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2016年3月 1日 (火)

「ウォークブレイク」Vol.2 〜東京マラソン成果と、ラン技術向上について

ゆっくり歩きをランにはさむ「ウォークブレイク」を紹介したのは、先週末の東京マラソン2016の前日。もう少し前に紹介できればよかったけど、まあ、選択肢は多いに越したことはないよね。

<報告いただいた成果>

自信を持って臨めたのなら練習どおりに走るべきで、実際やってみた友人&読者さんは皆、練習不足などそうせざるをえない事情がある方。それでも一定の成果を報告いただいた:

  • エイドでは早くからゆっくり歩いて補給し、大崩れなく無事に完走できた
  • レース直後も、翌日も、ダメージが激減した
  • 3度、10秒歩くだけ大幅タイム向上し、いつもの痙攣も起きなかった(※42kmペース走の事例)

    東京が勝負レースならなんてこともないだろうけど、トライアスリートにとっては、ダメージの残らないフルマラソン完走法を獲得できるだけでも十分な成果だ。その走法は、そのままロングレースでのRun技術となるだろうから。マラソンとトライアスロンを両立させるためにも使えそうだ。

    ただ、いつも一定ペースでの距離走だけしてる方には「練習でやっていない動作」となり、リズムに乗りにくかったようだ。分かれ目となったのは、 「レースは練習のように」という基本中の基本のように思う。この手法で得られる技術向上効果は大きいと思うから、練習からの活用を強く推奨したい。

    <ラン技術は「変化」で上がる>

    この、「歩いて脚を緩め、もう一度再加速」という過程は、「動作の変化」を含んでいる。

    変化を感じ、考える繰り返しが、技術を向上させる。

    ペース走的な「◯◯km1本」という練習が中心の市民ランナー&トライアスリートは多い。ただ、これを「動作の変動幅」という視点から見れば、「変動幅ゼロ」の練習だ。上げてゆくビルドアップ走なら「変動はさせるが、抑える」練習といえる。これらは「十分に上がった技術を定着させる局面」で最も有効だと思う。基本動作の改善余地は改善し尽くして、あとはレースペースでの動作をわずかでも磨き上げ、そしてフィジカルを極限まで上げるための練習。つまり上級者向けだ。

    だが「これから技術を上げる局面」なら、大きな動作変化を繰り返した方が、体内センサーの性能を高められるだろう。ペース走偏重によって技術向上チャンスを逃していないか、考えた方がいい。

    初心者の場合、始めの1年くらい(=期間は人による)は何をどうやっても速くなるだろう。周りがペース走ぽいことををしてるのを真似しても速くなるだろう。でも、初心者ほど、途中で歩きを混ぜるべきだと思う。(詳しくは 「ギャロウェイのランニングブック」 読もう)

    そこで起きうる問題は、そこでの動作に安住しはじめてしまう「ペース走の罠」だ。ここからの脱皮には、スピードが必要だと思う。これはSwim、Bikeも同じく。

    僕は練習ではいつもゆっくり歩きを入れてきたので、その効果はよくわかる。インターバル的な練習では、僕はつなぎをゆっくり歩くことが多い。川内優輝選手などのメニューでは、つなぎはkm5分台で200mなど、早め短めで行う。でも僕のレベルでそれをやると、身体を追い込み過ぎ、技術向上にエネルギーを向けられなくなってしまう。(同じことを、ショート主体の強豪エイジ選手も言っていた)

    Img_0598(IM Kona'13 Run41km)

    <速度と距離を変える効果>

    「動作変化」とは、「技術向上の出発点」なのだ。そこでまず行うべきは「ペースを変える」こと。耐久系の場合、「スピードを上げる」ことになるだろう。すると距離は当然に短縮=小分けすることになる。

    先日、Facebookで紹介したアメリカの強豪エイジ女性の1時間未満メニュー→ https://www.facebook.com/Masuyuki.HATTA/posts/10205636665891631 は好例。短距離インターバルっぽい構成だが、個々のスピードは必ずしも限界域ではなく、レースペースに合わせて抑制されている(インターバル=無酸素領域ハアハア、的な思い込みがもしあれば今ここで捨てましょう)。具体的には、10km-1kmでの最高速ペースを、10-12分の1に分割した距離で、各6−3本、合計距離が7.5km=75%になる量。レースペースでも1割弱の距離でなら、十分に身体をコントロールできる。

    欧米にかぎらず、国内でも強豪エイジはこうしたレースペースを上回るスピード練習を、週1くらいはやっていることが多い印象。ロング専門でも、やってる人はやっている。

    こうした「細切れメニュー」を採り入れたら、感覚が変わった!という実践事例を「おかん」氏が書いている: その初回 → 2回め 成績急上昇中の彼女も、先の「ペース走の罠」からの脱却にまずSwimで成功し、同様のブレイクをRunで狙い始めた。

    まずはやってみて、違いを感じることから始まる。

    <短時間高負荷

    ここからは、個々人の諸々の「スタイルの選択」の問題。

    このように細切れ化してゆくと、「短時間高負荷」型にシフトしてゆく場合が多いと思う。

    東京マラソンでは、30分以上短縮してサブスリー達成、というトライアスリートからの報告もあった。1kmあたり50秒近い大ジャンプ、聞くだけで嬉しい。この1年間、短時間に集中し、「5kmインターバルと10㎞ペース走中心、 20km以上は練習せず、直前月100km未満」という練習だそう。

    高負荷走に慣れていると、長距離化は、アクセルを少し緩めるだけで、あるところまで高速巡航しやすい(今回事例では30kmあたりまで)。距離走を増やせば、その先が少し楽になるだろうけど、するとバイク・スイム錬との兼ね合いが出てくる。長い練習時間を確保できるなら、バイクを優先させた方がいいと思う。

    もちろんこれらは、本人の集中力と自己管理の成果。方法論とは、せいぜい助走路の一部に過ぎない。

    ただ、高負荷錬ほど集中力を要するもの。迷いが混ざらない方がいい。その際に、 「これでいい」と確信できる材料を提供できたのなら、その範囲内では貢献できているかな。モチベーションも時間も、有限な資源だ。

    こうゆう練習が成果をだしてゆく過程では、技術を向上させやすいと思っている。というか、僕はそうゆう経験をしてきた。そしてこれらスピード系の負荷は、加齢と共に重要度を増すはずだ。

    ・・・

    詳しくは「ギャロウェイのランニングブック」2002年改訂版、それを受けた(と思われる)英語のJoe Friel “Going Long”(2009)あたりをどうぞ。基本、ロング走の手法なので、51.5レースでの10㎞ランでは不要だと思うけど(40分未満の場合)、急坂、エイド、Uターンで使う手もある。その生理学的な仕組みは次回にでも。

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    『覚醒せよ、わが身体。〜トライアスリートのエスノグラフィー』

    • 初著作 2017年9月発売

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