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2016年9月の3件の記事

2016年9月20日 (火)

「ケージにテープを巻く」というボトル落下対策

ITU世界選手権2016, メキシコ・コズメル
ITU世界選手権、ブラウンリー兄弟の片方ジョナサンがゴール目の前で突如の熱中症、もう片方のアリスターが助けて、伝説的な映像が生まれた。ロンドンとリオを兄弟で連覇した2人にとってGramd Finalもオマケのようなもの、その余裕あっての奇跡的な行動だろう。
 
この助力についての審判団の判断は、ITUサイトのニュース記事に説明されている。
 
(※調べ物の鉄則は原典をあたること、トライアスロン関係なら英語は必須です)
選手間のヘルプはOKという明文を始めて知った。その個々の事例への適用は審判の仕事だ。今回は、大会での順位はOK、ただし年間ポイントには反映させない、とITU審判団の満場一致で決定したそう。これ、「結局はケースバイケースであり、その時々の審判団の判断によって裁定が下されるのでしょう。それがトライアスロンだと。」 との鉄平さんFbコメントで理解すればいい。トライアスロンとはそうゆう競技なのだ。
 
ともかくも、それが熱中症の恐怖。ショートでも、特に暑い日の濃縮ボトル喪失は危険だ。 コズメルは気温35℃、バイクコースには石畳もあり、ボトルが飛びやすい。リオのロードレースも石畳区間ではボトルが何本も転がっていた。実際、ヒキダさんがこの罠にハマってしまった。残念。
 
でもそれがトライアスロンという競技。
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木島さん撮影@伊良湖'16
 
 
<ボトルを落とさないということ>
前回の最後「この2本のボトルは、絶対に落とさないこと!!」と書いた。
 
この話はもともと、せーご選手が2012KONAエイジ表彰台のレースレポート(だったかな?)で、ジェルを濃縮したボトルをスタート直後に落とし、拾いに戻ったのを読んだのが最初。なるほど、ロングでそれくらいのタイムロスより、エネルギー確保が大事なんだなあと学んだ。たしか、自分が行く前にいろいろ調べていて彼の存在を知り、前年10月投稿にいきついて。
そしてKONA、僕も同じ場所で落としたのだが、慌てもせず迷いもなく、同じように自信を持って戻ることができた(同じようには表彰台に立たなかったが) 。これが情報の力。
 
ショートでも暑い日ならそう。以後90分間以上をミネラル補給抜きに乗り切ることは難しい。バイクをその場に置いて(コースの逆行はできないので)拾いに走るだけの重要性がある。
 
リスク管理の発想からは、「落としてもいいように予備を用意する」こと。先に書いた2つの濃縮ボトルも、完全に中身を分けるのではなくて、比率を変えるだけにして、どちらかを無くしてもギリギリ対応できるようにするといいだろう。
 
もっと大事なのは、そもそもボトルを落とさないこと。そこでボトルが落ちる場合について考えると、以下の諸条件に影響される。
  1. ボトルケージのホールド力
  2. ボトルの相性 (太さ、弾力、ケージ形状との関係など)
  3. その路面における発射エネルギーの大きさ (段差の大きさ×バイクのスピード)
要因1+2により、現実のホールド力が決まる。それをコース上で最も3発射力が強い箇所に合わせて設定すればよい。ホールド力が強い(高価な)専用ケージを買っても、上記1への対応しかできず、結局はカスタマイズに行き着く場合もありうるだろう。
 
<手法>
写真にご注目:20160914_817クリックして拡大すると、ケージにところどころ、黒いテープが巻きつけてあるのがわかるだろうか。
 
テープを巻く箇所は、ケージのボトルとの接触部。塗装に傷がついている箇所だ。要は、適切な「表面摩擦と圧力」があればよいので、ほどよく摩擦があるテープを、必要な圧力がかかるだけの厚みまで、巻き続ければいい。ホームセンターでてきとーに買ってきたゴムぽいテープを使っているけど、普通のガムテープだって構わない。
 
これに気づいてから僕は、ボトルを落下させたことが一度も無い。
 
まずはボトルを繰り返し出し入れしながら、ほどよく引っかかるお好みの圧力になるまで巻く。
 
最終的には上記3.の要素が重要。高速でコース上にありそうな段差をわざと越えてみて、飛び出るかテストすると良い。石畳のような特殊な路面があれば、そのチェックも必要だ。スタート地点に多いゴムマットは弾みやすく、意外な盲点となりがちだ。(KONAもたしかそのケース)
 
