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2013年10月の9件の記事

2013年10月31日 (木)

アイアンマン世界選手権9 Bike180km後半、痙攣、逆風、姿勢保てない、、

レース後2週過ぎ、身体にエネルギーが充ちてきた感じ。この感覚は数字で裏付けられており、たくさん食べると体重もちゃんと増えるようになって、61kg前半から62kg後半へと乗ってきた。体重増=体力増。そろそろ少し動いてみよう。

・・・

さてレース、事実を淡々と記そう。

この表は、公式タイムと順位とをExcelで加工したもの。左の太枠が僕の記録、隣枠に僕の1kmあたりペース。それを同カテゴリ入賞者と比較したものが右に。皆さんにわわかりにく表だろうけどこんなの熟読するの僕だけだからおっけー

世界との差も、こうして1kmごとにコマギレすれば、手に届く気がしてくる。てこんな僕があの表彰台に? そら上がるでしょ! (言論の自由

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マイル毎の高低表:http://www.ironman.com/~/media/ec16cdfc5c504cdba5ba7b9be7907372/ironman%20bike%20course2013.pdf

起伏が+ーゼロに近い45マイル地点では総合277位だったのが、上り基調の60マイル地点では、394位まで落ちる。これが僕の上りで露呈するパワー不足を示す指標。 猛烈に抜かれまくった印象は、正しかった。

しかし、後半は下り基調。向かい風も吹いてきた。重力で速くなる下りでは、重くて空気抵抗が低いと有利。逆風では、空気抵抗が低いと有利。僕はそこで前に出れていた。

こっからは戦えるかも?と 期待が芽生えないでもなかったが、、 その先の15マイルの間に、434位まで落ちる。

この間、内モモの斜めで細い筋肉が攣るのを、なんとか防いでいた。

時速60kmの数m間隔の車列の中で、腹とモモが近いDHポジションのままでモモが攣ったら、どうなるか?  フクラハギとか末端ならなんとなかるだろうけど、体の中心に近い箇所をコントロールできなくなった時に、自転車を安全にコントロールできる気がしない。

一番重い54×11のギアに入れ、腰を浮かして、脚の神経への電気信号の量を最小限に抑える(本当に少なくなるのかはわからない)。5km平均毎分59回転という低ケイデンスがこの時生まれる。少し収まった。しかし起こした身体は、逆風をまともに受ける。タイムを稼げるはずの区間で、逆に落とすことになる。それでも、低い姿勢で制御不能の痙攣を起こすリスクよりマシ。

予定通り、前のDHバーに挟んだ、100Kcalのジェル10本を溶かしたボトルを飲み始める。ドロドロに甘く、珈琲12杯分のカフェイン込み。未明に作った時の味見では、「わっ!」と思ったものが、とても美味しく、胃に染み透ってゆく。これ、人によっては胃が拒否し始め、それによる急失速が始まるとこだろう。ただ、僕もその日遅くにそのボトルを洗おうとして、匂いだけで嫌な気分になったが。。まあこうして注入した濃厚なエネルギーは、頭と身体をスッキリさせてくれた。

約10マイルごとにエイドステーション。「Perform!」(スポーツドリンクの商品名)と叫び、ボランティアさんとアイコンタクトもして、毎回確実にもらい、サドル後部ケージに入れる。次に「Water!」と叫び、水ボトルをまず脚、残りを首や背中にかけて、その場で捨てる(エイドステーション以外で捨てるとペナルティー)。そしてドリンクをまず200mlくらい飲み、残り400mlくらいは、間でちびちび飲む。これである程度収まってきた。

さらに進むと、横風がキツくなってくる。 自転車の密度も薄まってゆく。

僕のバイクの特徴は、高い空力とまあまあのパワーとを両立させていることだと思う、窮屈そうな低い姿勢の割に、背中のバネなども使えているつもり。逆風下では、これで世界とも戦えるなと感じる。痙攣さえなけば。

前半で感じたポジションの違和感も、3時間以上走ってると、消えている。まあ、その無理が、普段しない内モモの痙攣に繋がったのかもしれないけど。

そんな75〜90マイル区間では、418位まで、少しだけ順位を上げた。

しかしKONA空港を過ぎ、市街地が近づくにつれ、再びピクピクしてくる。112マイルのバイクゴールでは493位まで急落。

痙攣手前になった直線の原因は、水と電解質の不足。前半スポーツドリンクを十分取れなかったのもあるけど、日本の夏のレースでは必ず入れる「数gの塩」を自前ボトルに入れなかったことが大きいかもしれない。日本のショートレースで慣れた行動は、海外のロングレースであっても、踏襲すべきであった。とりわけアメリカ、ご飯は自作のサンドイッチなどが多く、数日間の塩分の蓄積が少なめだったかもしれない。

ただ改めて振り返ると、バイクで失敗したというより、スイムが早かった(=その分だけバイクで抜かれた)、だけなのかもしれない。それに、仮にベストな状態でバイクを走れたとしても、たいして差はなかったんじゃないかな。今回の入賞者にも、けっこうトラブルは襲っているようだし。

常にトラブルがあるのがトライアスロン。その状況なりに、よりよい動きをする。それだけのことだ。

僕が世界と戦えるとすれば、あと必要なのは、20分以上の時間域でのパワー増強。それはショートレースでも武器になるはず。

ちなみに、脱水気味になるくらいだから、走りながらジャー、とかしてません。

2013年10月28日 (月)

アイアンマン世界選手権8 「感情を起動させない」のが耐久レース

2013年10月12日午前10時半頃、大砲が撃たれて3時間半、折り返しのHawi手前。

僕は、抜かれ続けていた。記録を見ると、速度差を見せつけた何人かは、上位入賞の強豪たち。なるほど。KONAで勝つには、Swimは大きく遅れなければ十分(十分遅れくらいまでなら?)、まずは、BIKEでどれだけ前に出れるか。

131013_204351 <勝者たち>

同じNeil-PrydeのBayamoに乗る日本人アレックスもするっと表れ、いつの間にか前に消えた。その時もう一人Bayamoが表れて三台続けてBayamo、と思いきや、公式バイク数カウントでNeil-Prydeは二台だけ。幻? 「二枚のコインを指先でこすると三枚に見える現象」が、路上で発生したのかな?

