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2015年2月の6件の記事

2015年2月28日 (土)

東洋経済online記事『ついにブーム終焉?東京マラソンの「功罪」』への批判3点

東洋経済オンライン2015/2/28付の記事、
が、同サイトの同日のアクセスランキング1位。
 
酷い記事だ。
 
東洋経済オンラインは最近急激にアクセスを伸ばし、今や日経ビジネスオンラインの約3倍でこの分野のリーダーだ。その人気記事ともなれば、何も考えずに、「へー、ランニングブームも壁かー」と思い込む人も多いだろう。スポーツジャーナリズムの発展のために、以下、問題点を順に指摘させていただく。
 
1. 「ランニング人口の急減」
 
2013年は前年と比べて、全体的にスポーツ人口が減少。ランナー人口も例外ではなく、2012年の2450万人から、2013年は2080万人と大きくダウンしているのだ。(p1)
 
その根拠は『レジャー白書』(公益財団法人日本生産性本部)だが、ここでの「ランナー人口」とは1年に1回以上、ジョギング・マラソンを行った人」と定義される。これは、今のランニングブームの実態から明らかにかけ離れたものだ。つまり、引用先として不適切だ。
 
『レジャー白書』には、そんな定義を採用する理由があり、それはレジャーが主目的である以上、「ボウリングやテニスやゴルフ」などの遊び系スポーツが主対象となるからだ。「ゴルフ人口」を探るには、年に1度プレーすれば十分だろう。ただしそれは「自転車は新しいゴルフ」という21世紀の変化に対応できていない面もあるとは思う。ただそれは日本生産性本部さんの経営判断だ。
「今のランニング・ブーム」を論じたいのなら、そもそも引用すべきデータではないということだ。
 
2.「大規模大会の申込の停滞」

東京マラソン・・・抽選倍率はこの数年ほぼ横ばい状態(2012年9.6倍、2013年10.4倍、2014年10.3倍)(P1)

大阪マラソンも、フルマラソンのエントリー総数は第1回の15万4822人から年々減少。第4回は13万7768人の応募にとどまった。長く続いてきたランニングブームは落ち着きを見せており、もしかしたら終焉を迎えつつあるのかもしれない。そうなると、この10年で一気に増えた大規模都市型レースは、東京、大阪などメジャー大会を除くと、定員を集めることが難しい大会が出てくることも考えられる。(p2)

a) 普通、この状態を日本語では、「5〜10倍で高止まりしている」と表現するだろう。「落ち着きを見せる」とも言うだろう。それがなぜ、「もしかしたら終焉を迎えつつある」のか? 「もしかしたら・・・のかもしれない」と混ぜれば何を書いていいという新しい言語が日本に生まれているのか? 
 
b) なわけはなく、普通、こうゆう場合に持ち出すべきデータは、「全国のマラソン大会への申込者数の推移」だ。東京マラソンどうせ出れんだろ、とより遠くの、よりマイナーな大会へと、みなシフトしているのだから。それがエントリー合戦の実態だ。
 
c) つまりエントリー合戦を取り上げた時点で、記事には新たな矛盾が発生している
 
d) また、P2最後に横浜マラソン1.5万円が高い、さらにローソンPonta入会と手数料966円まで必要(=ここへの反感には同意)だとハードルの高さをボヤきながら、倍率3.4倍に驚いている。この文脈からすれば、倍率が高い、と驚いているようだ。
ちょっと待て。その前では、倍率が低くなっている、と書いてでしょう? その流れからすれば、「東京大阪よりも低い倍率だよ、ほらやっぱり低くなってるよんだよ!」という根拠付けに使うのが、論理一貫した文章というものではないか?
 
社会的な問題をデータに基づき論じる、ということには、それ相応の「知的技法」が必要だ。あちこちにその欠如が露れてしまっている。
 
3. 「裾野が拡がったがトップは伸びない」
 
フルマラソンに参加するランナーは大幅に増えた。ピラミッドの裾野は広がったはずだが、トップは伸び悩んでいる。この9年間で日本人選手のレベルはまったく上がっていないのだ。(p3)
 
ここで言わんとするテーマ自体は正論。
しかし、東京マラソンに題を採った記事でいうことではない。
なぜならば、 「トップ選手育成のために必要な裾野」とは、「10代選手を中心としたトップレベルのランニング競技者数」だからだ。
あるいは、市民ランナーの増加と、トップレベルの競技力向上との間に、現実的な因果関係が存在しない、ともいえる。
 
