« 2016年10月 | トップページ | 2016年12月 »

2016年11月の8件の記事

2016年11月30日 (水)

「トライアスロンお金がかかる説」、僕のコスト実績5例から検証しよう

2013年ハワイ島コナの世界選手権会場には、発売から1年半のサーヴェロP5(当時フレームだけで68万円)がいっぱい。コナ空港で自転車いれた段ボールを引きずってるのは僕くらいで(笑)、みなハードケース(海外でシーコンとかのソフトケースは危険)、海外渡航シールをいっぱい貼った使い込んだ物も多い。お金をかけようと思えば、簡単に年間100万円以上の予算を注ぎ込めるのがトライアスロン。その出費に対する満足度も平均的に高いだろう。 

ただそれは、アイアンマン世界選手権KONAだからであって、欧米でも安い地方大会はミドルに7,000円くらいで出れる、とスペイン人が言っていた。たぶんそうゆう会場にはP5とかほとんどない。
 
日本では、警備など大会運営コストがかさむようで、出場料こそ高めだが、それでも、抑えようと思えば抑えることはできる。以下、僕が実際に使った金額でみていこう。
 
 
<例1:宮古島大会2015>
国内でお金かかる代表のように言われる宮古だが、僕が2015年に出た時、8日間の単独行動で食費を含む総費用を10万円台に抑えた。内訳は、
  • 出場料4万
  • 移動・輸送4万円 (飛行機2.3万+成田バス0.2万+バイク輸送1.5万)
  • 宿1.8万 (ゲストハウス「チャーミーズ」 http://www.charmys.jp
  • 食費0.7万
食費抜きで9.8万、食費込みでも10.5万〜むしろこっちが凄いでしょう笑。ちなみに那覇にも3日無銭滞在して計10日で10万。
 
別に節約耐乏生活をしたわけではない。現地の人たちと同じような生活をしただけだ。
ローコスト経営の宿を選び、400m離れた農協店舗に通い、値下げシールくる時間も聞いて、地元価格の沖縄料理を、食べたいもの全部たっぷり買ってのことだ。米は共有キッチンで炊く。これで食費1日千円を実現。もちろん材料から自炊すればさらに安くできる。
 
今は直行便が飛び、たぶんバイクを同行できヤマト便1.5万円を削れそう。 オーバーチャージ払って安い。そして8日間も滞在する必要はないので笑、全費用10万円切りは現実的だ。
 
宿は会場の前浜ビーチから2km、東洋一美しいという真っ白で真っ青な海で毎日泳げた(レース当日を除く泣)。近いからレンタカーも要らない(運転しないのでどうせ使わない)
 
「チャーミーズ」さんは来年レース時、1部屋残ってると昨日言ってたので、よろしければどうぞ(落選したら速やかにリリースを) こちらFacebook→ https://www.facebook.com/guesthousecharmys
 
つまり、年に1度宮古に出るだけなら毎月8,000円。さらに公立プールに毎週2回いって月1万でOK。毎日スタバいったりタバコ吸ったりするのと同レベルだ。
 
<例2:アイアンマン世界選手権KONA>
カネかかる王様みたいな大会だが。
僕の2013予選はセントレア、実家が近いのもあり、宿泊は前日だけ、総費用6.5万円。
KONAは
  • 出場8万
  • 移動14万 (ANA9.4万+オーバーチャージ片道2万+ハワイアン計2万くらい)
  • 宿泊11日間20万 (エアビーで探したコンドミニアム、最安シーズンの2.5倍!) 
  • 現地食費はほぼ自炊=日本と変わらず
で40数万円。なお何人かでコンドミニアムをシェアすれば、宿泊費を10万円以上削ることも可能。そして11日間も滞在する必要はないので笑。
 
僕は贅沢な日程だったが、ついでにトランジット2回ともホノルルに無銭滞在、さらに帰路は定員超過のビジネスクラスで、オトクであった。
 
つまり、予選からトータルで50万円ほどだ。今では予選費用が上がってしまったが、その分、ハワイ滞在コストを削れば、大差ないだろう。
 
さらにオリンピックみたいに出場を5年に1度に絞れば、月あたり8,000円。宮古と同レベルだ。 
 
<例3: JTUエイジランキング>
僕がもっとも注力していたのがJTUランキングで、おカネ的にも多くを費やした。
 
2010〜2014年は3大会のポイント合計、1位を取るには、天草で15点を、さらに13点と12点を取れば確実。アクシデントに備え12-13点大会をもう1つ保険に。天草は移動時間はかかるけど、2013年はバイクと一緒にANAで往復2.8万円くらい。2014年はJetStar+ヤマト便でたしか同じくらい。計6万でOK。(僕は地元知人宅に泊まる裏技をくりだし5万円)
12-13点大会なら、首都圏なら3万円でOK。保険大会込みでも計15万円だ。
 
僕は電車移動なので、クルマ移動ならガソリン代だけ、車中泊ならもっと安くなる。
 
ただ、2015年からの4大会化、さらに2016年のポイント設定変更によるポイント獲得戦術変化により、今なら30万円程度の予算が必要だと思う。くわしくは11/4 Facebook投稿参照→ https://www.facebook.com/Masuyuki.HATTA/posts/10207415481800917
 
<例4:自転車>
僕のレース車は、2010年からの7年間で総投資70万円ちょっとくらいかな。ただし以前から持っていた合計30万円分のロードバイクは除く。レース車としての原価償却費は年間10万円に近づいている。やはり月あたり8,000円。1日267円。毎時11円。5分で1円。
 
ちなみに僕はスマホというものを持っておらず、ガラケーは毎月1,500円くらい。差額でかなりが賄えてるともいえる。(てそれ比べて意味あるのかと笑)
 
最近では高額バイクが次々でているけど、先日アイアンマンの世界最高記録を更新したカナダのLionel Sandersは(ちゃちにみられがちな)ガノーの普通のTTバイク。ステムも丸い汎用品だ。それでBike180kmを4:04:38、平均44.2kmhだ。まあそれでも高いちゃあ高いんだけど!
 
