トライアスリートの冬マラソン練習法 & 30kmの壁への新対応 〜Reverse Periodization3
前回続き。標準的な「期分け」の逆をゆく手法は、冬春のマラソン出場と噛み合わないようだが、まあ幾らかの修正で対応できるかなとも思う。以下、策を弄してみるとしよう。
もう1つ図を作った。下側の現状ペースのラインから、上の目標ペースを目指すトレーニング戦略には、あえて大別すれば「距離型」=右下 と、「スピード型」=左上の2種類ある。
この図では、マラソン単体(距離軸の3つめ)では現状が1km4:30(Total3:10)、目標が1km4:00(2:48)、ロング・トライアスロンのラン(右のT42km )は現状1km5:00(Total3:31)から目標1km4:30へ、という感じ。まあ数字はなんでもいい。
<「距離型」アプローチ>
マラソンを頑張る方の多くは、なにかしら失敗経験=反省材料をもって取り組んでいると思われ、その大きなものが「後半のスタミナ不足」だろう。その対応として、30km走を繰り返し、42km走などもやってみる。ランニング界での伝統的な実績ある手法であり、これ自体に問題はない。
同様の練習をロングトライアスロン対策で行う場合、基本はバイクのロングライドだろう。その後にラン錬をつなげる「ブリック」錬によって補完する。これも、アタリマエの手法だ。
ただ、制約の多い市民トライアスリートにとって、それらは必ずしもベストであるとは限らない。注意したいのは、
- 時間がかかる (誰にとっても共通)
- 非効率な動作を(どちらかといえば)修正しずらい
- この12が組み合わさると、故障しやすい
<「スピード型」アプローチ>
もう1つがスピード向上からのアプローチだ。これは「Reverse Periodization」とも整合的で、バイクに練習ボリュームを割いており、ランの時間枠はは控えめ、という場合に、練習効果を最大化すると、スピード系に寄っていくと思う。
図のオレンジの流れで、
- スピード向上: 4〜500mが、巡航スピードの最小単位かと思う。時間にして1〜2分
- スピード巡航: 20分以内、数km
- 少し遅く&少し多く: 100分前後だと思う(過去記事に書いている)
- レース本番は緩める: 上記123までと、基本は同じだと思う
という順序。
僕の2013年の初アイアンマン(と同時に初マラソン=公認されないが笑)チャレンジにあわせてみると、
- 2013年、リハビリから基礎ができた後の4月〜8月までのショートレース期間
- 僕の場合は1.に含まれる。1km×6本、2km×3−4本、とかのインターバル系メニュー
- 9月から、15km走(それまでガチ錬でやったことがなかった長距離)から始めて、30km走まで増やす。上記12の走りのまま、少し緩めることで対応
- (レース本番は最初からぶっ飛ばして失敗した泣)
となる。
2015年3月に書いたブログも、これを踏まえたものだ→ 30km走しなくても、ロングレースで勝てると思う
それによる成果報告は幾つか頂いている。その1つ、この1年後、同ブログも参考に、読者のトライアスリートさんが実際にフルマラソン3.5hから一気にサブスリーを達成した記録がこちらだ→ サブ3.5ランナーが、1年でサブ3を達成するためにやった3つの事
このブログ主さんは、9割インターバル、400mや1kmを重視し、30km走は(風邪のせいだが)一度もやらずに、大幅更新サブスリーを実現させている。
<「30kmの壁」への新たな対応>
このスピード型の4つめ、「レース本番は緩める」のが、後半のスタミナ不足に対する最も現実的な方法だ。後半落ちるのは前半飛ばしすぎたから。小学1年生でもわかるアタリマエ過ぎる理屈なのに、なぜ大人になると「走り込み不足だ」とか、余計なことを考え始めるのかな?
まずは基本書を読もう→
前半は抑え過ぎなくらいに抑えまくり、エイドでは歩いて、後半から勝負開始。
前半抑えまくっても、最大スピード(=500m維持できる巡航動作のもの)が上がっていれば、「最大スピード×抑え度」である「レーススピード」を上げることができる。
<まとめ>
- ラン錬は、短時間高強度でスピードを上げ、
- 長距離対応は最大でも100分前後ランに留めておき(※距離ではなく時間基準=世界の主流)
- レース本番では、前半を超サボって入る
- こうして、バイク強化(ローラーによる高強度など)のための時間を確保する
<おしらせ:三浦広司スイム講習会>
会議室の動画分析ゼミ、一回限り:
- 12/11(日)参宮橋青少年会議室18:15〜21:00→ www.facebook.com/events/160289534440174
同ゼミでは「クロールの基本は100m、長距離は緩めていけば対応できる」との考えから
- 1980年代頃からの世界トップ100m選手の泳ぎを、時代を追って、解説('80-ゲインズ、ビオンディ、'90-ポポフ、等々)
- 最新の100mの泳ぎ方の解説(マケボイ等)
- 長距離への応用例(レデッキー、パルトニエリ等々)
- トップトライアスリート(ジョディ・スワロー、ダニエラ・リフ等々)
と順に動画解説するセミナーを開催します。時代の進化により、速いクロールとは何か、階段を登るように理解します。次に階段を降りるように、長距離の競泳トップ→トライアスリート(=ツッコミどころ多)、と説明します。
第二部では、各自の泳ぎの動画について個別解説していきます。動画ない方は12/5に撮影を。
<おしらせ2:「渥美半島の風」>
僕が寄稿した「潮騒のなかの祝祭」も好評いただく愛知県・渥美半島の情報誌「渥美半島の風」創刊号、月2回での発送です。
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