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2016年11月16日 (水)

「2020東京五輪トライアスロンの距離半分」との英国タイムス紙報道について

東京五輪でトライアスロンの距離半分に、とITUカサード会長がイギリスの有力新聞「タイムス」に明言したようだ。

Olympic triathlon distance could be halved for Tokyo 2020 (The Times 2016.11.13)

 
51.5kmから25.7kmへ。噂には聞いてた話で、非公式とはいえ、 ついに表になった。
併せて予選(1回)やミックスリレーも導入可能性あり。アスリートの疲労が減るためで、全部実現すれば男女計6レースが開催されて、盛り上がる。ミックスリレーは見たことないけど、見てて楽しいらしいし。
 
この時期に出てきたことにたぶん意味があり、リオ五輪のTV放映&視聴実績を踏まえ(おそらくは反対意見もトーンダウンして)、主要関係者の根回しが終わり、東京に間に合わせにきたかな。(※八田の推測ですが)
 
 
<スプリント
25.7kmの「スプリント」形式は、既にオリンピックに次ぐ重要度のワールド・トライアスロン・シリーズには導入されていて、2016年では、エドモントン大会ケープタウン大会 がスプリント形式。51.5kmの呼称も以前の "Olympic distance" から "Standard distance" へと変更されている。
 
記録(↑リンクしてあります)は男子で、スイム8-9分、バイク20数分、ランは14分20秒台での勝負になっている。この競技時間は耐久動作としての最小単位で、純粋な「技術」がより重要になるかな。ゴールタイムは男子で50分ほど、ほぼ真田丸一回分のスピード感だ。
 
酷暑予想の東京大会で熱中症リスクが減るメリットもある。ブランウンリー兄弟の美談は一度きりだからこそ美談たりうるわけで、続出したらぶち壊しだから。
 
 
ITUのTV戦略>
カサード会長、"more appealing to television" とはなんとまあ正直な$$$
 
リオ五輪での現実として、オリンピック開催を4年後に控え、しかも男女とも代表を出している、という条件的にほぼ最高な国(じゃぱ〜ん)ですら、男子はダイジェストですら中継なし、女子は年間ランキング3位のメダル候補を抱えながらも、生中継の途中にゴルフを挟まれたわけですよ。
 
これがトライアスロンという競技の現実。まして、こうした条件が悪い国なら、なおさらTV放映権料が入らない。金を稼げないならオリンピックとしての意味がない。
 
※念のため、1984ロス以降の30年間、オリンピックは金を稼ぐために=つまりはTVファーストで運営されており、僕は「投資効果」を追求する方向性には全面的に賛成してる。事実として、こうしてお金が回ったからスポーツは栄え、社会にお金で測れない豊かさが拡がってきたわけだ。オリンピックのレガシーとはそうゆう全体の仕組みにある。
 
ついでに2020東京についていえば、事実上1度きりの箱に数百億円という競技が幾つかあり、この投資効果には「よくわからない」とでも言っておこうか。少なくともトライアスロンならば、ワンオフな捨て金がとっても少なくて、大勢がライブで見れて、あとは放映権料をしっかり稼いでいただけば完璧。
 
これで2020年にトライアスロンファンはゴルフを見せらることもないだろう。(まあトライアスリートの少なからぬ層はゴルフ経験があるわけで、単にそのエネルギーを投入する比重が変化しているに過ぎず、彼らには問題ないんだろうけども)
 
 
ITUのポジショニング戦略>
同時にこれは、ITUの生き残りをかけたポジショニング戦略でもあるかもしれない。この競技を実質的に創設したといえるアイアンマン(の主催団体であるWTC)に対して、ITUは歴史的に後発チャレンジャーなので、競争戦略が必要なのだ。
 
そのWTCは今、70.3マイルのハーフアイアンマンに注力している。ゴメスとか51.5kmのスターが、ほぼ倍距離のハーフなら活躍できるわけで、ある意味、51.5kmへの抱き付き=クリンチ戦法だ。強い立場=ボクシングなら体重の重い相手からマトモにされたら厳しい。
 
TV的な大衆アピールとしても、トライアスロン特有のアピール要素である「キツさ」は、アイアンマンが最上位に見られがち、51.5kmではある種の中途半端さがあるようにも思われる。25.7kmなら心拍MAX域を最後まで維持する、という異なるタイプの過酷さが新たにもたらされ、戦いを独自の土俵に持ち込める、というヨミもあるかもしれない。
 
 
<アスリートにとって:レース展開
スプリント形式のレース展開についてはあまり良く知らないのだけど、駆け引きなしのオールアウトアタックが最後まで続くようになるような気がする。スイムもバイクも攻めた者勝ち。バイク50分間は間延びするし、NHKが途中でゴルフをはさみたくなるのもわかる気が。リオ女子みたいにランで先頭がお喋りする余裕もない笑。
 
この距離に4年かけて最適化してくるわけだ。必要なスピードはさらに上がる。
スイム400m4分切りが必要かな、と福岡の樋口選手&コーチが書かれていた。もしくはバイクの超スピードで追いつくか。ランはレースでの(記録会ではなく)13分台=1km2:40台が基準になるかな。
 
 
<エイジ参加者にとって
以上の通り、「見るスポーツ」としては合理性がありそうなのだが、「参加するスポーツ」としては距離半分では、肝心の達成感も減ってしまいそうだ。
 
だから、たぶんJTUとかエイジ向け大会の基本は51.5kmであり続けるだろう。ランキング対象もそのままの気がする。
 
とはいえ、計25.7kmのスプリントで必要な「技術」は、全てのトライアスリートに有益だと思う。僕は出たことないけど、必要技術は、ロング226kmと同じだと思っていて、KONA出たいとかの方は、まずここを極めるのは有力な近道になるだろう。
 
少なくとも、距離が短いからといって格下ってことは全くない。たとえばウサイン・ボルトがたった9.5秒だから楽だと思ってる人間が地球上に存在する気がしないように。
 
まあこれも1つのきっかけに、25.7kmのパフォーマンスを追求するような取り組みをしてみるのも、悪くない選択だと思う。目標レースがなんであれ。
 
 
スプリントのもう1つのメリット
人気&激戦の横浜大会で、表彰台に上がりやすい! (抽選倍率もかな?)
20110918s1_2
(2011横浜Standard表彰台〜このポイントでJTU初王者に)
 
ジョーゲンセンやブランウンリーが上がってまもない全く同じ表彰台に上がれるチャンスなんてこの先の人生に何度起きることだろう?
 
・・・
 
とはいえ、まだ決定事項でもないし、ミックスリレーの導入と併せて、議論を楽しく見守るとしよう。
 
"The times they are a changin’"
 
 〜 時代とは変わり続けてゆくもの (ボブ・デュラン, 1963)
 
変化に正しいも間違いもなく、ただ適応するのみ。
 
 
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