<例5:サプリとかプロテインとか有機野菜とか>
全く要らないというのが僕の立場。特別な食べ物で速くなる、ということはない、言い換えれば、食事内容に減点はあるが加点はない、と思う。普通に近所の八百屋でいっぱい野菜果物を買って、米肉魚納豆と一緒に、食べたいものを食べたいだけ食べてればいい。それ以上は趣味の問題。
 
テーマから少し外れるので=お金使ってないので、改めて書きましょう。(初稿で書いたのはいったん外してます)
 
重要な真実とは、身体を動かすことで、何を食べても美味しくなる、ということである!笑
 
<ついでに:ウェア>
専用品だから高い。ホームセンター、ワークマン等々でほぼ同機能の汎用品は割とある。そこから先は趣味の問題。やっぱり高いものは良いし。
 
 
<まとめ
一定のおカネはたしかにかかるけど、やり方次第では、それほどでもないよね。
月8,000円が高いか安いかは、個々の状況によるけれどもね。
とかいって、僕も最小コストとかいいながらも、やりたいことはおカネかけてやってきたので、総額では200万円に迫るかなあ。
 
1ついえること、ここまでの僕の出費に対する満足度は、最高レベルに高い。
満足度が十分ならば、そのお金を使う価値がある。
満足度を落とさずに済むのなら、そのお金は削って構わない! 

2016年11月23日 (水)

水の「重さ」を制御する 〜三浦クロール講座あと2プール+1ゼミ

昨日の東北余震で、改めて津波の威力が話題になっている。津波とは、「波」と違って海面全体のせり上がりなので、地球に押されているようなもの、しかも凶器の混ざった乱流であるわけだ。
 
僕も実感したのが、以前に水流プールで撮影した時。100m1:20設定、時速数kmでも、水はとても重かった。これが時速30km以上になればどうしようもない。
 
スイマー目線でいえば、引きずる水はそれだけ重たい、ということ。
巨大タイヤを引いて走るトレーニングがあるけど、ほぼそんなようなものだ。
 
上の動画では、たぶんヘッドアップした瞬間が切り取られている。
20161123_145943
アタマの重みが下半身にかかり、腰が沈み、後方に巨大な泡が発生している。足も深く沈んでいる。横のメモリでみると、モモが30cm、足先では40cmくらいの水深だろうか? これだけの水を押すのはすごいエネルギーが必要。全部ブレーキだ。(今はもっと上手くヘッドアップできている)
 
ストローク面での最大の問題は、脇を早く締めすぎていること。手を「掻く」意識の空回り、もしくは、水の重さに負けて、水を逃がす形をつくることで腕を回している。
S14
ストロークの水はより重く、ひきずる水はより軽く。
単純な基本原理ほど難しい。
 
・・・
 
大人になって水泳を始めたトライアスリートのクロールでは、
  1. 正しい姿勢が取れない
  2. 呼吸が正しくできていない
  3. 肩が致命的に硬い
といったストローク以前の姿勢レベルの課題が多い。これら技術は相互に関連するもの。
 
このままでは、レースでも、抵抗が増えてタイムを膨らます上に、体力的・精神的な負担も増えて過度なダメージをバイク以降に残してしまう。
 
 
<プール講習会>
以上の考えから、三浦クロール講座では従来、どちらかといえば「ストローク」について説明してきたのですが、年内の最後2回、より基本に立ち返って説明することにしました。
  1. 基本姿勢の徹底
  2. 参加者それぞれが考える自己課題
  3. 強いストロークの作り方
という優先順です。
 
【プール練習会】 年内残り2回
詳細はFacebookイベントページからご確認ください。
11/27(日)プール20-22→ www.facebook.com/events/285161848547833
12/4(日)プール18-20→ www.facebook.com/events/594540980754901
(見れない方は、メールアドレス記載でメッセージください)
次回は年明けです。
 
 
<会議室の動画分析ゼミ>
12/11(日)18:15〜21:00→ www.facebook.com/events/160289534440174
 
クロールの基本は100mで、長距離は緩めていけば対応できます。レデッキーも孫楊も100mでも超速いのです。そこで、
  • 1980年代頃からの世界トップ100m選手の泳ぎを、時代を追って、解説('80-ゲインズ、ビオンディ、'90-ポポフ、等々)
  • 最新の100mの泳ぎ方の解説(マケボイ等)
  • 長距離への応用例(レデッキー、パルトニエリ等々)
  • トップトライアスリート(ジョディ・スワロー、ダニエラ・リフ等々)
と順に動画解説するセミナーを開催します。
時代の進化により、速いクロールとは何か、階段を登るように理解します。
次に階段を降りるように、長距離の競泳トップ→トライアスリート(=ツッコミどころ多)、と説明します。
 
ちなみにリフの泳ぎは「ひどい」(三浦コーチ談)が、現実にレースで戦えるレベルを確保しているわけです。その最低条件も理解していきましょう。  
 
第二部では、各自の泳ぎの動画について個別解説していきます。
 
 
<三浦コーチ個人指導ご希望の方へ>
最新情報は、こちら「三浦コーチの個人指導」専用のグループページにて更新していきます。非公開設定なので参加申請ください→ www.facebook.com/groups/1149370821818723
 

2016年11月20日 (日)

五輪トライアスロンは既にスプリント勝負 〜リオ男子バイク勝負の「140秒」を徹底分析

前2回からの続き。五輪トライアスロン距離半減化案は、やはり既にIOCの根回しも済み、あとはミックスリレーをどうすれば正式導入できるか? くらいの進捗感 (英文記事より)のようだ。ITU総会での決定待ちではあるが。

ただ、リオ男子を映像と記録からみてゆくと、既に「スプリント種目」になっている、と思った。この作業は単なるエクセルいじりではなくて、レースのスリリングさが伝わってきて、興奮した。

映像はこちらダイジェストのYoutubeが見やすい。「NHK見逃し」でフル中継  も見れる。

<記録の見方>

記録を順を追ってみていこう。順とは、ゴールから逆算するということだ。

まず注目するのは右端のゴール地点。メダル、入賞、と分類して色分け。

20161120_140542_2

バイク終了時点での第一集団10名に残ることがメダルの絶対条件。Joao Pereira/POR,  Richard Murray/RSAが第二から猛追したが、それぞれ7〜9秒だけ届かなかった。

そこでバイク終了時点で並べ替える。(画像は入賞圏内のモーラまで切り取ってみた〜バイク第二集団は19名、ここまでで29位)

20161120_141231

バイク開始(=Swim+T1)15位=18:18の銅スクーマンまでが、バイク終了時の第一に残れた最終ライン、同タイムのDodds/NZL以下は、まるごと第二に落ちている。この数字の雄弁さ&冷徹さ、ヤヴァすぎ。

