致命的に重要なこのテーマ(文字通りに)、特に問題なのは、「日本の真夏の長距離レース」の場合だ。
考えるべきは3点:
- ショートとロングの「場合分け」
- 重要度
- トラブルと対策の「関係」
これを2015夏に一気に浮上した 「低ナトリウム血症」についてあてはめると:
- ロングの場合に
- 超重要で
- 胃腸トラブルへの対策ともなる
<1.ショートとロングの場合分け>
まずは、シンプルかつ重要なルールから。ハードな練習も同じくだ。
A) ショートなら、水をかけ続ければなんとかなる。
これに尽きる。KONA5勝のデイブ・スコットが「過去最も暑くタフなレース」 と言った長良川大会は僕は3度走っており、全て晴天酷暑! そうゆうレースで大事なのは、「早めに、水で冷やす」こと。特にバイク中盤以降で首まわり中心に水を掛けていくこと。ボトルが温水になってても、バイクの気流なら気化熱は十分に取れる。
ボトルを凍らす等の工夫は、やれば「より快適に」レースできるが、やらなくてもどおってことはなく、つまり「重要度」は低い。ちなみに僕も1度やったことがあるが、氷がなかなか溶けずに困った笑。溶けるスピードを計算したりするのが面倒で、以来、やってない。
より冷たい方が気持ちいいのは確かなんだけど、それは掛けた直後、せいぜい数十秒間の話だろう。温水でもスリーブに染み込ませる等、気化熱を活用できる絶対時間を増やした方が、体温はよっぽど下げやすい。普通のエイドのボトルで補充できるし。
B)ロングなら、ナトリウム(塩)摂取量を確保すること。
これが急所ではないだろうか。過去しつこく書いた通りに。そしてエイドで確実に水を確保し、常時、飲んだり掛けたりきれる体制を死守すること。この基本の上に、細かなテクが生きる。
ショートなら、庭田選手など言っていたとおり「塩が不足しないように気をつける」程度でもOK。ロングでは「どさっと」 絶対量を確保するつもりで。この差は大きい。
※ここで「ショート」と「ロング」の区別は、距離ではなく、「 暑さの度合い × 暑さに向き合っている時間 」による。スタート前からフルウェットスーツを着た状態も「時間」にカウントされるのはいうまでもない。
だから真夏のショートレースなら、十分な塩分確保は必要。僕もドリンクに塩を足しているのは以前から書いてる通り。「ナトリウム・ローディング」という、「運動開始45分前までに1%塩分濃度のドリンクを体重1kgあたり10ml、1時間にわたって摂取」という方法論もある。(こうゆう数字はテキトーで構わないというのが僕の考え)
朝ごはんの塩分量も大きく影響する。前日からもしっかり確保しておきたい。コンビニのパンとかだけでレース出てる方は、見なおした方がいい。
<2.重要度について>
「ボトルを凍らせる」などはしなくてもどおってことはないけど、塩が足りないと普通にレース終了する。こうゆう嗅ぎ分けが大事だ。
<3.トラブルや対策の「関係」について>
LUMINA(下記)「30個の対策」で挙げられるものは、
- ナトリウム濃度のコントロール
- 身体の冷却方法
- 紫外線対策
と僕なりに分類できる。
1.は、
「水のガブ飲み」による低ナトリウム、それによる熱痙攣、意識障害、お腹ガブガブ→トイレ通い・・・等々の複数のトラブルの原因となる。それぞれ、僕のブログを読んだあとに、「ようやく原因がわかりました」という報告を幾つも戴いた。ウルトラマラソン等のランニング分野でも結構あるようだ。(例:ブログ
「水分補給・・奥が深い!!」)
2.身体の冷却も、順序がある。
- スタート前、できるだけ日陰で、水を少しづつかけて、体温上昇を事前に防ぐ
- ウェットスーツは、1.早く着すぎない、2.まず脚だけ着て上は着ない、3水をかけたり入れたりして冷やす
- バイクでの水掛けはしない人が多いけど、真夏には掛けるべきだ。温水だろうが関係ない。バイク中盤あたりから少しづつ冷やしていくことで、ランスタート時の体温を下げるのだ
- 残った水は残り数kmで全部、腕脚などに掛けて空にしよう(少しだけど軽量化して速くなる?)
- ランでは、エイドの水は全部とって、とにかく掛ける
- カーフスリーブにより、靴への水の過度の侵入を防ぐことができるのは、河原コーチの言う通りだ。アームカーバーも保水力がある。水を吸った分、重くはなるけど、気化熱の効果ははるかに高いと思う
- シューズが水に濡れてマメとかできる方は、良いソックスを選んで、ラン前に履こう
そうゆう「順序・重要度・関係」がみえていれば、実戦で使える。
※なお、バイクでのボトル取りが苦手だからと、DHバーからストローで飲めるのを使う方は多いけど、水を掛けるためにボトル取りは必須技術。絶対に練習して、レーススピードで安全にできるようにね。これはレース出場者の義務です。
僕の場合、夏のショートレースでは3本積み、飲み1、掛け1、両方1、とする。予備のはたいてい最後にどばーーーと掛け捨てて終わるけど、落とすこともありうるし、保険として安心だ。
<僕の「暑さ対策シリーズ」の考え方>
以上書いたことは、僕の「暑さ対策シリーズ」を読まれた方なら判っているのではないかな?
「大元の考え方」を理解していれば、状況に応じて対策を自分で考えることができる。
トライアスロンは「想定通りにいかない事が想定できる」スポーツ、実戦で本当に使えるのは、そうゆう基本から積み上げた情報だと思って、僕は書いている。もちろんトレーニング方法全般にいえることだ。
その分、まだるっこしく長いから、即効ノウハウを求める方には薦めない。
でも、そこに共感してくれる人に対しては、僕はディープに書いてくよー。
大丈夫、即効ノウハウに飛びつくより、基本から積み上げた方が、先々まで伸びるはずだから。
過去記事で最重要なのは、この2つ。
・・・
トライアスロンLUMINA誌は2015年9月号、「トライアスリートのための暑さ対策・補給戦術」を特集していた。中心は、オリンピアン庭田選手の長めのインタビューと、複数の有名プロ選手を中心とした暑さ対策30個。プロ選手が何をしているのか、実態を知ることができて、おもしろい。ただそれは「オーディエンス」としての視点であって、「プレイヤー」にとっては不十分だとも思った。
今回書いたような知識を頭に入れた上でLUMINAを読めば、為になる情報が幾つも入手できるだろう。
(天草の塩は濃厚で甘く、宮古雪塩は爽やか。海域でずいぶん変わるものだ)
(涼しく過ごし、熱く走る!)
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