社会人ランナーが増えることにより、5年10年20年という時間の流れの中では、マーケット全体が広がるし、指導者も増えるし、ランニング愛好家の子供から強豪選手が育ちもするだろう。中長期の話だ。直接的な影響はない。
この問題を議論したいのなら、中高の陸上部、あるいは箱根駅伝など大学の陸上部について論ずるべきだろう。 ターゲットのごちゃ混ぜだ 。
 
問題点は以上。
 
<ネットメディアの限界>
ネットメディアは、僕は基本(お笑いネタとか除いて)無視している。実際、酷い内容のものがとても多い(迂闊なFacebookのいいね!とかシェアとか慎重にね)。ただ、有料メディアが運営するものは比較的安心していたのだが、、
 
東洋経済オンラインは、ネット部門専任の編集チームが、アクセス数を最大化するためにテーマ設定し、ふさわしいライターに依頼して、大量の記事を日々掲載する。「アクセスを集めれそうなテーマについて書けるライター」であることが優先されているわけで、やはり、有料誌に掲載された記事とは、クオリティーが違う。
 
この記事のライターさんは、ランニングについて書く力量は認めるが、「ランニングを通じて社会を論じる力量」が、現時点では不足したまま、このテーマを引き受けてしまったのではないかと推測する。
僕が実名でこんな批判記事を書くのは、彼が優れたスポーツジャーナリストへと成長してほしいからでもある。今後の記事に期待したい。
 
それよりも、この記事を「書かせて」「通した」のは誰か、ということをこそ、問題にすべきだろう。そこには、ジャーナリズムの責任、というものがあるはずだ。
 
<ところで、「スポーツ人口の急激」とは?>
1.に挙げた『レジャー白書』指摘の点だが、僕は、2つの可能性があると思う。
  1. 少子高齢化の影響
  2. 「遊びのスポーツ」から「本気のランニング」へのシフト
1.は文字通り。身体が動かなくなってくる年齢の人達が増えたための自然減。
2.は、「週に4回くらい走る、21世紀型のランニング人口」は実は急増しており、彼らがゴルフやボーリングなどの「レジャー型スポーツ」をしなくなった、という仮説がありうると思う。
そして実態は、1-2の複合要因なのではないだろうか。
 
「レジャー白書」も、発想が20世紀に留まっているかな。もはやスポーツは「レジャー」ではない。真剣に仕事や生活に向き合う大人達による、同じくらいに人生の価値をかけた、真剣なライフスタイルそのものなのだから。 
 
・・・おしらせ・・・
最近読んでおもしろかった本。
  
 
痙攣防止には塩分に加えてマグネシウム(大豆とか)+カリウム(バナナとか)が有効で、錠剤だとマグネシウムとカルシウムはセット販売してる。
 
「クエン酸」は、脂肪燃焼回路の向上に効きます。30分~60分前に体重あたり0.05gを水で飲む。たぶん飲みにくいので、カプセルを使う手も。

2015年2月23日 (月)

「マラソン30kmの壁」を超えさせるのは、技術だ

「30kmで潰れたから、30km走を繰り返す」なんて考えてない?
 
まずは、東京マラソン2015で好成績を収めた今井正人選手についての記事を引用:
 
 
つまり、「技術」によって30kmの壁を超えることに成功している。
 
<解説>
「ひざ&肩」よりも、「股&体幹」の方が、より「身体の中心」に位置する。中心に近いほど強く、かつ安定する。このシンプルな物理学は、幼稚園児くらいから理解できるだろう。そしてシンプルなものほど、極限状態で使える武器になる。
上りに強い今井選手なら、体幹を使った走りはこれまでも出来ていたはず。そんなプロ選手をして、30歳で今更ながらに股関節の重要性に気付けた、というのが、驚くべき注目点だ。それだけの潜在能力が体幹にはあるんだ。
 
でも現実には、多くのランナーが、30kmで潰れたから35km走だ、月1でなく週1だ、と「数字」に走っているのではないだろうか。 
 
〈長距離ランニングの技術とは〉
ランに限らず、長距離移動系競技では走力 = エネルギー生産力 × 技術 (× 筋力)が成立する。
 
<解説>
ここで筋力は、エネルギー生産にも技術にもそれぞれ含まれるので、外した方がシンプルかな。
耐久競技における技術とは、純粋に技術(=神経系)だけではなく、筋力の範囲でのもの。(水泳で水をつかむ技術はやや例外だが、それでもハイエルボー姿勢には独自の筋力が必要)。
エネルギー生産力も同様で、筋肉内のミトコンドリアが生体エネルギーATPを発生させるのだから、それは筋肉の働きでもある。脂肪をより多く活用できるようになるのは、エネルギー生産力の向上であると同時に、筋力の向上でもあるわけだ。
 
