カテゴリー「◆** 耐久スポーツの暑さ対策」の8件の記事

2015年8月 2日 (日)

「暑さ対策」は、ショート or ロングで場合分けしよう

致命的に重要なこのテーマ(文字通りに)、特に問題なのは、「日本の真夏の長距離レース」の場合だ。
 
考えるべきは3点:
  1. ショートとロングの「場合分け」 
  2. 重要度
  3. トラブルと対策の「関係」
これを2015夏に一気に浮上した 「低ナトリウム血症」についてあてはめると:
  1. ロングの場合に
  2. 超重要で
  3. 胃腸トラブルへの対策ともなる
 
<1.ショートとロングの場合分け>
まずは、シンプルかつ重要なルールから。ハードな練習も同じくだ。
 
A) ショートなら、水をかけ続ければなんとかなる。
 
これに尽きる。KONA5勝のデイブ・スコットが「過去最も暑くタフなレース」 と言った長良川大会は僕は3度走っており、全て晴天酷暑! そうゆうレースで大事なのは、「早めに、水で冷やす」こと。特にバイク中盤以降で首まわり中心に水を掛けていくこと。ボトルが温水になってても、バイクの気流なら気化熱は十分に取れる。
 
ボトルを凍らす等の工夫は、やれば「より快適に」レースできるが、やらなくてもどおってことはなく、つまり「重要度」は低い。ちなみに僕も1度やったことがあるが、氷がなかなか溶けずに困った笑。溶けるスピードを計算したりするのが面倒で、以来、やってない。
 
より冷たい方が気持ちいいのは確かなんだけど、それは掛けた直後、せいぜい数十秒間の話だろう。温水でもスリーブに染み込ませる等、気化熱を活用できる絶対時間を増やした方が、体温はよっぽど下げやすい。普通のエイドのボトルで補充できるし。
 
 
B)ロングなら、ナトリウム(塩)摂取量を確保すること。
これが急所ではないだろうか。過去しつこく書いた通りに。そしてエイドで確実に水を確保し、常時、飲んだり掛けたりきれる体制を死守すること。この基本の上に、細かなテクが生きる。
 
ショートなら、庭田選手など言っていたとおり「塩が不足しないように気をつける」程度でもOK。ロングでは「どさっと」 絶対量を確保するつもりで。この差は大きい。
 
※ここで「ショート」と「ロング」の区別は、距離ではなく、「 暑さの度合い × 暑さに向き合っている時間 による。スタート前からフルウェットスーツを着た状態も「時間」にカウントされるのはいうまでもない。
 
だから真夏のショートレースなら、十分な塩分確保は必要。僕もドリンクに塩を足しているのは以前から書いてる通り。「ナトリウム・ローディング」という、「運動開始45分前までに1%塩分濃度のドリンクを体重1kgあたり10ml、1時間にわたって摂取」という方法論もある。(こうゆう数字はテキトーで構わないというのが僕の考え)
 
朝ごはんの塩分量も大きく影響する。前日からもしっかり確保しておきたい。コンビニのパンとかだけでレース出てる方は、見なおした方がいい。
 
 
<2.重要度について>
「ボトルを凍らせる」などはしなくてもどおってことはないけど、塩が足りないと普通にレース終了する。こうゆう嗅ぎ分けが大事だ。
 
 
<3.トラブルや対策の「関係」について>
LUMINA(下記)「30個の対策」で挙げられるものは、
  1. ナトリウム濃度のコントロール
  2. 身体の冷却方法
  3. 紫外線対策
と僕なりに分類できる。
 
1.は、「水のガブ飲み」による低ナトリウム、それによる熱痙攣、意識障害、お腹ガブガブ→トイレ通い・・・等々の複数のトラブルの原因となる。それぞれ、僕のブログを読んだあとに、「ようやく原因がわかりました」という報告を幾つも戴いた。ウルトラマラソン等のランニング分野でも結構あるようだ。(例:ブログ「水分補給・・奥が深い!!」
 
2.身体の冷却も、順序がある。
  • スタート前、できるだけ日陰で、水を少しづつかけて、体温上昇を事前に防ぐ
  • ウェットスーツは、1.早く着すぎない、2.まず脚だけ着て上は着ない、3水をかけたり入れたりして冷やす
  • バイクでの水掛けはしない人が多いけど、真夏には掛けるべきだ。温水だろうが関係ない。バイク中盤あたりから少しづつ冷やしていくことで、ランスタート時の体温を下げるのだ
  • 残った水は残り数kmで全部、腕脚などに掛けて空にしよう(少しだけど軽量化して速くなる?)
  • ランでは、エイドの水は全部とって、とにかく掛ける
  • カーフスリーブにより、靴への水の過度の侵入を防ぐことができるのは、河原コーチの言う通りだ。アームカーバーも保水力がある。水を吸った分、重くはなるけど、気化熱の効果ははるかに高いと思う
  • シューズが水に濡れてマメとかできる方は、良いソックスを選んで、ラン前に履こう
  <cepサイズ表> ←フクラハギ径で決定
 
そうゆう「順序・重要度・関係」がみえていれば、実戦で使える。
 
※なお、バイクでのボトル取りが苦手だからと、DHバーからストローで飲めるのを使う方は多いけど、水を掛けるためにボトル取りは必須技術。絶対に練習して、レーススピードで安全にできるようにね。これはレース出場者の義務です。
 
僕の場合、夏のショートレースでは3本積み、飲み1、掛け1、両方1、とする。予備のはたいてい最後にどばーーーと掛け捨てて終わるけど、落とすこともありうるし、保険として安心だ。
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<僕の「暑さ対策シリーズ」の考え方>
以上書いたことは、僕の「暑さ対策シリーズ」を読まれた方なら判っているのではないかな? 
 