そして実は、前半はそれほど順位を落としていなかった。気付かないうちに、同数くらい抜いていたようだ。その一人が国内エイジ最強の一人ゴーイチさんで、Bike初め頃に抜いたのでびっくりした。突如の体調不良だと。一発勝負の長距離レースは怖い。

 

折り返し手前、シラトさん含む「準集団」が抜いてゆく。2000台ものバイクは、規定の距離を保ち、たまに抜いたり抜かれたりしながら、という緩やかグループで、進んでゆくことが多い。 でも「集団」ではない。これを勝手にそう名付けておく。

これはペースメーク、という点で効果的な戦術だ。長距離では出力=パワーの変動をできる限り抑えるのが望ましい。プロ選手達は1セット数十万円するパワーメーターを使用し、出力の変動幅を2-3%以内に抑える。アマでもその流れがあり、今年のエイジ参加者の34%もがパワーメーター装備していたという。3人いれば誰かが、パワー数値を見ながら客観的にペースメークしてるわけだ。その割合は速いほど高いはずで、僕の周りにはもっと多かったはずだ。そんな中、僕のように感覚だけで、しかも初の長距離を走るのは、不利。だけど、周りにペースを合わせることで、ある程度ならば、代用可能ともいえる。その場合に、規定の距離を取ってでも、緩やかな集団を組むことには十分な効果がある。そこで発生するのが「準集団」だ。

ただ、他人依存では限界があるし、「美しさ」にも欠ける。しかも、より上位を狙うほど、まばらな中での単独走の時間が増えるはず。予選ではカテゴリ内で上位1-2%に入る必要があるから、尚更そうなるだろう。そんなハイレベルな長距離単独走で対等に戦うためには、パワーメーターは必須になりつつあると思う。

力が同じくらいの相手を見定める。しかし、けして「抜こう」とは思ってはいけない。「合わせる」だけ。「アイツに負けない」というのは、かっこいい「意思」のようで、一面では、湧き上がった「動物的感情」を正当化しているだけ。ショートのエリートレースなら展開に乗ることが決定的に重要なので、そんな要素も有効だろうけれど。

目の前で起きたことに、いちいち感情を起動させず、淡々と進む。それが長距離耐久レースで力を出し切るための、絶対条件。

だから、公道練習中に、クルマとかの想定外の動きにいちいちキレないほうがいい。 ただ事実を認識し、分析して、考えるだけでいい。 ブログランク順位やFacebookいいね数なら、ただ見て放っておけばいい笑

 

話をレースに戻す。僕はパワーを要する上りに弱く、空気抵抗が重要な下りに強いらしいことが、わかってきた。背の割に重いし。。上りでの遅れを、下りで取り戻すべく、準集団の先頭に出る。そんな動きをしばらく繰り返していると、シラトさんが声を掛け、

「・・・・・じゃあ、ダメだよ」

と。不意の日本語、始め聞き取れなかったが、、声のトーンから、まあ落ち着け、てメッセージが伝わった。以後、落ち着けたような気がする。さすが選手としても指導者としても経験豊富なシラトさん。レース後に伺ってみたら、その通りだった。「せわしくなく動き過ぎてる印象だったから」と。

そう、落ち着け、ハッタリくん。

そういえば、Bike前半のトラブルはもう1つあり、Garminの速度表示がおかしい。頻繁にAuto-Stop機能が起動する。そして平均19kmくらいの表示。その頃はアメリカ政府の財政問題でボルケーノ観光が閉鎖されたりで、お金がなくてGPSも弱くなったのか? 単なる僕のセンサー取付位置のズレか?

そもそもレース前に設定を終えておくべきなのだが、スタート後にわかったのなら、放っておくべきだ。KONAは周回数のカウントに注意する必要がないし、風や傾斜の影響が強くて速度表示に意味がないから。しかし、興奮した神経はバタバタした行動を駆り立て、Auto-stop設定を解除してしまう。無駄。一度目は設定したつもりが失敗し、二度目に成功するが、それは単に、「ゼロkmh表示」をさせるだけだった。まったく無駄だ。。

落ち着くんだ、ハッタリくん。。

後半に入ると、速度表示が正確になってきた。ストップウォッチを止め、リセットし、再計時開始。

(つづく)
(あーやっと折り返した・・・このブログ)

2013年10月26日 (土)

アイアンマン世界選手権7 Queen-Kとは、どのように、特別なのか

IRONMAN World Championship のBike112mile、およそ180km。獲得標高は1000mを超えるんだっけ。数字だけでいえば、品川あたりから箱根駅伝コースを辿り、箱根山頂で折り返して戻ってくる感じ。さらに強風のオマケ付き。

その大半を占めるのが、ハワイ島北西沿岸のルート19、通称Queen-Kだ。

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写真は35kmあたりのviewing point、手前はKiholo湾? 遠くに島北端が少し霞んで見える。その奥に折り返し地点。