 
<DHバーのボトル装着>
DHバーにセットしたボトルケージはSpecialized「Zee Cage」プラスチック版、当時1,800円くらい。タイラップ4本で固定している。100本入り400円=1セット16円の超格安ハイドレーションシステムだが、もう少し高額な黒色タイラップにしたほうが美しかったかな。
 
ここには最も使用頻度の高いボトルをセットする。伊良湖では、薄めの濃度のボトルをDHバーに、高濃度ボトルをダウンチューブに、水ボトルをシートチューブにセットした。
 
「Zee Cage」の最大のメリットは「横出し式」なことで、小さめのフレームでもスムーズに出し入れできる(ダウンチューブはRight=右出し、シートチューブはLeft=左出しを使用)。DHバー装着時も最小の動作で出すことができる(右出し使用)。
 
ボトルが飛び出すのは、ケージの空いている方向に衝撃が加わった場合だ。ゆえに縦出し型は縦の段差で飛び出しやすい。サドル後ろのリアマウントは特にそう。Zeeケージは縦方向に出せないので、縦の段差衝撃にも強い。リアならこれのテープ巻きで決まりだ。
DHポジションなら、両腕でボトルを挟む形になり、強い衝撃でもホールドできる。ただし、ベースバー持ってる時に右方向の衝撃が入ると、飛び出すリスクもあるだろう。ホールド力を十分に調節しておくこと。普通の縦出し方式のケージの方が、DH位置にはいいかもしれないけど、腕を前に突き出す動作がスムーズにできるかどうかは要確認だ。あるいは、DHはエイドでもらう使い捨てボトル装着専用にするか。
 
 
<直接ストローで飲めるタイプについて>
僕は、2012−13ごろには、DHにはプロファイルの縦置きストローのを使ってた。しかしTTバイク導入後によりヘッド位置が下がり(ヘッドを下げるためにTT化したので当然)、KONA予選の常滑のレース中にタイヤと干渉してしまい、その場で廃棄した。
 
その顛末は 「【Kona獲得の記録】 アイアンマン70.3セントレア常滑2013」 ご参照。トラブル続出の超駄目レースであまりにもあっさり通過してしまいスロット獲得の感動という経験が僕には全くないのがいまおもえばざんねん。。
 
そうして出かけたKONAの会場では、DHバーに横付けする魅惑の最新型ハイドレーション・システムが新登場、当時5,000円ほど。でも勝負レースで新装備を投入するのは完全NGレッドカード、もちろん手は出さない。
 
あの仕組みは、ストローで直に飲めるのは魅力的ではあるけど、聞くと、段差衝撃による水漏れがあるそう。飲み残しも発生する。水位を落とせば幾らか緩和できそうではあるけど、そうなると頻繁に補充しないといけない。だったらその間に普通にボトルを外して飲めるわけで、実質的なメリットがない気がする。
 
僕はDHポジションからいったんベースバーに持ち替えてからボトルを取り、飲んでいる。怖いからね。空気抵抗にはなるけど、カーブやターン前の減速区間なら、空気抵抗増を気にする必要がない。せーご選手もこの方法だと聞き、自信を持ってそうしている。
 
なお、ボトルが怖くて外せません、て方には便利だろうけど(女性が多い)、それ、そもそも技術たりなすぎなので、ちゃんと練習してくださいね。仮にもレースに出るのなら。
 
一部の最新TTバイクのようにフレームと一体化したのなら、その問題は減るだろう。あとは、その機能のために何万円か(で済むかな?)を追加する気になるかどうか。そこは各自のお財布とご相談だ。
 
念のため書いておくと、ヘッド位置に専用ボトルを用意しているキャニオンのTTバイクの場合、時速50kmに最適化して設計されている。サーベロP5も明らかにその速度域だ。実際自転車のチームTTでは平均時速が50km以上だったり、KONAでも下りや追い風でそうゆう速度は普通に続くレベルの選手は存在する。その高速域が長いのなら、そうした器材の優位性は大きくなる。アナタはどうですか?
 