「大元の考え方」を理解していれば、状況に応じて対策を自分で考えることができる。
 
トライアスロンは「想定通りにいかない事が想定できる」スポーツ、実戦で本当に使えるのは、そうゆう基本から積み上げた情報だと思って、僕は書いている。もちろんトレーニング方法全般にいえることだ。
 
その分、まだるっこしく長いから、即効ノウハウを求める方には薦めない。
でも、そこに共感してくれる人に対しては、僕はディープに書いてくよー。
大丈夫、即効ノウハウに飛びつくより、基本から積み上げた方が、先々まで伸びるはずだから。
 
過去記事で最重要なのは、この2つ。
・・・
 
トライアスロンLUMINA誌は2015年9月号、「トライアスリートのための暑さ対策・補給戦術」を特集していた。中心は、オリンピアン庭田選手の長めのインタビューと、複数の有名プロ選手を中心とした暑さ対策30個。プロ選手が何をしているのか、実態を知ることができて、おもしろい。ただそれは「オーディエンス」としての視点であって、「プレイヤー」にとっては不十分だとも思った。
今回書いたような知識を頭に入れた上でLUMINAを読めば、為になる情報が幾つも入手できるだろう。
(天草の塩は濃厚で甘く、宮古雪塩は爽やか。海域でずいぶん変わるものだ)
 (涼しく過ごし、熱く走る!)

2015年7月28日 (火)

「暑さの中がんばったバイク錬で平均速度あがった! という勘違い」を説明しよう

「気温が20℃上がると、空気密度が7%減少し、6%のスピード向上効果」という研究成果を発見。

出典) Triathlete Magazineのネット記事Can Heat Acclimation Help Race Performance? から芋づる検索で発見した英語論文→”Effect of Heat and Heat Acclimatization on Cycling Time Trial Performance and Pacing” (Medicine and Science in Sports and Exercise,2015)

「自転車選手が暑さに慣れるのには1-2週間でOKです」という結論を導くことを目的とした論文だが、その過程で指摘されるのが、この「暑さで速くなる現象」だ。これ、真夏の日本でのバイク練習にちょうどいい情報だと思い、少し考えてみた。

実験対象は43kmのTT(=タイムトライアル、つまり独走)で、出力の90%が空気抵抗に費やされる、という条件。これは時速50kmhあたりかな。このスピード域で6%=時速3kmh上がるとすれば凄いこと。ドーピングしても厳しいのでは? もしかして昨今のトップレースの高速化は地球温暖化のせい?というのは悪い冗談ですゴメンナサイ m(_ _)m

多くの方が長距離バイク錬での目標としているっぽい「平均時速30km」域だと、どれくらい影響があるのかな?

<計算の過程 〜は文末参照>

プロの計算屋さんからの情報によると、理論上、東京の1月と8月とを比較すると、速度域がどうであれ、4%の速度向上効果があるらしい。

<考察>

ならば本来は、上記実験も4%アップに留まるはず。ではなぜ実走で6%アップなのか? 

実走なので計測値には誤差が大きめに出るだろうけど、ここでは正しいと仮定しておく。すると考えられるのは、実走では暑いほど薄着になるために、服の空気抵抗が下がる、ということ。同研究の目的は、あくまでも耐暑順化なので、このあたりの厳密性は問われていないだろう。
 
そこで、「他の条件が同じならば気温上昇により4%アップ、さらに薄着になってれば更に2%の速度アップ効果」と考えられるのではないかな。
 
実際、標高と気圧の関係で考えると、空気密度の7%低下とは、標高600mくらいな状態だろうか。僕の実感としても、標高400m前後でも40kmh巡航すれば、空気抵抗の低さを肌で感じることができる。
 
<ケーススタディ>

  • 練習データ: 気温18℃での平均時速29kmのコースで、38℃で頑張って30.5km!
  • 本人感想: 「暑い中でがんばって練習してキツかった、意外と速かった、よくがんばったジブン!」  
  • 真実: 暑さの中を無理して、練習の質を落としただけ (解説: 気温効果で4%、さらに薄着効果で2%以上、計6%=1.8kmh以上、速くなってるべき計算なので)

ということが、起こりうる。というか実際、暑さが本格化した2週ほど前あたりから、そんなようなFacebook投稿をちらちら目にしてるような気がする。

この知識 〜練習用ウェアの空力差も考慮して、1割くらい速度を上げて始めて対等なトレーニング効果となるであろうこと〜 が無いと、「やったつもりの練習」を暑さの中、それとは気付かずに、してしまうおそれがある。心当たりがないと良いのだが。

<練習したらダメ。>

前も書いた通り、(また上記の英語論文でも説明される通り)、暑さ対応には、長時間の練習は必要ない。暑さに耐えた長時間練習で達成感が得られたとしても、それはレースでの成功に向けられた努力ではない。その達成感(のような気がするもの)と引き換えに、内蔵ダメージなどのマイナスのトレーニング効果を蓄積しているかもしれない。

参考:「練習したらダメ。」2013年8月10日 小笠原さん

実際、8月下旬のアイアンマン洞爺に出ると、10月中旬のKONAでは実力を発揮できないことが多いと思う。(その例外を僕は知らない)

レース結果を決めるのは、練習の「濃さ」だ。暑さは薄める要素であり、それを避けられない日本の夏では、薄めないための工夫がレース結果に大きく影響する。

このあたりの基本は、まずは山崎敏正さんに学ぶといい→僕はロードバイクのりはじめた頃から彼のコラムは熟読して、正しく初期設定することができた。

それから僕は過去、9-10月の勝負レースは軒並み大成功させている。

 

<付録>
回答A: プロの理系さんに計算いただきました
東京の平均値(2014年)は
1月  1013.4hPa  6.3℃  空気密度:1.2618
8月  1005.7hPa  27.7℃  空気密度:1.1648
FA(空気抵抗)=CA(空気抵抗係数)×A(前面投射面積)×ρ(空気密度)×Vb*2×1/2  (*2は2乗)
空気密度と速度以外が一定とし無視すると
Vb(8)*2=ρ(1)×Vb(1)*2/ρ(8)=1.08327×Vb(1)*2
Vb(8)=1.0408×Vb(1)
結論: 理論上は速度域に限らず4%の速度向上

ハッタリくんの答案・・・ 文系人間の限界デアル

時速30kmhで空気抵抗は全出力の79% というデータをIT技術者氏が出してるが、トラックレーサーで、タイヤも最高圧にあげれて路面抵抗が最低になる状況なので、空気抵抗比率が高過ぎる。「必要動力計算器」というサイトでてきとーな数字を入れてみると、68%と出た。ま7割てとこか。
「温度による流体の抵抗変化」の速度に対する影響は、競技ボート(手漕ぎ)の水との関係 では、直線的だ→ 11694080_10204593742299193_75537443

そこで、「空気抵抗の寄与度」は30kmhでは7割、上記研究の状況では9割、つまり23%分だけ影響が落ちる。よって同研究での「6%のスピード向上効果」は23%差し引かれ、30kmhの4.7%=1.4kmh相当、と計算できる。 

