【図解物理学】 ランニングの上下動はパワー源 〜大迫傑ver.
手軽に計測できるようになったランニング上下動データだけど、少なければ良いってもんじゃないってことを、今回は奥井識仁医師の「重力の10%をランニングのものにせよ」 との12/12Facebook投稿をベースに、ハッタリくんクオリティで解説してみよう。
モデルはNIKE公式動画の大迫傑選手、3−5秒あたりだ。
一歩を4枚に(3つめを後から追加して補正してないので背景色が微妙に違う)
パワポで一枚に纏めた:
先に結論を書いておこう。
- 3つめまでは重力による「沈み込みのエネルギー」が効いている
- 上下動が一切ない走りは、このエネルギーを活かすことができない
この仕組みを解説するのが、2007年発表の元論文 "Runners do not push off the ground but fall forwards via a gravitational torque"
東大医学部出身の奥井医師が難しいという説明、文系人間の僕はしっかり読んでなくて、間違いあればご指摘いただきたい。以下は僕なりのざっくり理解だ。
<しくみ>
まず、「長さ165cm重さ62kgの丸太」をイメージしてみよう。数字は僕の身長体重なので、アナタので置き換えてね。これを、後ろから前に倒す時、何がおきるか?
その物理学的解説がこの図:(大迫写真とは左右逆)
- 母指球(ball of the foot)を回転軸(axis of rotation)として
- 身体の重心(centre of mass)に重力(gravitational force)がかかり
- 前転力(torque)として発揮される
脚とは支点であり支柱であるということ。その支柱の上を、重心が追い越してゆく。大迫写真では1-2枚目。
この追い越しの瞬間に、重心は下方向に向かう。沈み込みのエネルギーだ。このベクトルと、前方向への慣性力が合成されれば、前方向への力の総量は増える。これは蹴る直前のタイミングで、この時、重心位置は最低レベルだろう。
その力を活かしているのが、大迫2-3枚目。
そして4枚目でこれら力を受け止め、キック動作により、重心を再び上に投げ上げている。さすがは大迫選手、高い。この高さ=上下動の大きさが、次の一歩のエネルギー源となるわけだ。
言い換えれば、上下動ゼロのランニングフォームは、このパワーを使えていない非効率な走りというわけだ。
<ピッチとストライドの関係>
投擲競技では、遠くに飛ばそうとすれば、ある程度の角度をつけて高く飛ばす必要がある。「一歩」の原理は同じこと。
ただランニングでは、歩数を増やす、という手法が追加される。低く飛ぶことで、ストライドは減るが、上下動を減らす、というアプローチだ。これには一定の効果はあるのだが、ピッチを増やすとは、今度は「左右(水平方向)の回転動作の慣性力」がロスになってゆく。(これ説明必要?)そしてこの水平ロスは上下動と違ってパワーを産まない純粋なロスとなる。
結果、ほどほどな最適レベルに落ち着くというわけだ。
<上下動がロスになる場合>
念のため、ここでの説明は「上下動データとかに意味がない」とは一切言っていないので。当然ながら、推進力につながらない過剰な上下動はありうる。たとえば膝が曲がりすぎるなど。そこを突き止める目的なら活用余地があるだろう。
実際、それを活かしているよと言ってる方は豊富な知識と考察力をお持ちであって、データだけに頼った改善はしていない場合が多いと思う。
まず必要なのは、原理を理解すること。そして考える。データはその無数にある手がかりの1つだ。
<ちなみにフォアフット走法との関係>
大迫選手の4枚目は、フォアフット着地によるアキレス腱の反発力でジャンプしてゆくイメージだろう。
僕だとせいぜい1km3:35くらいがスイートスポット(トライアスロンのランパート10km36分ほどの場合)で、この走りだとジャンプ感はなく、ただ「振り子イメージ」の慣性力を連続させてると思う。
ちなみに上記1、「母指球(ball of the foot)を回転軸(axis of rotation)とする」との点は、フォアフット走法の物理学的な原理の1つを示してもいそうだ。回転軸上にダイレクト着地することは、たとえば自転車のタイヤでいえば、路面接地面積を減らす=路面摩擦抵抗を減らすような効果があるのかもしれない。(まあそれよりも生理学的な効果が良くも悪くも大きいのだろうけど)
<練習方法>
緩い下りを走ろう。沈み込みの力をより強く感じることができるから。
着地衝撃を和らげるために、芝生がベスト。まさに砧公園。
ランニングとは結局、「着地点と重心」との相互作用。
・・・
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