新著「はじめに」解説 〜ついに明かされるハッタリくんの正体!?
「三ヶ月後より処遇を最低ランクに改訂させていただきます。ただし、それまでに相応の成果を出された場合には改めて検討しますが。」
つまりは執行猶予付きのリストラ通告だ。入社時に期待された成果を出せないままに一年ほどを過ぎた頃、大きな経済状況の悪化があり、収益管理のプレッシャーもきつくなっていた。だが、刃が私の首に突きつけられるとは。
逃げようか。でも転職カードは二度切ってこれで二連敗、職務経歴書に傷をつけている。しかも転職市場の限界とされる三十五歳は目前だ。私は、ここで終わるのか?
思い返すと、特別さに憧れ入学した大学では、周りの優秀さに圧倒され、資格試験に新たな特別さを求めて、失敗した。なんとか外資系IT企業に就職できたが、やっぱりこんな仕事したくなかったと腐り始めた。成果を出せるようになり居心地もよくなってゆくと、今度は華やかな活躍を始めるかつての友人たちが気になり始めた。大きなチャレンジを求めて、ベンチャー企業に転職した。ITベンチャーによるプロ球団などの買収劇が世を騒がせていたころだ。入社後の経営悪化、無理な役割への期待、言い訳はあるにせよ、次第に行き詰まりを感じていった。こんな時は転職カードだ、と別のベンチャーに移った。だが切ったつもりのカードは空振りに終わろうとしている。
自分なりに歩んできたつもりのビジネスパーソンとしてのキャリアは、たんなる迷走だったのか。今、逃亡への足場すらぐらついている。いや、そもそも私は何をしたいのか?こう自問したとき、本音の答えが見つからない。成果以前に、目標を、いや、もっと本質的なものを見失っている。頼れるのはこの身体だけだ、そんな気がした。身体を動かしている時だけは、前へと進めている自分自身を感じられた。私がトライアスロンに出会ったのは、そんなときだった。
(『覚醒せよ、わが身体。〜トライアスリートのエスノグラフィー』 冒頭「はじめに」より引用)
その探求のため、筆者(八田)は自ら競技者として現場に入り、トライアスリートへの聞き取りを重ねるフィールドワークを行った。筆者は六年間にわたり国内外の計三〇を超えるトライアスロン大会に出場し、後半の三年以上は社会学の視点からの参与観察を行っている。 (同、引用)
こうして得られた市民トライアスロン独自の現場感覚に、学術理論とを対話させるエスノグラフィーの手法により、その内的世界を浮かび上がらせていく。本書がテーマとする身体、精神、その現代社会との関係性とは、文字や数値の分析によるシンプルな因果関係として表現しきれるものではないためだ。それは、自らの身体を賭けて入り込み、その身体感覚を通じた全体的な考察により、はじめて迫ることができる。 (同)
- 自ら研究対象としての現場に入り込み
- 自分だけの体験を獲得して
- 学界で蓄積された学術理論と、経験とを対話させる
読者のみなさまも、一問一答のような正解を探すのではなく、本書全体から感じられるものの中に、自分なりの、自分だけの解を探っていただければと思う。 (同)
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