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2017年9月の2件の記事

2017年9月13日 (水)

Apple Watch3の発表、そしてスポーツ時計の3条件について

昨夜発表のApple Watch3、昔のSFみたいな腕時計通話できるのはすごいなあ。同時にスポーツ機能も進んでいて、NIKEブランドのスポーツ対応の筐体&ストラップ も出ている。こうした動きはスポーツGPS各社(Garmin, Polar, Suunto)(+seikoで複数形)も警戒してるようだ。
 
ただ、僕が思うに、アスリート目線で必要なスポーツ時計の条件とは3つだけだ。
  1. GPS最高精度での連続稼動時間
  2. 胸着用の心拍ストラップ 
  3. 数個の重要指標だけを直感的に見られる操作性(心拍とその分布・速度・距離・ケイデンスorピッチ・トータル疲労度的なもの=SUUNTOだとPTE)
それ以外ほぼ全て不要だと思う。
音楽も通信通話も、少なくとも日本の都市部でのトレーニング中には危険でしかないし、着信を気にしているような練習で速くなれるとは、あるいはケガ故障を防げるとは、どうにも思えない。
まあ、お昼休み1時間をたっぷり使って流行りの皇居ランってものをやってみよう、帰宅時に少し前の駅で降りて走ってみよう、てレベルの初心者さんを楽しませるにはいいと思う。
 
心拍の手首計測機能は、現時点では初心者向け玩具、て評価で確定だよね。シリアスアスリートのみなさんならば異論はないですよね。ちょっと前の研究では、安静時は問題ないが、運動はじめると簡単に毎分20−40拍くらいの誤差が出る。トレーニングでこの誤差は、見ないほうがまだマシだ。
 
で、この3条件をApple Watch3でみると、
  1. GPSを使用した屋外ワークアウトで最大5時間 (GPS精度と更新タイミング不明)
  2. 外部心拍モニターとBluetooth接続はできるらしい
  3. スポーツ分析ウェブサービスのSTRAVAなどが(2向けに)画面アプリを発表している
と考えると、結局、GPS精度とその持続時間が、ほぼ唯一にして最大の問題ということになる。
 
フルマラソンだけ、4時間で走れる、というランナーなら、HRストラップを買い、Stravaとかメインで、通話機能なしのを使う、という手はありうるかなと思う。まあいずれ勇気ある人柱さんたちが表れることだろう。
 
この充電性能とは二律背反で、時間はサイズ&重さに比例する。エリート技術者たちが最先端技術を投入してる電気自動車だって、唯一まともな走行距離を確保できてるのは大きくて高いテスラだけだ。(日産リーフの新型は、真夏にエアコン効かせながら実際どれだけ走れるのだろう?)
本当に軽量化したいのなら、GPS機能のないシンプルなスポーツ時計にすればいいと思う。
 
なお、日本のGPS衛星「みちびき」対応については誤解、もっとはっきりいえば過大評価が目立つ。以前のFacebook投稿ご参照:
 
<結論>
 
結局のところ、Apple Watch独自の要素は、少なくとも目的がレース成績なのであれば無効てことになり、ただ最新の玩具で遊べるって程度に落ち着くだろう。そのうちポケモンGOの対応アプリとか出てきたりするかもなので、まあ、この要素を否定するものではないが笑
すると、価格的にも、スポーツ専業メーカーの主要ラインとだいたい同じになってくる。自分に必要な充電時間をどう見るか、がその大きな判断要素だ。
 
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僕のSUUNTO Ambit2sは2014館山大会での捕獲から3年でダルマ化しており、、
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修行し過ぎて腕がもげてしまったこの達磨大師さまはまだまだ現役続行なんですが、、いくらなんでもなんなので、僕は"Spartan Sport" を新たに入手したのでした。手首計測なし&最高GPS精度で10時間持つの。この話はまたいずれ。
SUUNTO最新製品スパルタントレーナーは、手首計測が付きながら、電池が小さいので、3万円台と大幅に安い。この価格差はアップルウォッチ対策もあるだろうが、機能の価値を表すものと見るべきかと思う。電池>>>手首計測、だ。
 
 
<手首HR計測タイプの場合>
 
速くなるための心拍トレーニングなら、Apple Watchを含め、手首計測機能はないものと思って、別にBluetooth規格のHRベルトを買った方がいい。SUUNTOの最新「スマートベルト」の装着性はかなり良い。安いのはストレスが残り、避けた方がいい。
 

2017年9月10日 (日)

新著「はじめに」解説 〜ついに明かされるハッタリくんの正体!?

