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2016年12月 2日 (金)

最先端理論「リバース・ピリオダイゼーション」2. 冬は高強度バイクトレーニング (&マラソンやっぱり非推奨?)

<最新トレーニング理論>

前回紹介した"Reverse Periodization" はトライアスロンのみならず、マラソン・ウルトラマラソン・自転車ロードレース(沖縄210km級のもの)などなど、4時間を超えるような耐久スポーツ全般に有効なもの。Google検索結果数は "reverse-periodization training" 104,000 件, "reverse-periodization Triathlon"10,200 件。論文も幾つか発表されている。

日本語では、耐久系分野では当ブログが一番乗りっぽいので、最新トレーニング理論といって構わないだろう(少なくとも日本語で書く限りでは・・・最新といっても3年のタイムラグがあるのが日本語の壁) なおFacebookでは少し前から少し話題になっていて、情報鮮度はFacebook=つまりは人的ネットワークがGoogle大王さまを凌駕する。

ボディビル分野では既に日本語の情報が。彼らのトレーニング理論への情熱には驚嘆あるのみ。(ちなみに競技雑誌の名前が「IRONMAN」笑)

英語の情報源を再掲すると、フリール先生は2013年に基本的な考え方をブログに書いている。(僕のKONAレース直後で、僕のは自己流)

2つめの「TrainingPeaks」は、彼が指導し、最近日本でも利用者が増えている。そのブログに、より具体的な方法が説明される。(英語苦手な方へ→  Google翻訳かけたリンク 作ったのでご参照。僕も長い英文の速読でよく翻訳かけてます)
 
まとめれば、こんな図になるだろう。
20161202_152850
説明しよう。
 
冬こそ高強度バイク
シーズンインまでの期間、3種目トータルでの最優先はバイクのFTP向上に置くのが、ほぼ全ての日本人トライアスリートにとって最も有効となるだろう。1時間一定ペースで出せるパワーを上げろってことだ。バイク重視なのは当然で、トライアスロン、特に長距離のは、そうゆう競技だから。
 
そのために、
  • 冬は室内ローラーで高強度トレーニング
  • 春になったら、長時間実走に切り替え
と、リバース理論に沿って組み立てる。 
 
冬〜春のラン
バイク最優先なのだから、ランは減らす。いっぱいトレーニング時間を取れるプロ選手ならまだしも、市民トライアスリートにとって、最優先しないものを捨てるのも戦略のうちだ。
 
具体的に、バイクで「心肺能力」という「汎用要素」を向上できているのだから、ラン練習では「ラン技術」と「ラン用の筋力」という「個別要素」に集中すればいい。それは年間計画の中で、緩めでも構わない。
そして春になり、バイクを短時間高強度から長時間低め強度にシフトすると、強度の点から、ランで短時間高強度を行う余裕が出てくる。時間制約の中で、バイクに長時間を取るから、ランは短時間しかできない、ということでもある。ランの本格的な強化はここからでいい。
 
まとめると、
  • 冬はオフロードとかを楽しく走っとけばOK!
  • 春に、強度を上げてゆく
これによりランニングによる身体負荷を軽減できる。トライアスリートの故障の多くはランニング練習過多によるもの。怪我はバイク実走が多く、寒いとリスクが少し上がるかと思う。寒い冬に、室内バイクと緩いランを組み合わせることは、怪我も故障もリスク低下できる。
 
・・・
 
ここまで読んで、賢明なる当ブログ読者の諸氏におかれましては1つの記事を思い起こすことでありましょう。そう、
 
 
もちろんこれは方向性とか優先順位付けについてのものであって、「八田が出るなと言ってるが・・・」的な反応をされても困るわけだが、少なくとも方向性レベルに限っていえば、僕のこの考えは一貫している。
 
結局は目的次第。もしもあなたの目的が:
  • 「マラソンもトライアスロンも楽しむこと」ならば、ランナーへの変身を楽しめばよいのだし、
  • 「トライアスロンだけを強くなること」 ならば、冬はバイク集中して、まあ大会では仮装ランナーへの変身を楽しんでもよいのだし、
と、シンプルに分岐する。みんなちがって、みんないい(微笑)
 
ただ、トライアスロンで高い目標を目指す場合には、時期、大会内容、プライベート・ベスト更新を目指す度合い、などなどによっては、往々にしてトライアスロン側の目標達成を妨げるリスク要因ともなる。中には、ランニング過多による故障事例すらも。せっかく努力しながら、残念なことだ。
 
ついでに書いておくと、僕が(いくらか嫌がれながらも笑)書き続けている大きな動機はこれ。こうした回り道や落とし穴を避けるための「考え方」の一例を示したいから。一人でもそんな人が増えればOK!
 
以上、リバース手法に従う場合に、このあたり整合的でないので、各自工夫してくださいな。
どんな手法も、自分なりの工夫が大事だ。
 
※追記:それでもマラソン出る、という方に向けて、次回、そのための一案を書いてみよう。
どんな手法も、自分なりの工夫は可能だ。  
 
・・・
 
なお、欧米発の情報は日本の真夏の殺人的環境を考慮していないため、ローカライズ作業も必要となる。この点、次回以降に改めて書こう。
 
<スイム
同記事では、冬のスイムは週1でOKと。これ一見、スイム軽視論のようにも見えなくもないが、「いったん記録向上を忘れて、ドリルなど技術向上に集中していい」ということ。これもやはり優先順位の話なので、バイクFTP向上が十分にできていて、空いた時間でスイム記録更新を目指せるのなら、素晴らしいことだ。タイム向上の中で磨かれる技術はあるから。
 
つまり、週1で、技術重視の講習会に出て、泳ぎを改造するのは、この手法からも推奨される。そこで・・・
 
 
<おしらせ:三浦広司スイム講習会>
詳細はFacebookイベントページ(見れない方は、メールアドレス記載でメッセージください)
撮影会;
会議室の動画分析ゼミ、一回限り:
同ゼミでは「クロールの基本は100m、長距離は緩めていけば対応できる」との考えから
  • 1980年代頃からの世界トップ100m選手の泳ぎを、時代を追って、解説('80-ゲインズ、ビオンディ、'90-ポポフ、等々)
  • 最新の100mの泳ぎ方の解説(マケボイ等)
  • 長距離への応用例(レデッキー、パルトニエリ等々)
  • トップトライアスリート(ジョディ・スワロー、ダニエラ・リフ等々)
と順に動画解説するセミナーを開催します。時代の進化により、速いクロールとは何か、階段を登るように理解します。次に階段を降りるように、長距離の競泳トップ→トライアスリート(=ツッコミどころ多)、と説明します。ちなみにリフ選手の泳ぎは「ひどい」(三浦コーチ談)が、現実にレースで戦えるレベルを確保しているわけです。その最低条件も理解していきましょう。  
 
第二部では、各自の泳ぎの動画について個別解説していきます。動画ない方は12/5に撮影を。
 
<おしらせ2:「渥美半島の風」>
僕が寄稿した「潮騒のなかの祝祭」も好評いただく愛知県・渥美半島の情報誌「渥美半島の風」創刊号、毎月5日+20日の月2回での発送とさせていただいております。今週末(12/4)までにご注文・入金いただければ、週明けに発送。
書評はブログ「オカンアスリートの研究室」記事などご覧ください→ 「書評:「渥美半島の風(創刊号)」(著:トライアスリート八田益之氏)」
 

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『覚醒せよ、わが身体。〜トライアスリートのエスノグラフィー』

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