 今みたら、黒色が100本138円!送料170円のが高い!
マジックバンドもあると便利。スペアタイヤとか留めたり。厚さも摩擦も十分なので、ボトルケージにも使えそうだ

2016年9月19日 (月)

最新痙攣対策「クエン酸+塩ポカリ」の実証成功 〜伊良湖トライアスロン'16 vol.2

伊良湖トライアスロン2016、初めてやってみたことは、ざっと1ダースはある。実験は練習で済ませておくべきなのだが、レースも練習だと捉えれば構わない。
 
<実験リスト>
準備 ←先のブログの通り)
  • 直前3週間でレース用の身体を作ってみる
  • 前日に動き過ぎて、疲労を持ち込んでみる
装備) 
  • バイクのDHバーを平行にしてみる (従来のハネ上げでなく)
  • ウェットスーツのサイズを上げる (XSからSへ、ゼロディの場合)
  • 半袖ワンピースウェア(ゼロディTTスーツ)
  • ふくらはぎサポーター(CEP)つけない
  • 移動ラン限定で使ってた古いアディダスMana7のレース使用
補給)
  • ポカリに足す塩を増やし(1L粉末あたり従来推定1-2gを5gに)クエン酸も足す(5g)、
  • ショート以外では初めてジェル等のエナジー製品不使用、
レース運び)
  • スイム: 意図して単独泳しながら周りを見る
  • バイク: 入りをゆっくりめに
  • ラン: 前半5kmを普通にゆっくり、エイド区間5mのミニ・ウォークブレイク
本記事では、補給について書いてみよう。
 
 
<バイク補給>
以前から書いているように、「スポーツドリンク、という名前で販売されている清涼飲料水」は、日本の夏の耐久レースを想定していないので、塩のバランスは自分で考える必要がある。さらに、クエン酸の理論を、もっぱら運動開始後に応用してみたい(スポーツ専用ドリンクと同じような効果を期待できる)。
 
そこで大阪の研究家、石橋剛さんが提唱する、糖・クエン酸・塩の比率をもとに、ポカリ粉末1Lごとに足す量を計算。(塩=ナトリウム:Na100%と仮定)
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バイクパートは2時間ほど、ポカリ2L分をベースに考える。2時間で吸収可能な量を少し超える想定だが、残せばいいし、胃に残ってラン中に吸収してくれてもいいので。結論として、「ポカリ粉末2L分+(天然塩+クエン酸)各10g+水1.5L」を、ボトル2本に、濃度を変え用意した。さらに真水650mlを用意。つまり電解質濃度がゼロから高濃度まで3種類の計2Lちょっとの水分を積む。カロリーは計580Kcalくらい。
 
 
<痙攣防止の最新手法>
(不味い)味覚刺激には、痙攣防止の高い効果があることが、最新の海外の研究で明らかになっている。ウォール・ストリート・ジャーナル日本語版2016.7.15記事を参照↓↓↓
引用)

「神経系から筋肉に送られるインパルスが何らかの原因で誤って伝達され、筋肉のけいれんを起こし・・・強い感覚入力を与え、口内と食道の受容体を刺激することで、筋肉を制御する運動ニューロンを含む神経系に変化を加える」

「マキノン氏(※ノーべル化学賞受賞者)は自分を実験台とし、キッチンでスパイシーなジュースを作り始めた。材料となるショウガとシナモンの分量に変化を加え、電気的刺激でけいれんを誘発しようとした。それから10年、同氏は自分の仮説の正しさに確信を持ち始めた。スパイシーな調合ドリンクを飲むことで、けいれんが起きにくくなった」

 
 
これを応用したのが、今回の高濃度ボトルだ。痙攣しそうな時に少量でも飲むと、すーっと改善する。クエン酸と塩の不味さに即効性があるからだ。さらにミネラル吸収が時間を置いて効いてくる。
 