トライアスリートの場合、3種目を組み合わせてトレーニングするから、とりわけエネルギー生産力を高めやすい。自転車で筋力が落ち技術を保てなくなった後でも、ランや水泳は、比較的フレッシュな状態で始められるから、トータルで生産するエネルギー量は増える。(=痩せやすい、という意味でもある) ゆえにエネルギー生産力は高まる。
そこでボトルネックとなるのが技術。だからトライアスリートならば、なおのこと技術に集中すべきなのだ。
 
とはいえ、「30km過ぎの技術は30km以上走ってみないとわからない」のも、1つの理屈ではある。
ただそれは、たまに実験してみればわかるべきこと。「あーこうゆう動作が大事だ」とわかれば、極論すれば「1歩だけ」でも磨くことはできる。ランニングとは、1歩の積み重ねなのだから。自転車なら1回転の積み重ね。
 
〈事例:KONA2013〉
とかエラそうに書いている私にとって、過去唯一のフルマラソン経験はアイアンマン世界選手権2013のRunパート42.2km。 その5kmラップは:
131012_052013
  • 0-5) 21:44
  • -10) 22:43
  • -15) 23:03
  • -20) 23:16
  • -25) 24:10
  • -30) 24:37
  • -35) 26:22
  • -40) 26:05
  • -42.2) 8:52
と、もののみごとに30km過ぎの大失速を経験している→ https://masujiro.cocolog-nifty.com/blog/2013/11/111km4-1b39.html
各ラップが綺麗に落ち続けてて、典型的オーバーペース事例だ。
 
事前の30km走は1度(生涯にもその1度)、20km走が3回くらいだ。
じゃあ、対応として、「30km走を繰り返す」とうトレーニングをしていれば、対応できたかというと、それはその通りだろう。
 
ただしそれは「スタミナを鍛える効果」よりも、長距離向きの効率的な動作感覚とか、 マトモなペース配分とかの技術、もっといえば「アタマを鍛える効果」の方がより重要だったと思う。
 
そして30km走では、「最後の1kmで最高の技術」を発揮できているべきだ。それが技術重視のトレーニング法の必須条件。そのための「集中力」なのだ。
 
・・・おしらせ・・・
最近読んでおもしろかった本。

 
痙攣防止には塩分に加えてマグネシウム(大豆とか)+カリウム(バナナとか)が有効で、錠剤だとマグネシウムとカルシウムはセット販売。クエン酸は脂肪燃焼回路に、BCAAは、まあ牛乳や納豆でもいいんだけど、筋肉ケアに大事ですね。
 

2015年2月15日 (日)

宮古島 10週前からのトレーニング戦略

宮古島トライアスロンまであと9週間。いつもの練習記録Excelに、2013年KONA前のデータも貼り付け、眺めている。
2013年は、5月から月2ペースのJTUランキングレース連戦で身体が仕上がり切っていて、方向性だけロング向けに修正すればよかった。当時3連覇を懸けたランキング争いは熾烈で、普通のロング錬を繰り返すよりよほど大きな効果があったと思う。今年は仕上がり度自体をこれから上げてゆかねばならない。まにあうか?
 
〈宮古島大会の距離〉
宮古の種目別距離を、いつもの51.5kmレースに換算すると、Swim772m−Bike39.9km‐Run10.86km。スイムがほぼ半減する以外は、ほぼいつも通り。Bike終了時点で大枠が決まり、Runで最終決戦とイメージできる。
アイアンマンの比率を51.5kmに換算すると、Swim879m-Bike41km-Run9.6km。Bike最重要のアイアンマンより、宮古はRun寄り。実際の距離でも、KONAでは「マイルド車上拷問」的だったBike最後25kmが、宮古ではまんま無くなるわけで、Bikeはよりスピード化する。 その分フレッシュにRunに入るので、Run勝負の色が強くなるだろう。
 
〈9週前、Runの実戦シフト〉
そこで、まずはRunから完成させることにした。これまで「頻度重視」で土台を作ってきたので、10週前にあたるこの週から実戦的にシフトさせ、20kmレースペース走を5日間、中1日で3回実施。
 
入りは心拍を抑え、10kmまで乳酸を発生させずに脂肪エネルギーを活用する高効率スロー走行、10kmから適度に乳酸を産出しエネルギー化してスピードを上げ、20kmからは脚の負担感を見極めながらその場で決める。前半は効率向上、後半は高負荷を意図したハイブリッド型だ。
ロングレースの教科書なら、この前半のペース維持で30km、的メニューが基本だろう。ここではイイトコ取りを狙った独自手法を取っている。
 
3回の平均は、4'07(HR148→156)、4'09(145→152)、4'14(145-146維持)、とペースも心拍ゾーンも少しづつ落としている。その意図は、疲労が蓄積する中で、より低い負荷でレースペースのフォームを維持する技術を高める点にある。
 