2015年7月19日 (日)

真夏の耐久スポーツ4 〜「熱中症ビジネス」に騙されない? 補給製品の選び方

*** おしらせ ***

最高1日訪問者4,000&ページ閲覧6,000超えを記録した人気シリーズを、独自カテゴリ「耐久スポーツの暑さ対策」として http://masujiro.cocolog-nifty.com/blog/cat23897989/index.html へ整理してます。昔の記事2つオマケつき。先日NHK「ためしてガッテン」でも暑さ対策やってたけど、メディアでに出てくるのはマジョリティー=はっきり言えば「運動不足の高齢者」=向けばかりなのが日本のマスコミだ。アスリート向けの知識なら、アスリート同士で補いあうべきだ。このブログもその1つだ。

いよいよ真夏到来。
 
「暑さ対策の新常識」といっても、当ブログで書いている1つ1つは、知ってる人にとっては当然のことの寄せ集めに過ぎない。その程度でも過去最高の反響があるのは、それだけ「旧常識」が多くの人に染み付いているからだろう。それを進めてきた一角が「熱中症ビジネス」なのかもしれない。
 
たとえば、アミノバリューによるランニング情報サイトの最新記事:夏の水分補給は毎年おさらいを。水分補給を制するものは夏ランを制する。 これ、商品を買わせることだけに集中した記事だ。その商品を買えば全てが解決するかのようなイメージを振りまいて。(長くなるので、詳しくは文末参照)
 
こうしたイメージを刷り込まれたシリアスレーサー達が、レース中にスポーツドリンクを飲み過ぎておなかを壊し、さらには低Na症でつぶれてゆく。
 
提言:「体系的な知識」を持てば、業者のトラップを見抜ける。
 
そこで、この図1枚でどうだろうか?
 
3
(著作権は僕です、図も文も)
 
この図での主役は、オレンジの曲線。運動が進むにつれての「汗中の塩分濃度」をカーブの傾きが示し、その際の「体内の水と塩分のバランス」を縦横で示す。
  • かきはじめの汗は塩分濃度が低く、少しくらいの発汗なら、普通の食事と、そして体内のNa貯蔵量(後述)とで十分賄える。よって、麦茶でも飲んでおけばOK
  • 発汗が進み、Na流出が増えてゆくと、スポーツドリンクのメリットが出てくる。ちなみにアクエリアスほか大手の「ジュース会社」系のものはミネラル濃度が薄め、製薬会社によるポカリは2割ほど濃い。意外と健闘するのが「ソルティライチ」だ
  • 通常、レースのコース上にはここまでしか置いていない。発汗が進んだ場合には、塩のタブレットや、塩そのもので補完しよう
  • 発汗が進むと、汗の濃度が高まり、同時に、飲むべき濃度も上がる。正常時には不味い「OS-1」が美味しく感じるようになったら、OS-1が最適だということだ
  • 極限状態では、「小型容器に携行した25%濃度の雪塩」が「甘く感じた」という報告例あり
※なお、ここで商品名に付記する「%」は塩分濃度。Na=ナトリウム濃度は「塩分の約4割」に相当する。商品パッケージにはNa量が表示されるので、「2.5倍」すれば判りやすい。 (以前の記述と図で混乱があるかも、最新のが正しいということで)
 
結論として、「今、美味しく感じられるものが、身体にとって最適なNa濃度」だろうと考える。いいかえれば、「知識ではなく、体感」。
 
僕は天然素材そのまんまが好きなのだけど、長時間になるなら、何でもいいから、常時携行はしておくべきだ。水なら公園の蛇口でも日本ならOK、でも塩はそうはいかない。
 
そして、練習前後の計量を是非。体重が2-3%減るというリミットは、知識として持ってても意味がない。それがどんな感覚なのかは、安全な環境下で試して、感じておいたほうがいい。
 
4回続いた暑さ対策シリーズは、たぶんこれで最終回。
 
暑い夏を、楽しもう。
 
 
<体験談>
読者のみなさんから報告いただいた経験談も紹介しよう。
 
例1)
「フルマラソン完走後に足が攣ってどうしようもなくなったときに、救護室でOS-1を二本もらって飲んだら、ものの数分で足攣りが収まりビックリ」
 
ゴール後には、アクエリやポカリを配る事が多いけど、大塚さんスポンサー大会なら、むしろOS-1を配った方が、その後の売上増につながる気もする。そうゆう極限状態向きの商品なのだから。
 
例2)

「同じ50代の男女二名が、31℃90%という高温多湿下で20km走を実施。

同じ時間、同じ距離、同じタイミングで補給したのに、男性だけひどい熱中症に、女性は平気。男性は肌の露出が多く、途中で赤い自販機でジュースやスポーツドリンクをたくさん飲み、結果、汗が大量に流れ続けていた。女性は肌を覆い、水を掛け、飲んだ水の量も少なめ」 

「そのリベンジ戦で、男性は25%濃度の塩水を携行し、ちびちちびり飲みながらで、無事帰還に成功」

極限状態もそこまで行き着くと(それも自由てものだ、笑)OS-1どころではなく、25%濃度にまで、本能のメーターが上がるわけだ。
 
<アミノバリューのサイトの問題点、続き>
冒頭の記事の問題点についても、以下説明しておこう。
 
あらかじめ断っておくと、商品の機能自体にも問題はない。正しい場面で正しく使えるのなら、十分に優れた商品だ。そして実際、気軽なお散步テニスゴルフなどの場面なら、この方法「でも」許される。接待ゴルフとか、ご近所さんが見てる犬の散歩とかで、そんなに水掛けれないだろうし。
 
そうゆう一般さん限定なら問題ないのだけど、アミノバリューのサイトでは、「マラソンにはスピードトレーニングも必要」とか、明らかにレースレベルでの情報提供もしている。このレベルの真夏のトレーニングでは、「水かけ冷却」は最優先にくるべきだ。それに犬のお散步程度でも、首に濡れタオルくらい巻くといい。
 
そこに一切触れないのは、「発汗量が減り、補給すべき水分量が減って、商品が売れなくなるからじゃないの?」とつっこまれる(実際にはそんな邪念はなく、単なるライターさんの知識不足だと思うけれど)。また最新記事なのに、あの重要な海外学会を踏まえてる様子がないのも痛い。
 