※個人差が大きなことなので、各自、ベストな方法を探しあててくださいね。いうまでもないことですが
 
 
<やりかた>
作り方は単純で、出発前には、塩とクエン酸をおおよそ5gづつ入れたジップロックを2袋用意しておく。レース直前にこうゆう面倒なことはできないものだ。そして当日朝、
  1. 1つめのボトルに全ての粉を投入し、ぬるま湯で溶かしてドロドロ液を作り (このドロドロ液とジェルの違いはなんだろう?)
  2. その一部を2つめのボトルに移し、水で薄めて、飲みやすい濃度のボトルを作る。濃度は味見しながら決める
  3. 1つ目のボトルにはより多くのドロドロ液が残るので、水で薄めると高濃度ボトルのできあがり。こちらはどれだけ不味くても構わず、むしろ不味いほどよい
レースでは、時々の体感で3種類のボトルを飲み分けるので、事前に濃度計算してもムダだ。
 
バイク中のエネルギーはこれだけ。ランでもスポーツドリンク(たぶん低カロリーのVAAM)しか取らないので、4時間の全レースを通じて、ポカリの糖分だけしか摂らない、ということ。実際それで十分。
 
 
<レース中>
低濃度ボトルをDHバーに、高濃度ボトルをダウンチューブに、水ボトルをシートチューブにセット。 朝7時過ぎにトランジットにバイク預託する際には地面に置いておき、40分前にケージに挟む。これは、バイクBAYAMOのハンドルが安定せず、早く挟むとブラブラしてしまう(これニールプライドの細かな欠点)ための、窮余の策。
 
朝食はスタート3h〜2.5h前にかけ "僕にしては控えめに" (=周りにどう見えたかは別)。6:30に食べ終わり、9:00スタートで、バイクスタートは9:33ごろ。痙攣の予兆があり、数分後には低濃度ドリンクを少し飲んだ。つまり補給開始は食後3h過ぎからだ。
 
当日は、涼しくて全体の発汗が少なく、高濃度ボトルが半分余ったので糖を2hで400Kcalちょっと摂取した感じ。ただし、CEPカーフスリーブをつけなかったフクラハギには何度か痙攣の気配があり、その都度、高濃度ボトルを舐めることができたのは、よかった。バイクパートは最も長く、また痙攣しやすくもあり、やば!と思った瞬間にとれることが大事だ。
 
 
<ロング対応>
僕のKONA'13と宮古'15では、ジェルを何本か水に溶かしてボトルに入れたが、塩分不足による痙攣を起こした。特に宮古のアクエリは薄すぎてトライアスロンには向かないと思っている。
ジェル的な成分よりも、まずは塩、というのが今の仮説。実際に、常夏な環境で長時間ランを楽しまれるミドルエイジ(カタカナでかけばかっこいい笑)トライアスリートさんが日常的にこの手法を活用され、報告いただいているので、かなりな確信を持っている。
 
長時間の場合、濃度を飽和レベルまで高めて総量を増やし、(溶かしきれなければボトルを追加)、水分をエイドで受け取ることで、水とミネラルの総量×濃度をコントロール可能。濃度は胃でミックスすれば十分。
 
少なくとも、糖類中心と、塩系中心の、2本の高濃度ボトルは必要だ。塩系の所要量は発汗量により決まる。糖系は活動量と吸収時間による。状況が違うので、分けるべきだ。つりそうだったり熱中症気配のときには塩をとり、胃腸の負担を減らす。でも涼しくて筋肉ノートラブルなのに塩とりすぎてもまずい。
 
今回は、塩と糖の濃度を変えるところまではやってないけど、テキトーに作ったら高濃度ボトルに大量の塩が入ったことと、そもそものレース中の糖の所要量が少なかったことから、 問題なし。ここまでを4時間のミドルレースで試せたのが、今回の1つの知的・経験的な収穫。
 
今後は、ジップロックの小袋を作る段階で、塩(とクエン酸)の量を変えたのを別々に作り、個別にボトルに入れることで、もう少し管理の度合いを高めてみよう。
 
レース中に信じられるのは、結局、自分の身体の感覚でしかない。それは自分の体質、その日の体調、レース環境、いろいろなものの複雑な作用によって、その場限りのものとしてのみ生まれ、消えてゆくもの。科学とは、その感覚へと、より少ない試行錯誤で辿り着くためのジャンプ台として存在する。ここで書いたのは、そのための、僕なりの考え方。
 