迷ったら追い込まずに切り上げる方針。これは余力を残すことで「トレーニング頻度」を高めるという意図による。
3度めはその良い例で、行ければ25-30kmと思ったけど、途中で補給食の蒸しパンを落としたので、少し早めに23kmで切り上げた。
こうゆうとき「あと2kmで予定の25km」とか考えてはいけない。エネルギー枯渇下で続行すると「糖新生」が起こり、筋肉がエネルギー源にされてしまう。タコが自分の脚を食べるようなものだ。「決めたことを やりきってはいけない」のがトライアスロン。タコに学ぶのは柔軟な姿勢だけでいい。
 
〈技術あっての練習量〉
僕はこの5日間で計75kmを走った。仮にこれが1ヶ月続くと月間450km。僕には無理。これに近いレベルをコンスタントに走るトライアスリートもいるけど、それで故障せずに続けられるのは、その走技術がとても高いからだろう。「もともと高効率で走れる人が、さらに量を積む」から速いわけで、彼らは量を減らしても十分に速いだろうと僕は見ている。
 
技術に問題あって量だけマネするのは、ケガへの近道だ。前回コメントで頂いた質問にも

「最も効率的な走りが出来ていれば、その痛みは出ないはず」

と書いた。僕がこれまでオフロードなどを集中して走ってきたのも、ある面では、こうゆうトレーニングをケガせず積み上げるための「技術」を高めてきたようなものだ。練習量はその結果であって、目的ではない。
 
〈8-9週前からのBike強化〉
ここまでで、Run完成までのスケジュール感は見えてきたかな。
今後、距離を30kmに伸ばす回を混ぜながら、バイク高負荷後でのRun動作を作っていく。5週前あたりから、少しづつスピードも上げていこうか。2km走などでVo2Max強度での最高速を高めれば、LT動作の余裕度も高まるから。
 
そして、これから4週間はBike強化月間。一気にレースレベルに引き上げる。日程的には十分に、ただしギリギリで、間に合うとみている。勝利=総合10位以内を現実化できる最後のチャンスだろう。
はじめ2週は固定ローラー集中、20分間のLTゾーンを複数セット繰り返し、「持続可能な最高速度」を上げてゆく。
 
「長距離の実走」も必要なトレーニングだけど、それは7週前からに位置づけてみる。1日150kmレベルのいわゆる「ロングライド」は、トレーニング密度が薄まりがちだ。室内ローラー錬なら確実に質を高く維持することができる。最も大事な時期こそ、トレーニングの質を落とすリスクだけを避けるべきだ。1日2時間以内、でも「頻度」を上げて。
Img_2765(ローラーは汗が貯まる…)
 
Swimも増やしてゆくけど、今は3日に1度1時間。レース5週前からの集中トレーニングでギリギリ間に合わせる予定。
 
そして、宿と飛行機をいいかげん取らねばならない。。
 
・・・おしらせ・・・
 
最近読んでおもしろかった本。

 
痙攣防止には塩分に加えてマグネシウム(大豆とか)+カリウム(バナナとか)が有効で、錠剤だとマグネシウムとカルシウムはセット販売。クエン酸は脂肪燃焼回路に、BCAAは、まあ牛乳や納豆でもいいんだけど、筋肉ケアに大事ですね。

2015年2月10日 (火)

 「痛み」を活かして「技術」を高める方法

抽象度の高いトレーニング哲学論は少々わかりにくいかもしれないけれど、まずは自分なりに考えてみることが大切。「わかりやすい正解めいたもの」があふれるネット時代だが、「哲学」にこそ価値があると僕は思う。

「哲学」とは、始まりの方向性をセットし、迷った時に立ち返る「考え方」。間違えると、無駄な努力もするし、怪我もする。だから、耐久スポーツで何かの目標を持った時に、最初に理解すべきもの。そこを間違わなければ、具体的な練習法も、テクニックも、後から付いてくる。
 
僕も5年前にそこから始めたし、そこで徹底して情報収集し考えたことは、今に至るまでの最短距離になったと思う。100m走が運動部現役時代に15秒の駄馬である僕がね。
 
など言い訳しながら今回も続けます。
 
〈日本の長距離界の思い込み〉
まず、サプリ会社DNSのコラムを紹介しよう。筆者は元短距離日本代表の早大元主将。
 
 
同記事では冒頭、長距離選手はメシを食え!と主張する。当然だよねー。読んでて大学生選手大丈夫かと不安になる。この点についての僕の見解は、シリーズ「耐久スポーツの理論 〜 体重編」 をご参照。まあでも未だにエリートランナー界でも続いているなんてがっかりだよ。
 
