「動作の言語化」が長距離レース終盤を救う
/ 終盤はキツい、しかし・・・
マラソンもトライアスロンも、長距離スポーツでは、終盤が最もキツい。過酷、と表現される時、多くはその状態(だけ)を指している。だから、その対応は重要なはずだ。
でも僕は、トライアスロンで最もキツいラン終盤用の練習はしてこなかった。ショートのRun10km用には1-2kmインターバルを計6kmが主で(その量の適切さを6月のDave Scott 講演で知ることになる:下記リンク参照)、アイアンマンのRun42kmに向けても30km走を1回しただけだ。
なぜなら、レース終盤のキツさは、練習で再現することが難しい。再現できなくもないが無理があり、その後の練習の質を落として、トータルで弱くなる。
大事なことなので言い換えておく。レース終盤のキツさを練習で再現しすぎると本番に弱くなる ことがある。少なからずね。
これは2018年5月のブログで書いたこと。6月に来日したリビングレジェンド Dave Scott も語っていた。
同様の考えをトライアスロン開始時から知ることができた僕は、成果のレベルを上げながら確信を深め、最終的に、自分に到達できるであろう最も高い目標をいくつか達成することができた。(※お台場のエリート日本選手権とか、世界選手権エイジ表彰台とかは、達成していないが)
その理由を改めて考えると、
- 動作の言語化
- 筋力&回復力
だと思う。
2つめは前から言っていたし、上記ブログにも書いたので、何?て方はリンク先およみください。
ただ、「言葉」という視点は、いまさら気が付いた。でも後付けの理屈ではなくて、実際、早い時期からレースで実践してきたことだ。僕のトライアスロン初期(2010〜2012年ごろ)のブログやFacebook、さらにそこでの表現力の成長を知っている方々には、納得いただける話かなと思う。
// 言語化とは
それは、自分なりの高効率動作を、日常的に、言語表現しておくこと。
そしてレース終盤のキツさの中で、
「このように身体を動かし続ける」
と言語化したことを、確信をもって、脳内リピートする。
/// レース終盤のキツさの正体
このことに思い至ったきっかけは、Twitterでの商社マン9時間台アイアンマンさんとの会話。彼の仮説として、精神=より正確には脳の認識=がラン後半のダウンを生むのでは?ということ。このツイートね
Ironmanのランで必ず減速する理由について考えてみた。
現段階の仮説ベースではこんな感じ。
✔︎ペースは感覚である程度わかる
✔︎減速の感覚が出始める
✔︎時計で減速してないか確認したくなる
✔︎減速を時計で確認
✔︎脳が限界だと反応
✔︎どんどんスピードが落ちる— Osaka 小坂@Ironman『9時間台』 (@HOinTRI) 2018年8月20日
僕は精神力を排して考えるタイプなんだけど、仮説として、おもしろいなあと思った。
まずトライアスロン終盤の疲労の正体を確認しておこう:
- 2種目で疲弊した身体で、ランを開始し
- しかもその終盤、あらゆる面で身体性能が低下
- すると、「動作の非効率化」がはじまり
- それは複利の借金の金利のようなもので
- 非効率動作が、体力のさらなる疲弊を招く
- 結果、加速度的に疲労が急上昇する
以上は、身体性能と動作効率の視点からの、いわば「レーシングマシン」としての理解だ。
ただこの過程を「脳」という視点から改めてとらえなおすと:
- 脳が、この急激なストレス急上昇に耐えられなくなる
- 壊れる前の緊急セーフガードが発動されて、動きを抑制しにいく
- だがそれは普段しない動作なので、非効率なものとなりがち
最後、体が終了した後に動き続けるのは、私の場合、動作の言語化が効いてます。この動きなら効率的なはずである、という思い込みは少なくとも効いてます。これブログとか書いててよかったと思うこと。
— 八田益之『トライアスリートのエスノグラフィー』重版発売中 (@HATTA_Masuyukey) 2018年8月23日
体力は使い切ってるわけだから、あとはアタマしか残っていないのだから、そうするほかないわけだが。ただ、酸素の足りない限界手前の脳がイキナリ斬新かつ優秀な仕事をしてくれるはずもなく、日頃から用意しておかねばならない。それを僕はたしかにしてきたな。
KONA2013は好例で、『覚醒せよ、わが身体。 トライアスリートのエスノグラフィー』 p222以降で書いたのは、そんな現象です。
※本はAmazonには入荷がないので、書店注文か、もしくは八田にFacebookでメッセージください。送料込1,944円でサイン入りお送りしますよ。(少々お時間いただきますが)
たまに、わざわざAmazonde新品同様の価格で中古を買われる方がいらっしゃるようですが、まったくお勧めするものではありません。僕が出品しているのは、悪質業者への牽制目的だけです。抜かれる手数料も高いし、売りたくないのです。(でも注文がきたら規約上、私の直送を勧めるわけにもいかないし、面倒なのもあって、出しますが)
「本はアマゾン」という認識は、そろそろ捨てられていいころかな、と思ってます。まあ、新刊ベストセラーはその限りではありませんが。
CM: 「幸福のありかた」も言語化しよう
着々席が埋まっています。講師三戸さんのメディア登場も続々!
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コメント
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> 「ツライ」と伝えた時点から一層スピードが落ちました。
なるほど。。
エイドで歩いて水もらうのは本当にオススメなんですが、ゴール前でも水分を口にはつけて口内を濡らすくらいはします。それで思わず水を飲もうとするくらいだと、少しは飲んだほうがいいかな。
投稿: 筆者です | 2018年9月 1日 (土) 18:03
八田様 いつもブログより勉強させて頂いております。
先日珠洲ミドル参加してきました。
台風の影響でスイムが中止になったのもありバイクに力が入り過ぎ、気温が高い中のランが地獄でした。
たしかに練習ではレース終盤の辛さの再現は無理だと思います。
脚が動かなくなった時助けになったのがタイトルの「動作の言語化」でした。
胸を起点にして交互に突き出す、そうすれば自然と脚と腕が振り出される。ってな感じで。
あと、脳の作用も感じました。
沿道で応援してくれていた知り合いに「ツライ」と伝えた時点から一層スピードが落ちました。
タイトル違いになってしまうのですが、八田様に習って試してみた事も多々。
クエン酸と塩を濃いめに配合したゲキマズドリンク。(低ナトリウム血症防止)
水分補給は喉が渇いた時に行う。
掛水専用ボトル車載。
ラン残り5km地点での水分補給はしなかった。
ウォーキングブレークでセカセカエイド対策。
などなど。
私にはどれも良好だったと思います。
ありがとうございました!
投稿: しゅうぞう | 2018年8月28日 (火) 16:48