「暑さの中がんばったバイク錬で平均速度あがった! という勘違い」を説明しよう
「気温が20℃上がると、空気密度が7%減少し、6%のスピード向上効果」という研究成果を発見。
出典) Triathlete Magazineのネット記事Can Heat Acclimation Help Race Performance? から芋づる検索で発見した英語論文→”Effect of Heat and Heat Acclimatization on Cycling Time Trial Performance and Pacing” (Medicine and Science in Sports and Exercise,2015)
「自転車選手が暑さに慣れるのには1-2週間でOKです」という結論を導くことを目的とした論文だが、その過程で指摘されるのが、この「暑さで速くなる現象」だ。これ、真夏の日本でのバイク練習にちょうどいい情報だと思い、少し考えてみた。
実験対象は43kmのTT(=タイムトライアル、つまり独走)で、出力の90%が空気抵抗に費やされる、という条件。これは時速50kmhあたりかな。このスピード域で6%=時速3kmh上がるとすれば凄いこと。ドーピングしても厳しいのでは? もしかして昨今のトップレースの高速化は地球温暖化のせい?というのは悪い冗談ですゴメンナサイ m(_ _)m
多くの方が長距離バイク錬での目標としているっぽい「平均時速30km」域だと、どれくらい影響があるのかな?
<計算の過程 〜は文末参照>
プロの計算屋さんからの情報によると、理論上、東京の1月と8月とを比較すると、速度域がどうであれ、4%の速度向上効果があるらしい。
<考察>
ならば本来は、上記実験も4%アップに留まるはず。ではなぜ実走で6%アップなのか?
- 練習データ: 気温18℃での平均時速29kmのコースで、38℃で頑張って30.5km!
- 本人感想: 「暑い中でがんばって練習してキツかった、意外と速かった、よくがんばったジブン!」
- 真実: 暑さの中を無理して、練習の質を落としただけ (解説: 気温効果で4%、さらに薄着効果で2%以上、計6%=1.8kmh以上、速くなってるべき計算なので)
ということが、起こりうる。というか実際、暑さが本格化した2週ほど前あたりから、そんなようなFacebook投稿をちらちら目にしてるような気がする。
この知識 〜練習用ウェアの空力差も考慮して、1割くらい速度を上げて始めて対等なトレーニング効果となるであろうこと〜 が無いと、「やったつもりの練習」を暑さの中、それとは気付かずに、してしまうおそれがある。心当たりがないと良いのだが。
<練習したらダメ。>
前も書いた通り、(また上記の英語論文でも説明される通り)、暑さ対応には、長時間の練習は必要ない。暑さに耐えた長時間練習で達成感が得られたとしても、それはレースでの成功に向けられた努力ではない。その達成感(のような気がするもの)と引き換えに、内蔵ダメージなどのマイナスのトレーニング効果を蓄積しているかもしれない。
実際、8月下旬のアイアンマン洞爺に出ると、10月中旬のKONAでは実力を発揮できないことが多いと思う。(その例外を僕は知らない)
レース結果を決めるのは、練習の「濃さ」だ。暑さは薄める要素であり、それを避けられない日本の夏では、薄めないための工夫がレース結果に大きく影響する。
このあたりの基本は、まずは山崎敏正さんに学ぶといい→僕はロードバイクのりはじめた頃から彼のコラムは熟読して、正しく初期設定することができた。
それから僕は過去、9-10月の勝負レースは軒並み大成功させている。
<付録>
東京の平均値(2014年)は
FA(空気抵抗)=CA(空気抵抗係数)×A(前面投射面積)×ρ(空気密度)×Vb*2×1/2 (*2は2乗)1月 1013.4hPa 6.3℃ 空気密度:1.2618
8月 1005.7hPa 27.7℃ 空気密度:1.1648
空気密度と速度以外が一定とし無視すると
Vb(8)*2=ρ(1)×Vb(1)*2/ρ(8)=1.08327×Vb(1)*2
Vb(8)=1.0408×Vb(1)
結論: 理論上は速度域に限らず4%の速度向上
ハッタリくんの答案・・・ 文系人間の限界デアル
時速30kmhで空気抵抗は全出力の79% というデータをIT技術者氏が出してるが、トラックレーサーで、タイヤも最高圧にあげれて路面抵抗が最低になる状況なので、空気抵抗比率が高過ぎる。「必要動力計算器」というサイトでてきとーな数字を入れてみると、68%と出た。ま7割てとこか。「温度による流体の抵抗変化」の速度に対する影響は、競技ボート(手漕ぎ)の水との関係 では、直線的だ→
そこで、「空気抵抗の寄与度」は30kmhでは7割、上記研究の状況では9割、つまり23%分だけ影響が落ちる。よって同研究での「6%のスピード向上効果」は23%差し引かれ、30kmhの4.7%=1.4kmh相当、と計算できる。
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