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2017年12月 6日 (水)

「つま先着地」という誤表現 ・・・わかりやすいもののリスクについて

福岡国際マラソン2017、世界の陸上史を刻むモーエン選手の大記録をまのあたりにした翌日の、主催の大手新聞社系列のスポーツ紙サイト陸上カテゴリ記事一覧がこちら:

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最優先は箱根スター組(代表が大迫)、カウンターの川内&一般参加の非箱根組、て構図。
視点を変えれば、 世 界 に は 一 切 興 味 な し 。
オリンピックの後だけ「世界で戦えない」とか騒いでみても、1年たてば平常運転、いつものニッポンに戻る笑。
 
その3つめ「陸王あらわる!」て記事(だいたいなんで陸王なんだよ笑)に、「アフリカ勢が主体の爪先から地面につく走法」なんて表現があった。
 
しかし、つま先で着地するランナーなんてインテリの妄想の中にしか存在しない。
 
新聞TVが「つま先着地」と表現するのは、好意的に解釈するならば、その方が素人にとってわかりやすい説明だから。かれらマス媒体の客は多数の素人層であって、少数奇行種であるアスリート側ではない。自分の商売をよくわかっている。
 
これは人と状況とによる話でもあり、たとえば「足には、カカト、土踏まず、つま先の3箇所しかない」と世界を認識してる人にとっては、それは現実を正解に伝える表現といえる。だが、ランナーはそうではない。

ランナー側にできることは、多数派に流されず、自分に必要な情報は自分で探りあてることだ。
 
 
<フォアフットの真実>
現実にランナーが着地している「フォアフット」とは
  • 前後位置: 足底アーチ前側=拇指球のライン上の
  • 左右位置: 外側=小指側のエッジ部
であって、「つま先」=Toeではありえない。「つま先寄り」なら間違いではないが、今度は意味不明になる。でもTV局にとっては、そんな説明ややこしくて使えないわけだ。
 
例えばパトリック・マカウ選手、右接地の瞬間
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左着地の直前
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(2012NHKスペシャルより)
 
動画スローみると、遊脚を前に伸ばしたあたりで、足の外側を伸ばすように、2枚目では足裏がこちら側から見えるような、外から内に巻いてくるような動作がある。
 
福岡2017では、朝日新聞のこの公式写真→  http://www.asahi.com/articles/photo/AS20171203001105.html の大迫(no27), カロキ(no21)がわかりやすい
彼らはアキレス腱を縮めて接地し、かかとに体重をかけないことでアキレス腱への荷重を強め、その反発を引き出して、筋消費を抑えるらしい。
 
と書けばわかるだろう。下手に真似すればアキレス腱や足底筋膜を傷めるリスクが高いことを。腱はトレーニングで大きく鍛えることはできず(※ある程度の強化効果はある)、できるのは、傷めないよう気を使うくらいだ。
 
さらに問題となりそうなのは、「つま先意識」で走ると、逆に内側エッジを接地させがちかもしれない。自然にその動作が引き出されたのでない限り、それはアタマで作った不自然なネジリ動作であるわけで、これでガチに練習して故障しない方がおかしい。
 
2つめの画像の通り、多くのケニア選手のふくらはぎは細く、特に下側からの腱が長くて、上側からの筋肉量が少ない。長い腱はそれだけ強い反発力を生むことができる。この身体的特徴を活かした走り方でもあるそうだ。
 
 
<大迫傑選手>
大迫で注目すべきは接地ではなくて、外エッジ意識によってひきおこされる 全 身 の 連 動 性 だと思う。これは2時間8分までの日本人選手には見られないものだ。
 
大迫選手自身が言っているのは、たとえば
 
「かかとをつくことはあまりない」
 
「接地のポイントを意識するよりも、上体を起こさないようにしています。前傾をかけるように意識すると、うまく足が回るかな、と感じていて。多分それで接地もうまくいっているのだと思います」 
 
 
ということ。
つまり、全体動作の結果として、末端が(たまたま)そう動いた、というだけだ。
 
 
<フォアフットは「唯一解」ではない>
モーエン(福岡のno5)は、伝統的な白人ランナーのフォームをそのまんま継承しているような印象も受ける。着地スタイルでいえば、ミッドフット型だろう。足のセンター=中指ラインに沿って遊脚をまっすぐ前に出し、その結果カカトから接地へ向かう雰囲気だ。
 
つまり、モーエンはケニア生活をしながらも、フォームをケニア流に変えたわけではなくて、適応させたのは 練 習 環 境 に対して、ということだ。
 
細い足首からの長い腱がない(=ケニア系のぞく普通の人間)ならばないなりに、そんな足を活かす走り方を探ればいいという見本だ。
 
どんなスポーツでも、フォームに正解はない。自由度が極めて高い水泳 (=体重を支える支点が存在しないから)の最速フォームがオリンピックの度に変わってゆくのは好例だ。長距離ランニングでも例外ではない、ということだろう。
 
ただ、ケニア系があまりにも速かったので、そしてのそのカカトを浮かせ気味なカタチという「見えやすいもの」があまりにも明確だったので、そこに目が集まったというだけで。
 
 
<結論>
ぱっと見わかりやすいものを盲信しないほうがいい。
最新理論、フォーム、計測数値やグラフ、そんな罠はいくらでも転がっている。
一方で、「環境や集団の作る効果」といった目には見えないものは、軽視されやすい。 そこに注目したのがカノーバコーチとモーエン選手。
真に信じられるものは、自分の感覚。
それを証明するのは、自分で感じた結果だ。
 
・・・
 
<宣伝>
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ちなみに最新シューズがどうのこうの考えるより、まずは超安いペラペラな靴とかで起伏あるオフロードを走るのが一番速くなると思う。
上のは、僕は使ってないけど、イメージそんな感じだなと載せてみたら、実はコアな裸足ランナー御用達らしい。
 
僕の専用シューズは、2010〜2011年購入のMIZUNO薄底軽量レース用の、廃棄レベルにボロボロになったの。激戦のJTUランキングレースから引退し余生をのどかな砧公園で過ごされておる😁

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