【図解】 TTバイクの重心特性を理解しよう
前回記事(←左側)も好評で、幾つか新たな知恵もいただけた。今回はそれらを踏まえ、安全にレースするための「基本」を確認しておこう。
先に結論を書くと、コーナリング一般には「後ろ荷重」が必要、TTバイクは「前荷重」、この相反が最も鮮明に表れるのが「下りのコーナリング」だよ、注意しようね、という話を書く。
<ロードバイクとTTバイク、荷重位置の図解>
人力バイクの重心は、車体中央、すなわちBB=ペダル回転軸上に位置させるべきだ。(ニュートラル荷重)
「坂」という要素が入ると、上り斜面ではそのままでは後ろ荷重してしまう。こんな感じ@斜度10%→ 身体を前に移動させれば、BB上に重心を戻すことができる。下りでは逆だ。状況によってはその修正はなくても問題ない。各自状況判断してください。
※ただしそれは「意識」の話。客観的には、BB真上に重心を置いていても、上りの場合、より下側に位置する後輪への荷重が増えるように思われる。つまり主観と客観は逆。(物理くわしい方あってます? ワタシ理科の苦手な文系人間です)
(ニュートラル感を出すために改訂してます、初稿ではもっと傾けてた)
コーナリングの場合には、「後ろ荷重」が基本。これはエンジン付きバイクにも共通する普遍原理。
この目的は、「減速局面に入った瞬間に投げ出されない」こと。そこで、「ブレーキング直前に」、後ろに荷重を移す=つまりサドルの後ろ側に座り直す。
斜度も考慮すれば(直線同様にニュートラル荷重するため)、オレンジのボックスのようになるだろうか。
ロードバイクはそもそも、あらゆる状況に対応できるよう設計されている(道が舗装されている限り)。後ろ荷重も前荷重も(ダンシングも)等しくやりやすい。下りのコーナーでも、自然な後ろ荷重から、さらに少し後ろ移動させれば、そのまま対応しやすい。
※コーナリングでも「主観と客観が逆」だろう。客観的には、コーナー突入前にブレーキをかけると、「慣性力」が前方向に発生し、それを前輪が受け止める=前荷重となる。それを打ち消し、BB=ペダル回転軸上に重心を戻すために、「後ろ荷重の意識」が必要となる。つまり、「後ろ荷重を意識することで、客観的な前荷重状態を幾らか和らげることができる」というのが実態かな?
※※ ダンシングの場合には、身体は前に出るだろう。ただ、そこでも重心はBB上に置くべきなので(初心者は前輪にかけてしまう)、意識としては後ろ方向ともいえる。まあ例外なので、これくらいで。※※※ 高等テクニックでは、敢えて前ブレーキで前輪荷重をかけることで鋭いターンを狙うこともあるようだが(トライアスロンに多いUターンでは使えそう)、初級者だとジャックナイフ転倒に終わるのでやめましょう。
(ちょと大げさに書いてますスイマセン)
TTとは「ハワイ島コナのバイク180km」なり「宮古島155km」なりに特化した変態バイクであるということを忘れないほうがいい。日本発の人気TTメーカーceepo社も、もとは宮古スペシャルのカスタムバイクだ。(クロモリ溶接では簡単にできた)宮古のバイクコース特性がKONAと共通するためにKONAでも人気になったことから世界進出を果たした歴史がある。
前乗り姿勢による空気抵抗削減と、前重心化による加速感(=物理的には説明困難、生理学的かつ心理学的な話かな)とが、TTバイクの存在意義。少々の下りだろうが、前重心で突き進む。
(※実際には、前述の「斜度に合わせた重心移動」はしてくださいね)
これでも、直線なりDH維持可能な緩いカーブである限りは、レース中は、問題ない。
(※公道練習中はアクシデント対応が必要なので別、だなんてアタリマエなので書きません)
しかし、コーナリングの基本は、二輪車である以上、変わらない。そこで、コーナリング時に必要となる重心の移動幅が、極めて大きくなる。これが問題の核心。
その状況で、ベースバー位置を低くすると、そのままでは、重心位置が前側に寄る。上の写真で想像してみよう (KONA2013、ちなみにバイクパート日本人3位デシタ)。
