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2017年5月 6日 (土)

キプチョゲ2時間切りまであと26秒! NIKE ”Breaking2” プロジェクト

構想4年、僕の初の書店刊行本、『覚醒する身体 ー トライアスリートのエスノグラフィー』(仮題)夏に東京ハーベスト社より発行決まりました。待ってろ世界。
 
さてさて、本日昼にネット中継されたNIKEのフルマラソン2時間切りプロジェクト ”Breaking2” 、ほぼフル視聴。いきなりキプチョゲが2:00:25、2時間切りまで、あと1マイルあたり1秒をきってきた! もうあとは、時間の問題だろう。

 

<シューズ>
ランニング・クリール誌が現地取材している。その情報では、シューズ ”Vaperfry Elite” は「驚くほど軽く、手で曲げたくらいでは曲がらないほど、カーボンファイバーのプレートが硬い構造」だそう。
トップ選手には、アディダスの反発素材よりも、この剛性で攻めるほうが向いてると思う。そして、世の市民ランナーの99%以上は使いこなせないだろう。
またアーチ型のソール形状は、典型的なフォアフット走法での、前側一箇所の反発力で、シュ、と鋭く進ませる。トライアスリート人気の高いNewtonと形状的には似てるようでもあるけど、原理、想定するフォームは違いそうだ。
 
<エアロ効果>
もう一つの秘密兵器が、空力の最大活用。平均時速が20kmを超えるので明らかな効果があるはずだ。
 
ペース設定は電動のテスラ、ルーフに必要以上に巨大なタイム表示板を載せることで、中型トラック並の大きな空気の渦を作る。後方から大きく巻き込む流れに、背中から押されるようなポイントがあるはず。(おそらく、先導車との位置関係は、国際陸連が今後ルールを作ってくると思う。ちなみに自転車レースではたしか35m?とか空けるルール)
 
さらにペースメークのランナーが6人、「1-2-3」のフォーメーションでクサビを作り、空気を切り裂く。何人いるのかなとゼッケンNoを見ると、全員1−3、色だけ違う。色別に3人チームを作っての交代制だ。
チャレンジャーは3人、常にイン側を走るのは一人だけ赤ウェアのキプチョゲ、エース設定だ。大きなフォームが特徴のデシーサが背後につき、さらなるエアロ効果を狙う。(たしか、自転車では後ろについてもらったほうが、抵抗が減る)
結局、ランナーは「1-2-3-2-1」の流線型フォーメーションを作り、エースのキプチョゲを、空力的に最大アシストする。この人的アシストなら公認レースでも可能だ。
 
1つおもいついた、常時追い風のコースを選定する! ハワイ島北西岸の貿易風を受け続けるとか!笑 (※ワンウェイだと非公認だけどコース設計次第で!)

 

 

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<閉鎖コースでのメンタル>
またクルマは同時に正確無比なペースメーカーの役割も果たす。この後ろを走ってる限り何も心配がいらない。
これらあいまって、精神的な負荷も下げる、つまり脳側のエネルギーも削減しているのかもしれない。メンタルの安定性は耐久レースに大事。
 
<キプチョゲ>
2016リオ王者、キプチョゲの安定感はハンパなく、前半は風のごとくスムーズ。負荷感がまったくみえない。
彼の走りは、前後軸でみた時に、後方への動作が大きく力強いと感じた。
上体をすこしだけ前に傾けて、前に倒れこむ位置エネルギーを常備させ、後方への腕振りで制御しながら、脚を大きく後方に投げ出してゆく。
上下動も活かしていて、体重が落ちる位置エネルギーを接地&キックと同期させ、推進力に活かしている。(※上下動がないのが理想の走りではない)
 
25kmまではマイナス1秒。
25km〜35kmにかけ、5kmあたり4秒落ち。やはり90分を過ぎるあたりから、運動の質が変わってゆくのだろう。
35−40kmでさらに10秒ほど。ペースカーとの差も開き、アシストランナーも心配そうに後ろを振り返り声をかけて、苦しそうな現場感が映像からも見える。集音マイクで中継してほしかった!
最後は、軽やかさが失われ、重力に抗いながらもペースを保って、2:00:25。
 
あと1マイルあたり1秒を切ってきた(マラソンは26.2マイル)わけで、初チャレンジにしてこれだけ迫るのは、キプチョゲほぼ最高の結果といえるだろう。世界記録も2分以上を上回り(公認記録ではないが)、みんな嬉しそうだ。
 
 
<大きな一歩>
これで、みんな、いける!と確信を持ったはずだ。
キプチョゲ級の世界トップを3人揃えれば、次のチャレンジにでも2時間突破するだろう。
高速コースでのマラソンでも、できる、と自信を持って突っ込んでくる選手も出てくるはずだ。 
 
運動生理学者が主導し、シューズもそれに合わせて用意されたようだけど、環境をコントロールしきった実験室のようなF1サーキットで実施したのも、このプロジェクトの大きな成功要因だろう。環境って大事だ。
 
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『覚醒せよ、わが身体。〜トライアスリートのエスノグラフィー』

  • 初著作 2017年9月発売

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