そして、それによる貧弱な身体がもたらすと思われる故障について語られる。以下引用:

痛みは自分から発せられたサインです。そこがなぜ痛んだのかを、考えなくてはいけません。そこで『ああ、こういう動作をしていたからかも...。』『こういう生活をしていたからかも』と考えることが大事です。

それをせず病院に頼り、間に合わせのような治療をする。それで痛い箇所は多少治るかもしれないけれど、原因は体のひずみですから、結局またケガをする。その繰り返しです。自分の身体の使い方が悪かった結果なんです。

走るとは、自分の身体を最大限に使うこと。だから、何かがおかしな状態にあることが負担となって表れる。その積み重ねがケガになるのだと思います

〈痛み、の意味〉
その通り。僕なりの理解では、「痛み」とは、「何かがおかしな状態にある」ことを、身体くんが親切にも語りかけているわけだ。
 
たとえば飼い犬は日本語を喋らない。一生懸命にワンワンと吠えているとき、何を言おうとしているのか、人間の側が考える必要がある。ただお腹が空いてたり、かまって欲しいだけなのかもしれないけど、もしかしたら病気で死んでしまうかもしれない。
130104_193456(わんわん)
同じく、あなたの身体からのワンワン(=痛みの比喩です)を無視していると、いずれ、ぐしゃっと壊れたりしかねない。これはド基本だけれど、しつこく書いておく。だって出来てない人が多すぎる。
 
だからといって、いきなり休養に入る必要もない。これが、第二の僕の主張だ。
 
身体くんが言いたいのは、「ちょっとおかしいよ」というだけ。ただそれだけ。
 
これが日本の役所なら「そりゃあ大変だすぐに止めろ」となりそうなもんだが、僕らアスリートならば、自分の行動にはピュアな自己責任を100%貫徹できる立場にあり、そのおかしな箇所だけを探ればいい。
 
僕も、ランニング中、膝や腰や足底に軽い痛みを感じることは多い。それを、不合理な動作を示すサインと仮定し、その改善を試みる。どうゆう動作であれば、痛みは消えるか? それを、走りながら、ペースも落とさずにすることも多い。ただしスピード練習なら、レストを長くとり、十分にほぐし直す。
 
もちろん、その痛みが「物理的な損傷」が既に発生してしまった結果ではないことを入念に感じ取った上でね(言うまでもないド基本)。また、走りながらの修正はけっこうな高等技術かと思うので、自分のセンサーに不安があれば、一時停止した方がよい(言うまでもないか)。
 
〈具体例…〉
  • 膝の痛み… 「着地から蹴りだし」までの非効率な鉛直方向への力の大きさを物語る。これほどありがたいサインはない。ここで痛みをガマンしたまま走ってしまうランナーは、僕のブログ読者には居ないと信じるけれど、逆にそこで止めてしまう人なら結構いるかもしれない。それももったいない話なのだ。対応は、ベクトル成分を垂直から水平方向へとシフトさせる動作をその場で考えること、これに尽きる
  • 腰の痛み… 「骨盤から背骨まわりの骨の歪み」がたいてい伴っている。「蹴りだし動作」の非効率が作用している場合、「腕振り」が変=肩周りの固さを示す場合もありうる
  • 足底筋… 着地時の緊張を示す。やわらかい芝生でリラックスして走ってみる
あくまでも「僕の場合」であり、みなさんにとっての正解ではない。哲学は共通するとしても、個別解はそこからそれぞれに考えるしかない。
 
これらの対応で、「僕の場合」、100%痛みは消える。
のみならず、より楽に、ないしは速く、走れるようになってゆく。
 
ここでもしも痛みが消えなければ、その時点でトレーニング終了。
その場合を想定し、ラン錬は周回路が基本。そこまで2kmあれば自転車でいく。ランで遠出をして痛めると、痛い脚で戻らないといけないわけで、その事態を僕は徹底排除している。ただし、そうなったことは一度もない。
 
〈ケガをしないための哲学〉
こうして、「軽い痛み」が出た時点で「動作を修正」していけば、ケガ(=物理的な身体の損傷)を未然に防ぐことができる。
その奥にある哲学とは、「やると決めたことを や ら な い 柔軟性」だと思っている。僕はそもそも練習メニューを持たないし、なんとなくその場で決めても、やっていておかしければすぐに変えるし、スピードが出なければ、止める。がんばらない。
このイイカゲンさがケガを遠ざけ、レースでの成功への最短距離となる。というか、実際にそうなってきた。
 