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こちらは同じ場所の道路側。左が海。

<地球の力>

そもそもハワイ諸島とは、水深6,000mの太平洋底に湧き上がった巨大火山が、北西から南東へと移動しながら形成された。今その「火の女王」が在らせられるのがハワイ島の南東、その名も「ボルケーノ」だ。島中央のマウナケア山は、太平洋の海底から数えれば1万mを超える、実質世界一の高さ。

北西岸には、島内では古いほうの溶岩流が残っている。浅間山の北側と似た雰囲気。それが何十kmと続く。

このなだらかな斜面いっぱいに、かつて真っ赤な溶岩が広がっていたんだ。
地球の莫大なエネルギーのカケラ。その隅っこを、Queen-Kは走る。

<道>

右通行の道路の右端に、ほぼ1車線分の広い路側帯があり、自転車レーンをも兼ねている。
写真の通り、右折レーン(=日本の左折)はカーブしていて、その手前で自転車レーンと交差する方式。試走では右折車が無いのを確認して中央寄りに移動し、ちょっと緊張しながら直進してた。それさえ気を付ければ、日本の大抵の道より安全だろう。もっと前にここ試走に来るべきだった。。

移り変わる景色を楽しむようなコースではない。海は見えても距離があり、山側はただただ溶岩が続く。目に新鮮なものといえば、吹き続ける強風で「斜めに生えた」小さな木くらいか。

でも、この広さ。
太平洋の真ん中に表れた地球の息吹を感じるには、この単調さがふさわしい。
そして、自分自身の小ささを感じるには。

そんなコースだからこそ、レースに集中できる。

<同行者たち>

世界から集まった最強のトライアスリート達。次々と、僕の左を追い越してゆく大きな身体と、その一切の無駄のない安定した動き。時にスペイン語やドイツ語やフランス語などを仲間と呟きながら。同じチームウェアを着ているでもなく、同じ言語同士で、その場で繋がったのだろうか。

そして彼らが作り出す、秩序。

視界の先までずらああーーーーと整然と続く車列。
エイドでは、ボランティアが差し出すボトルを、時速50kmを超えてても減速もせずに片手一発で受け取り、姿勢も一切乱さずに飲んだり掛けたり収めたり。

僕ははじめ、ボトルをサドル後ろに収めるのに手間取ったりして、2-3度か、少しフラつくことがあった。するとすぐに後ろから怒られる。

サドル後ろのゼッケンプレートが曲がってるよ、と英語で言われたこともある。「やー、わかるんですけど、ちょっと直しづらいです、、」と内心で思ってると、その後ろの方が、指で自分のプレートを触り、ゆらゆらさせながら、「ノット・ストレート」か何か。だよね、直せるよね、と思い直し、少し触ると、真っ直ぐに戻った。

あからさまな集団に、レフリーバイクが追いつくのが早いのは、前書いた通り。

こうして、乱れた秩序は直ちに修正され、整然と、風と重力に対する力比べが進行してゆく。

<応援者たち>

こんな酔狂なことに熱中する僕らに応え、援けてくれる人達。日の丸を掲げる何人かの日本人応援団も、そこかしこに居て、気持ちが上がる。そして、エイドにほぼ必ずいる子供達。応援て気持ちはグローバルなものなようで、目をキラッキラさせながら、真剣な表情で、ボトルを手渡してくれる。

なるほど、子供の目線からも、おもしろいのだろう。ピカピカの自転車が絶え間なくびゅんびゅんと通り過ぎてゆく。エイドを手伝っていれば、その中の一人と目が合い、時速何十kmかの相手にボトルが渡る。しばしば失敗してボトルが転がり、大人がスキを見て拾ってるが。

高速区間では、助走して速度差を減らそうと必死だ。リレーのバトン渡しそのものだ。ただ、僕の通過は早めだからいいけど、いつまで助走を続けられたのだろうか? そして僕らと一緒に翌日筋肉痛?

<僕>

僕も次第に、そんな秩序に、慣れてくる。

エイドでは始めは脚を止めて少し減速して確実に受け取り、路側帯に入って、確実にボトルをケージに収めてから、コースに入るようにした。路側帯は競技レーンではないけど、この使い方なら許容されると解釈。その間に少しづつ順位を落とすのだけど、まあ仕方ない。

そのうち一発キャッチができるようになり、サドル後ろのボトルケージとの出し入れにも、そのうち慣れてきた。腰をサドル最後部にずらせば、スペシャのZケージは簡単に収めることができる。

水ボトルを受け取って全身にかけ、ボランティアの隙間から捨てて、さらにスポーツドリンクを受け取って空のボトルケージに収める、なんて器用な動作をしてると、"awesome!" =スゲーとボランティアから声が上がる。

だんだんと、嬉しくなってくる。

僕は、アマチュア界世界トップレベルの集団の中にいる。その何人かは、やはり厳しい予選シリーズから勝ち上がったプロ選手にも勝つ人達だ。その中で、同じレベルの動作で、180kmの距離を、一緒に進めている僕。まあ少しは抜かされてるけれども

「出れるだけで価値のあるレース」、そう、こうゆうことなんだ。

僕は、彼らと何が同じで、何が違うんだろう? 何が足りず、何なら勝てるんだろう?