前に5%傾けるとこうなる→ アイアンマン北海道のニセコの下りでは、これが延々15km続くわけだ。ベースバーだけ下げた状態とは、車体が水平のまま、身体だけこうなる感じ。いずれも前輪に重心が乗る。
僕個人にとっては、幾つかのレース経験を踏まえて、それで良いと判断するわけだ。
ただしその裏には、今回書いた「後ろ荷重」という基本テクニックがある。またこの方法は、腕を突っ張る動作も入り、ある程度の上体筋力を必要とするだろう。
こうした基本レベルの、また個別のスキル体力に応じた話は、ブログではいちいち書かないことが多いので、各自補ってくださいね、という話だ。
またこの問題は、サドルとセットで対応する必要がある。2つの図でのボックスの距離差とは、実際には、サドルに座る位置の前後差だ。ISMでは、通常は股割れの先にちょんと臀部を載せておき(写真)、下りでの後ろ重心は、後ろの幅広の部分にひっかける感じになる(上の写真ではサドル位置が高過ぎてこれに対応できない)。
なお、前回書いたベースバーのハネ上げの意味も、傾けた写真を見ればわかるだろう。(KONAは平坦コースなので水平にしている)
<安藤コーチからの指摘>
以上、「スマートコーチング」安藤隼人代表コーチからいただいた、「前乗り化する危険」を踏まえて、しっかり説明しておいた。
安藤さんからは、つまりは「フロント荷重しすぎない位置で漕げているかどうかの問題」だとして、以下の具体的な情報をいただけた。
- 多くのトライアスリート(バイクスキルの乏しい)は低くする事でフロント加重が強くなり結果的にコーナーでより危険な状態になり易くなる
- 特に昨今のTTバイクはトップ長が長く、ベースバーのブレーキやシフト(Di2)の位置が遠い傾向が強い
- 私(=安藤さん)は、できる限り下りの際はベースバーの手前を持つことを指導
- 可能であればベースバーの先端をカットしてブレーキとシフト自体が近くなるように改造する
- ドロップバーであっても同様で、ブレーキバーを握ろうとして下ハンドルの奥を持てば必然的にハンドル荷重が強くなる
- ブレーキバーに指が届くギリギリの状態で手前に手を置くと腰も後に引き易くなりハンドルへ荷重しにくいニュートラルなポジションになり易い
- もしそれができないようであれば、ハンドル位置が遠いという事
練習方法の動画も紹介いただく。細かく&大きくバイクを振る動作で、重心ブレが明確になりそうだ。大学ロードレース界最強の鹿屋チームも、こうゆう基本を大事にしてるんだろう。僕もこうゆう低速での細かい動きは、練習のスキマ時間のあいだじゅうやってるけど、ここまで徹底してやったことはなかった。
<ボトル落下対策>
ちなみに僕は、ジェルも塩もココナッツオイル も、ボトルに濃縮して溶かしておく。これだけは落としたら致命的で、できれば拾いに戻るかも。
そこで落下対策として、「ボトルケージのボトル接触部に、ゴムテープを巻きつける」。
効果バツグン、これ始めてから落としたことがない。
当然ハメにくくもなるので、十分に練習して、ベストな巻きの厚さを調整しておこう。
<必読コラム>
シルベストサイクル山崎敏正さんがブログで注意点を纏めておられる。一部引用:
「下りは練習してはいけません!!」自然に上手くなってくるのを待ちましょうまちがっても限界速度を試すようなことしてはいけません無限大のリスクのわりに得られるものはわずかですョ下りの「コツ」だけ真似をしてみてください
まったくその通りだ。本できちんと読むのがベストだけどその前にブログも読んでおこう!
流行りのアクションカム気になる。
レース中の撮影が許可される場合、記念映像を撮れるほか、ドラフティグ証拠映像も撮影可能! 練習中では事故時の責任明確化効果も。5,000円のでもいいのか?
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