僕らが最も避けるべきは、「やると決めたことはやり抜く」というスポ根漫画やらビジネス書やらにありがちなフレーズだと思う。
マジメな人、あるいは社会的に成功した人ほど、この罠にはまる。これは美徳のように見えて、実は、「自分の身体と対話する」という最も大事なことを放置しているだけ、「脳内の妄想」を現実の身体ちゃんに押し付けているだけだ。
 
他にも、
  • 「3種類のストレッチ」を、目的に沿って使い分ける
  • スピード走は、徐々に上げてゆく
  • 最終局面で、脚を使い終える
  • 途中で脚が終わったら、即中止
  • お腹が空いたら、即中止
といった個々のノウハウはあり、それで高負荷スピード錬もケガなくやり続けている。おいおい書いていこうと思うけど、今回書いたことは、トレーニング哲学として最重要レベルに位置づけられると思う。これは、僕のような勝利中毒者に限らず、楽しく完走したい人にも共通する基本だと信じている。
 
・・・おしらせ・・・
  • 痙攣防止には塩分に加えてマグネシウム(大豆とか)+カリウム(バナナとか)が有効で、錠剤なら数百円から。クエン酸は脂肪燃焼回路に、BCAAは、まあ牛乳や納豆でもいいんだけど、筋肉ケアに大事ですね。

2015年2月 8日 (日)

4枚目のJTU年間チャンピオンジャージ 〜その「感覚と思考」

JTU年間チャンピオンジャージが届いた。トライアスロンの練習始めて1年4ヶ月で最初の1枚がマグレで回ってきたのだけど、以降マグレは4年続いて4枚目。
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ランキング決定は、8月24日うつくしまトライアスロン。当時の報告投稿へのFacebookいいね!109、今回のジャージ写真は過去最高の300超。なんだこの差は。しかも8/24は僕の42歳の誕生日だというのに(言ってないけど)(夏までに忘れてください)。まータイトル獲得よりも僕のジャージ姿の方が良いね!て評価だと受け取っておこう。花より男子的な。ちなみに僕はフクヤマさんと同じ属性の40代です!
 
<駄馬と駿馬>
と愉快な冗談はさておき、僕は100m走の生涯ベスト15秒の駄馬。中学高校と水泳も長距離走もやってたけど県大会にも届かず終わった。それでこんなものを貰い続けるなんて、日本のトライアスロン界はなにかが間違っている。
 
まー駄馬でも居ないよりマシなわけで、3匹揃えればこの通り戦えるのがトライアスロンだ。とはいえ、当時県大会以上に出てた同世代の(そして若い世代の)駿馬さん達は大量にいて、単に今やってないだけ。やってて僕より速い方も同世代に何人もいるだろう。
 
身体能力の低さは自分が一番わかっている。その上での僕の動機はというと、勝てるなどとはつゆ思はず、ただその過程が面白かった。正しくトレーニングを続けると、3日サイクルくらいで機能向上する実感を得られる。(=だから僕のトレーニング・グラフは3日移動平均) 
自分の身体とは他でもない自分そのもの、いつも自分の内に確かに存在するもの。その成長には、他の何にもない圧倒的な確かさがあった。それは「実感」なんてふわーっとしたものではない。現実の存在、実存なのだ。
 
そんな絶対的な確かなものが、当時30代後半というお年頃に、ずどんとハマったわけだ。
 
<結果と過程>
そうしてレースに出て、表彰台が近いぞとテンション上がり、人生初の表彰台に上がり、全国ランキングも上がり、「棚からジャージ」が落ちてきた。
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この2年はタイトルを狙って獲ったけど、それでも最後にサイコロが僕の側に転がっただけ、その先に僕が居ただけ。成果とは、偶然の産物だ。努力は成果を保障しない。努力することで実現するのは、「サイコロが転がる可能性のある位置にまで辿り着く」ことまでだ。少なくとも、椅子が1つしかないような場合には。
 
確かなのは、そこに至るプロセス。
僕にとってそれは、「知識→感覚→思考」のサイクル。
  • 知識: 身体は有限な資源だから、無駄遣いせずに目的を果たせる方法論を知ることが出発点 
  • 感覚: でも理論は単なる「発射台」にすぎず、ひとたび飛び立てば、その先は感覚だけの世界 (だから僕は「科学的トレーニングはしていない」とも言える)
  • 思考: そうして得た感覚と、知識とを結びつけて、自分なりの知識を新たにつくり上げる。その知識とは感覚そのもの、その一部しか文字にできないもの
※ トレーニングは苦しむもの、追い込むもの、と思い込んでいる人は多そうだ。でも僕は苦痛も「感覚」の一要素として捉える。そして、その追い込んだ体験から何を得るのか、という「思考」にまでつなげる。この工程がもっとも奥深い。
 
