安心して確認することが出来る。後輪が「固定」されている 〜 「安定」を作り出すことにより身体と対話することが容易になる。
BGフィットに代表されるポジションの最適化の際も固定ローラーを用い(当たり前だが)細かなミリ単位での調整を施していく。固定ローラーは 〜 非常に細かな身体の情報をキャッチできる道具といえるだろう。
そう、車体を安定させることにより「身体との対話」が可能になることが固定ローラーの本質的な役割。よくいわれる「負荷を上げられる」のは二番目だと思う。
速度(=パワー値と同じ役割)、回転、心拍(さいきん使ってないけど)の数字をみながら、さらにチェーン音を聞き、何をするとどうなるか、という関係を考える。これは日本の公道ではまず無理。
チェーン音は、ペダリング効率を示す最高のサインだと思う。パイオニアの分析値よりも実戦的ではないだろうか。音楽でかき消すなんてもったいない。
※物理の大基本として加減速は無駄(スイムも同様)、ゆえにチェーン音は安定しているべき
音楽きかない、何か映像見ないと飽きるのは、意識の向け方の問題ではないだろうか。本当の固定ローラー練習には、2時間走り続けても飽きることのない豊富な情報が溢れている。なぜ気づけていないのか?を問い直してみるといい。
逆にそれができないのなら、負荷付き三本ローラーのほうがまだましだろう。あくまでも「それよりは悪くない」という意味で。
※以上、レベルを1ランク以上上げるために、なにか、を必要とする方に向けて書いてます。既に技術があり、目標達成のためにあとは練習するだけ、というレベルの方なら、なんでも良いです。
<三本ローラーのデメリット>
三本には特有のデメリットもあると思う。実走では考える必要がない「バランスをとる」という点に気を使うことだ。これは「練習のための技術」であって、レースでのパフォーマンスにつながらない。
三本でバランスを取る過程で磨かれる技術もあるだろうけど、その程度のことは固定ローラーでも、意識次第で、十分にカバーできる。「三本でないと練習できません」という場合、固定の乗り方を見直したほうがいい。
使用実績でいえば、日本では三本ローラーを奨める声が強い気がするけど、日本人が全く勝負させてもらってない欧米の強豪は、プロアマ問わず、固定ローラーが基本だと思う。にもかかわらず日本で三本が人気な理由は、プロショップ経営者に競輪出身者が多いからでは?という気もする。シングルギア&フリーなしの競輪では回転技術が勝負で、それを鍛えるのには三本しかない。
逆にいえば、競輪orトラック競技でなければ、三本である必然性はないと考える。
<GROWTACの優位性>
こうゆうのは結局、自分の感覚に合うかどうかなので、どんな製品であれ、体験して、これだ!と思ったものを選ぶのがベスト。Zwiftのようなギミックがあったほうが速くなれる人も、余計な情報は要らない人も(=僕)、いる。
今なら僕は、「グロータック(GROWTAC)GT-Roller」を買う。理由はただ1つ、試乗した感触が完璧だったから。 他より高いけど、費用対効果でいえば、自転車競技においてこれほどお買い得な買い物はないと思う。フレームなりホイールのグレードを1つ落とせば、あるいはロング大会の遠征を1つ飛ばせば、買える。
詳しく知りたい方には、「ITU技術者ロードバイク日記」2016/10記事 「GT-Roller Flex 3 インプレッション 優れた設計思想を備えた本格ローラー」 も一読を。文中引用される設計思想:
GROWTACが考える「自転車との一体感」とは、トレーナー上で”全身の筋肉と自転車”を調和させ、効率的な推進力を得ることが出来ること (結果として、実走でそのトレーニング効果を発揮できること)
この点、その思想どおりに実装されていることが、乗ってみればわかるのではないだろうか。アレコレ読むよりも、会社サイトに 試乗可能店舗の一覧 があるので、自分のバイクを持ち込んでみるといい。僕は成城のBEX-ISOYAさんでお店のバイクをスニーカーでベタ踏みしただけだが、十分にバランス感覚の良さがわかった。
(ちなみに同ブログ、英文記事も用意してるところがおもしろい。たしかにグローバル展開するべき製品。そしてブロガーもグローバル展開すべき時代?)
<固定の注意点>
普通の固定ローラーは、固定するエンド付近のカーボンフレームを痛めるリスクがある。僕は基本は退役したロードバイクを使い、レース直前期だけレース車も使う。
このリスクが、GROWTACでは低いのも大きなメリット。フォークを固定するのだが、動きを吸収する構造なので、TTポジションで動かす限り、フォークを痛めるリスクは少ないと思われる。
<僕の練習法>
成功例は2013KONA前のFacebook記事:
https://www.facebook.com/Masuyuki.HATTA/posts/10200601659619621
本番2週前くらいに、ローラー130分の後でラン20km走を平均3:57/km。今読み返すと誰の数字なんだか感が。。30℃超の室内で、家庭用小型扇風機2台で冷却しながら。
スピードはレース想定域(この数字は自分なりに把握する必要がある)に維持したまま、ケイデンス60から10分ごとにシフトを軽くしている。重たいギアは筋肉との対話に向く。こうすれば最適ケイデンスも探り当てやすい。僕は遅筋比率が高いせいか、72以上、せいぜい80まで、という低ケイデンス派だ。この問題に絶対解はない。
その日の心拍は145からなかなか上がらず、110分過ぎてようやく150超え。そうゆう状況もレース実戦に近い。2015宮古前は(冬なのに)こうゆう練習をサボった結果がアレだった。
ローラーの役割がレースシミュレーション走であるということは、そこでできないことを実走では補完すればいい。家から15分で出れる直線3kmコースを往復して、平均40kmhオーバー目標のインターバル〜レペティション的な走りで、現実に必要な感覚と筋力を作る。2013年9月にこの平均値(一往復分)はアルミの練習ホイールで44kmhまで上がった。
なお、ポジション変更は、ローラーでも実走でも同様にほぼ毎回行う。ローラーでは感覚を上げるため、実走では実戦仕様へのフィッティングのため、目的が違うけど。
<ローラーは飽きる、という方へ>
134号線沿いにでも引っ越してはいかがでしょうか。はい次の質問?
似た仕組みなのがミノウラの540らしい(実物を知らないので紹介のみ)
疲労回復には、たぶんこれが最強
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