20161120_141620

<五輪バイクはスプリント勝負>

動画で見ていこう。まず、バイクスタートは18:07ヴァルガから18:23まで16秒間の26名がひとかたまり。金さん銀さんご兄弟が仲良く18:14(6-7位)、銅スクーマン18:18(15-16位)、田山選手は23位に入っていてさすがだ。なおスイム第一集団は27名といえるが、その27位はバイクスタートで5秒という致命的な差を付けられ脱落している。

1分後(右下のタイム参照)のコーナーでは、第一集団は縦一列20名。この最後尾から3秒遅れでスタートしたモーラは後ろの集団にいると推測される。

B1

つまり、バイク最初の60秒間で6名がトーナメント敗退したということだ。

そして20秒の直線の後のコーナーを、20人目が1秒ほど遅れ始めており、彼はこの直線での1秒差によりトーナメント敗退したと思われる。スクーマンは16位通過。順位的には、彼がいわゆる「最終列車」ラインとなる。

Bike2

ヤヴァいのはここから。急坂に入り、待ってましたとブラウンリー兄弟が猛ダッシュ。50秒後の20:33-37にかけて15位までの集団が通過。金銀ご兄弟のバイクスタートから140秒ほど、ここまでに勝負のかなりな部分が決している。

B3

スクーマンはこの8〜12位集団の後ろに付けている。坂で順位を上げたわけだ。さらに2秒差で13-15位の3人集団が追うが、彼らはこの2秒差により、既に敗退している。(少なくともウェアからわかる二人、カナダとオーストラリア2人目は第二に落ちている)

以上はYoutubeダイジェストでも確認できる。フル動画みると、22分時点=スタートから3分半=では既に10名に絞られ、そのまま最後まで後続に差を広げていった。

バイクは40km、55分(平均時速44kmくらい?)だが、現実に勝負を決めたのは、スタートからの3分ほどだ。メダル争いの大きな部分もね。

(じゃバイク残りの50分以上は意味ないじゃん、半分に削ってOK、と思う一般TV視聴者がたくさんいても不思議ではない…)

<スクーマン危機一髪!>

スクーマンはスイムアップは17:25、金銀兄弟に次いで7位。ただトランジションに53秒=最速より8秒も余分にかけてしまったため、バイクスタートが15-16位に落ちてしまった。おそらくバイクスタート順を概ね崩さずに最初の急坂に入っていると思われる。

差がつきやすい急坂だが、前を塞がれることもありえるし、入った時の位置取りは無関係ではない。やはり前にいたほうが残りやすい。

16位から10位までジャンプアップできたのはかなりなグレートジョブで、これによりトランジットの失敗を取り戻すことができた。

この程度の「敗者復活」ならありえる。

逆にいえば、敗者復活は、この程度以上には、起こらない。

同様に、モーラは46秒の超速トランジションで猛追を狙うも、バイクスタートでの3秒差を追いつくことができなかった。ここに成功していたら、金銀兄弟は「銀胴兄弟」に降格した可能性もあるだろう。

<スイムの要件>

ふたたびタイムに戻ると、結局、スイムアップで先頭11秒差の15位(Kanute/USA)までしか、バイク第一に残ることはできなかった。

20161120_154012

上のタイムで、1つの注目はバイク20位スタートのRyan Bailie/AUS。急坂前の第一にはいたと思われるが、第二に落ち、バイク終了前に小アタックして9秒リードした3名の一人。つまりバイク力は本来は高いはず。それでも落ちてしまうのが、集団最後尾のデメリットなのかもしれない。

つまり、スイムは先頭集団ならOKなのでもなくて、その中での位置取りも大事になる。こちら5分30秒頃、第一ブイ手前の先頭集団。

Swim1b

仮にこのままゴールしたと仮定してだが(実際、そんなに大きな変動は無いような気がする)

  1. 上位3名のスイム・スペシャリストは、このまま最後まで固定して引き続け
  2. その後ろにメダル組=バイク第一に残れた10名ほどのグループ
  3. 直後に、あと一歩で逃したグループ(ほぼ全滅かと思われる)
  4. ついてるけど、まったくかからなかったグループ(左上)

と分かれるわけだ。

 
この差はどう着くのか? 何があれば上記2.のグループに入れるのか?と考えれば、答えは明らかだよね。
 

<まとめ>

五輪トライアスロン、特に男子は、既に「スプリント動作」の勝負。急坂というリオ特有要因もあるけど、この戦法の有効性が明らかになった以上、この展開は何度と見ることになるだろう。

もはや、「耐久スポーツ」として見ると、間違うことが多いのではないだろうか?

2016年11月19日 (土)

2016リオ女子(いまさら)分析 〜五輪トライアスロン距離半減化 vol.2

五輪トライアスロンとは、既に敗者復活のないトーナメント戦だ。スイムバイクで2連勝すれば決勝のランに進出できる。この傾向は、一発勝負のオリンピックではより鮮明になる。それがリオ2016男女の展開だ。
 
3種目全てに「勝てる力」が要求される、とさえ言える。シドニーの五輪初開催から16年、水泳とランを兼ね備えた当時のキッズ達が、3種目を意識しながら育ってきたんだろう。バイクは欧米には競技文化が根付いているし。
 
では、半分のスプリント化したら、どうなるか?
 
と未来予測をするには、まずは現状分析からだ。リオ女子の録画を見直しながら、公式記録: http://www.triathlon.org/results/result/2016_rio_de_janeiro_olympic_games/305291 をExcelダウンロード。
幾つか列追加して並べ替え、集団ごとに色をつけてみた。
 
<スイム終了時>
スイムは、大舞台で存在アピールしたいスイマー選手がここぞと先頭を引きまくることが多く、その背後の集団に表彰台レベルが入る。
 
リオ女子では、大西洋からの、低いが大きめなウネリの海面のため、体重が軽く身長(+腕リーチ)の短い選手ほど悪影響を受けただろう。上田藍選手が決定的な差を付けられてしまった。
20161119_134512_2(←クリックで拡大)
先頭ではクサビ型に展開した大集団ができた。第一集団は19:01〜19:21までの34名。19:13=25位まで水色、19:16からの26−34位を黄緑に変えた。後半9名中、バイク第一集団18名に残れたのが2名だけだから。「真の第一集団」と「敗者復活組」に分かれたわけで、この差なんと3秒だ。
 