「三ヶ月後より処遇を最低ランクに改訂させていただきます。ただし、それまでに相応の成果を出された場合には改めて検討しますが。」

つまりは執行猶予付きのリストラ通告だ。入社時に期待された成果を出せないままに一年ほどを過ぎた頃、大きな経済状況の悪化があり、収益管理のプレッシャーもきつくなっていた。だが、刃が私の首に突きつけられるとは。

逃げようか。でも転職カードは二度切ってこれで二連敗、職務経歴書に傷をつけている。しかも転職市場の限界とされる三十五歳は目前だ。私は、ここで終わるのか?

思い返すと、特別さに憧れ入学した大学では、周りの優秀さに圧倒され、資格試験に新たな特別さを求めて、失敗した。なんとか外資系IT企業に就職できたが、やっぱりこんな仕事したくなかったと腐り始めた。成果を出せるようになり居心地もよくなってゆくと、今度は華やかな活躍を始めるかつての友人たちが気になり始めた。大きなチャレンジを求めて、ベンチャー企業に転職した。ITベンチャーによるプロ球団などの買収劇が世を騒がせていたころだ。入社後の経営悪化、無理な役割への期待、言い訳はあるにせよ、次第に行き詰まりを感じていった。こんな時は転職カードだ、と別のベンチャーに移った。だが切ったつもりのカードは空振りに終わろうとしている。

自分なりに歩んできたつもりのビジネスパーソンとしてのキャリアは、たんなる迷走だったのか。今、逃亡への足場すらぐらついている。いや、そもそも私は何をしたいのか?こう自問したとき、本音の答えが見つからない。成果以前に、目標を、いや、もっと本質的なものを見失っている。頼れるのはこの身体だけだ、そんな気がした。身体を動かしている時だけは、前へと進めている自分自身を感じられた。
 
私がトライアスロンに出会ったのは、そんなときだった。
 
(『覚醒せよ、わが身体。〜トライアスリートのエスノグラフィー』 冒頭「はじめに」より引用)
 
・・・
 
はい、まあだいたいそんなかんじで、ハッタリくんはトライアスロン始めたのでしたー。
個人的体験、といえばそうなんですが、ここに表れる「特別な自分」とは、現代社会学の最重要キーワードの1つであり、そこには、現代先進国の典型的な姿が表れてもいるのかもしれない。
それが、この本が社会学書として誕生した、そもそもの出発点です。
 
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その探求のため、筆者(八田)は自ら競技者として現場に入り、トライアスリートへの聞き取りを重ねるフィールドワークを行った。筆者は六年間にわたり国内外の計三〇を超えるトライアスロン大会に出場し、後半の三年以上は社会学の視点からの参与観察を行っている。 (同、引用)
 
本書執筆プロジェクトは、2012年末頃に始まりました。もう5年も前だー。そこで、2013年以降は、書くことを目的にトライアスロンしてきた面もあったのでした。とかいって、単純に速くなってゆくことが楽しかったのが大きかったのですが。でも、おおもとの目的は常に裏にあって、表現と発信にこだわってきたのもその1つ。
 
こうして得られた市民トライアスロン独自の現場感覚に、学術理論とを対話させるエスノグラフィーの手法により、その内的世界を浮かび上がらせていく。本書がテーマとする身体、精神、その現代社会との関係性とは、文字や数値の分析によるシンプルな因果関係として表現しきれるものではないためだ。それは、自らの身体を賭けて入り込み、その身体感覚を通じた全体的な考察により、はじめて迫ることができる。 (同)
 
サブタイトルにもなっている「エスノグラフィー」という社会学(および文化人類学・経営学等々の文系学問)の手法とは、
  1. 自ら研究対象としての現場に入り込み
  2. 自分だけの体験を獲得して
  3. 学界で蓄積された学術理論と、経験とを対話させる
もの。つまり、個人的経験という主観を、専門家たちの議論によって磨かれた学術理論によって、客観化するもの。これは僕の師であり、共著者である法政の田中研之輔准教授の考えに即してます。
 
読者のみなさまも、一問一答のような正解を探すのではなく、本書全体から感じられるものの中に、自分なりの、自分だけの解を探っていただければと思う。 (同)
 
情報社会の昨今、世間では、「一問一答」的な単純な情報が溢れておりますな。書店に並ぶ本も、こうすればこうなる、とインスタントな効果を強調するものが多い。そうでないと、出版社さんは企画を通せない現実もあるんだろうな。
 
でも、本当に大事なことが、そんな単純なインスタント情報から得られるはずがないと僕は思うのです。自分で感じ、考えた結果としての、自分なりの体験でなければ、大事なものは得られない。スポーツでいえば、十分に速くなることはできません。
 
するとそれは「哲学」へと行き着くだろうと。
 
本書は、読者それぞれにとっての哲学へと導くことを目的に、書いています。
 
・・・
 
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『覚醒せよ、わが身体。〜トライアスリートのエスノグラフィー』

  • 初著作 2017年9月発売

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