<起源>

その感覚は、3年3ヶ月前、始めてトライアスロンというものに出てみた蒲郡大会のものと、似ているかもしれない。
総合上位(=今は対等に戦えてる人達)たちに凄いスピード差でブチ抜かれ、でも、なんとか走りきれている自分。意外とガンバレてる自分。

僕にとってのルーツが、その競技自体のルーツの地で、シンクロする。

地球のルーツのカケラを残す、太平洋の真ん中で。

(つづく)

2013年10月24日 (木)

アイアンマン世界選手権6 Bike180km, 5時間7分の記録

レース12日後の今日は穏やかに疲労回復が進んだ。レースレポートに戻ろう。

T1のテントで、現地購入したアームクーラーと、ボロボロのグローブをはめる。いずれも落車対策を兼ねている。

SKIL-SHIMANOのグローブはかつて湘南ワタナベレーシング時代に、当時Redio-shackへ移籍した別府フミさんから頂いたもの、お護りだ。1年前の群馬CSCでの落車で破れたけど、身代わりに手を守ってくれわけだし、「救急搬送だけ」で済んだともいえるし。それにワタナベさんとの4年前の出会いがなければ、僕は今トライアスロンを、少なくともこのレベルでは、していないと思うし。

バイクのヘッド部分を持って走る。軽快。心拍数も適度。てSwimもっと攻めれたってこと?

乗車ラインを過ぎ「いつもの」をやらかす。ペダルに付けたシューズに足が乗らない→ 左足をシューズに乗せて跨がるときに振り上げた右脚でサドル後ろボトルをはたく→ 拾う→ 再び乗る時にフラついて後ろから怒られる。。。この間に軽く10人くらい抜かれてる? まタイム差は長距離だから無視できる範囲。でもショートレースでは致命傷になりかねない。来春は乗り方を十分練習せねば。。

デカいガイジンさん達との力の差を、始まってすぐのパレード区間の上りで突き付けられ、次々追い越される。デカくても登れるパワーの差って。。それ以降の緩い上り、全てがそう。

僕の初KONA&初アイアンマン、周りの様子を慎重に観察しながら走る。

KONA市街地の折り返し区間では、道いっぱいに広がった集団が前に。ドラフティング違反を通り越してプロトン=完全な集団状態。国内レースではしばしば遅い人達が結成しちゃってるけど、最高峰なはずのKONAでもあるんだ。。まあこの区間はドラフト効果少ないし、主戦場のクイーンKで消えるんだろうと。がしかし、クイーンKに入っても相変わらずだ! 道幅も広くなり、一度抜かすが、すぐに抜き返してきた。まさに先頭交代。ここでそれはだめでしょ、と一度後ろに下がる。

と後ろを振り返ると、二人乗り大型バイク。隣のガイジンさんが「彼らメモってるね」「だよねー」と小声で囁き合う。すぐにはカードを出さず、一網打尽にする算段だろう。その集団は緩い上りで(やはり上りで…)先に行ってしまったが、次のペナルティーテントで、10名近くが入っていった。横に広がるブロッキング違反も含むかもしれない。そんな光景は後でも見た。時には数km先まで見通しが効くクイーンK、見るからにダメな集団には、すぐにレフリーがかっ飛んでくる。

多難なバイクパートだった。サドル位置がしっくりこない。少し高過ぎるんだろう。そのせいか、シューズ内の足の収まりにも違和感を感じる。

前日バイクチェクイン時:

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変わったポジションと思われるだろうけど、いつもはもっとサドルを前傾させている。2つ前で書いた通りだ。

ついでに翌日1,200万円を手にしたMirinda Carfrae(だよね?)

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写真は共にTRIスポーツ坂本さんより

思い通りでない窮屈さ。ハンドルから手を離して「ばんざーい」とかやりたい気持ちになる。こんなの始めてだ。まだ百何十kmもあるのにね、、

現地で自転車を組み直してから5日間、僕は何やってたんだ的なんだけど、、
初日にペダルを前後逆に付けようとして作業時間を浪費した影響はゼロではないが、、慣れないハワイの道路に遠慮し過ぎたかな。右通行で停止時には右シューズを外す。慣れるのに4日かかった。さらに交差点では、クルマの右折レーンと自転車レーンとが交差する箇所がある。他の参加者の自転車の後を走っていて、始めて気づいたことだ。

さらに追い討ちを(軽くだけど)かけられたのが補給。30km手前から水やドリンクを貰えるエイドがあるけど、始め2つが何故か、下りの途中。時速50kmを超えてなんで片手でボトルを受け取れるんだろう? 幾つかパンチして叩き落としてる間に順位も叩き落とす。これが後半の脚攣りにつながる。

ただ今回、エイドのPOWERBAR製スポーツドリンクが雑菌かなにか変質してた疑惑、が噂されてて:
http://triworldjapan.com/2013/10/21/starykowiczのハイドレーションレッスン/ 
キャップをそのまま飲めるのに付け替えていたので、事前にボランティアさんなどが手作業でやってたなら、そうゆうこともありうる。もしそれが始め2回のエイドに起きてたとすると、むしろラッキーだった可能性もある。ま、僕の胃だと普通に消化してた疑惑も噂されるが。

 
次々と抜かれてゆく。速度差があるから「20秒以内に4車身あける」なんて考える必要もない。今シーズン、バイクで抜かれたのは、たしか常滑予選のオラフとカシマさんだけ。それ以外のJTUショートレースでは抜かれた記憶がない→訂正:ダメな館山では2人くらい抜かれてたかな。
国内エイジレースとは全く違うレベル。この最高峰の厳しさが、一度出た者の心を掴んで離さない魅力でもあるんだろう。
 
ずるずると後退し続けながら(実はそれほどでもなかったのだけど)、Hawiの折り返しへ。
 
(書き疲れた、、レースを思い出しながら書くから、神経が興奮してしまう、笑)

2013年10月23日 (水)

アイアンマン世界選手権5 レース疲労の回復について

昼過ぎ、冷えと微妙な熱が入り混じった感覚。大学の診療所で体温を測ると予想通り0.2-3℃高い。ベッドを借りて横になると、骨の中の疲労がギシギシ鳴ってる感じだ。30分経つと、その骨の中心から温まり始め、血が身体中を巡り始めるのを感じた。