そのサイクルを回すことで、「感覚と思考」を高めれば、体力は後からついてくるだろう。この考えは初期から変わらない。毎年オフに体力レベルを落としているのもそのためだ。感覚と思考さえ維持できていれば、体力は3ヶ月でも作ることができるから。(速い人達の練習量が往々にして少ないのも、これが理由だろう)
 
トライアスリートとしての僕の本質は、そんな「過程」にあると思っている。「宮古島総合10位、JTU5連覇」とかのではなくて。結果がどうであれ、その過程を研ぎ澄まし、表現してゆくことで、僕は僕であり続けるだろう。
 
<かつての駿馬たちへ>
だから、僕の文を読んで刺激されたかつての駿馬達に僕が弾きとばされることに、僕には何の躊躇いもない。駿馬さんたちが本来の力を発揮する日が訪れるまで、僕はここに至る過程で得たノウハウ、その「感覚と思考」について、余さず書き続けてゆこう。
 
 
勝つのはオレだけどな。
 
 
・・・おしらせ・・・
今日は室内固定ローラー2時間の途中、腹筋とモモ全体の内側が攣りそうになってたいへん!
痙攣防止には塩分に加えてマグネシウム+カリウムが有効で、錠剤なら数百円から:

クエン酸も事前摂取すればコスパ最強セット

ところでもうすぐなんかあるの?

2015年2月 2日 (月)

2015年1月トレーニングの分析 〜みえてきた「質」の管理法

毎月恒例、1月のトレーニング内容グラフを公開しよう。1月は93-123日部分だ。
20151

  • グラフは全て3日移動平均
  • 心拍域はBike+Run+筋トレの合計。形式上は実線グラフだが意味的には積上グラフ
  • TotalはHR112以上(=Bike+Run)とSwim時間の計
  • PTE=Peak-Training-EffectはSUUNTO独自データで、心拍域の高さのピークを反映(正確には「EPOC」値により決定される模様=そんな指標知らん…)

<量に依存しないということ>

本題の前に、タイトルが、1月のトレーニング「量」ではない意味を語ってみようか。

僕は 「量に依存したトレーニング」を否定する。「量を積む」ことならば否定も肯定もせず、それをやり通すことが出来るのなら、出来るに越したことはないと思う。「量を積んで勝っている」人たちが目につくかもしれないけど、少なくとも僕が観察する限り、勝てているのは「まず質」を確保した上で、「量も」多い人だ。

では、トレーニングの質とは何か? 3要素あると思う。

公式: 質=強度×高効率動作+ケガを絶対にしないこと

「集中力の高さ」は、3要素に全てに共通する。だから集中を損なう要素は一切排除すべきで、もしも長時間の練習で集中が落ちるようなら、それをする資格に欠けるのかもしれない。集中が落ちれば強度と動作は確実に劣化し、ケガのリスクをハネ上げる。

あるいは、自己信頼感の低さが、低質な長時間練習に走らせているケースもあるかもしれない。ならば、自分の技術向上力をもっと信じてあげよう。

なお僕は、「練習でできていないことは試合でもできない」とか「他人と同じことをしていては勝てない」 とかのかっこいい格言めいたものは、スポ根マンガで楽しむだけでいいと思っている。トップ選手が似たことを語る場合があるけど、実態はアナタの理解とは違うものであるかもしれない。

僕の考えでは、「練習でしてないことまで出来るのが試合」だし「他人と違うことに"逃げる"から勝てない」。

<質の管理>

質の第一要素である「強度」を優先したトレーニング管理のために、「心拍ゾーンごとの時間」のグラフ化は、最低条件だと思っている。(SUUNTO社さん、トレーニングデータ管理サイト「moovescount」では僕のグラフを真似するといいよ!)

第二要素「動作効率」を上げる方法は、「頻度を上げる」ことに近い。これは文の後半で説明しよう。管理には練習回数を記録するとよいだろう。

これらの最終成果は、月に何度かのポイント錬のデータで確認できる。これはある程度、Facebookにメモ=つまり公開しちゃってる。なので僕の仕上がりを確認しながら「このハッタリ野郎に勝てるぜ俺」的なコソ錬も可能です笑。

<グラフの見方 〜高負荷は免疫を落とす>

今月のトレーニングの意図と、その裏事情に触れておこう。

年末年始は実家キャンプ(笑)。9月の村上大会以来3ヶ月ぶりに固定ペダル式の自転車に乗り始めた。合計15〜20kmの山Bikeからの土Run、という基本セットで、心拍152前後の時間が積み上がっているのは、Facebookで書いた通り。