 
<注意点>
  1. この2本のボトルは、絶対に落とさないこと!!
  2. 少し冷えた時期のレースでは、「暖かい部屋で作って、外に出したら冷えて、飽和点こえて、ボトル口で塩が凝固」という事態もありかねない。ややユトリを持たせて、レース直前に確認するのも大事
ボトル落とさない方法は、次回書こう。これも専用品は必要なく、総コストは2,000円未満だ。
←バンク対応でコスパ高いのはこの2つ。レースと練習それぞれ


『渥美半島の風』 (←公式ショップにリンクします)も各方面から大好評いただいてます、ぜひお読みを〜〜
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2016年9月15日 (木)

1年ぶりのレース、伊良湖Aタイプ総合8位/エイジ優勝 〜直前3週から前日まで

2016年9月11日、愛知県渥美半島先端の伊良湖、昨9月シカゴ世界選手権以来のレース出場。
 
<結果>
  • Swim 0:32:36 11位 (男子10位)
  • Bike 2:03:09 16位 (通過2:35:45 9位)
  • Run 1:27:17 12位
  • Goal 4:03:02 総合8位/M40-44優勝
10−9−8と種目ごとに順位を上げてくのも僕のパターン。いつもより少し大きな数字なのは置いといて苦笑。結果を気にしない分、いろいろ試してみたことはあり、学びも大きかったかな。そして、レースって楽しい、と改めて思った。
 
<1年間>
7月末に出版された『渥美半島の風』掲載「潮騒のなかの祝祭」  (←公式ショップにリンクします)初稿を書き上げたのが、この年末年始のこと。レースする気もなかった今季だけど、ここまで書いておいてその場にいない選択肢はないよね。
 
僕の競技力と文章力とは、ある時期までは相互作用で同時に上がっていたのだけど、どちらかを極めようとした時には両立したことがない。2014年までの人気記事はシーズン外が多い。読者増の最初のきっかけになった2013秋のKONAシリーズ3万字は、あーもーこれでトライアスロン辞めてもいーわーとさえ思いながら、一切練習せずになまってゆく一方の身体で書いていた。2015年はシーズン中からしっかり書いていて、おかげで読者さんは増えたのだが、競技成績への興味はほぼなくなっていた。最終戦のシカゴの後は、三浦クロール講座など有料コンテンツの制作に踏み出して、以後、レースに出場すらしなくなった。「潮騒のなかの祝祭」の磨き上げは断続的に続き、さらに初夏からは10万字(進行中)、2万字(完了)、とヘビーな書き物が次々と登場し、僕にとっての新たな力試しの場になった。レースって昔やってたなあ、て思いながら。
 
<3週間トレーニング>
5月、伊良湖Aの出場通知。短いBタイプなら前年総合2位のシード権が使えたけど、伊良湖を語るのに、Aタイプにしかない太平洋岸一直線の折返しラン区間を体験しないわけにはいかない。落ちたら今年はレースしないつもりでAに応募したのだった。
 
レース中に脚が壊れたり心臓が止まったりするのもカッコ悪いので、最低限の準備はしなければ、と時々思い出したように動いてみる。まあ、3km以内の移動ランとか、往復30km以内のクロスバイク移動とか、技術だけ考えたゆったり水泳とかは、日常的に続けてはいるのだけど、これは生活習慣の一部なので。
 
練習記録をみると、定番のオフロード5km走の1km平均で、6月末@5:05, 8/4@4:53, 8/8@4:50, と、微妙に上がってはいくものの、依然ピークより1km1分くらい遅い。20kmなら20分。
 
そろそろヤバいぞと、3週前からレース意識の練習を始めた。
  • 8/20: まずバイクのホコリを払い(ええ、そこからです)、700mの緩斜面6往復、からの芝生Runを100分間じんわり計15km、平均6:40/km
  • 8/21: Bike150分間かけて細かい起伏をじっくり(距離は興味なし)
  • 8/22: 休養
  • 8/23: Bike120分間の起伏+700m緩斜面ダッシュ×4、Swim130分、最後に200mがんばって3:07(短水)
  • 8/24: Bike700mダッシュ×4(総距離は10km未満)
  • 8/25: 標高2000m超の高原で2.5hに渡り15kmを移動
この6日間の集中刺激ウィークが、2週後、十分な成果を返してくれたと思う。
 