トレーニングを続けるうち、そんなセンサーが鋭敏になってきた。

僕が運動を始めたのは5年ほど前、片道30分の自転車通勤から。その頃は、「暑い、喉が渇いた、お腹すいた、筋肉痛」くらいしか、語彙がなかったなあ。

身体が発する信号を捉え、その意味を探り、従う。この一連の動作は、あらゆるトレーニングに優先させるべきだ。そこで無理するのは、競技にも健康にもよくない。

「運動は身体に良いか悪いか」論争の無意味さはここにある。例えば統計調査で「無理してる人の割合」を把握することは困難だ。運動そのものは、単なる道具のようなもので、どう使うかでできあがる物も変わる。健康とは、運動も含めた生活全体を通じて作り出すもの。

ともかく、僕の身体は、休養と回復とを要求している。

10月12日夕方=日本の13日昼のゴール直後は、それほど疲労感は無かった。30分後にはそう美味しくもない会場のご飯をバクバク食べ始めたし(他の日本人選手に驚かれた)、翌朝からも毎日海で泳ぎ、バクバク食べていたし。でもそれは脳が興奮していただけ(それでも食べてたのは胃が丈夫なだけ)、身体にはかつてない疲労が蓄積されているはず。

リカバリー理論によれば、9.5hのアイアンマンレースからの回復には早くて29日、遅くて48日を要する。なので11月11~30日あたりまで、トレーニング的なことは一切しない。

数字の出典はこちら「リカバリー」自転車ロードの西薗良太選手の推薦書。基本がまとまってる(けど高い、、BOOK-OFFに出てたらOK)

速く/強くなる、とは、この図(p6)の通り、「波のデザイン」に尽きる。

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波は上がれば下がる。トレーニングやレースは波を下げるもの、上げるのがリカバリー=休養だ。いわば、休むから速くなる。とくに社会人の耐久スポーツ参加者にはマジメな方が多いようで、とかく休むことを罪悪視しがちだ。しかし実態は、休まないから速くならない。のかもしれない。

図では超回復は最大3日後とされているけど、それは通常トレーニングの場合。決戦レースでは、数ヶ月かけてこの波を限界まで引き上げ、レースで限界まで落としきるわけだ。それを戻すのに、1〜1.5ヶ月。

耐久競技とは、身体の限界に挑戦するものだが、けしてガマン比べではない。「この波を操る技術」を争っているのだ。なんにもしないのも、ダラダラ動くのも、太るのも、その1要素。

そうそう、僕はこれから太ります(これ説明必要?)

2013年10月22日 (火)

アイアンマン世界選手権4 Bike反省編

9日経ってほぼ筋肉痛が消え、昨日から移動ジョグを再開。ゆっくりなのに、脚も体幹もガタガタしてる。そんなんで走ってもトレーニング効果は無いけど、電車代勿体ない方が強いのでね。走り方は全く変え、脚を脱力、体幹だけで進むつもりで。イメージは「くらげ」だ。なわけないけども

そしてお腹が猛烈に空く。11:30に700Kcalしか食べなかったので、15:00に900Kcalの追加投入を迫られるも、18:00また空き始めた。

・・・

さてバイクパート、僕は日本人3位の5時間7分。しかしそれはバイク強者が次々と落車に巻き込まれたりホイール壊れたり体調崩したり、、という不運の結果。僕はなにより、安全に走り切れたことに感謝したい。そして、反省せねばならない。

僕の第一の失敗は、ポジション調整を(いつものように)直前にいろいろいじったものの、決めきれなかったこと。こんなにヒザ伸びてちゃねーー!

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写真:OMINOWAYS伊谷さん撮影→TRIスポーツ坂本さん経由。応援団充実のハワイ!

第二の失敗は、この微妙に無理なポジションに加えて、エイドでのボトル取り損ねが重なり、Hawiの折返しを過ぎてから内モモが何度も痙攣寸前になったこと。堪えている間に大幅に順位を落としてしまった。

それでも、大崩れせずに誤魔化しきれた自分を褒めてあげてもいいのかな。その結果が日本人3位であるのなら。

ことはそう簡単ではなく。伏線はいっぱいあり、、

  1. そもそも僕は、50kmを超えるBike錬は1年で10回あるかないか。100km超えはマジで1-2回くらい(→逆に言えば、距離では勝てない、という考え=後で書く)。それで、長距離対応のポジション設定、という作業が出来てない
  2. いい加減なポジション設定のまま、飛行機に積むために、自転車をバラす。外す前にマジックでマーキングするけど、組み直した時に、全く同じポジションを再現できる、とは限らない
  3. ハワイで自転車組み直して、コース試走したい、しかし、初のガイコクの道は、よくわからない、こわい!
  4. 迷いながら試走してた2日前、サドルメーカー=ISMの現地営業マンにたまたま会い、相談してみた。すると「ユーのサドルちょい前傾きつくね? ミーなら数度くらい水平に戻すかもな? まユー次第だぜグッドラック」的なカンバセーションがあり、そうしてみた
  5. その分、実効サドル高は上がるので、その分シートポストを下げるわけだが、、どうやら足りなかった
  6. 前日のバイクチェックインで、TRIスポーツの坂本さんに「サドル傾き減ったね、でももう少し傾きを復活させてもいいかもね」といわれる。なるほどな、と思ったが、、前日だし、、

などなどなどなど。

結論:長距離練でポジションを煮詰めとけ。

(つづく)

2013年10月21日 (月)

