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2015年10月16日 (金)

【英語教室】世界はヒロム・イナダ(83)をどのように称えているのか?

アイアンマン世界選手権2015公式動画 が発表された。10分ちょっと。稲田さんは最後の方、9:50から登場する。以下写真はそちらから、ゴール1−2mくらい手前の最後の転倒の瞬間:
20151016_122042
このカイルア・コナというのは本当に小さな田舎町で、もしもこの大会がなければ、マジで超ド田舎なままだったと思う。そこに作られたこの花道も実際かなり狭い。そこに応援者+自分のゴール後に応援に回った人たちが密集し、深夜24時の閉門前はすごい熱気となる。らしい。
 
僕が出た2年前は、当日までそれを知らなくて、自分のゴール後に知らされ急遽いこうと思ったのだけど、夜に強めの雨が降り、せっかくシャワー浴びたあとに濡れた靴に足を入れる気がしなくて、23時頃だったかに寝てしまったのだった。当時81歳の稲田さんが制限の数分遅れでゴールに入られてかなり盛り上がったらしく、もったいなかった笑
 
今回の稲田さんゴール前の状況は、現地応援でまのあたりにした日本人からコメントいただいた。以下引用:
 
「彼の一度目の転倒(写真のシーン=ゴール100〜200m手前)を目の前に見ました。その後立ち上がって一心に前を見る姿に私が受けた感銘は文字に出来ません。
 
その場に居た誰もが、その時、彼の記録について知っていたわけではありません。しかしその場に居た誰もが、彼の転倒に嘆き、立ち上がる姿に勇気づけられ、そしてフィニッシュしたときには大いに歓喜しました。
 
私は確信しています、私を含め、あの時彼の走る姿を見た者誰もが、口を揃えて"Yes!! He's an IRONMAN!!"と答えることと。」
 
Facebook写真への英語コメントをざっと眺めて、現場目撃証言は3つ見つかる:
 
"We were there cheering him on, from where photographer took this pic. Very heart tugging moment. We all wanted to go over to help him up. His amazing efforts touched all of us."
 
"Thank you sir for being the most inspirational story of that day. I was there and I saw you and it brought tears to my eyes just to see your determination and will! You are definitely an Ironman and we all hope you return to Kona next year!! Congratulations to you."
 
"The crowd was roaring him home, he got up and jogged the last 200m with the screaming crowd behind him, no help.
He got to the top of the ramp and stumbled on the flat section falling again, mike Reilly called him home an ironman and helped him up a little and he crossed the line. Last fall was on the top of the ramp about 1m from actual line."
 
苦手な方はGoogle翻訳でどうぞ、先の日本語のとだいだい同じに、応援する側がちょー感動してる様が伝わる。そして、これら英文は、アイアンマン完走者をどのように褒め称えるのか、という英語表現のお勉強にもなる。
 
というわけで本題。今回は英語をお勉強しよう。
 
て、僕は教えられるほど英語を知る者ではないのだけど、これら知識があれば、この競技をより深く理解しやすいと思うから。
 
まず、前回紹介した公式Facebookコメントは、かなり気合を入れてポエムしていると思う。全米放送の人気番組であるNBCの総集編で、渋い低音の男性ナレーションで読まれる原稿のような。(NBCで実際どう扱われるかちょっと楽しみ!)
 
まず冒頭:悲劇としての側面を、勝者と対比させることで強調している。
 
With stories of great personal victories also come stories of immense heartbreak. Hiromu Inada, merely seconds past the cut-off time, would have officially become the oldest male Kona finisher.
 
