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2016年12月25日 (日)

バイク「空気抵抗削減」へのシンプルな考え方

サイスポ2017年2月号 の小特集「最新機材のエアロダイナミクス」で、フレーム&ホイールの空力抵抗の実測をしている。これぞ専門メディアの仕事だ。素晴らしいので詳細は実物お読み頂きたい。
 
実験条件は、室内サーキットでの38kmh・42kmhそれぞれ巡航しての平均。衝撃的な結果が幾つか:
  1. ホイールは、リムハイト50mmと90mmで、空力性能がほぼ同じ
  2. BORA50mmは、最新のワイド幅と旧型の細幅とで、同じ
  3. ロードバイク(Madone)をDHポジション化すると50w削減
  4. TTバイク(SpeedConcept)+DHなら、ロード普通ボジション比で100w削減
  5. ベースバーでの普通ポジションなら、ロードバイクの方がTTバイクよりも微妙に優位
あくまでも今回実験条件に限った話ではある。無風の室内実験=つまり横風を受けず、実走行による正面からの空気抵抗だけが影響しての結果だ。この点は留めつつも、はっきりいってしまえば、僕はこう解釈した:
  • 空力向上だけを目的とした器材は、ほぼ意味がない
  • ポジション=人体に影響する仕組みには、劇的な効果がある
 
<器材自体の抵抗>
真正面からの抵抗は、「前投影面積」、つまりこの形状→17viperrfrontで決まる。
加えて、「空気の流れ方」(=CD値)も影響するはずだが、少なくとも時速40km域では、現実のパフォーマンスに影響しない程度であることを、この実験が示している。
横風という条件、つまり斜めにすると→17viperr30通過する空気がより大きな乱流を作り始めるだろう。
すると、ホイールなら高くて広いリム形状の方が、より乱流を抑えるのだろう。究極のリム高さといえるディスクホイールは横風で推進力を感じる、と言われている。
 
上記の実験1-2は、これら横風での性能差を扱ってはいないけど(※コーナリングでは、ある程度は、斜めからの風は発生しているが)、前方からの結果がこれだけ同じということは、そうたいした差ではないようにも思われる。
 
 
<人体の抵抗>
こうした器材要素を圧倒するのが、人体要素が加味された結果3-4だ。3と4の約50W差(!)はロードバイク(マドン)かTTバイク(スピードコンセプト)かの器材の違いによる。しかし、結果5=ベースバーでの普通ポジションなら逆にマドンのが微妙に優位であるということは、「器材自体の形状差はたいしたことがない」という前の結論を裏付ける。
 
そこで、TTバイクとは人体が作る抵抗を削減するための一手段であると解釈できるのではないかな。バイク自体の造形が注目されがちだが、本質はDHポジションの身体と一体化した整流効果を高めるものだ。その目的が達成できるのなら、ロードバイクの調整でも構わない。

また、どんなTTバイクだろうと、DHポジションを取っていない間は効果がない。その時間が多いなら操縦性に優れたロードバイクの方がいい。
また、細部の造形にこだわったハイエンド車と、おおむね同じ形状の普及レベル車とで、それほど大きな差は生まれない、とも考えられる。
 
TTバイクの性能は、ポジション設定によって引き出される、ということだ。性能は購入時ではなく、練習によって上がってゆくもの。それが「器材スポーツ」であるという意味。使いこなしにより差が生まれる。
 
ゆえに、選定時にはジオメトリの精査から必要。現行バイクからどこが何mm変わるのか。僕のケースは、「NEILPRYDEバイヤモ2013 選定の過程と結果」 で書いたとおり。
 
最も重要なのは、最大の抵抗発生源への対応だ。すなわち、お腹に巻き込む空気 & 両脚の回転による乱流、への対応。そこで、DHポジションで付き出した両腕により、F1マシンとかのフロントノーズ(or カウル)のように空気を掻き分ける。
20161013_101005画像はシクロワイアードより 、2016自転車世界選手権TTの上位3名。ヒザの上死点位置と、腕との位置関係をみれば、腕が作る整流効果が見える。
 
頭もぽこっと突き出したパーツなので、エアロヘルメットによって、胴体と一体化させる。これにより、頭から背中へとスムーズに空気が流れる。特にロングテールの場合、背中から離したらダメ=それが面倒なのでショートテールが流行っている。
少なくとも、普通のロード用のヘルメットでトライアスロン出ている方は、真っ先にエアロヘルメットを導入することが、最も費用効果が高いだろう。
 