アイアンマン世界選手権3 KONAのSwim攻略法

コンドすぐ前の道からの夕焼け。スイムコースはこの海を横切る。

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このたびブログランキングというものに参加したら、始めて読む方々が増えた。僕のブログの特徴の1つは濃密大量なレース分析。1レースのSwimパートだけで「事実→分析→対策」と三部構成で何千字と書いたりする。書きながらレースを二度味わえるし、次のレースに向けて頭も整理できる。

つまり自分のために書いていて、あなたのためでわありません笑。でも少しでも使ってもらえる要素があればいいかな。で今回はその「対策」編。

アイアンマンのSwimは*3.9kmと長い。過去最長は予選の1.9kmだった。実質的に同じ距離を25mプールで泳ぐためには、壁をけって進む20%分を除外すべきなので、5km近くとも考えられる。でも実際には、それとは違う感覚がある。
 
※公式距離は2.4mile=3862m、実際レースでは38mは余分に泳ぐでしょう。まあメートル法の開催地で3.8kmとされる場合もあるけど、アイアンマンはアメリカ産の競技です。
 
僕はトレーニング内容を考えるとき、雑誌やネットで紹介される標準的メニューの類いは使わない。かわりに「自分のレースペース」を想定して、その周辺域のスピードを十分に「リハーサル」する。リハといってもレースそのまんまではなく、変化をつけることが大事。
 
トライアスロンSwimで、そのレースペースには2種類ある。
 
1つは、集団の中で、集団が作る水流に乗って進む時の「グライダー型」Swim.
ここでは、「同じ速さなら、より少ない力の方が良い」という効率性が最も重要。
 
もう1つは、集団から離されそうな時、もしくは、もう1つ前の集団にブリッジをかける時の高速Swim. 50〜200mくらいまでの泳力で、速ければ速いほどよい。 。トライアスロンでは400mのタイムが重視されるけど、それはグライダー型とのバランスから、400mのがなんとなく近いかな、て程度だろう。
 
JTUショートレースで上位を戦う場合、後者の絶対スピードがかなり重要。
アイアンマンでは、前者の巡航の効率性がほとんど。
特にKONAでは、バトル無しに大集団がスムーズに進むので、プール泳とは大きく状況が異なる。
 
まとめると:
  1. Swimが3.9kmなら、そのリハーサルが必要
  2. でもプールで4000m連続で泳ぐのでは短かいし
  3. そもそも動作自体が違う
<対策>
 
まず距離については、「時間」を基準にした方が正確。
予想レース時間はプールで同距離を泳ぐよりも長くなると思う。
これは、特にバイクでも共通する。ただし公道練習ではバイクで同時間の練習をすれば、距離はもっと短くなるはず。つまり180kmを走る必要は(少なくともリハーサルとしては)無い。
 
動作については、前回かいた「ゆったり長く泳ぐ」スイムが1つ。この時の動作が、ロングSwimの基本になると思う。
もう1つは、そのままズバリで、「集団でリラックスして泳ぐこと」だ。集団泳の練習をすると、力を入れてスピードを上げがちで、それはスタート練習としては意味あるのだけど、ロングの9割以上はそこではない。
 
この集団泳を簡単に実現する方法があって、練習で、前泳者の直後位置で泳ぐこと。なお相手との人間関係には注意ね。オッサンが女子高生とかに無言でベタ付きしないように笑。練習会ならこの環境を意図的に作ることができる。
 
よくある集団練習では、5秒間隔スタートするけど、これは単独泳基本の競泳用の方法。トライアスロンでは実戦的ではないのだ。タイムを正確に見るよりも、乱流に乗れる技術のが大事。
 
KONAのレース中に思ったのは、普段の僕のスイム練習は「中途半端に速過ぎるかも」ということ。絶対スピードを上げることと、集団内リラックスとの「振り幅」が実戦では必要。でも、その中間域ばかりを練習しがちなものだ。
 
・・・
 
この2タイプに共通するのは、効率性。
効率性とはおおきく、キャッチの技術と、抵抗の軽減。
 
昨日かいた「秘密」とは後者、下半身がブレて抵抗になってますよ、と指摘いただいただけ。てなんの秘密もない超キホンだよね〜〜何もったいぶってるんだろうね!
 
ブレるほど、抵抗は増える。「えーそうなの! 知らなかった! 直してみよう! あ速くなった!」 なんて人は居ないでしょう? そんなこと知ってる、でも、できない/できてないことに気付かない。
 
僕がそうなってたのは、自転車のペダリングの動きをプールに持ち込んでた気もする。上半身と連動しながら脚を、大きく動かす、のがペダリングだから。
 
でも人は、一度気付いたことには、対応できる。

2013年10月20日 (日)

アイアンマン世界選手権2 Swim好成績を分析する

KONAでは10日連続で泳いでいた。こんな光景が当たり前に拡がる海。

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 by Michael Rauschendorfer - Triathlon Photography

入ってすぐに、数々の熱帯魚の群れたちがお出迎え。最深10mの海底まで何の濁りもない海、眼下に数匹のイルカたち、1匹のエイ。海亀は目の前に浮かんでいて、しばらく一緒に泳ぎ、ほどなく数m下に潜っていった。一度、海亀製の珊瑚らしきものを見た。良いペースのガイジンに付いて居た途中なので、確認しきれなかったけれど。

浅瀬にはウニがいっぱい。頭の中ガンガン流れるあまちゃんテーマ、がすぐ消えたのは、周りの女トライアスリートが皆「ビキニのシャラポア」みたいなせいか?

表彰式で流れたレース映像では、2,000匹以上の人間の群れを、イルカ達がジャンプしながら横から眺めていた。気付かないうちにドルフィンスイム体験? これも$775の参加料に含まれるなら割安か(と言って高額な出費を正当化しようとする僕です)

そんな環境が数分先にあって、疲労が残ろうが、泳ぐしかない!