<T1終了時>
だから、T1=トランジットが致命的に重要だった選手も何人か。T1終了後のタイムで並べ替えてみた。
20161119_135916
その敗者復活組の一人、Jolanda Annen SUI はT1最速の51秒、もう一人は8番目に速い53秒。54〜56秒かかった全員が第二集団に落ちている。
 
T1終了時、20:10までの28名がバイク第一集団に残る権利を得て、20:12以降はみな第二集団へ落ち、メダル&入賞(&18位以内に入ること)の可能性が消えた。この差2秒。
 
スイムで34名に選抜され、T1で6名をふるい落とした、ということだ。もちろんT1ラインを通過した後の、シューズを踏んづけながらのスタートダッシュを含めてのことだが、その時点で2秒差が開くと、もう追いつけない、ということ。
 
もう1つの注目は最後、加藤友里恵選手。黄色のバイク第二集団まで12秒差だ。
第二集団は人数が多くて最後までついていきやすく、ここに追いついていれば、バイク終了時点で3分30秒以上早く上がれた可能性が高い。第三集団は8名ほどでふるい落とされてしまい、単独走で脚を削ることになった。追いつけていれば、4分以上のゴール短縮ができたかな。T1で5秒、バイク序盤で7秒削ることができていれば。
 
T1は、こうしたボーダー域では、本当に重要。
 
<バイク終了時>
20161119_141456
T1で残った28名から、10名がふるい落とされた形。うち一人は急坂でモモを攣ったSarah True USA。
 
録画を見ると、急坂でふるい落とされた場合も多そうだけど、海沿いの直線往復も効いていそうだ。横風が強いと思われ、集団のメリットはあまりない。距離も短いからエシュロン隊列とか作ってる暇もない。だからバイク強者のSpirigらが展開を主導できたんだろう。先頭を引いたときのダメージが皆に平等に行き渡る。お台場ではこうはいかない。(と思っていたら、距離半分という…)
 
なお見たのはゴルフ中継のため前半のみ。まあどうせ後半やっててもこんなもんだろう感は否めず、だったら半分でいいじゃん派が多数を占めるであろうことも想像されるのであった。
 
<ラン>
トライアスロンのランは、バイク終了時点である程度は決まっている。「トライアスロンのランの実力」=「(バイク+ラン)の実力」という面がある。
リオでは、残った18名の中でも、ランの脚を残せたかどうかで明確に差がついていた。もちろんそこに本来の走力も加わってのこと。そして、最初の数百mで、1-2位争い組、3位争い組、入賞狙い組と、あらかた分かれてスタートした印象。
 
この3位組との格差が明白だったから、グウェンちゃんとニコラちゃんが仲良く並んでお喋りジョグ(笑)する余裕もあったわけだ。
 
「ジョーゲンセンがバイク第一集団にいると100%優勝できない」というのは、それだけ、彼女のバイクが安定して強いということでもある。
20161119_160544
ゴールでは、バイク第一集団の18名が、そのまま上位18位に。まさにバイクは敗者復活のない準決勝。
 
先にだした加藤選手の例では、バイク開始12秒差次第では、この黄色グループの中で戦うこともできた。最高19位ってことだ。こうみれば、十分な健闘を果たしたといえる。少なくとも、リオに向けて十分に戦える状態を作ってきたといえるだろう。
同時に、この12秒だけで、ここまでレース展開が変わるのも(エリート&ショートの)トライアスロンだ。
 
<日本のメダル獲得シミュレーション>
ついでに、日本女子のメダル獲得を思考実験してみた。
  1. 選考: 佐藤&高橋と、W長身スイマーを上田アシスト専門に
  2. スイム: 上田を両サイドから引っ張る形で、少しでもスイム位置を引き上げ
  3. バイク: 三人ローテーションでのロングスプリントで第一集団に追いつく(でWアシストはお役目終了)
  4. 終盤までアシストが残っていれば、ゴール前にスパートをかけて集団前側に位置どり
  5. 上田が単独でラン勝負
ここでの実現性は、上記2に尽きるだろう。あくまでも、リオのコース限定での、メダル獲得を至上目標とした場合の思考実験。東京2020では海面フラットだし、前提が全く変わる。
 
日本の長期戦略>
もう少し長い目線から、日本のトライアスロンの課題を考えてみる。
 
まずは、水泳もランも、それぞれには世界で戦える競技力を持ちながら、個々の競技内に囲い込まれていて、出てこないことかな、と思う。それでJTUの施策につながっている。
 
萩野公介なら400Frに集中すべきだが、日本で3位でもオリンピックには行けない。中には走力も高いアスリートは多いはず。(三浦広司コーチは水泳しかしていない高校の体力測定で1500m走4分20秒くらいだったそう。「ビート板キックのつもりでバタバタしてみた」とのこと\@@/)
 
ランニングはメダル級こそ今は居ないが、男子マラソン2:10前後の層の厚さは、ケニア系(=細すぎてトライアスロンに不適そう)を除けば世界トップレベルだ。これは駅伝人気のために大学・実業団とキャリアパス的に有利なせいだが、そこに囲い込まれがちだ。そこからのチャレンジャーの層がほしい。
 
そして、バイクね。
 
・・・
 
では、 「五輪トライアスロン距離半減」後の戦術はどうなるのか? を考えるのだが、長くなったので続きは次回。その前に、男子のデータはもっとすごい!
 
←ダイヤモンド社から同時発売される2冊! いかにも、自分の時間を取り戻すには、生産性を上げることから。

2016年11月16日 (水)

「2020東京五輪トライアスロンの距離半分」との英国タイムス紙報道について

※結局、ミックスリレーは導入されたが、距離は維持された。エリートでは半分距離のが定着し、一方で、エイジ層はやはり「51km走らないとトライアスロンじゃない感」が強いかな。以下、2016年当時の記録として残しておこう。
_______


東京五輪でトライアスロンの距離半分に、とITUカサード会長がイギリスの有力新聞「タイムス」に明言したようだ。

Olympic triathlon distance could be halved for Tokyo 2020 (The Times 2016.11.13)

 
51.5kmから25.7kmへ。噂には聞いてた話で、非公式とはいえ、 ついに表になった。
併せて予選(1回)やミックスリレーも導入可能性あり。アスリートの疲労が減るためで、全部実現すれば男女計6レースが開催されて、盛り上がる。ミックスリレーは見たことないけど、見てて楽しいらしいし。
 