「これだけで?」と思うだろうか? そう、「目標」が明確なほど、あれもこれもやろうとしてはいけない。その目標達成に有効な「目的」にだけ集中することだ。ここでは、ゆっくりめ&やや長めの動作で、耐久性能を部分的に戻すことが目的。たまに短い刺激を入れて、ほどよく筋力を戻す。その負荷量と休養とのバランスが、目的を実現するための最大のカギだ。
 
こうした急な立ち上げの疲労は、気をつけてはいても、数週間規模で身体の深部で続くものだ。今回では、レース10~5日前頃には全然身体が動かなくなった。Swim200m全力で3:15(長水)とか。でも、やり過ぎてはいないので、レースまでには戻せる確信があった。少し体力が戻った3-4日前、再びレースペース錬を30分以内でのみ復活させる。この疲労感は直前まで続いたのだけど、多少の疲労感なら、意図してレースに持ち込むつもり。特に練習不足の時には、直前まで負荷をかけ続けたほうが、レース成績を上げると思う。
 
<伊良湖へ>
東京生活者の僕はクルマを使わず、移動は全て電車だ。木曜夜、新幹線こだまと鈍行列車を乗り継ぎ、実家へ。自転車以外の荷物はMacとか(もちろん例の電源アダプタも笑)最低限のもの以外は全て送っておき、今回はレース前なのでシートポストとDi2バッテリーも外して送って、担ぐ負荷を減らす。輪行の身体ダメージは大きくて、僕は最近は前日移動は避けており、前日移動時にはバイクを事前にヤマト便で送る。ヤマト便は楽なようでそうでもなく、事前に大型ダンボールを確保し(ソフトケースよりはるかに安全)、分解梱包し、また組み直す手間が大きくて、できるだけやりたくない。
ちなみに、これらの手間は、僕がレース参加数が必要なJTUランキングへの参戦をやめた理由の1つだ。年に1回くらいなら、新鮮で悪くないんだけど。
 
金曜は完全休養、土曜午前に親のクルマで伊良湖に入る。
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受付前の時間でバイクコースを試走。ほとんどクルマのない、たまにあってもレース参加者かゆっくりな農作業軽トラくらいの、海沿い平坦は気持ちいい。赤トンボもいっぱい飛んでいる。たまにヘルメットのバイザーにバチンと当たって可哀想だけど。3回くらいポジション調整を入れながら、14kmコースをほぼ2周。前日に走り過ぎなんだけど、今回の目的はレース成績よりも、レースの体験そのものにある。少しの疲労ならレース中に持ち込んだ方が、次のロングレース対策にもなるし、と開き直っている。速度はせいぜい36kmhくらいまで、全然上がらないけど、それも気にしない。
 
受付ではいきなりマーシャルの方々に次々ご挨拶いただき、参加者さんには「本どこで売ってるんですか?」と聞かれ。「いや僕も知らないんですよ、いってみないとわからないんです」と答えざるをえないような、ユルい仕組みであの本はやっとります笑。
 
宿で荷物を預けると、ロビーでceepoの展示会。ジョー・タナカはどこであれ行くと居て、一体何人いるのか? 同行される岡崎「とらいあんぐる」神谷店長と、最新器材やポジションについて(どちらかといえばその闇について)しばし話し込む。レース前後は、遠くの知人とリアルに話せる貴重な場、時間はいくらあっても足りない。なんでもそんなもんか笑
 
次いでSwim会場で試泳。これも気持ちよくてほぼ2周。およぎすぎ! クラゲはあちこちいて、クラゲよけクリームSAFE-SEAを顔に塗ったのが直前過ぎて(乾かす時間が必要)、一度ピリっときた。浅瀬〜砂浜部分は、干満も考慮し、当日のベスト・ルートを予想しておく。
 
3時に部屋に入り、3時半の説明会に出て、4時過ぎに前夜祭会場へ。本の担当の方を見つけ、
 
「どこにしようか? ここがいいかな? あ、机ないね(笑)」
 
とパイプ椅子に本を並べて販売開始。「ゴール前にいます」とFacebookに投稿。しばらくして机が届いた笑。そんなユルさでも10冊ほど売れてよかった! 見つけれなかった方ごめんなさい!
 
(続く)

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『覚醒せよ、わが身体。〜トライアスリートのエスノグラフィー』

  • 初著作 2017年9月発売

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