天草トライアスロン2013 2時間3分17秒の記録 Swim編
<スタート前>
9時の第一ウェーブスタートと同時に腕のGPS時計をスタートし、ウェットスーツの袖に収めて、黄色キャップ集団の先頭で出番を待つ。第二ウェーブもスタートし、2つの魚群が前でバシャバシャ跳ねている。隣の、割と慣れた雰囲気の方に話しかけた。
8「コースロープ沿いって固まりますね、どう抜くのがいいんでしょう?」
慣れた方(推定)「ロープから少し離れれば間を抜けれそうですね」
ロープから5mくらいの中央寄りに位置した。
よく焼けた、トライアスロン大好きな雰囲気の方が、ニヤニヤしながら前に出て振り返り、叫ぶ。
好き者(断定)「ナントカカントカ、がんばるぞー、おーーー」
皆「おーーー」 (パチパチパチ)
10秒前、のコールでクラウンチングスタートの低い姿勢を取る。
おっと、スタート前の6分間を書いてしまった、タイトルを「2時間9分の記録」に変えないと。。
<スタート>
ホーンが鳴り、砂浜を3歩ダッシュ、ヒザ下の深さから海面へ飛び込む。この時間帯は、すり鉢状にすぐに深くなるから。干満の激しい有明海の、浅い浜。天草大会は例年、「大潮の満潮」に合わせて日程と時間が決められるそうだ。汐が引くとコースは全て干上がり、1.5kmビーチラン、になってしまう。
魚雷のように浮上し、先頭集団で数十cm先行したのを確認。周りが追いつくまでの間、余裕を持って見渡すことができる。左に2名、右に2名。右奥の大外にも少し。
近くの5名は横一列、牽制状態が少なくとも50m以上続く。誰が「自分より少し速いか」を見極め、その後に付いていこうとしている。
海の水泳=Open Water Swimming (OWSと呼ばれる)では、前泳者に付いて泳ぐ「ドラフティング」が基本戦術。水の抵抗を減らす流体力学上の理由によるもので、真後ろなら引っ張られた水に乗り、斜め後ろ(前泳者の腰あたり)なら前泳者の作る波に乗る。それぞれに物理的原理は異なる。後者の場合は前泳者のスピードを減衰させる作用があり、やり過ぎはマナー違反ともいえる。もし自分がそうされたら、下がって逆の位置につくか、振り切るか、だ。
後ろから抜く気配があれば、キックを強めに打って推進力を強めると同時に、泡で牽制のメッセージを発する。ま実際はエイジレースで本当に速い人が第二列でスタートを待つことはないので、その必要は殆どないのだが。
推定100m以上が過ぎて、オーバーペースなのが下がってゆく。左の1人目、大外の大柄な1人が、どうやら速い。どちらに付くか? 勢いが大外が勝ると判断し、3mくらい右に斜行して、斜め後ろに位置する。しかし30mくらいで彼のペースが少し落ち、左のリードが確定してきたので、再び左に数m斜行してほぼ真後ろに付く。彼の足先から僕の伸ばした手まで30cm前後くらいか。僕は時折少し左右にズレて、水中前方の視界も確保。
推定200〜300mで、僕ら2人が完全に抜けたようだ。黄色キャップは海面で最も目立つ色で、ヘッドアップして海面を見ると、その前に誰もいないのがよくわかる。
<1周目の巡航>
こんな先頭でのレース展開は初めて。しかも、いつもより明らかに余裕がある。
この3週間のスイム急成長が効いている。これまでのような推進力のムラがなくなり、手の入水からフィニッシュまで恒常的な推進力を得ている感触。特に入水直後からの駆動力を感じる。エンジンが前輪に新設されたようなものだ。この感覚は、1月前に少しだけ感じ、直前5日間で急浮上したもの。「まにあった」。
体幹の上下左右のブレも感じない。これは抵抗減少に直結し、周りもよく見える。これだけ周囲を観察できたのも初めてだ。
370mの片道を短く感じた。折り返す頃には3分前スタート組を次々抜かし始める。天草では中央ロープ沿いに密集しやすく、折り返しはとりわけ密集する。といっても前泳者が抜かしてくれて、その後を、というかその足の泡の後を追ってゆくだけだが。
OWSの最大の課題は方向確認。ただ天草では中央コースロープさえ見ていれば、まず間違わない。普通に左呼吸を続けていればOK。ただ今回は、前の足を水中で見ているのが一番。太陽を避けるために、復路は右呼吸とする。
時折ヘッドアップして確認するが、前泳者は的確だ。綺麗な脱力した2キックで、ストロークのテンポも良い。比較的小柄な袖なしウェット。巧さが乗り移ってくる気もする。追い越しが詰まっている時には、平泳ぎも使って脱力して前方確認しながら間を抜けていることが判る。
一方、僕には余裕があり、「最高のマナー」であれば、先頭交代して引っ張ってあげるべきだ。その方がお互いのタイムも上がるだろう。
ただ、元々OWSを苦手とする僕が、ちょっと調子がいいからって、イキナリ無理するのはリスクもある。それに今回は、勝負に徹底するレース。ここでセーブしてBike勝負する戦術をイメージさせてもらった。
<2周目>
1周して砂浜に上がる。後続は20m以内には見えない。再飛び込み。少しペースが上がった気がするけど、対応できている。本当はこの前後で一度前に出れたら良かったかな。2周めの往路は少し長く感じたが、動きが完全にルーティン化してるので、当然だろう。
復路に入り、さらにペースップされる。掻きの後半をしっかり押すことで、1ストロークの長さを伸ばして対応できた。この泳ぎは良く伸びることを発見。後輪駆動側のエンジンが何割か馬力アップした感じ。
始めからこの動きができるようになれば、もっと速く泳げるだろう。レース中のそんな発見は、レベルを上げてゆくために大きく作用する事が多い。これは良いレースになりそうだ。
砂浜が見えてくる。ここまで来たら、前に出て順位を上げるのは「ネズミ年」のやることのようでえげつない気がして、そのまま後ろでSwimフィニッシュ。
<トランジション>
前泳者は浅瀬を3mくらい走るが、僕はギリギリの浅さまでダイブして脚を休める。ただ、天草のトランジションは短く、早く立ち上がってウェットを脱ぎ始めるのが正解だった気がする。でもすぐに上半身を脱げた。
コース上にシャワーがある。初めて気付いた=確認モレだ、細かいが。。止まって全部脱ぐことにする。暑いレースでは、その場で体温を下げるのみならず、塩を落として放熱効率を上げるメリットがある。脚にウェットが無い方がダッシュも速い。なにより、気持ちいい!
腰を下ろすが、勢いで、シャワーの強い位置から1mくらい先に着地。戻る気がせず、そのまま脱ぎ始めるが、せっかくシャワーで止まったんだから、戻っても良かったか。片脚を手で外し、もう片方を脱ぐのに手間取る。計どうだろ、15秒は余計にかかったかな? 立ったまま脚で踏んづけるのが正解だったかも。
この間に前の人は先行してるに違いない、と焦りながら(実際は彼より先にバイクスタートしていた模様)、自分のバイク置き場までダッシュ。途中、「602」のバイクラックに黒いサーベロが残っているのを確認。今回のマッチレースの相手に先行しているということだ。
<振り返り>
結果としていえば、最後100mをダッシュして8秒上げればSwim順位は5位まで上げられた。さらに、1周目後半から先頭交代ができれば、21分台半ばくらい出せたかもしれない。まあ、今回の勝ちに拘る戦術としては妥当解だったろう。
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