11−12月は心拍130〜147域を中心に量を漸増させてはいたが、高負荷域をあまりにも急に増やしているようにも見えるよね? そう、それが問題なのだ。

104日目、ノロウイルスに我が鉄壁の胃腸を半日ほど破壊され、グラフも墜落。その遠因がそれかもしれん。同様に、67日目の激しい歯痛=治療跡での菌増殖も、その数日前に積み上げた高負荷域が影響しているだろう。(この時は給湯器故障による冷水シャワーのダメージが大きい)

ほんの1日のノロで体重は64kgあたりから61kgにまで急減し、すぐに62kgに戻したものの、急減する体重とはイコール体力の喪失であり、1.5kg相当の体力回復という課題が1月後半に急浮上。そこで、筋力を刺激する短時間トレーニングで筋量を回復させつつ、心拍140前後をターゲットにした負荷低めの持久系で体力回復を目指した。グラフでは黄緑と薄橙が上がってるとこだ。

<Run走行距離>

この11月から距離の記録を始めた。グラフではBikeとRunを合算してるので、せめてRunだけでも総量まで把握したいから。11月234km 12月238km 1月282km、と過去最高量の走り込みを実現。結果的に11月から毎月10%づつ増やした量になり、推移としては理想的かな。

思うに、トライアスリートはRun月間150kmを超えたら、後は質の勝負。それ以上の数字の積み上げは、無意味だとは言わないが、「限界収益逓減の法則」が如実に表れる。その数字を増やすよりは、SwimとBikeを真剣に練習した方がいいかな。

それでも、僕が量を増やしているのは、「頻度重視」の考えによる。頻度を増やすために、今まで自転車移動してた片道5kmのプールに走ってくとかしたら、結果的に量も増えた。その分、低強度のも増えているので、限界収益逓減ゾーンに入ってもいる。
 
<Runの成果>
月末に舗装路21km走。お葬式で急遽実家に移動し、調子はそう良くなかったけど、夜走るためにビールは飲まずに備えて。外は推定気温は0℃くらい? 健康用自転車こぎ機で室内でウォーミングアップした後、半袖Tシャツ1枚で。
 
固まった身体を軽くほぐすつもりで脱力して走り始めたら、1km4:20-22の想定レースペースをHR133で巡航できるようになった。そのペースを保ち13km。HR140-143に無理なく上げていき4:10ペースで2km、さらにHR147で4:00を4km。
 
※心拍トレーニングではこのように心拍を上げてゆくのが基本。ときどき心拍を一定に維持することだと思ってる人がいるけど、それではペースは落ちてゆき、トレーニングの質が劣化してしまう。理論は複数の情報源からきちんと勉強しましょう。ま面倒ならこのブログだけでいいけどねー
 
このデータ、月初にほぼ同じコースの土の部分を走った時と比較して、同じ速さでの心拍数が5〜10ほど低い。土と舗装路の違いはあるけど(舗装路は簡単にスピードも距離も出るから怖いよね)、レースペースでの動作を、より高い効率で、できるようになってきた。
まあ、こうして「最終成果」を時々確認するわけだ。
 
ここで、動作効率とは、単なる技術ではなく、筋力と一体になったもの。それを育てるのが、「頻度=走行回数を重視するラン」なのだ。
 
なぜか? 頻度を上げることで、「負荷‐休養サイクル」をより多く回せる上に、神経回路の集中力が高いうちに何度も刺激することができるからだ。それゆえに「頻度」には限界収益逓減法則はあてはまらない、つまり、練習距離が同じでも、頻度に2倍の差があれば、成果は2倍に近くなる。
だから、「練習回数」は多いほどよく、その把握は大事なのだ。僕はExcelの元データを眺めてざっくり大づかみしている。

<Bike, Swim...>

Bike固定ローラーも1月後半にようやく開始。2-30分間の心拍152×2本、を週2目標で。2月はローラーの量を激増させる予定。遅いといえば遅いけど、既にRunで持久力のベースは作ってあるので、Bike用への転用は、2月中に完了すると見込む。

Swimは4回計2:25。2月はちゃんと泳ぎ始める! Swimこそ「頻度」で決まる種目だ。

・・・

<おしらせ:クエン酸について> 
クエン酸は、「体重×0.05g」=体重60kgなら3gをトレーニング/レース前に摂取することで、脂肪利用を促進できるようだ。(※アスリート限定)1kg780円=1回2円ほどと安さが激しい。カプセルやオブラートを使うか、ポカリとかに混ぜるか。 なおアクエリアスは成分に含まれると書いてあるけど量が圧倒的に不足してそう(以前書いた通り)
BCAAはトレーニング後だけで十分でしょう。 
 

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『覚醒せよ、わが身体。〜トライアスリートのエスノグラフィー』

  • 初著作 2017年9月発売

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