<スプリント
25.7kmの「スプリント」形式は、既にオリンピックに次ぐ重要度のワールド・トライアスロン・シリーズには導入されていて、2016年では、エドモントン大会ケープタウン大会 がスプリント形式。51.5kmの呼称も以前の "Olympic distance" から "Standard distance" へと変更されている。
記録(↑リンクしてあります)は男子で、スイム8-9分、バイク20数分、ランは14分20秒台での勝負になっている。この競技時間は耐久動作としての最小単位で、純粋な「技術」がより重要になるかな。ゴールタイムは男子で50分ほど、ほぼ真田丸一回分のスピード感だ。

酷暑予想の東京大会で熱中症リスクが減るメリットもある。ブランウンリー兄弟の美談は一度きりだからこそ美談たりうるわけで、続出したらぶち壊しだから。

ITUのTV戦略>
カサード会長、"more appealing to television" とはなんとまあ正直な$$$
リオ五輪での現実として、オリンピック開催を4年後に控え、しかも男女とも代表を出している、という条件的にほぼ最高な国(じゃぱ〜ん)ですら、男子はダイジェストですら中継なし、女子は年間ランキング3位のメダル候補を抱えながらも、生中継の途中にゴルフを挟まれたわけですよ。
これがトライアスロンという競技の現実。まして、こうした条件が悪い国なら、なおさらTV放映権料が入らない。金を稼げないならオリンピックとしての意味がない。
 
※念のため、1984ロス以降の30年間、オリンピックは金を稼ぐために=つまりはTVファーストで運営されており、僕は「投資効果」を追求する方向性には全面的に賛成してる。事実として、こうしてお金が回ったからスポーツは栄え、社会にお金で測れない豊かさが拡がってきたわけだ。オリンピックのレガシーとはそうゆう全体の仕組みにある。
ついでに2020東京についていえば、事実上1度きりの箱に数百億円という競技が幾つかあり、この投資効果には「よくわからない」とでも言っておこうか。少なくともトライアスロンならば、ワンオフな捨て金がとっても少なくて、大勢がライブで見れて、あとは放映権料をしっかり稼いでいただけば完璧。
 
これで2020年にトライアスロンファンはゴルフを見せらることもないだろう。(まあトライアスリートの少なからぬ層はゴルフ経験があるわけで、単にそのエネルギーを投入する比重が変化しているに過ぎず、彼らには問題ないんだろうけども)
 
ITUのポジショニング戦略>
同時にこれは、ITUの生き残りをかけたポジショニング戦略でもあるかもしれない。この競技を実質的に創設したといえるアイアンマン(の主催団体であるWTC)に対して、ITUは歴史的に後発チャレンジャーなので、競争戦略が必要なのだ。
そのWTCは今、70.3マイルのハーフアイアンマンに注力している。ゴメスとか51.5kmのスターが、ほぼ倍距離のハーフなら活躍できるわけで、ある意味、51.5kmへの抱き付き=クリンチ戦法だ。強い立場=ボクシングなら体重の重い相手からマトモにされたら厳しい。
TV的な大衆アピールとしても、トライアスロン特有のアピール要素である「キツさ」は、アイアンマンが最上位に見られがち、51.5kmではある種の中途半端さがあるようにも思われる。25.7kmなら心拍MAX域を最後まで維持する、という異なるタイプの過酷さが新たにもたらされ、戦いを独自の土俵に持ち込める、というヨミもあるかもしれない。
 
<アスリートにとって:レース展開
スプリント形式のレース展開についてはあまり良く知らないのだけど、駆け引きなしのオールアウトアタックが最後まで続くようになるような気がする。スイムもバイクも攻めた者勝ち。バイク50分間は間延びするし、NHKが途中でゴルフをはさみたくなるのもわかる気が。リオ女子みたいにランで先頭がお喋りする余裕もない笑。
この距離に4年かけて最適化してくるわけだ。必要なスピードはさらに上がる。
スイム400m4分切りが必要かな、と福岡の樋口選手&コーチが書かれていた。もしくはバイクの超スピードで追いつくか。ランはレースでの(記録会ではなく)13分台=1km2:40台が基準になるかな。
 
<エイジ参加者にとって
以上の通り、「見るスポーツ」としては合理性がありそうなのだが、「参加するスポーツ」としては距離半分では、肝心の達成感も減ってしまいそうだ。
だから、たぶんJTUとかエイジ向け大会の基本は51.5kmであり続けるだろう。ランキング対象もそのままの気がする。
とはいえ、計25.7kmのスプリントで必要な「技術」は、全てのトライアスリートに有益だと思う。僕は出たことないけど、必要技術は、ロング226kmと同じだと思っていて、KONA出たいとかの方は、まずここを極めるのは有力な近道になるだろう。
少なくとも、距離が短いからといって格下ってことは全くない。たとえばウサイン・ボルトがたった9.5秒だから楽だと思ってる人間が地球上に存在する気がしないように。
まあこれも1つのきっかけに、25.7kmのパフォーマンスを追求するような取り組みをしてみるのも、悪くない選択だと思う。目標レースがなんであれ。
 
スプリントのもう1つのメリット
人気&激戦の横浜大会で、表彰台に上がりやすい! (抽選倍率もかな?)
20110918s1_2
(2011横浜Standard表彰台〜このポイントでJTU初王者に)
ジョーゲンセンやブランウンリーが上がってまもない全く同じ表彰台に上がれるチャンスなんてこの先の人生に何度起きることだろう?
・・・
とはいえ、まだ決定事項でもないし、ミックスリレーの導入と併せて、議論を楽しく見守るとしよう。
 
"The times they are a changin’"
 〜 時代とは変わり続けてゆくもの (ボブ・デュラン, 1963)
 
変化に正しいも間違いもなく、ただ適応するのみ。

2016年11月 6日 (日)

速さを生む「渦」は丸い

昨日 NHK「超絶凄ワザ」最速自転車  はおもしろくて、卵が細長くなったようなカバーを被せるだけで、自転車で140kmh前後(200m区間平均)が出る。計測地点3kmくらい手前(1分30秒くらい前かな)の助走区間でも100kmh越えてた。人体という複雑な形が作る空気抵抗がなければ、同じパワーでも2倍くらい速くなるのが自転車。

