最新痙攣対策「クエン酸+塩ポカリ」の実証成功 〜伊良湖トライアスロン'16 vol.2
伊良湖トライアスロン2016、初めてやってみたことは、ざっと1ダースはある。実験は練習で済ませておくべきなのだが、レースも練習だと捉えれば構わない。
<実験リスト>
準備 ←先のブログの通り)
- 直前3週間でレース用の身体を作ってみる
- 前日に動き過ぎて、疲労を持ち込んでみる
装備)
- バイクのDHバーを平行にしてみる (従来のハネ上げでなく)
- ウェットスーツのサイズを上げる (XSからSへ、ゼロディの場合)
- 半袖ワンピースウェア(ゼロディTTスーツ)
- ふくらはぎサポーター(CEP)つけない
- 移動ラン限定で使ってた古いアディダスMana7のレース使用
補給)
- ポカリに足す塩を増やし(1L粉末あたり従来推定1-2gを5gに)クエン酸も足す(5g)、
- ショート以外では初めてジェル等のエナジー製品不使用、
レース運び)
- スイム: 意図して単独泳しながら周りを見る
- バイク: 入りをゆっくりめに
- ラン: 前半5kmを普通にゆっくり、エイド区間5mのミニ・ウォークブレイク
本記事では、補給について書いてみよう。
<バイク補給>
以前から書いているように、「スポーツドリンク、という名前で販売されている清涼飲料水」は、日本の夏の耐久レースを想定していないので、塩のバランスは自分で考える必要がある。さらに、クエン酸の理論を、もっぱら運動開始後に応用してみたい(スポーツ専用ドリンクと同じような効果を期待できる)。
そこで大阪の研究家、石橋剛さんが提唱する、糖・クエン酸・塩の比率をもとに、ポカリ粉末1Lごとに足す量を計算。(塩=ナトリウム:Na100%と仮定)
バイクパートは2時間ほど、ポカリ2L分をベースに考える。2時間で吸収可能な量を少し超える想定だが、残せばいいし、胃に残ってラン中に吸収してくれてもいいので。結論として、「ポカリ粉末2L分+(天然塩+クエン酸)各10g+水1.5L」を、ボトル2本に、濃度を変え用意した。さらに真水650mlを用意。つまり電解質濃度がゼロから高濃度まで3種類の計2Lちょっとの水分を積む。カロリーは計580Kcalくらい。
<痙攣防止の最新手法>
(不味い)味覚刺激には、痙攣防止の高い効果があることが、最新の海外の研究で明らかになっている。ウォール・ストリート・ジャーナル日本語版2016.7.15記事を参照↓↓↓
引用)
「神経系から筋肉に送られるインパルスが何らかの原因で誤って伝達され、筋肉のけいれんを起こし・・・強い感覚入力を与え、口内と食道の受容体を刺激することで、筋肉を制御する運動ニューロンを含む神経系に変化を加える」
「マキノン氏(※ノーべル化学賞受賞者)は自分を実験台とし、キッチンでスパイシーなジュースを作り始めた。材料となるショウガとシナモンの分量に変化を加え、電気的刺激でけいれんを誘発しようとした。それから10年、同氏は自分の仮説の正しさに確信を持ち始めた。スパイシーな調合ドリンクを飲むことで、けいれんが起きにくくなった」
これを応用したのが、今回の高濃度ボトルだ。痙攣しそうな時に少量でも飲むと、すーっと改善する。クエン酸と塩の不味さに即効性があるからだ。さらにミネラル吸収が時間を置いて効いてくる。
※個人差が大きなことなので、各自、ベストな方法を探しあててくださいね。いうまでもないことですが
<やりかた>
作り方は単純で、出発前には、塩とクエン酸をおおよそ5gづつ入れたジップロックを2袋用意しておく。レース直前にこうゆう面倒なことはできないものだ。そして当日朝、
- 1つめのボトルに全ての粉を投入し、ぬるま湯で溶かしてドロドロ液を作り (このドロドロ液とジェルの違いはなんだろう?)
