« やはり日本の市民アスリートは練習し過ぎ? - 世界標準Dave Scottセミナー2 | トップページ | 「クロールのバタ足、速くなる効果なし」との虚構タイトル記事を解説しよう »

2018年6月30日 (土)

辰巳渚さん事故状況にみる「左コーナリング」の危険

ミリオンセラー「捨てる!」技術(2000)などの著述家、辰巳渚(加藤木綿子)さんが2018.6.26、モーターバイク事故で亡くなった。ミニマリスト=持ちすぎない生活の端緒を作り、そこからコンマリさん(世界で高額講演料を稼がれてます)はじめ世界的な片付けブームが拡がっていった。
 
事故は、東京から軽井沢経由で、故人が大好きだったという北軽井沢へと向かう国道146号。僕も何度かクルマで通った箇所。知人が高校の同級生だったり一緒に仕事してたりもして、なにより二輪〜エンジン有無の違いはあるとはいえ〜での事故、ひとごとではない。
 
今わかる範囲でも事故状況から学ぶものは大きく、その知識により防ぐことのできる事故は確実にあると思うため、ここに記しておきたい。まとめて言えば「左コーナリング特有の危険性」だ。
 
NHKのニュース動画 から、事故現場は軽井沢町長倉の難所「29号カーブ」 (←Google地図)らしい。こちら地図の左上、矢印の先の左ヘアピンカーブを曲がりきれず対向車に衝突、意識を失ったまま5時間後に死亡確認。この時期の平日に交通量は少なく、自損で済まなかったのは不運としかいいようがない。でも事故とは常に不運なものだし、同様な事故はこれからも起き続ける。
 R146_2
この国道146号は、はじめは狭くて細かいカーブが続くが、事故現場の手前では、右下(中軽井沢方面)から登坂車線の広い路面で緩やかめなカーブが続く。そこにブラインドの右カーブが現れ、直後に左のUターン的急カーブ。
 
自転車なら、ダウンヒルで想像するとわかりやすい。「気持ちの良い緩斜面から、右ブラインドコーナー、抜けた先に10°超の急斜面(=強いエンジンとはそういうこと)、直後に逆ヘアピン」的なのが近いと思う。
 
この連続ヘアピンは、地図上では同規模だけど、実際の危険性は全く違う。
  • 右カーブ: 外側車線だからカーブが緩く、ミスったらコースアウトの自損事故
  • 左カーブ: 内側でカーブ急、ミスると対向車がありうる
自損ならコンクリート壁か鉄柱にヒットしても走行速度分(十分に死ぬけど)、でも対抗車なら衝突速度2倍×轢かれることもある。
 
辰巳さんのマシンは 本人Facebook から、DUCATI 959 Panigale , サーキット仕様の150馬力、斜度数%の上りくらい一瞬でスピード出るはず。
 
大型モーターバイクは走行安定性が高く、通常はむしろ安全性は高い。DUCATIは扱いづらいイメージもあるようだけど、インプレ https://news.webike.net/2016/06/24/61112/ 読むと、ストリートでの扱いやすさも考慮された機敏なバイクであるよう。最新トラクション・コントロールは、コーナリング中、転倒しないギリギリの速度管理をしてくれる。
ただそれは熟練ライダー目線の話。
 
辰巳さんは1年前にバイク免許をとり、4月に大型免許に上がり、事故直前に大型車が納品され、今回が実質初のロングライドであったようだ。ルート状況を考えても、このマシンでの最大の難所がこのカーブだったようにも思われる。小中型マシンより簡単にスピードが出て、かつクイックな操作が重なると仮定すれば、最新機能でも制御しきれるものでもない。あくまでも一般論だけど。
 
直前はこんな景色。
20180629_151419
見通しは一見よさげで、カーブ抜けた、と強力エンジンを吹かしたくなってしまいそうでもある。この景色が人生最後に見た数秒間となってしまった。
 
NHK動画から推測すると、曲がりかけたが曲がりきれずに衝突、路面の荒れ方からはセンターライン手前くらいかでスリップしてるかもしれない。軽自動車の右前輪あたりの急ブレーキ跡がセンターラインに沿っている。点状なのはABSの挙動かな。
20180629_233036
事実解明は警察調査に委ねるとはいえ、この状況は、今後も十分にありうること。自転車のダウンヒルふくめて。

自転車の下りであらわれる左ヘアピンの恐怖は、僕もはじめて理解した瞬間の絵をいまだに覚えている。2009年春のロードバイク初心者時の(無謀な)伊豆一周のことだ。斜度10%くらいかの急な下り、目の前にコンクリート壁、左側から現れる巨大トラック。
二輪車は注意を向けた先に向かうもの。「もしもこのまま直進してこの壁にぶつかるとどうなるだろう?」と想像すると、その思考は現実化し、バイクは直進を始める。そのことは知識としてあったけど、実地で理解することになったのがその伊豆のカーブ。

もちろん、その場ではブレーキで20km/hくらいに減速し、安全性100%で回ったわけだ。この間せいぜい数秒間。ただ、その後何度か通った時に、いつもその瞬間を思い出して、記憶に焼き付くことになった。
 
確実にできることは、サーキット的な状況でない限り、コーナーは十分に減速してから入り、安全過ぎるくらいに抜けること。そんな区間の平均速度は見ない方がいい。コーナリングで速度を稼ぐ誘惑にかられないように。集団練習でコーナーで遅れたって何も問題ないはずだ。速さを見せるのはレース場だけでいいのだから。
 
ブラインドの左コーナリングはその最たる状況。
その意識1つで防ぐことのできる重大事故は多いはず。
 
・・・
 
辰巳さん、今月には「日常生活を通して課題を見いだす「生活哲学」に基づき、「生活する力」を育成する教育事業などを展開していく」という会社設立のニュースなどもあり、最近のインタビュー記事などみても、人生これから、という時だったのだろう。北軽井沢は僕も大好きだし、僕が自転車を始めたのも、この地を僕なりに楽しむためだった。トライアスロンもその先にあったもの。辰巳さんにとってそれがモーターバイクだったのだろう。
 
その美しく軽やかな人生を完成させるために必要だったのは、あとほんの少しだけの、マシンへの慣れ、慎重さ、だったのだろうか。残念です。

合掌
 

« やはり日本の市民アスリートは練習し過ぎ? - 世界標準Dave Scottセミナー2 | トップページ | 「クロールのバタ足、速くなる効果なし」との虚構タイトル記事を解説しよう »

'07- 自転車を楽しむ日々」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« やはり日本の市民アスリートは練習し過ぎ? - 世界標準Dave Scottセミナー2 | トップページ | 「クロールのバタ足、速くなる効果なし」との虚構タイトル記事を解説しよう »

フォト

『覚醒せよ、わが身体。〜トライアスリートのエスノグラフィー』

  • 初著作 2017年9月発売

Blogランキング

無料ブログはココログ

Google Analytics