20161106_141127

これ、空気のような存在である空気ですらこうなのだから、粘性が800倍ある水では2倍速どころではない。

自転車では空気抵抗のだいたい8割くらいが人体に由来し、残りが自転車など器材。その2割くらい分の中での、さらに何%分かを削減するために、200万円とかの器材が売れているのがトライアスロンという世界だ。それより遥かに影響の大きな水の抵抗を削減できるのなら2,000万円くらいかけてよさそうなものだ。まあレース時間は2割くらいなので400万円か。と冗談はさておき、それくらい水の抵抗力は大きいわけだ。

<渦を知る>

前回の冒頭に書いた通り、水泳とは「渦を操作するスキル」を競うスポーツであるわけだ。

その「渦感」を知るために、硬質パドルで泳ぐのは1つの手段。サイズを変えれたら理想的で、バイクの歯数を変えるような効果がある。これは2つ前に書いた話。

もう1つ、観察する、という手段もある。渦=水流自体は目に見えにくいもので、動画でわかることはないけど、目の前であれば別。特にパドルで泳ぐと、泡(空気)が混じることで見やすくなる。(動画では泡だけが見えて渦まで見えない) しかもパドルの抵抗によって渦は大きくゆっくり発生するので、ライブでスロー再生してる感じだ。

<渦を見る>

今日午前、横浜国際プールで三浦広司コーチのJr.チームがパドル錬をしてたので観察。あいまに自分もゼロディLパドルで技術錬しながら。インターハイ3位から小さな小学生までバリエーション豊かな泳ぎ。泳法技術は基本共通なのだが、身体の成長度(=年齢)、筋力、習熟度(=チーム移籍前のクセが残ってる場合もあり)、などにより大きな差がある。観察は楽しい。自分もやりながらだとさらに楽しい。

ここで気づいたこと。速い泳ぎでは、「丸い渦」が大きく無駄なくサッと発生する。ストローク動作の始め(入水)から終わり(フィニッシュ)まで、そうして推進力を発生させている。遅い泳ぎでは、ストローク中、推進力を生む渦が発生している時間が短い。無駄な渦も生む。

これを極端に表現すれば、「推進力につながるような渦しか発生させない」のが理想の泳ぎ、というイメージ。

丸い渦、とは、2つ理由が考えられる。

  1. 人体は原理的に円でしか動かせない
  2. 水の渦とは円運動である

1つめは生理学、関節は丸く動くから。複数の円運動の組み合わせにより、直線に近い動きを作ることは可能だが、それは楕円軌道であって、直線にはなりえない(そうある必要もない)

2つめは物理学。水がまっすぐ後ろに動くことはない。

<円が円を作る>

つまり、人体の円運動によって、水の円運動を作る。それがストローク腕やキック脚の働きだ。

この情報、というか今日の僕の観察からの仮説、てゆうか渦が丸いのはアタリマエなんで仮説もなにもなくて!、まあ1つのイメージなんだけど、これだけならどうなるものでもない。この理解に立って、具体的な技術を積み重ねてゆく土台として。

そこから先、具体的にどう速くしてゆくか、というと・・・ ↓

 

<三浦コーチ練習会のお知らせ>

一部の自転車のように200万円かける必要はありませんが、幾らかのお金をかけることで目標達成に近づくことはできるでしょう。

11/13(日)夜 プール練習会

11/20(日)夜 動画分析ゼミ

お申込は、上記Facebookページより「参加」ボタンかメッセージ、もしくは、当ブログにメールアドレス記載の上でコメントください。

※ :ゼロディ水着4割引は本日終了します。販売サイトはこちら→ https://spike.cc/shop/user_3351773961

2016年11月 5日 (土)

「抵抗減」の重要性と「ウェットスーツ泳」への応用 (+三浦広司講座の新展開11/13, 20〜)

泳速=推進力ー抵抗。水泳がヤヤコシイのは、両者とも「水の渦」という全く同じ作用により発生すること。ストローク腕やキック脚が作る渦は身体を前に押し出す。それ以外の部位が作る渦なら身体を留めようとする。
 
先日開催した秘密(?)セミナーで、萩野公介選手の最大の強みは、抵抗の少ない姿勢だと示された。177cm71kgの身体で世界トップのエンジンパワーは出せていないはずで、それをブレーキの少なさで逆転しているわけだ。下の画像から見て取れるように、
  1. 入水した手が水を掻き分け
  2. そのスキマに身体が滑り込んでゆく
  3. その胴体は 「エッジを効かせたスノボ」  の原理で、抵抗を減らす
  4. 頭部は、腕に近く肩に乗った位置で、やはり掻き分けた水に挟まる
  5. 泳速の速さにキックの強さも加わり、身体がよく浮く
  6. (水面近くの手から微妙に沈んだ腰までが、大きな翼のような揚力を得ているようにも見える)
という仕組みで、低抵抗姿勢が実現されているのだろう。1〜4までは、TTバイクのエアロポジションとも共通する原理だ。
20150505_154009_2

彼は、加えてこの4年間で、キャッチ局面での推進力(= 以前のNHKで言われていた「下向き」  ではなく、「前方向」へのもの)を高めたそう。ただしヒジ骨折によりその真価をリオでは見せることができなかったと。それでも金メダル!

あるいは、ツイッターでたまたま見かけたこの画像

この1年近く、三浦広司コーチのスイム講座では、推進力を最大化するための「ストロークする腕以外」の活用法を中心にお伝えしてきた。改めて、抵抗の少ない姿勢も重視していこうと今回確認。本質的に両立すべきものだし。

僕も、改めて意識してみると、たしかに楽に泳ぐことができる。全身活用のストロークにも慣れてきて、横ブレなどを抑えながら出来るようにもなってきたかな。
 
 
<低抵抗姿勢のコツ>
基本は、(上記のと被るけど)
  1. 入水の腕はまっすぐ
  2. 頭と腕肩は近く(のっける感じ)
  3. 萩野レベルのキックがないなら、頭は沈め気味の姿勢が基本
  4. 呼吸は、アゴは上げるが、頭頂部を維持したい
  5. キックをまっすぐ打つ
さらに、リカバリー腕(フロント・クワドラント)、スノボエッジ切り替え、等々の応用テクニックがある。三浦コーチも新たな練習法を開発中だ。
 