しかし、こうゆう記事が、ほぼ主流になっているのではないだろうか。しかも有名企業が、それなりの専門家を用意し、最新デザインのウェブサイトで発信するから、信じない要素を見つけるのが難しい。
 
さらにこの季節、商業メディアにとって彼らは大量に広告出稿してくる超VIP客だから。ニュース原稿作成でも配慮されないとも限らない、という皮肉はさておき、実際メディアでは「普通の人達」が対象なので、耐久系アスリートの存在は考慮されない、これは間違いないだろう。
 
そんな情報が渦巻く中で。僕らは、「自分なりの判断基準」を持つ、独自に磨いてゆく必要があると思うのだ。
 
もう1つ付け加えておくと、大塚製薬さんは、むしろ「OS-1」を、今のような医療系ではなく、耐久アスリート向けの日常使いとして、もっと激しくアピールしたほうがいいと思う。「水をかけながらOS-1を飲む」なら、売上はそう落ちないかも、笑。
 
<医学的なお話> 
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※お知らせ: 次回の代々木プール練習会は7/26(日)午前、初の日曜都心開催です。

2015年7月14日 (火)

真夏の耐久スポーツ3 【一発ビジュアル理解!】 低Na・脱水・熱中症の関係

2つ前に書いた「低Na症・脱水・熱中症」の3者の関係を、図に描いてみた。こんなのブログ開設以来初の大サービスw。まあ単純な理解ではあるけど、レースやトレーニングで本当に使える科学知識とは、シンプルなもの。レース中なんて小学2年生の計算すらおぼつかないから、正確厳密なものほど無意味なのだ。

この図では、1)体内の水分量は多いか少ないか、2)塩=Na量は、という2つの軸により、「今、自分はどの区画にいるのか?」を直感的につかむ仕組みだ。昨日Facebookで議論しながら思いついたばかりのアイデアなので、修正点などご指摘くださいな。

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すると3つの関連症状は、以下の位置づけで理解できる:
  • 低Na症 ・・・上図の斜め左上。体内の「比率」として、水たくさん(※NHK「あまちゃん」のではない)&塩すくない、という状態。体内Na(=塩)比率は正常の0.9%よりも下がっている
  • 脱水・・・ 図の下側。水の体内での「絶対量」が少ない状態
  • 熱中症・・・ 本来はどちらとも無関係に、身体に熱がこもった状態。ただし、脱水により汗の冷却機能が落ちることで起こりやすくなる(だからTVニュースでは脱水とセットで説明される)
各症状の発生メカニズムは順に:
  1. 発汗により、まず水から減る。なぜなら、汗のNa濃度は0.05〜0.5%、身体全体のNa比率0.9%より常に低いので、汗が出るほど、身体の水分比率が減る=Na比率が高まるから。よって、はじめのうちは、塩を残しながら水が減る 
  2. こうして脱水が進んでゆく。すると体内Na比率が高まっていき、それを低下させるために、汗のNa比率が高まる。この時ウェアは「塩を吹いた」状態だろう。こうしたバランスを常に維持しようとする作用が、「恒常性=ホメオスタシス」だ。暑いほど汗そのものも出続けるので、トータルでのNa排出量が増えて、「水とNaの同時不足」へと進んでゆく
  3. だからといって水をガブガブ飲んでいると、Na量は減る中で水量が増えるため、Na比率が低すぎる「低Na症」になる
  4. 低すぎるNa比率を、水を排出することで戻そうとする → 汗が大量に出る(事例報告あり)など体内の水の絶対量が減り、やはり「水とNaの同時不足」へ
そして、「水とNaの同時喪失」は、発汗量の大幅減少につながる。暑さの中でそれが起きている場合、体温の急上昇=熱中症を招く。ただしそれは、「そうなる場合が多い」というだけの話で、冷却ができていれば起き得ないので、直接の関連性ではない。(だから5.という番号はふらなかった)
 
同様の図で、「対策」も理解できるだろう。  
2
上図と同じ順に:
  1. 体内にNa貯蔵が十分なうちは、水お茶ジュースを美味しく楽しく飲んでれば十分 (発汗初期のNa濃度の低さとも関係=後述)
  2. 脱水が進んでゆくと、上記2の結果、体内のNa貯蔵も枯渇へ向かうため、Na濃度が高いOS-1などにより、水とNaの同時補給が必要となる
  3. 低Na症なら、水を断つことで、体内Na比率を上げる
  4. 脱水と低Naが同時進行していると、その程度により、0.9%生理食塩水、さらには3%高濃度水(=て海水そのもの! )により治療される。それは病院で、かもしれないね
ここで、補給すべき水分のNa濃度は、発汗の進行と共に上昇する。汗のNa濃度は個人差・状況差が大きく、0.05-0.5%くらいの幅がある。発汗が進むほど「体内Na比率」が上昇し、それを下げるために「汗のNa比率」が高まる。それに見合った濃度の水を飲むべきだ:
  • 始めのうちは、ただの水や、ポカリスエットのNa濃度でも十分
  • 発汗が進むと、トータルでのNa損失も拡大し、0.3%の 「OS-1」などが美味しく感じるようになる。このとき多分ほぼ脱水手前レベルだ。身体は、必要とするものを美味しいと感じるものだ
  • 低Na発症後は、海水濃度の3%水が効くそうだ。切実に塩がいる状況で、母なる海水レベルまで先祖返りしちゃう
  • もっとヤバくなると、マジで先祖そのものになっちゃうかも
「熱中症」への対策はこれらとは別で、身体を覆い水を掛け、気化し続ければいい。 
以上、2つ前に書いた話のおさらいだ 。理解できてました?
 
