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2016年10月27日 (木)

Tri&OWSスイムの要素分解と、「エッジを立てるクロール」の実戦活用術について

あらゆるスポーツにおいて、練習の基本は「試合のシミュエーション」であるべきだ。幾らかの変化を付けた上でのね。トライアスロン(とOWS)のスイムにおいて、実戦シミュレーションには、3つの「要素」がある。
  1. スタート直後、密集の中で位置取りをする、スプリント&パワー
  2. 落ち着いた集団内でのリラックスした巡航
  3. 状況確認
だが、これらはアタリマエのようで、あまり実行されていない。多くの練習は、
  • レース距離を一定ペースで単独泳すること
に割かれているのではないかな? でもそれを必要とするのは、集団をぶっちぎって単独泳するトップスイマーにほぼ限られるといえる。(彼らも3状況確認は行う)
 
多くの場合、 1と2がどっちつかずな、「中途半端に速過ぎる」練習になっていないだろうか?
 
現実のレースの進行を考えてみよう。200名くらいのウェーブスタートならスタートから50〜100mくらいで、1000〜2000人規模の一斉スタートでも200〜400mくらいで、だいたいの位置が決まり、以降は概ねその中で進行してゆくのではないだろうか。
 
そこで、自分が今どこにいるかを「状況把握」し、留まるか脱出かを「判断」する。留まるなら「脱力して浮かぶ技術」で省エネ泳法。脱出するなら、何処へかを判断して、後は「短‐中距離」だ。
 
この状況で必要なのは、絶対スピードと集団内リラックスとの「振り幅」だ。プール1.5kmのタイムを上げに行く練習は、レース直前期の(たとえば1-2週前の)最終シミュレーションくらいでも構わないと思う。
 
 
<10/22練習会報告>
そこで、2,の集団泳をテーマにした練習会を10/22、29と開催してみた。(29は募集中)
 
最近Facebookで紹介している「上側の体重を推進力に活かす」というラン&スイムに共通する技法について陸上で説明した上で、プールでは前半はその実技を重点に、後半で集団泳、だんだんカオス状況を濃くしてゆく。
参加者さん感想も:
 
「50mプールで〜うまく集団に収まった時の水流に引っ張られる感覚は、まさに「これか!」と思いました。この集団に入るために必要なのがダッシュ力、集団に入ったら脱力して水に乗る、というのを身をもって学びました。」 
 
「以前三浦コーチの講習の時にはつかめなかったのですが、昨日はエッジを立てるイメージで泳げた感じがしました。集団泳で身体を傾けて追い越すのも何度か体験出来て今後使えると思いました!」
 
と、この特殊状況をつくりだす効果を確認できた。
 
普通プールの練習では、5秒感覚などで単独泳をし、抜かすときも一気に抜かすのだが、実際には、直後にスタートして、抜かす前にヘッドアップでの状況確認=前泳者の向こう側が見えるか?とか、試したほうがよい。それくらいなら、一人でもできる。それでも、集団が作り出す乱流と水塊移動は、集団状況を実際に作ってみないとわからないものだ。
 
 
<斜めクロール or 反フラットスイム
感想もいただいた技法とは、下の写真だと、右呼吸で右手入水時に、また右エッジが水面に浮かんで、左エッジを沈めている。後ろからみると " / " な形だ。
 
1500Fr王者パルトリニエリは最後までこのフォームを通し切る。ただしトライアスロン&OWSでは左右呼吸で出来る必要がある。

「エッジ」については、6月の記事 『「2軸クロール」の終わりと、新たな「スノボ」泳法について』  をご参照。

 

ただしこれは速い泳ぎというわけでもなくて、プールでタイムを測っても最速というわけでもない。1つのカードとして切れるとおもしろいかもよ、という程度。プールで最速の泳ぎが、実戦で最後まで通せるわけでもないのがトライアスロンのスイムだから。

明確な問題は、下側の左キックが横にはみ出すぎ。
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集団泳での活用
そして、この「斜め度合いのコントロール」は、集団内で使える武器となりうる。
これは高橋雄介コーチの「フラットスイム」無い考え方だ。ビート板を浮かせて滑らせるイメージなのがフラットスイム。これ自体は見事な理論で、基本として習得する価値が絶大なものではあるが、彼の主戦場は水深3mを波消し極太ロープで区切った静水プールだ。さらに、50m30秒を切る強力キックで身体を浮かせる、という前提もある。
 
かたや斜めクロールは、ビート板を斜めに水面に突き立てるイメージの反フラットスイム。キックが弱くて身体が沈む場合、あるいは水面が荒れてフラット姿勢では逆に抵抗になる場合など、むしろ前投影面積と造波抵抗を減らすとも考えられるし、実際、僕の感覚では、その通りだ。
 
僕がこれまで撮ってきた動画では、ズバリを撮ったものはなくて、下記、3月のリハビリスイムで説明する。画面右に進む前半では、左呼吸で、右エッジ(肩〜腰)を水底に押し付けたクロールを試みている。
ここでの要修正点は、
  1. 左ストローク時のローリング過剰=呼吸側である左エッジを沈め過ぎ(推進力につながらない回転は無駄&抵抗増)
  2. 入水腕(特に右腕)と頭とのスキマが作る抵抗増
そこで、左ストローク時に左エッジを水面近くに保てば、常時右エッジ(=呼吸しない側) を沈めることで、「常時斜めクロール」になる。さらに、頭と腕のスキマを埋めたい。
 
この傾け方を大きくすれば、かなりな密集でも抜け出しやすいことを、僕自身も、前回確認することができた。

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