なお1の入水腕は、グライド時間を取るか、そのまま沈めてキャッチに入るか、大きく分けて2つの技法があるけど、どちらの泳法の場合にも共通に必要。
 
 
<ウェットスーツ泳への応用>
ウェットスーツでは、浮力が高まり速くなる、と思われているけど、実はデメリットとなりうる要素がある。腕・胴・脚が直径1cm以上太くなることだ。
 
そこで、横ブレや腰落ちの大きなフォームだと、「浮きはするが、ブレーキも増える」わけで、ウェットの利点を活かせない。バタバタと泳いではいけないのだ。
 
同時に、ウェットの浮力と水面環境とにより、パワー要素も重要にはなる。
 
この両立のために、体軸を締めて抵抗を減らしてから、身体全体を活かしたパワーをゆっくり確実にかけてゆく順序がいいと思う。これ書くにあたり、ウェット着て、それぞれのイメージ重視で泳いでみて確認した。バタバタし始めると、がんばってもタイム伸びないし、落ち着いて抵抗減らすと、力のわりに進んでくれる。
前回に書いた「硬質パドル」は、こうした力の伝え方の練習にいい。
 
特にプールのような静水面ほど、 きれいな泳ぎが有効。ウェットの浮力を活かし、壁を蹴ってからのストリームライン姿勢で十分に伸びてみよう。そのまま、全長2m(=手を伸ばした長さ)のボートのつもりで、パドルとしての腕に力をかけてみる。これが基本。
波、集団、乱水では、そこから応用してゆく。
 
今、東京圏なら東京体育館や世田谷砧の総合プールで、プール専用のウェットスーツであれば使うことができる。古いものを徹底洗浄してプール専用化するといいかな。
 
ウェットの洗浄&メンテナンスはこちら過去記事ご参照→ 「【保存版】トライアスロン用ウェットスーツのメンテナンス法」
 
ウェットスーツでも、あくまでも重要なのは基本の泳ぎ。ウェットでは、身体を浮かす重要性は落ちるが、それ以外はむしろ徹底する必要がある。ポストシーズンの秋冬は、こうした基本を徹底習得するべき時だ。
 
 
<三浦広司コーチの集団練習会>
今秋の三浦スクールでは、プール内での説明は控えめに、従来より泳ぐ量を増やして、基本スキル習得から実戦スピード向上へと引き上げていきます。
  • 日時: 11/13(日)19:10〜21:50
  • 会場: 国立オリンピック記念青少年総合センター(代々木/参宮橋)スポーツ棟温水プール
  • 25m温水プール2レーン貸切(参加人数による調整あり)
  • 講師: 三浦広司 (八田益之サブ&水中講師)
  • 料金&定員: 4,000円(定員20) 
  • 構成)19:10-19:55 基本理論の説明(特に初回者むけ) 20:00-21:50 水泳練習
詳細&お申込)
facebookイベントページ→ https://www.facebook.com/events/196640034077155
もしくは、メールアドレス記載の上でコメントください。
 
 
<初開催:三浦広司コーチの動画分析ゼミ
  • 日時: 11/20(日)18:15〜22:00
  • 会場: 国立オリンピック記念青少年総合センター(代々木/参宮橋)センター棟 会議室
  • 講師: 三浦広司 (八田益之サブ講師)
  • 料金&定員: A)自分の動画分析ゼミ 4,500円(定員12) B)聴講 2,500円(定員20)
「自分の動画分析」は、どこで撮影したものでもOKです。
  1. 事前に1~3本程度の動画を送付
  2. 事前に「泳ぎのタイプ(課題)」ごとに動画を整理
  3. 当日の三浦コーチ解説は、一人10分前後、プロジェクターで写しながら、ご本人に前に出て頂きながら。
  4. タイプごとに順に解説することで、参加者の「共通の課題」として理解できる仕組みとします。
「聴講」は、三浦広司コーチの泳法理論の「事例解説セミナー」と位置づけています。大人スイマーが陥りがりな泳ぎと、その対応とを、タイプ別に理解できます。
 
facebookイベントページ→ https://www.facebook.com/events/877883828979787
 
 
<お知らせ:ゼロディ水着4割引〜11/6まで
日曜に終了します。販売サイトはこちら→ https://spike.cc/shop/user_3351773961
 
※ 地域誌「渥美半島の風」の販売サイトはこちら公式サイトに集約します

2016年11月 3日 (木)

「水を逃がした速過ぎるストローク」には「パドル」練習を

<速過ぎるストロークとは>
三浦広司コーチの水泳セミナーはもうすぐ1年、受講者実数200名を越え、動画分析も60名を越えている。トライアスリートたちの泳ぎ=体力レベルは世代最高レベル、ただし大人になって水泳始めたのでスイム技術低い泳ぎを観察してきて、多く見られるのが、ストロークする手の移動速度が速過ぎること。特にストローク初期のキャッチ時点でやりがち。
 
「正しく速い」のであれば、泳ぎ自体が速いはず。「速過ぎる」とは 「後半勝負」 ができていないわけで、典型的なステップはこう:
  1. 手が水を逃しているから、空回りして速く動いている
  2. 同時に、水を逃しているから、速く動かさないと沈んでしまう
  3. 速い動作ほど雑になるので、さらに水を逃がす
  4. これら推進力の不足は、呼吸への不安を生む or 実際に沈んで呼吸が苦しくなる
  5. 焦って、早過ぎるタイミングで呼吸する。これは呼吸のためだけの、推進力につながらない動作によってなされる
  6. これが、ストロークパワー低下と、姿勢ブレを生む
これは腕肩の筋力を使うので、「力感」は十分にあり、心拍も上がって、練習した感は高いはず。ガーミンとかでスイム計測してると、質の高い練習扱いされるだろう。こうゆうのは、バイク・ランの全身心拍系能力を高めるクロストレーニングと割り切れば、あるいは直前1ヵ月の追い込み練習としてなら、意味もある。ただ 「先発投手の課題」 (2016.03記事) は根本的には解決されない。
 
 
<対応>
対応には、丁寧なストロークが第一歩。
 
ただ、身についたクセというのは厄介なもんで、いくら脳内で「ゆっくり丁寧に」と念じてみても、どうゆっくりすればいいのか??? この動作方法を的確に表現した本は僕の調査範囲では存在せず、近いところでは、高橋雄介監督が方向性レベルで示されている。三浦スイムでは、独自の言語表現と幾つかのドリルで説明しているけど、結局のところ、身体でつかむほかない。
 