なお、ここでの「塩」は、カリウム、マグネシウムなど微量ミネラルも含む概念と捉えてもいいだろう。つまり、水とミネラル群の話であり、ミネラル群の中で圧倒的に重要なのががナトリウム、という理解だ。
 
ここで1つ強調しておきたいのは、冒頭に書いた、今自分はどこにいるのか? ということ。
 
僕が2つ前に書いたのを表面的に受け取ると、「あんまり水は飲まなくてもいい」という短絡的結論をとりかねない。しかし実際トライアスロンは、身体の極限状態を長時間維持する危険なもの。計算通りにいかないことも多い。さらに、その計算そのものが間違っていることもある。医学の限界を僕らは受け容れるべきだが、特にこの分野は、競技自体の歴史も、参加人数も、また研究資金も、薄い。
だから、「・・・すれば十分」という発想は、実はとても危険なのだ。せめて、その選択によって新たな発生するリスクには、気をつけるべきだ。
LUMINA誌でも 「あまり水を飲まなくていい」というトーンで書かれていた。おそらく情報源は僕のと共通するアメリカの学会論文。僕自身もその方向でレースしているのは書いた通りだけど、僕らが本当に理解すべきは、
 
「飲み過ぎによる低Na症を避けることは大事。ただしそれは、上図の斜め左上に限った話で、下側に入っていけば別。そして塩と冷却も大事」
 
ということ。ややこしーよねー! でも真実は常に複雑なもの。だから僕のブログは、いつも長く、また難しくもなる。それだけの説明が必要だと思うからね。その理解の上に立って、よりシンプルな視点を持つ。その結論だけではダメ。
 
かくして僕らは、科学の成果は知りつつも、自分の体感を最後は信じるしかない。
それは、「自分だけの教科書」を、自分の身体に書き込んでゆくということだ。
 
少なくともこの件に関しては、LUMINAさんより僕、いや、「チームぼくたち」のほうが、よっぽど「使える」だろう。ぼくらチームの戦闘力の高さを、読者のみなさんは信じてもらって構わない、微笑。
とはいえ長いブログ、 夜おうちでゆっくりと、キリっと冷えた炭酸水にレモンでも混ぜて、あるいは麦の発酵液などと共に、楽しみくださいな。

2015年7月12日 (日)

真夏の耐久スポーツ2 〜対暑トレーニングは「100分以内」

前回ブログは、1日の閲覧数6千、訪問者4千超と記録更新。Facebookでは46ものシェア、Twitterでも、見えた範囲で自転車プロショプ2軒で紹介頂いた。その1つ、「サイクルショップ マティーノ」 ‏@bicidimattino ツイートを紹介:
 
 
旧来は… につき僕も同感w、まさに夏の長時間ライドには、そんな切実性がある。我ながら、知らぬなら損する話だと思う。とはいえ長文だしw、結論を改めてまとめると、
  1. 喉乾いてから飲め=新常識
  2. 塩摂れ=確認
  3. 水掛けろ=オマケ
のつもりで書いた。ただ、その逆の順で、より強くウケた感じ。実際はやくも劇的な効果を報告頂いている。
 
<暑さ対策トレーニングと、その方法について>
ちょうど今週末から一気に真夏化。でも秋にかけて長距離トライアスロンのレースは幾つも続き、練習しないわけにもいかない。難しい時期だ。
 
まず、欧米の理論に触れておく。220Triathlon (No.262)での記事を紹介:
 
耐暑トレーニングによって、血漿の量を多く保つ、素早く汗をかく、汗に含まれる塩分量を減らす、高パフォーマンスの持続時間を延ばすことができる。耐暑トレーニングは、体幹温度を繰り返し上げることであり、トレーニングかサウナが効果的である。トレーニングの場合、暑さの中での100分間の練習が最も効果的であり、これ以上長く練習しても効果がないことが知られている。10~14日間の耐暑トレーニングで成果が表れる。
 
(理論派トライアスリートとして名高いブログ「Training Guide for Triathlete in Nagoya, Japan」より引用)
 
この100分間という量は、以前、「30km走しなくても、ロングレースで勝てると思う」 で紹介した目安に一致する。(僕の示す情報は、こうした複数の情報源を総合した上での判断が多い。個々の根拠を示さないものでもね。「僕だったらこうする」という話)
 
とはいえ、アイアンマンレースに向けては、4-5時間のバイク実走もしておいた方がいい(=それが上記記事の限界であり、今後の改善点)。それは涼しいうちにしておき、その貯金(=貯体?)を100分間練習で維持する、という期分けで良いのではないだろうか。
 
以前から書いているように、暑さを我慢すること自体には、パフォーマンス向上効果はないと思っている。100分間ならば、「暑さを我慢しない範囲」で、「パフォーマンス向上」に集中することができるだろう。
 
それに、日本の真夏は、普通に生活しているだけで、十分に「体幹温度」は上がる。涼しい朝のうちに、普通に高負荷トレーニングをすれば十分だろう。上記記事は、あくまでも欧米の話だ。
 
僕の場合、真夏はUp&Dowmを除けば、60分以内だと思う。ランなら1-2km走でインターバル間に水道蛇口から冷却、Bikeも3km直線セットで間にボトル水かけ、とか。
 
脚や腕のカバーは、欧米では疲労回復と紫外線対策で使われるけど、日本では、水かけの保水材としても活用可能だと思う。アームクーラーはKONAで買ったSUGOIを使ってる。いちど転んで穴を空けたけどそのままで。
 
 
<付記:このブログは、「チームぼくたち」のものだ>
最後に一つ。もともとこのブログは、僕がレースで得られた経験を「なぜそうなったのか?」と考え、論じるものだ。実際そうして勝ってきたしね! ただ、続けるうちに、競技成績ではなくて(もしくは併せて)、この考え方への賛同者が増え続けている。これは、レースで勝つことと同じくらい嬉しい。いや、それ以上かな?
 
僕が一貫して書いているのは、「ロングレースで、ゴールまであと20分の最終エイド、水を飲むか、どれだけ飲むか」 という実践ありきの話だ。そして、読者は、その答を一緒に探る「チームぼくたち」がの仮想的メンバーでもある。しかも個々の仮想的メンバーのレベルは、現役プロ選手・アスリート医師・はたまた弁護士(笑)、とそーとー高い。これは、月をおうごとに加速する感のある変化。
 
なので、文脈無視で、教科書そのまんま的な断片的知識に基づいての攻撃コメントとかは、いまや毎日千人を超える読者さんが求めていないのみならず、僕一人ではない、暗闇の向こうの多数の強者を相手にすることとなりかねず、オススメできない。
 
・・・
いただいた質問にも触れておこう。(質問表現は事情により改変)
 