日曜は現地友人のガイドで、ワイキキビーチで軽く、月火水と4kmフルコース、木金はスイムスキンスーツをメーカーブースで借り、日本未上陸ROKAの「TYRなら$350相当」てのを破格の$159で購入。レースでは今回しか使わないだろうけど、プールでもスピード錬ができるだろうしね。

この特訓の成果を、記録で説明しよう。

100m1:33ペース。いつものショートレースの1.5kmなら23:15換算。例えばウェットスーツで泳いだ館山より5秒速い。

ただ今回は、ほぼ全て集団の流れに乗ったので、うまく乗れる事が少ない他レースとは比較しきれない。そこで今回出場者と比べると、館山で2:25差を付けられたタカハシさんが今回1:31ペース、1.5km換算30秒差に差が縮まる。また日本人順位では58名中7位。セントレアで大きく差を付けられた方々を、ざっと見て3名は上回った。

その成功要因:

  1. 海で泳ぐ技術
  2. 長時間泳ぎ続ける技術
  3. 集団泳の戦術
  4. 直前ウォーミングアップ

1.KONAは波が殆ど無く、浮力も感じて、とても泳ぎやすい。「Open-Water-Swim特有のタフな技術」はそれほど重要ではないだろう。それでも、プールとは確実に違う。集団で波も立つし。僕は気持よく泳ぎまくり、前日に疲労回復を迫られるほど(=この話は後日)、おかげでかなり慣れた。海と一体になれた感じ。

2.片道2kmの直線。25mプールの80倍だよ。4kmフルコース3日連続てやり過ぎか、でもまーどーせ表彰台上がんないし高いカネ払って(=この話も後日)きてんだし! と開き直る。

毎朝7時から、1kmに1回くらい休憩を挟み、一定ペースで。良いペースのガイジンさんがいたら、こっそり後ろに付かせてもらう。あるとき先導者が止まり、こちらも止まってみた。僕を数秒見たあと「ユーはいつも右にそれるよな」と指摘頂く。「ミーはジャーマニーでいつもレイクでスイムってるからな、ストレートに泳ぐのはインポータントだぜ」。そんな触れ合いがグローバルレースの楽しさ。英語への「苦手意識を捨てるだけ」で開ける世界はある。

3.レースでは周りをよく見て、無駄な力を使わず、集団が作る水流に乗れた。僕はもともとそうゆうのが苦手だ。でも、上記1-2のお陰で、「頭を上げずにまっすぐ泳ぐ」「良い泳ぎの後ろに付く」「後ろも振り返る」…が自然にできた。レース後半では、追うべきとこで追えなかったことがあったけど、それが今の実力。

4.ボトル事件のお陰で、スタート2−30分前に心拍を上げたら、スタートダッシュがとても楽。次も忘れてみるか笑

結論:海で泳げ。

・・・

まーそれも1週間前の「昔の自分」の話。今日また僕は進化を遂げたのであった。

50mプール無料公開日、KONA中3日でゆっくり泳ぎ帰ろうとすると、見るからに速そうな男女3名が何か準備している。聞くと、ライフセービング体験だと。やってみるとパワー感が新鮮。トライアスロンのルーツは実は、泳ぐ、走る、というこの競技らしい。スピードとパワー系な方はあちら、持久系ならこちら、てとこか。

冷たい雨のせいか空いていて(タダなのに)流れで個人レッスンが始まった。Wコーチは神さま飯沼誠司さんと200Fr 2:01のライフセーバー河田聖良さん。ナンボするんねん?? 1つの指摘を試してびっくり、クロールてこんなに「軽い」のか!! 他に幾つかのアドバイスも。

 

2013年10月19日 (土)

初アイアンマン9時間35分、KONA世界選手権は想像を超えた!

IRONMAN World Championship/アイアンマン世界選手権。毎年10月中旬頃、ハワイ島西岸KONAで、およそ6万人から選ばれた2,000名が集まる。競技としてのトライアスロンの実質的な起源であり、今も最高峰であり続けている「聖地」だ。

この競技の始まりは、1973年頃のアメリカ・サンディエゴと言われる。当時は、西海岸の自由な空気の中で自然発生した「遊び」であり、競技としての型も存在しなかった。それゆえ正式な記録は存在しないようだ。転機は1978年ハワイ、オハフ島ホノルルの水陸の三大耐久レースを連続する「無茶苦茶な遊び」が企画される。参加わずか15人。これがバカ受けし、3年後には日本でも初開催されるほど、競技として確立、成長してゆく。

聖地巡礼の旅に出ようと思ったのは今年初め。3年半の集大成。この過酷なお祭りのなんたるかを、心身の疲労の極限で感じてみたいと思った。 運良く実家近くの予選に申込枠があり、出場権を安上がりに獲れた。僕的に納得できる準備もできた。

G1

そしてそこは、想像を超える熱気に溢れていた。

2013年10月12日16時半、ゴール。

  • Total226km 9:35:33 総合311位(参加2134名)/40-44Men39位(305名)
  • Swim 3.9km 1:00:19  総合300位/部門41位
  • Bike 180km  5:07:23  総合493位/部門89位(通過順位、部門別不明)
  • Run 42km      3:21:57(初フルマラソンの記録も兼ねる)
日本人としては、総合4位(申込59名/1名ケガ欠場)、カテゴリ1位(7名)。奇しくも共にJTUランキングと同じ。いわば、国内世代最高の座を、ショートとアイアンマンのWタイトルで、獲得。そんな表彰はないけど、ま、ハッタリ君だから笑。

連載の初めは、レースレポートを、Swim編まで書こう。
 
<当日朝>
未明2時過ぎ=日本の夜9時=に自然と眼が開く。これがハワイ入り7日目の効果だ。2時半過ぎにベッドから上がり、パンをトースターで焼いていると火災報知機が誤作動して凄まじい音を響かる。リセットボタンを押すが、、しつこく、電池も外した。これで完全覚醒!
 
