« 「ウォークブレイク」Vol.2 〜東京マラソン成果と、ラン技術向上について | トップページ | トライアスリート目線から見たシャラポワのドーピング問題 »

2016年3月 3日 (木)

トライアスロンSwimに「伏し浮き」はいらない 〜「フラットなスイム」の終焉と、「側転」イメージの新泳法

当ブログの人気カテゴリ「クロール/OWSの技術」だが、昨夏ごろを境に、以前のを全削除したいくらいに、考えを変えている。その1つが「付し浮き&けのび」の位置づけだ。「伏し浮き」=前後左右のフラット姿勢を保って、両手両足のばして浮くことは、こちら2年前の記事で書いた ように、かつて推奨していたけれど、今は「トライアスリートなら出来なくてもOK」という不要論だ。

念のため、 出来るに越したことはない。姿勢制御技術は高いほど良いにきまっている。なおプールの競泳なら、スタートとターンで「蹴伸び」技術により簡単に数十cm以上の差は付くため、必須技術だ。

しかし、トライアスロンのOWSクロールで、伏し浮きのようなフラット姿勢は、ほぼ使わない。(背泳ぎだって速いに越したことはないけど、実戦で使わない=いらないよね) そこで当記事では、出来ない人でも、出来ないなりに上達余地は大きいことを説明しよう。

<「フラットなスイム」の時代ではない>

まず前提として打ち消しておきたいのは、左右のローリングを抑える「フラット姿勢のイメージ」だ。(下図右参照)

20160303_191942_2

「フラット姿勢によるクロール」とは、僕の理解では、10年以上前にイアン・ソープなどの泳ぎをヒントに提唱された泳法。その成立条件とは、「波が立たない水深3mのプールで、50m20秒台の強力6キックで、秒速2m前後の泳速により、高速モーターボートのように水面に高く身体を浮かせること」だと思う。つまり超エリート限定。

(※なお「フラットスイム」と書くと、高橋コーチによる具体的な泳法理論を言うことになってしまいそうだけど、ここではその意味ではありません。「ローリングを抑えたフラットな姿勢によるクロール」を対象として、説明するものです)

実際のところ、高橋雄介先生などが指導しているのは、図の左側のように、十分に胴体を傾けた泳ぎだ。「肩甲骨を上に上げる」という言い方をしており、結果として傾くはず。そして現在のトップスイマーは、左のような傾きを十分に取った泳ぎが主流。といって、昔でも十分に傾けていたのだが。ただ、20世紀の泳ぎとの違いを明確化するために、「フラットという表現」を選んだだけだろう。2016年にもなってストレートに受け取ってはいけない。

ローリングという言葉の意味するものが、1980年代と2016年とでは別物になっている、と言ってもいい。

この「非フラット」クロールの合理性は、以下2点から説明できる。

  1. 造波抵抗の削減
  2. パワーの最大化

<ローリングは抵抗を激減させる>

1,まず上の図で、水面と身体が接する幅は、右の「左右フラット姿勢」は 左の「ローリング姿勢」のほぼ2倍ある。この接水面は水面に波を作る。つまり「造波抵抗」の発生源であり、大きいほどブレーキになる。(2008年のフェルプスのNスペでも説明されていた話)

図左の抵抗の低さは、実際、古典的名著「スイミング・ファースターor ファスティスト」でEW マグリシオ先生が実験して確かめている。

かつてフラット泳法でも造波抵抗が少なくて済んだのは、それだけ身体が浮いていたからだろう。トップ選手は胴体がまるごと見えるようなとんでもない浮き方をする。高速水着はそれを後押しする道具でもあった。さらに、「フラットと言いながら、実は傾けていた」というオチもあるだろう。

なおストロークの軌道が浅く見えるのも、身体が浮いているからだ。イアン・ソープも僕らと同じくらいの遅い泳速度なら、身体が沈み、手もかなり深い位置をかくことになる。

<ローリングとはパワー増大手段>

1月に「体幹活用」のありがちな誤解 〜Swimローリング編 では、ローリングは体幹パワー最大化の重要な手段となることに、少し触れた。その具体的なイメージを1つ示すと「側転」だ。これにより、伏し浮き不要な実戦クロールが実現できる。

下の図は、右手を着き右回転する=右ストロークするイメージだ。絵は腕を拡げた人形を回転させただけ。

20160303_203029

右手の「キャッチ」で支点を作ってから、体全体をそこに乗っけて、体重をパワーに変えてゆく。この時、自ずと腰は上に上がり、「引きずり抵抗」の少ない姿勢が実現する。静止状態での「伏し浮き」ができなくとも、この動作なら簡単にできるはず。

後は、腰が下がる前に、「側転」を向きを変えて連続していけば、腰は自ずと浮き続ける。そして、その方法を練習しているうちに、伏し浮きもできるようになるかもしれない。(出来るに越したことはない)

<ウェットスーツの浮力に頼るべきではない>

この方法は、単なる「姿勢づくり」ではなく、「パワー発揮」と一体になったもの。つまり、

  1. 造波抵抗の削減 (左右ローリングにより「左右幅」が減少するから)
  2. パワーの最大化 (側転による体重活用 ※ここでは詳細は省略)
  3. 引きずり抵抗の削減 (側転による高い腰位置で「上下幅」が減少するから)

という効果を並立させたもの。3者が相乗効果を及ぼしてのものだ。(その実現方法まではここには書きません笑)

腰を浮かすだけのウェットスーツでは、効果は上記3.のみに留まる。一見、似たような姿勢を作るかもしれないが、それは似て非なるものだ。

ここまでの説明でイメージをつかめた方は、ぜひプールで試してみよう。

    « 「ウォークブレイク」Vol.2 〜東京マラソン成果と、ラン技術向上について | トップページ | トライアスリート目線から見たシャラポワのドーピング問題 »

    ◆* クロール/OWSの技術」カテゴリの記事

    コメント

    チョッパーさん、励みになります笑
    雑誌には雑誌の目的がありますね。

    僕の方針は、とにかく 「僕自身にとって有益な情報であること」 に尽きます。

    Facebookの方が更新が細かいです。アカウント登録さえあれば、全記事を読んでコメントできるので、ぜひごらんくださいませ。

    はじめまして,チョッパーと申します.いつもブログ楽しみに見ております.
    トライアスロンやっておりますが,特にSWIMが苦手で,
    色々検索しているうちにココを発見しました.とても勉強になります.
    某雑誌は高級品の宣伝ばかりであまり参考にならず,もっぱらハッタリさんのブログが参考書のような感じです.
    Facebookではもっと細かい内容等書かれているのでしょうか?

    コメントを書く

    (ウェブ上には掲載しません)

    « 「ウォークブレイク」Vol.2 〜東京マラソン成果と、ラン技術向上について | トップページ | トライアスリート目線から見たシャラポワのドーピング問題 »

    フォト

    全て公開設定

    おかいもの

    Blogランキング

    無料ブログはココログ