1.低NA症に関連した部分について、「その根拠は?」と問う質問につき
  • 「根拠を示すべき根拠」は? 言論において立証責任は反論する側にあるのは、前のコメントで書いた通り
  • 仮にあなたが地方国立大の理系学生だとして(たとえばの話ね、もしも社会人だと失うものが大き過ぎるしね)、大学では質問すれば先生が答えてくれるけど、それはアナタが「おカネを払うお客様」であるからだ。こんな社会の構造には、早く気付いたほうが将来のためだ。そしてそれを踏み越えた時のリスクについてもだ
2. 「Na濃度を一定に保つために、過剰な水を汗として排出する」点に関して、「世界の医学の常識と物理法則がいっきにひっくり返ります、腎臓の役割は?」との質問。文意不明につき、逆質問を3つと、オマケ情報を1つ:
  • 恒常性(ホメオスタシス)って中学生くらいで習いませんでした?
  • 腎臓があるこらこそ再吸収して一定に保とうとしませんか?
  • 細かいようだが、物理ではなく生理学というのが普通では?
  • ちなみに、Chapman&Mitchell1965によると、安静時の分あたりの心拍出量は5800mlでその時の腎血流は1100ml、一方最大運動時では25000mlに対して250mlという報告があるので、腎機能は期待できないと考えた方がよいです
3.「飲んでから吸収されるのに最低20分」への疑問につき
  • まず(耐久レースという文脈を無視した)一般論をいえば、福岡伸一先生が「飲水の吸収速度=体内の拡散速度」に関し書かれるような状況はある
  • しかし、本題である耐久レース、しかも最終盤では、極度の交感神経優位状態にあり、吸収速度が鈍ることが考えられる。のんびりリラックス状態で飲むビールが身体に染み透るのとは状況が全く別
  • しかも、ここで問題となるのは、「レース中に身体が必要とする水分量」を確保するのに必要な時間
  • 実際、スポーツドクターは、「経口で飲んだ水分が胃を通過して小腸に届くのに15〜20分かかる」と説明する
異論反論があれば、根拠をご自身で示しながら、もし可能であれば(せめて大学生レベルにふさわしい)マナーを以って、お気軽にコメントいただきたい。
 
実名で発信し、読者の支持を増やし続けている者より、微笑。

2015年7月 7日 (火)

夏の耐久スポーツ、水分補給と熱中症対策の「新常識」を知っているか?

要旨 〜 夏のスポーツの3ヵ条:
  1. まず水を身体にかけろ
  2. 水分を飲むのは、喉が渇いた後でいい
  3. 塩のバランスを保て
  • 〜塩バランスの3ヵ条:
    • 真夏の長時間なら、スポーツドリンクに塩を足せ
    • 塩分比率の低い水を飲み過ぎるな、「低ナトリウム血症」になるぞ?
    • 低ナトリウムになったら、水を断ち安静にして、水と塩のバランスを戻せ
 
<僕は暑さに強い>
今年の6月は湿気も低めで過ごしやすかったけど、月末の館山トライアスロン2015は最高30℃に近づき、総合上位レベルにも熱中症らしきトラブルなどあったようだ。急に気温の上がるタイミングでは、暑さ耐性ができていないためのトラブルが多い。30℃を超える高温でなくてもだ。
 
一般人には運動自体が危険な暑さの中、僕らは半日がかりでレースまでする。それは脱水や熱中症、そして「低ナトリウム血症」を予防するマネジメントでもある。その最新の対応法は、少し前に「常識」とされたものとは逆なものすら含んでいる。今回はこの問題を取り上げよう。
 
僕は暑さに強い。館山も僕にとっては涼しいレースだった。それは、即効性の高い対策を徹底しているから。即効性とは、暑さを我慢して耐性を高めることではなく、暑さによる悪影響を最小化するものだ。それは練習も同様。
Ainanrun2

(撮影:Shimonoさんご夫妻@愛南2015)

<新常識>
最近、アスリート医師の先生方と繋がりができ、最新&良質なスポーツ医学情報が入るようになった。その1つ、2015年カリフォルニアでの学会の成果が日本語で紹介されている→ 「アスリートはのどが渇いたときだけ給水すべきであるという新ガイドライン」
 
「この低ナトリウム症は、水やスポーツドリンクの飲み過ぎによって引きおこされているようだという。この低ナトリウム症を予防するために、新しいガイドラインによれば、のどが渇くまで水分補給を控えるべきである」 (上記より引用)
 
元情報は海外の有力学会誌らしい "Clinical Journal of Sport Medicine" (臨床スポーツ医学雑誌?)最新号に掲載され、「運動誘導性低ナトリウム症に関連した第3回国際コンセンサス形成会議」とやらで合意された模様 → "Statement of the Third International Exercise-Associated Hyponatremia Consensus Development Conference, Carlsbad, California, 2015" 
 
ここから、暑さ対策の2つの結論が導かれる:
 
ルール1.喉が渇いた時にだけ飲め
ルール2.塩のバランスを保て 
 
その根拠:
  1. まず「脱水」については、健康状態の良いアスリートであれば、体重の約3%までであれば、水分量を失ってもパーフォーマンス低下なく、安全に競技可能
  2. よって、喉が渇いた時にだけ飲むようにすれば、「脱水」を起こすことはない
  3. 水は飲み過ぎると、EAH=「運動関連性低ナトリウム症」になってしまう
あまり知られていないのは、塩分比率の低い水分を飲み過ぎると「低ナトリウム血症」になるということ。そこまで行かなくとも、飲み過ぎは胃腸に負担をかけ、ブレーキかかったり、吐いたり、下ったり、、と問題が起きやすい。
そして、自動販売機で買えるような「スポーツドリンク」は、塩分比率の低い水分、に含まれる、少なくとも夏の耐久スポーツという環境下では。
 
これが最新の研究成果。ただし、より原始的な方法がその前にあり:
 
ルール0.水を身体にかけろ
  1. 「熱中症」の原因は、まずもって「熱の過剰」であり、水分摂取量ではない
  2. 汗による気化熱の冷却効果は有限かつ微力だが、外からの掛け水による気化熱の効果はほぼ無限
  3. 水を最大限にかけて体温を下げれば、発汗量が減って脱水予防になり、水分摂取量も減って胃腸に優しい
これが大前提だ。特に、蒸し暑い日本の真夏では。
つまり「水かけ」によって汗を減らし、飲むべき水分量も減らす。その上で、合理的な水分補給法が登場する。
 