これら、腕と頭の整流効果をクリアできていれば、高さ自体はそれほど悪影響を与えない。だから無理に低い姿勢を取ったらダメ。
腕を寄せるには肩の柔軟性が必要だが、これは高めるデメリットはないだろう。それで走行安定性が失われるなら、スキル練習をがんばるといい。ただ、そんなにギューっと狭める必要もないようだ。
 
全体として、横幅を抑えた1枚の板を立てたように。板の形状の抵抗が小さいことは、水泳も同じ。なのでリオ五輪では、スタート・ターン時に腕は頭の横につけるのが主流になった。従来は両腕の下に頭を置いて逆三角形を作っていたのだが。
 
なお世界TT上位2名は身長185前後だが、3位ヨナタンは170とか日本人レベル(ホイールが大きく見える)で、抵抗削減ができれば、この身体でも世界で戦えるということでもある。
 
 
<人体と器材との一体化>
この流れから、最近の流行である「フロント・ハイドレーション」の役割も理解できるだろう。
Img_8805
腕の「ノーズ機能」を拡大させ、より大きなエアポケットを作ることで、脚まわりの抵抗を削減している、と考えられる。 (バイク画像はCEEPO2017 VIPER-R より)
 
 
<僕の場合>
狭いDHバーの間にタイラップでボトルケージを固定し、ノーズを大型化させている。20160914_818
パンク対策は、マルニのクイックショットをステム直後にマジックテープで留める。なおこの位置も、ステムとの一体化による整流効果を狙っている。(この位置のストレージでも同じ効果だ)
 
ボトルは、フレーム側では、エアロボトル(スペシャ)を以前使ってたけど、練習中に発射して消滅し、以後は丸ボトルに戻している。
普通の丸ボトルでも、前輪フォークの作る気流に、ほぼ収まっていると思われ、それほど問題ではないと考えている。そして、2つの丸ボトルを装着することで、前ボトルが作った気流が後ろボトルに引き継がれて、トータルでの整流効果が生まれる。
特にロングでは、丸ボトルでないと補給が不便という理由もある。
 
KONA2013では、後部マウントによって横面積を減らした。横風対策だ。その下にスペアタイヤをテープ留め。これも「一体化」の効果を狙っている。
20161016_104001
 
なお画像左は、KONA2016女子でバイク前半で唯一Ryfについてバイク2位5:00:42のAnja Beranek。165cm54kg。僕のが8kg重いが体形はわりと似ていて、タイムも似ている(僕は5:05)。
ホイール大きさをだいたい揃えて並べてみた。僕のが身体前&サドル高の前乗りだ。ヒジ高さ=背中=頭の高さもほぼ同じ。
 
これらの効果か、長い下り緩斜面の60kmhとか巡航で、欧米のP5とかを上回る空力性能を実感できた。
 
 
<結論>
バイク「空気抵抗削減」へのシンプルな考え方とは、
  1. 前投影面積の削減
  2. とくに、幅を狭く
  3. 身体を流れる空気の整流化
ということだと思う。これだけで、メーカー発表の風洞実験(=あくまでも実験室での数字)に惑わされることなく、現実的な対策が取れるのではないかな?
 
なお僕は全体的に、器材差をあんまり信用していない人間なのだけど、それでも速い人ほど高額器材を使う傾向はあるかと思う。て僕も十分に高いの使ってるし。
それは「コミットメント」の差だと解釈している。お金以外のリソース投入量が総じて高いということ。
 
・・・
記事のサイスポはこちら→Kindle Unlimitedの読み放題対象なので、初回30日間無料体験に入ればタダで読めるかな。
 
ちなみに大特集の「ペダリング」、前半の筋肉の分解のような説明は僕は興味ない、というか、それで速くなれる気がしない。ただ後半のキネティックチェーンの考え方は大事。
 
 
<水泳>
この仕組みは水泳でも同じで、最近の三浦スイム講習で説明し始めている「クロールは実は腰を上げないほうが速い」という説明にもなる。この話は、また改めて。
20161217_200231
画像はリオ五輪でのレデッキー800m、世界記録更新の泳ぎ。頭を上げ、胸を反らし、腰を沈めにいっているフォームだ。従来は逆で、頭を沈め、胸をすぼめ、腰を上げる「伏し浮き」の姿勢が速いとされていたのだが。思われているほど単純には決まらないのが水泳。
 
 
ちなみに脚筋の疲労回復にはパナソニック「エアマッサージャー」が最強だと思う。新型でモモまで拡大

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