エネルギージェルはこちらで30本近くタダでもらった。そこからCLIFの3種類を10本ボトルに入れ、水に溶かす。1,000Kcalと珈琲12杯分のカフェインを含み、バイク後半にガツン!と投入。
ちなみに食品類ごっつあん合計1万円くらい、バッグなど物品類や特別にもらったのも含め、出場料の半分くらい回収してるかも。出場料は実は常滑より安かった?
 
4:40一度コンドを出て、レースNoシールを身体に張る手続。Tシャツを脱ぎ、乾くまで着るなと言われるが、直後に日本の女性参加者に会い、反射的に着て、シール剥がれる。計8個の数字を貼り直してもらうのに20分余計に消費。
 
その分準備時間が削られ、、コンドに戻ると5:30頃。6:20に最終出発。するが手前でボトル3本忘れたのに気付く。うち2本はエイドで貰えるが、1,000Kcalボトルは致命傷になりかねない。10分ちょっと走って往復し、「ヘイユー・ダイジョーブ?」的に心配されるのに笑顔で応えながら、付いた、と思ったら、6:30のプロ男子スタート直後で、人波で進めない!「ゴメンナサイ急いでます」→「アスリート(=参加者)です」→「アスリートで急いでるのでゲート超えます」とエスカレートをかけ、無人のコース内を走って、18:42無事到着(無事か?)。
 
自転車のポンプを叫んで持ってきてもらい、空気圧チェック、その他をちょっと確認して、スイムスタート位置へ。息が上がったが、アップとして丁度よかったかもしれない。
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<Swim 3.8km>
スタート位置は、バトルを避けつつ有利な集団に入るために、「奥の2列目」を狙う。泳いで移動する途中、密集度が下がってきあたりで、まーいーや、と止まったのが写真左のオレンジの大ブイのあたり。みんな移動を終え立泳ぎしている。スペースのある3-4列目に入り、泳ぎながら身体をほぐしていると、自然と2列目に上がっていた。お互い泳力を測りながら、「速い人の後ろ&遅い人の前」につこうとしている。この日本人わりと速そうと判断されたのかな。そうゆうアピール大事。
7:00、スタートの大砲が鳴り、2000人が一斉に泳ぎ始める。見事にノーバトル。前のガイジンさんの後ろで、後ろから抜かれず、横から押されず、周りの作る水流に乗って、すーーっと進んでゆく。
 
スタート時の動画:40秒地点を見ると、手前の人達のが早く泳ぎ始めてる。 
あの大砲の音が空気中を伝わるのはそんなに遅いんだろうか? なお少し後の上空写真では、手前の集団が明らかに速い。ただそれは一番速いスイマーが集結してバトった結果だろう。
 
凄いのは、感覚で500m以上泳いだ後、始めてバトル状態が発生したこと。スタートは左右に拡がるが、少しづつコース内側に集まってゆく。後ろに脱落する人も多いが、それ以上に横の集積効果が勝ったのだろう。参加者のレベルの高さを感じる。
前にゆっくりな壁、ができた形で、数十秒間、ストローク長を短縮し、小刻みに進むことで、位置と姿勢をコントロールすることを重視。
その後、落ち着いて後ろを振り返ると、スペースは結構あった。つまり、油断していても乗っかられることはないし、横に移動することも可能だ。ペースを緩め、スペースを探し、少し横に動いて入り込む。マークできる相手を探し、「お願いします」と後についてゆく。集団の動きは安定しており、頭を上げて方向を確認する必要もない。これで再びリズムを取り戻した。
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2km先の2つのコーナーをノーバトルで回り、後半へ。ここまで、驚くほどスムーズで、とてもこれから未知の距離へと踏み入れてゆく感じでない。
 
しかし途中から少しづつ前の集団がまばらになってゆき、乗れる水流も弱くなってゆく。油断していると前と離されてしまう。後ろか横に付ける相手を探し、付いてゆく。2-3度、付き損ね、その度に付く相手の平均速度が下がってゆくので、累積的にタイムが落ちる仕組みだ。
一度完全に離され、単独で(後ろは1名以上ついていたが)、追うが、急速に消耗し始めるのを感じた。あきらめ、タイム落ち覚悟で、少し横移動して付き直す。ここで逃していなければ、確実に1分を切れていたな。感覚残り500mくらいをそのまま付いてゆくと、ゴールが見え始めた。ペースが少し上がったが、つき続け、ゴールの階段へ。
 
100m1:33ペースで、Runとほぼ同じカテゴリ順位で上がれたのは、大成功。プールでのタイムが明らかに速い方よりも速く上がれている。これがトライアスロンのスイム戦術。
 
シャワー=正確にはぶら下がったゴムホース=までにスイムスーツ(ROKAの$290くらいの=TYRなら$350相当!=のを特別に$159でEXPOで買えている)の上半身を脱ぎ、ホースの下で一度座り、全部脱ぐ。下にはトライスーツを着込んでいて、後は着替えなし。自分のバッグを取り、バイク用のアームクーラーとグローブ、ヘルメットを付け、バイクラックへと走る。
 
(続く)

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『覚醒せよ、わが身体。〜トライアスリートのエスノグラフィー』

  • 初著作 2017年9月発売

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