 
<常識が覆される理由>
これは従来、喉が乾いていなくても早めに水を飲め、と言われていた常識の逆だ。
なぜこうなるのか? には、3つの理由をあげておく。
 
1.「運動習慣のない一般人」と「鍛えている耐久アスリート」とでは、症状も対応も大きく違う。しかし医学研究の主対象は圧倒的多数派である前者であり、またマスメディアにも前者向けの情報しか載らないのだ。そして僕らは後者であるのに、どうしても情報量の多い前者の影響を受ける。
 
2.そして、後者のスポーツに特化した研究であっても、研究体制の薄さ(市場規模は圧倒的に小さいから研究資金も同様に少ない)、研究サンプル数の少なさ、特殊過ぎる条件設定(=学者さんは尖った結論を出して認められないと仕事にもありつけない)、などなどの問題がある。
 
だから僕はスポーツ科学の知見は、「知っておくが、信じるのは自分の感覚」という態度を取る。知っておくことは大事だけど、その先は自分の感覚を信じるしかない。過去何度も書いている通りだ。 
 
3.業者さんの立場はまた別。「スポーツドリンクと称する商品」 をいっぱい買ってほしい。以下省略。
 
 
<低ナトリウム症について>
塩=Na(=ナトリウム)不足による失敗は、たとえば「長距離トライアスロンのバイク中に眠くなって総合表彰台圏内から転落したが、ランで塩を摂ったら復活しギリギリ完走できた事例」→ http://rumiokan.blog.fc2.com/blog-entry-1859.html など結構多いようだ。
 
ここで大事なのは水と塩の比率だ。体内のNa濃度は0.9%で一定に保たれている。汗のNa濃度は0.3%。(より正確には、0.05-0.5%の範囲で発汗と共に上昇し、大塚製薬「OS-1」の0.3%は、脱水手前レベルの汗濃度に合わせていると思われる。ただしこの文脈において重要なのは数字ではなく、体液より低いという比較だ)よって、
  • 発汗が続くと、1.血液中の水が先に抜けて、2.Na濃度が高まり、3.発汗が減り、4.熱中症へと近づいてゆく
  • だからといって水や塩分の薄いものばかり飲んでいると、1.こんどは逆に血中Na濃度が低くなって、2.痙攣や眠気などの神経系トラブルを招く。それが低ナトリウム血症。 3.さらにNa濃度を一定に保つために、過剰な水を汗として排出してしまい、脱水にも向かう
そこで、低ナトリウム血症が起きた場合には、基本の回復方法は水を断ち安静にして、水と塩のバランスを戻すことだ。塩が吸収されれば良いのだが、摂ってもすぐには、水と塩の体内バランスが回復しない。水を断てば排出は続くので、確実にバランス回復できる。(※脱水がない場合に限る=あれば、OS1のような適切な浸透圧での水分補給が必要)
 
2リットル分の汗が出た時、Na不足量は112mEq=食塩6.6g相当。酷暑では1時間に最高1リットルを失う場合があり、だとすれば8時間で26gの食塩が必要だ。実際の発汗量は何割が抑えられるとしても、レース時間が12hや15hなら、結局同じ。
そして、ナトリウムは体内の貯蔵量が少ないので、レース(or練習)中の補給が必要だ。ある医師アスリートさんは、その8割=20gの塩をレース中に補給しているそうだ。当然、スポーツドリンクだけでは無理。
 
一方で、トレーニングを積んだアスリートは、発汗に強くなる。おそらく、汗から排出されるミネラル分が減る、少ない発汗量でも体温調節できる(脂肪の薄さもあるかも)、といった変化が起きるのだろう。さらに、水を掛ければ発汗量自体も抑えることができる。
 
だから、自分のセンサーを一番に信じることが大事。ただ、科学を知っていれば、身体で何が起きているかを理解し、この先どうなるのかを予測することができる。
 
 
<塩&マグネシウムと、痙攣について
市販のスポーツドリンクは、「真夏の耐久レース」という用途を想定していない。しているはずがない、1億人に向けて広告宣伝費だけでたぶん1ブランド年間数十億円規模(たぶん)を費やすような国民的商品が、我々のような奇行種に目を向けるなどということが。だから、その商品の効能をそのまんま信じるわけにはいかない。
 
かといって、耐久レース専門のものくらいなら、自分でカスタマイズできると思っている。売上規模から商品開発費を推測すればそんな気がする。まあここは各自のお好みでどうぞ。笑
 
足などの攣りは、過度な負荷、過剰な熱産生、そして低ナトリウムが大きな原因だろう。脚筋に無駄なパルスを送るような使い方を避けること(=これがグルコーゲン節約にもつながる)、過熱したら水をかけて冷やすこと、そして、塩。
 
最近流行っているマグネシウムについては、基本としての塩が十分に足りていることが大前提。その上で摂れば、さらに痙攣防止効果などを上乗せできるだろうが、万能視するのは、違う。
その役割を理解した上でなら、天然の「にがり」(=つまりマグネシウム)でも、錠剤(=カルシウムと一緒に売られてる)でも、また専門サプリで摂ってもいいだろう。まあトータルで、美味しい天然塩でいいんじゃないのかな? 毎日使えるのが一番、クエン酸と同じく。
 
 
<僕の補給法>
僕は酷暑のレースが得意で、8月長良のように、裸足でコース上を歩けなくくらい暑い中でも、結構平気だ。
 
ショートレースでは、バイクにボトルは2〜3本積み、1時間で飲むのは最大1L、それ以上は吸収されないので無駄だ。残りは掛け水専門。最低一摘みの塩をポカリスエットに混ぜる。750mlボトルに1L分のポカリ粉末と塩、もう1本のボトルに水だけ、交互に飲んだりする。
上記の「体重3%」ルールによれば、1.8kgちょっとまでは水分を失ってもパフォーマンスは落ちないと計算できる。
 
実際、レース後に2L 近く飲んで、ようやく水分回復した感じになることは、夏には結構ある。たぶんこの時体重を測ると、スタート時より2kg落ちていると思う。つまり上限ギリギリまで「貯金の取り崩し」をしている(てゆうか貯水)。どこまで取り崩していいか、そのギリギリ感を見極めるのが、「体感」だ。
 
これだけ減るのには、ランの最後30分間は基本水を飲まないのも作用していいる。飲んでから吸収されるのに最低20分かかり(微量の吸収は除き=それでは効果ないので)、糖分などの濃度次第でさらに時間がかかる。だから飲んでも無駄。その分、ゴール後には、少し脱水方向に振れるので、しっかり補給する。
 
