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2015年1月26日 (月)

プロ選手のキャリアvol.2 〜夢を叶える営業力

前回のには、現役プロ選手からも幾つかの反応をいただいた。全体では3日でざっと2,000人に3,000ページほど読まれ、それはそれで嬉しいのだけど、本当にその渦中で戦っている3-4人に確実に伝わるほうが書いてよかったと思える。そんな何名かに直接伝えるつもりで、続きを書いてみる。
 
「アイアンマン」系大会にプロ資格で出場できるWTC登録選手は800人を超えるという。そのほぼ9割が「要バイト」レベルの収入だと推定される。彼らはフルタイムでプロ活動に専念できる日を夢見てレースに臨んでいることだろう。
でも、必要なだけの収入を得られている限り、兼業プロであることのデメリットはそれほどでもなく、実はメリットも大きいと思う。
 
<フルタイムのプロ選手だって「商売」に忙しい>
アメリカでも、トライアスロン選手をサポートする仕組みは存在しない。
だから選手は自ら、「自分というブランド」を作り、営業し、スポンサーとの関係を構築し、その製品販売を伸ばさねばならない。その「自分ブランド」の基本は競技成績なので、超トップレベルならば良いのだが、世界トップ何十というレベルなら工夫が必要だろう。実際そうゆう仕事量は結構多いらしい。
 
つまり、「広告&営業代理店の社長業」を、プロ全員が兼業しているようなものだ。
"Triathlon Competitor.com"より、What It’s Like To Be A Professional Triathlete (著者は同サイト編集者)、How Do You Get Sponsored As A Professional Triathlete?  (Jesse選手)、など参照
 
この点で、日本の「オリンピック枠」に入れる男女各数名の方が、環境的に恵まれているのかもしれない。ランニング界まで広げると、日本では実業団駅伝&マラソンという大口の「プロ枠」があるけど、アメリカには無い。ときどき、「日本ではアスリートへの支援が薄い」とかの意見を目にするけど、耐久スポーツに限れば、それは激しく逆かもしれない。
 
ただアメリカでは、「アイアンマン」人気が高いため(アメリカ人はアメリカ地元産の競技が大好きだ)、スポンサーの理解を得やすい。またトライアスリート人口が多いために競技関連市場が大きく、主要メーカーの本社も多いから、営業活動は多少は楽だろう。
 
もう一つ、あり得る仮説は、選手側が営業慣れしていること。
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<プロ志望者の夢を叶えるのは営業力>
では、日本のプロ志望者は、どうすればよいのか? 
大前提は、世界のプロを相手に戦う意思、ビジョンではないだろうか。国内市場だけに囚われない方がいい。その上で:
  1. まずは国内の戦績を上げつつ
  2. 支援者をかき集めて(タニマチ・足長おじさん・ヒモ=英文記事中の"Sugar-mama"=などなど手段総動員で)、世界参戦資金を集め、
  3. 世界レベルの戦績を上げ、世界からスポンサーを集める
という階段を登ってゆくことだろう。レベル3は難易度が高いけど、そこはチャレンジ自体に価値がある、って領域。英語はなんとかなります。
 
その手段として、競技力を高め、自分ブランドを作り、営業してゆく。必要があればSugar-mamaも探す、かどうかは各自のご判断だが。それが「夢を叶える営業力」。
 
<売り込むということの価値:とくに文系大学生>
ここから脱線する。俺が言うな的な自分へのツッコミを流しながら。
 
就活大学生とかの間で、「営業」=販売職は、あまりイメージが良くなくて(僕もそうだった)、文系学生はかわりに「事務職」を、エリート大学だと「企画職」をやりたがる。しかし現実は「文系=営業」。
 
このギャップに輪をかけているのは、変わりきれない教育界かもしれない。
大学界を賑わせた「L型大学論争」の仕掛け人による記事が話題だ。
(※教育界から見れば雑な論だろうが、彼は破綻企業の再生が仕事なので、潰れそうな田舎のバス会社とかに使える人材を送れていない、という現実から学校を見ている。あと、次の破綻候補=取引先としてもかな? いろいろな目線から見ることが大事)
こうゆう、世間が求めるスキルと大学で教えるものが一致していないという状況、とりわけ文系の、「営業職種」で顕著なのではないだろうか。士農工商?
 
なお「専門職なら文系でも営業やらなくていい」という誤解もありそうだけど、難関資格である弁護士税理士などは、大手事務所に就職できるエリート組を除いて、営業力が極めて大事な仕事だ。士農工商の頂点が商の勝負なのだから、希少価値がない資格なら、なおさら営業力勝負。
 
しかし、大学という世界は2018年頃からの激しい淘汰が予想され、これから変わらざるをえない。それこそ富山氏が経営支援に乗り込むところも出てくるかもしれない。この中で、「普通の学生に泥臭いサバイバル能力を伝えられること」が、より強く&幅広く求められてゆくだろう。
 
<その経験は、指導者としての価値も高めるだろう>
そんな変化の中では、環境を与えられてきた純粋エリート組より、環境を創ってきたサバイバル組の方が、指導者としても、強みが出る。引退したスポーツ選手が大学で教えることは多いけど、これまでのような「過去の経歴が華やかな有名スター選手」というだけで、その大学側のニーズに応えきれるだろうか。
「体育会は就活に強い」とよく言われるけど、これはさらに高いレベルでのこと。体育会学生の就職先のレベルを、今以上に高めることができるかもしれない。
 
自分が良いと信じるものを、自信を持って「売り込む」ということ。それは、敷かれたレールの上での競争を避け、何か創造的なことを自由に続けるための手段。
 
(その理解を深めるには、トム・ピーターズの最高にエキサイティングな古典的名著をおすすめ:中古本なら激安
15年前かー。新しい本だと何がいいですか?)
 
「世界で一つだけの花」を咲かせるために、営業力で、また使えるものを何でも使って、愚直に戦う。こうして、いろいろな選手が多彩な活動を拡げてゆくことが、競技の世界も長期的に育ててゆくだろう。その成果=市場拡大分の一部は、育てた者にも還ってくるもの。
 
(栄養は競技力を短期的に育てます)

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『覚醒せよ、わが身体。〜トライアスリートのエスノグラフィー』

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