「仮定法過去完了」は、ほんの数秒差で逃した残念さを強調する表現でもある。ここは大学入試みたいだ。
 
大学入試ではまず出ない表現、それが次の
 
He's certainly an IRONMAN in every sense of the word,
 
大文字ひと続きの「IRONMAN」は登録商標であり固有名詞。ハリウッド映画のは「Iron Man」と普通名詞を使っているので、映画会社側は商標違反を問われることがない。たぶん。
 
そして「IRONMAN」の定義とは、Swim2.4mile, Bike112ml, Run26.2mlを所定の制限時間内に自力で走り切った者をいう。稲田さんは数秒差でDNF=記録抹消!という扱いなので、形式的にはIRONMANではないのだ。
 
そこで、”in every sense of the word”=「アイアンマンという言葉が持つ、あらゆる意味において」、という表現が登場する。「意味」、つまり、「歴史と文化の理解」から考えることによって、むしろ彼こそが「本質的なIRONMAN」である、と捉えることが可能になる。これは前回書いた話と同じ。
 
続く、
 
(He...) embodies everything amazing about our sport.
 
では、embodies=「Bodyの内にある」という言葉を使うことにより、「トライアスロンという競技のあらゆる意味、魅力、感動は、この身体1つを見れば伝わるよね」、という身体感覚を強調している。
 
最後の一文は、simply overwhelming =超スゲー!と締めるわけだが、それでは普通すぎるので、The emotion in the photo captured とポエムな主語を使う。ここでは、「稲田さんがembodyするもの」が、観客達を感動させ、その場に「巨大な emotion のカタマリ」が生まれている様子を表してる。ここから、応援者も一体となってつくり上げるのがアイアンマンであることも読み取れるだろう。
 
・・・
 
もうね、競技主催者の言葉として、これ以上の賞賛表現は無いですよ。
「我が社が提供する価値を知るには、この写真1枚だけご覧ください」と言ってくらいの意味を込めている。
 
僕が前回書いたのも、この数行の文章を、背景を知らない方に向けて説明する歴史の授業のようなものだ。今回は英語の授業を書いてみた。(というか、おもわず書いてしまった。。)
 
以上の理解があれば、公式ページの写真→ https://www.facebook.com/IRONMANWorldChampionship/photos/a.512314138901624.1073741827.181824205283954/733468220119547/?type=3&comment_id=733484183451284&notif_t=like への英文コメントが、スムーズに理解できると思うから。いいね!8千に迫っている!
 
“He's still an IRONMAN!!” 的なコメントが目立つのもわかるだろう。そこに ”in my book!” “in my eyes!” “by heart!” などを付けるのも目立つ。これは、客観的には失敗なのは仕方ないけど、私は認めます、ということ。
 
それだけ、「このKONAという地において完走してIRONMANという称号を得ること」の重さがあるということだ。多くのトライアスリートが、その価値を心から信じている。
 
“Legend!” ”You are a true leader in our beloved sport!” など歴史に残るよ、という表現もちらほら。
 
同じ写真が、アルバムの一部として後から追加されている。こちらで目についたのは:
 
 
もしも巨大な写真プリントで、自由にメッセージ書いて、と置いてあれば、何千も書かれるだろうと。まあ、それはネット上で実現してるわけだが。
 
完走者一般への賞賛表現としても使える。ただし最大級の:
 
"I love this picture... pushing your body to the extreme limits of pure exhaustion!"
 
"This picture is the epitome of strength, courage and determination. He is my hero."
 
I"ronman is not just crossing the finish line, it's about you crossing the end of every endeavor in your life."
 
僕にとって新鮮だったのは、"inspiration” という表現。結構目立ち、最大限の賛辞として使われているようだ。単なる勝者ではない、人を心から熱くさせる者、ってとこかな?
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本当に。
 
姿1つで、多くのものを伝えている。
 
・・・
 
このように、トライアスリートは情報源を英語に拡げると、圧倒的に見える世界が変わります。
英語は慣れです。ジョギングと同じ。しかもレベル的には、ランニングの1km8分ペースで1km走れれば十分(=40代男子の場合で) Google翻訳で楽しながら、こまめに接していくのをオススメ。
 
日本語に無い情報なら、使うモチベーションも上がる。Joe Frielのこの2冊は (該当する人にとっての)重要性が高く、しかも翻訳が出てない。僕も時間が空けば読んで報告したい(けど空かない、、)
そして来季への準備を:半額セール中→

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