そこで、ゆったり大きく水をつかめる「硬質パドル」を、技術練習として活用できるとよい。欧米トップアスリート達の動画にもよくでてくる。
 
硬質素材が望ましい最大の理由は技術&感覚面で、 素手での場合同様な、自然なストローク感を得られるから。二番目の理由はパワートレーニングで、「技術と一致したパワー」を鍛えることができ、水泳用の筋トレとして最優先される。

ソフトパドル・アクアミット系(←980円で超オトク)について、2014春頃にブログ 「【水泳理論4】 体幹で泳ぐための「ソフトパドル」練習」  で推奨している。ソフト素材ならたいていのプールで使えるのだけど、注意すべきは、特にストローク前半の感覚がまったく別になってしまう。そこを割り切って、ストローク後半の感覚だけに集中する道具としては、使えると思う。偏ってはしまうのだが。

 

<パドルで「ケイデンス」を変化させる>
自転車であれば、ギアを変えることで、ピッチ=ケイデンスを変化させる練習をする。毎分40回転とかのビッグギア坂道上り(競輪とかスプリンターもポストシーズンに重視してるそうだ)、120回転以上の軽ギアくるくるを1時間連続、とか。その効果は、固定ペダル特有の動作感覚を磨き、そのために必要な筋力を作ることだ。
 
ならば、ストローク感をつかめないスイムこそ「ギア使い分け練習」が有効だと思う。
  • ビッグギア=硬質パドル。特に初心者ほど、ゆっくり確実に水を掴むドリル練習の効果
  • 高回転=ゲンコツ泳。今すぐ出来る。手首を無駄に曲げた、前腕を使えてない掌だよりのクロールは、スイム苦手なトライアスリートに多く見られるけど、その矯正にも効果
特に海でのウェットスーツ泳では、こうしたパワー系技術が活きる。
 
 
<おすすめ:ゼロディ/ZERODパドル>
「自然なストローク感」という点で、ゼロディのパドルはトップ競泳スイマーの評判がいい。
こちら動画の(削除により変更)、てまえ黄緑キャップは三浦広司チームで急成長したスプリンター。今年インターハイ50m3位。1-2位の選手は見るからに高い筋力による泳ぎだが、こちらは水に乗った感覚の良さがわかるだろう。体格差だけ見てもね。彼もゼロディのパドルMサイズを絶賛している。
特徴は、1左右非対称の形状、2細かく配置された穴、3掌の凹み、とのバランスが、自然なストローク感を実現していること。さらに耐久性も高く、パワースイマーのぶん回しにも壊れないそう。
 
またゼロディのラインアップでは、ギア比の選択のような使い分けが可能。
  • Lサイズ21cm×25cm 総面積386cm² 〜きわめて大きく、ゆっくり水をつかむことができ、水を確実に押すフォームを磨く効果が高い。バイクでいえばケイデンス30〜50rpmのSFR
  • Mサイズ17,5cm×21,5cm 総面積288cm² 〜万能型。L同様に、全身連動で水を押す、パワー系の技術を磨くことができる。バイクなら60rpmのヒルクライム練習が可能
  • フィンガー15cm×10,5 cm 119cm² 〜てのひら感覚磨き用。指先にひっかけるので、キャッチの繊細な感覚を磨くことができ、かつ、てのひらへの水流が強くなるので、微妙な水感の差がわかりやすい
20161102_143100_2
ただいま僕のショップ→ https://spike.cc/shop/user_3351773961 で販売中。
 
どれか1つ、ならMサイズが一押し。(なんだけど完売してしまった)
 
もしくは、フィンガーとLの組み合わせができるなら、ベストかと思う。(一緒に買いたいという方は、個別に連絡ください、少々いいことあるかも)
 
※硬質パドルの問題は、使えるプールが少ないこと。首都圏では、横浜国際、辰巳で使用可能レーンが公開される場合があり、東京体育館は貸切レーンのみ使用可能。
日本のスポーツ施設、特に運営委託してることろ(=最近多い)は、利用者からのクレームに弱い。少なくともレーン数の多く、競技志向が集まる東京や世田谷総合などでは、専用レーンを用意して欲しいのだけど。あとは、朝スイムなど全館貸切環境の場合に限られてくる。もしくは田舎とか運営の緩いところで、状況的に周りと相談して使える場合か。そして海練習。

※ご使用の際には、リカバリー腕を広げないように。ぶつけると流血させます。隣のコースが盲点になりがち。

 
 
<宣伝: ゼロディ水着4割引❗〜終了>
先日、Facebookで告知したビート板が完売し、感謝セールをZ3R0D Japanさんからご提供いただきました。男性用Vパン限定ですが水着40%オフ、さらに統一デザインのスイムキャップを13-20%オフにて、ネット販売します。しかも送料100円&5,000円以上で無料。重版&2,000部達成の 「渥美半島の風」 と一緒に買っても送料割引対象!
11/6(日)まで(延長しました)、在庫限りです。
 
<特徴>
ゼロディ製の水着は、柔らかな肌合いの白色生地を裏全面に貼り合わせた、丁寧なニ層構造。普通、練習用の水着では耐久性の高い硬めの1枚生地を使う場合が多いかと思いますが、こちらは柔らか、しかも2枚重ねなので丈夫、もちろん透けません。
ヒモがとても長いので「穴から入ったヒモでてこない問題」の不安もありません。こうゆう細かなコダワリもZERODらしい。
 
私は2015年7月からこの「ブラジル」2枚だけを交互に使ってます。週2-3で泳いで1年以上経っても、実用上問題になるような劣化を全く感じさせません。
 
今回対象はブリーフ型=Vパン。「丈が短い=Brief」わけで、水を感じる皮膚面積が増えるため、水感を高める効果を期待できます。特に、泳ぎの横ブレの感知、腰を入れたキックの感覚向上などに向きます。(あと長いのより少し安い)
 
<キャップ>
トライアスリートの多くは「2●●」とか「T●●」とか、一目でトライアスリートとわかる色鮮やかな大会支給品を使われてますが、それゆえ個性アピール可能な領域ともいえます。トータルコーディネートできるよう、ふだん値引き対象にならないキャップも対象となりました。
→ 終了!
(ガッキーのの原作なら0円→

« 2016年10月 | トップページ | 2016年12月 »

フォト

『覚醒せよ、わが身体。〜トライアスリートのエスノグラフィー』

  • 初著作 2017年9月発売

Blogランキング

無料ブログはココログ

Google Analytics