ここでの判断基準は、「胃に残ってる水分が30分もつか」、だ。バイクパートで飲んだものがランパート途中で枯渇しそうだと感じたら、ランのはじめのうちに飲んでおく。
また同様に、「1時間1Lルール」を拡大して、ラン中に吸収させる目的で、バイクの最後に数百ml分を余計に胃に入れておくこともある。この場合にはラン中にほぼ水は飲まない。
 
このように吸収時間を考慮した補給は、基本常識だけど、けっこう無視している方を見かける気がする。さらに、熱中症や低血糖への不安から飲み過ぎ食べ過ぎで失敗する例は結構おおい気もする。

追記: 脱水状態でのパフォーマンス低下を報告する研究成果 はあるので、「程度」「耐性」などが複雑に絡んだ結果だということだろう。実際どうやっても1-2kgくらいの水は抜けるはずだし  (2016.07)

 
むしろ大事なのは、水を身体に最大限かけ続けて気化熱を最大利用すること。発汗量が減れば、飲むべき量も減る。アタリマエの理屈だ。
 
さらに、腕や脚を覆うことで、保水できるので、さらに効果が上がる。僕がふくらはぎをCEPで覆い、アームカバーもすることが多いのも、その目的が大きい。
 
もちろんこれらは、練習でも同様。いつでも水を確保できる場所を選ぶ。僕はランでは日陰の多い公園の周回路が基本で、暑い日は頭に水を流しながら。アスファルトは基本走らない。
 
これらの話は、Facebookでは先週あげて、複数のアスリート医師の皆様からの知見も頂いた上で書いている。後日、 実際、トラブルの原因がわかった! という声も頂いた。同年代の2名での暑中長距離ランで、一方だけが熱中症でやられたのは、途中で自販機でジュース飲み過ぎたから、、という身を削った比較実験によって検証いただいたのであった。。
 

2011年7月 9日 (土)

人類ほど暑さに強い高等動物はいない (自覚してる?)

アメリカで大ヒット、日本でもランナーの読んでる率かなり高い、「BORN TO RUN〜ウルトラランナーVS人類最強の”走る民族”」

100km以上の山道を走り続ける「ウルトラ・トレイル・マラソン」にまつわるノンフィクション。というテーマは超地味なのだが、読んでいて引き込まれ、そして、走るって素晴らしいと思わせる、魅力的な一冊。

・・・

ヒトは、暑さの中で長時間活動し続ける能力が、動物の中でも最高レベルに優れている。(砂漠のナントカ虫のようなものを除く) 
僕らは自覚していないだろうけど。まして、この夏の東京で。。

でも実際、サラブレッドも競馬場の距離でしか速く走れず、10kmくらい超えるとオーバーヒートして、マラソンランナーに捕まってしまう。(だから馬は人の家畜になったんだろう) 
モノサシさえ変えれば「サラブレットは脚が遅い」のだ。

その要因は、ヒトの全身を覆う薄い皮膚、さらに汗による、圧倒的な放熱能力にある。普通の哺乳類は放熱を息のみに頼る。着ぐるみ状態だ。そんなランニングは想像したくない!

そしてヒトには、横隔膜を動かして自由に呼吸できる、という特異な能力がある。四足動物は前脚の動きで強制換気しているので、前脚が止まると、呼吸も、それによる放熱も、急減してしまう。あたかも電気の途絶えた発電所である。僕らは当たり前のように呼吸してるけれど。

つまり、長時間、体温と呼吸とをコントロールし続けることは、人間にしかできない、超人的、でなくて、、超動物的な技なのだ。 

かくしてヒトは、「見失わない限り、必ず獲物が手に入る」ようになる。ライオンやチーターが、スプリントの一発勝負を外せば飢餓が続くのに対して、圧倒的な身体能力だ。「目標に向かい努力し続ける」という行動特性もその中で育ったのかもしれない。

そして、ご先祖様はアフリカの草原で安定して食料確保でき、大脳というエネルギーを大量消費する非エコな器官を異常発達させることもできた。そして今の人類に至る。

現代人は、その能力を眠らせているだけ。

・・・

ここまで視野を拡げてくれるランニングの本、この構成力がすごい!

2011年6月 9日 (木)

暑さ対策、今がラストチャンスです

昨年来の経験から、「運動による暑さ対策効果」を実感しているワタシ。
すると朝日にベストタイミングな記事。

節電下の熱中症予防のための緊急提言!
http://www.asahi.com/national/update/0609/TKY201106090218.html
運動して、あらかじめ血液量を増加させておくのだ。

【若者向けの方法】

  • やや暑い環境で (気温25-30℃、相対湿度50-70%)
  • ややきついと感じる運動を (300-500mlの汗をかくような/心拍130)
  • 1日に15-30 分間、1週間に3-4 日、1-8 週間、続ける
  • トレーニング後30 分以内に、牛乳などで糖質(30g)、蛋白質(20g)を摂取

【その結果】

  • これにより血液量が200-300ml 増加
  • 結果、体温調節能が20-50% 改善

中高年には軽いメニューも。周期的に強弱を付けるインターバルの方が一定ペースより効果が高い。詳細は以下参照:
http://www.med.shimane-u.ac.jp/assoc-jpnbiomet/pdf/teigen_1.pdf

NHK「ためしてガッテン」でもやってたね、同じ内容で http://www9.nhk.or.jp/gatten/archives/P20110713.html .

今がラストチャンスである理由は、人体が環境適応に3週間を要するから。
7月になれば常に暑いから、6月の残り3週間に、適応を済ませておくのだ。
さああなた、明日朝からウォーキング、ジョギングだよ!

運動中の暑さには、カラダに水を掛けるのが即効。飲んだ水がカラダに吸収されて、汗になって、熱を下げる、までには時間がかかる。それに汗は37℃のヌルマ湯だし。

・・・

この記事で、人間という動物がきわめて体温調節力の高い種であるということを、始めて知った。二足歩行のメリットだそうだ。ただし、それゆえに脳に血が回らない「熱中症」というリスクもうまれた。

なお、トレーニング後の糖分+タンパクは基本です。
ワタシは外だと、牛乳500ccパックを買って、持ち歩くバナナとか白砂糖(ヨーグルトに付いてるの)と一緒に食べることが多い。単純だけどトレーニング後では猛烈に美味いのです。カラダに染み渡る!

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