トライアスリート目線から見たシャラポワのドーピング問題
ちなみにここのYoutubeコメントは少数ながら強烈で、
" I know a couple of MTB guys who take it --- they say it really helps with their stamina. ""I am a pro cyclist and I use Meldonium/Mildronate. Our whole team does. It has very calm side effects and we all notice improvements when out on the road."そしてリンク先のFbページから「120錠149ドル送料無料」で世界中から買える。(この手の詐欺は多いけどね) 真偽はともかく、日本語だけ読んでると限界あるよね。
念のため、シャラポワは17歳でウィンブルドン制覇。服用は20歳頃の故障が出始めてからと言ってて、さすがにトラブルのない17歳でクスリに手を出さないと思うのでこれは真実だろう。テニスという競技の性質からも、こんなもん使わなくても十分に勝てるはずの選手だ。ただ、長時間のゲーム終盤に体と心を少しでも上げられるのなら有利なのも間違いない。不安の中から手を出したら効果を感じて、て経緯かな?
この点、WADAの元会長は「言葉にできないほど無思慮だ」 と語っている。このインタビュー内容はいちいち的確。原文は “reckless beyond description” かな。「説明不能なほどアホ」とは、「現実にはアホじゃない=故意犯だよね」ということを欧州セレブらしくお上品に表現してる感。受験英語の「Too〜To構文」とか古文の「二重否定は強めの肯定」的な。
< 社会の変化 >
もう1つ言えるのは、1990年代から比べて、取締が圧倒的に厳しくなっているということ。この主因は、検査技術や住所管理など手法(=馬軍団はこれで逃れた)の進化だろうけど、背景にスポンサーの変化もあると思う。
ないものとして見ないふりする態度から、リスク管理としての積極的排除へ。過去の大きな事件で結構なブランド毀損してそうな大企業も思い浮かぶ。ネットであっという間にプラス数字にマイナス符号が付いてしまう時代、最近のスポンサー社の対応はとにかく早い(下記ロイター記事参照)。予想されるリスクとしてシミュレーション済なんだろう。WADAへの資金提供も、できれば削りたい単なるコストから、広告活動に伴う「戦略的な保険料」のようなものに変わっているのではないだろうか。
凄い選手が表れると「やってるのか?」と疑ってしまうようでは、明らかに競技の魅力を、そして広告価値を損なう。
スポーツとシャラポワの広告価値について、ロイター記事では
- スポーツのスポンサー・ビジネスは世界全体で投資額600億ドル(約6兆7500億円)
- シャラポワのコート外収入は通算2億ドル以上
FT記事では
- シャラポワ選手は、米誌フォーブスの世界で最も稼ぐ女性アスリートとして過去11年にわたって毎年1位を獲得
- スポンサー契約料などで年間2000万ドル以上の収入を得ており、その数字は15年のテニス獲得賞金を上回る
- フェイスブックに1500万人以上、ツイッターにはさらに200万人のフォロワー
と、ビッグビジネスぶりがよくわかる。これ以上カネあっても使い切れん気もするのは凡人の想像力の限界で、有名人さんたちは平気で100億円くらいを溶かして破産なされる。。マトモな人なら引退後に投資などで影響力を維持・拡大できるだろうし。
< シャラポワ選手について >
とここまで書いてもう一度確認しておくと、こうした状態は「3ヶ月前まではクリーンとされるもの」であったということ。そのクスリにどれだけの効果があるにせよ、シャラポワは服用前の17歳にウィンブルドンを優勝してる正真正銘の世界トップ選手。何らか復帰し、再び活躍してほしいと思う。
そして深刻な副作用が残らないことも祈る(どうやら、副作用の低いクスリであるようだが)。一般に、効果の強いドーピング薬物はかなりの高確率で深刻な健康被害を残している。たとえばEPO服用の自転車選手には性ホルモン系統のガンが多発している。
たぶん効果と健康被害は比例し、たいしたことないクスリならダメージもそうは大きくはないだろう。そしてドーピング対策が進むことで、強いクスリほど使いにくく、問題になるのは効果も弱いものになってゆく、その途中ではないかと思う。
< 僕らにとっての結論 >
だから僕らは、「観客として」は、そう悲観的に見ることもなく、幾らかの距離感を持って見ていればいいと思う。
そして「競技者として」の立場からは、結局効果の高いものとは、リカバリーには「睡眠」が最高だし、サプリメントなら野菜果物。競技中にパフォーマンスを上げられるとすれば、クエン酸、ココナッツオイル、最後にコーラ、等々、ごくアタリマエなもの。なにより練習!
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