- その一部を2つめのボトルに移し、水で薄めて、飲みやすい濃度のボトルを作る。濃度は味見しながら決める
- 1つ目のボトルにはより多くのドロドロ液が残るので、水で薄めると高濃度ボトルのできあがり。こちらはどれだけ不味くても構わず、むしろ不味いほどよい
レースでは、時々の体感で3種類のボトルを飲み分けるので、事前に濃度計算してもムダだ。
バイク中のエネルギーはこれだけ。ランでもスポーツドリンク(たぶん低カロリーのVAAM)しか取らないので、4時間の全レースを通じて、ポカリの糖分だけしか摂らない、ということ。実際それで十分。
<レース中>
低濃度ボトルをDHバーに、高濃度ボトルをダウンチューブに、水ボトルをシートチューブにセット。 朝7時過ぎにトランジットにバイク預託する際には地面に置いておき、40分前にケージに挟む。これは、バイクBAYAMOのハンドルが安定せず、早く挟むとブラブラしてしまう(これニールプライドの細かな欠点)ための、窮余の策。
朝食はスタート3h〜2.5h前にかけ "僕にしては控えめに" (=周りにどう見えたかは別)。6:30に食べ終わり、9:00スタートで、バイクスタートは9:33ごろ。痙攣の予兆があり、数分後には低濃度ドリンクを少し飲んだ。つまり補給開始は食後3h過ぎからだ。
当日は、涼しくて全体の発汗が少なく、高濃度ボトルが半分余ったので糖を2hで400Kcalちょっと摂取した感じ。ただし、CEPカーフスリーブをつけなかったフクラハギには何度か痙攣の気配があり、その都度、高濃度ボトルを舐めることができたのは、よかった。バイクパートは最も長く、また痙攣しやすくもあり、やば!と思った瞬間にとれることが大事だ。
<ロング対応>
僕のKONA'13と宮古'15では、ジェルを何本か水に溶かしてボトルに入れたが、塩分不足による痙攣を起こした。特に宮古のアクエリは薄すぎてトライアスロンには向かないと思っている。
ジェル的な成分よりも、まずは塩、というのが今の仮説。実際に、常夏な環境で長時間ランを楽しまれるミドルエイジ(カタカナでかけばかっこいい笑)トライアスリートさんが日常的にこの手法を活用され、報告いただいているので、かなりな確信を持っている。
長時間の場合、濃度を飽和レベルまで高めて総量を増やし、(溶かしきれなければボトルを追加)、水分をエイドで受け取ることで、水とミネラルの総量×濃度をコントロール可能。濃度は胃でミックスすれば十分。
少なくとも、糖類中心と、塩系中心の、2本の高濃度ボトルは必要だ。塩系の所要量は発汗量により決まる。糖系は活動量と吸収時間による。状況が違うので、分けるべきだ。つりそうだったり熱中症気配のときには塩をとり、胃腸の負担を減らす。でも涼しくて筋肉ノートラブルなのに塩とりすぎてもまずい。
今回は、塩と糖の濃度を変えるところまではやってないけど、テキトーに作ったら高濃度ボトルに大量の塩が入ったことと、そもそものレース中の糖の所要量が少なかったことから、 問題なし。ここまでを4時間のミドルレースで試せたのが、今回の1つの知的・経験的な収穫。
今後は、ジップロックの小袋を作る段階で、塩(とクエン酸)の量を変えたのを別々に作り、個別にボトルに入れることで、もう少し管理の度合いを高めてみよう。
レース中に信じられるのは、結局、自分の身体の感覚でしかない。それは自分の体質、その日の体調、レース環境、いろいろなものの複雑な作用によって、その場限りのものとしてのみ生まれ、消えてゆくもの。科学とは、その感覚へと、より少ない試行錯誤で辿り着くためのジャンプ台として存在する。ここで書いたのは、そのための、僕なりの考え方。
<注意点>
- この2本のボトルは、絶対に落とさないこと!!
- 少し冷えた時期のレースでは、「暖かい部屋で作って、外に出したら冷えて、飽和点こえて、ボトル口で塩が凝固」という事態もありかねない。ややユトリを持たせて、レース直前に確認するのも大事
ボトル落とさない方法は、次回書こう。これも専用品は必要なく、総コストは2,000円未満だ。
←バンク対応でコスパ高いのはこの2つ。レースと練習それぞれ
←クエン酸は掃除にも使う。コスパ最高! 歯を痛めるので飲んだ後はうがい必須です
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