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2015年10月の5件の記事

2015年10月31日 (土)

NHK「アスリートの魂〜佐藤優香」 Bikeの描き方には大きな問題がある

NHK アスリートの魂「折れない心を トライアスロン 佐藤優香」 が先日放送された。

番組テーマは「折れない心」。多くの日本人が耐久スポーツ選手に対して期待するものだ。そんなストーリーラインをまず作り、それに沿って素材を貼り合わせている。そんな印象を受けた。

それだけなら、まあ構わない。しかし今回のは、実際の競技の中、重大な危険を招きうるものを含むと思う。以下指摘させて頂く。

<Bikeコーナリング克服、という物語>

佐藤選手は2014年10月のエドモントン大会で、バイクのコーナーで落車し、表皮組織(=皮の裏側の肉)が剥がれて白い腱か筋肉かが露出する酷い怪我を負った。僕も似た怪我を3年前のバイクレースで何かの金属板を相手に起こして救急車乗ったけど、あれはかなり痛い上に、気持ち的にショックがでかい。

そのトラウマの克服が、「折れない心」の象徴的な物語として描かれている。その流れは、「物語の作り方マニュアル」の基本に忠実なものといえる。まず番組の始めに、主人公のキャラクターが好人物であることを描き、視聴者が好感を寄せる、という前提を作った上で、

  1. 挫折 〜かつてコーナーでのツバ競り合いで転倒し、以来、苦手意識に苦しむ
  2. 努力 〜そこで長時間の苦しい特訓に耐え
  3. 戦い 〜9月のシカゴ大会では、外国人選手に声を荒げられながらも、コーナーで攻め続け
  4. 勝利 〜井出選手よりもブレーキを遅らせてコーナーに入り、抜いて前に出た (ここでお馴染みテーマソングちゃららーーん♪)

と、少年ジャンプかプロジェクトX的に完結する。

<3.集団内でコーナーを攻めてはいけない>

この最大の問題は3。これは成功例や美談というより、失敗例に近いと思う。しかも初歩的かつ義務的なレベルでの。自転車競技の経験がある方にはわかるだろう。

シカゴのような大集団では、「集団の先頭付近」の数人にとっては、コーナーで攻めることが有効な戦術・戦技となる。なぜなら、先頭にはそれが出来るスペースがある上に、後ろの大集団では、「コーナーを攻めることが許されていない」から、有効な差をつけることが出来るためだ。すぐに追いつかれる差だが、追いつく側に急アクセルを強いて、ダメージを蓄積できる。

この時、集団の中〜後方では、 「できない」でのはなく、「できるけど危険だからやらない」だけ。だから、攻めたい選手は先頭に出る。さもなくば、集団と同じペースを維持する。

自転車を使うレースでは、こうした暗黙のルールが幾つかある。そこが怪しい選手には、その場で「おい!あんた!」とベテラン選手から大声で熱いご指導を頂くことになる。明らかに繰り返すと、「てめー下がってろ!」級に昇格するだろう。

ただトライアスロン大会では、そのルールを知らない人たちが大挙して入っていて、かつ、誰にも指摘を受けずに走り続けてしまうことも多い。(で、たまに指摘する人がいると、暴言とか批判されたりしている!現実にFacebook上で見た話です)

番組のあの場面について言えば、佐藤選手個人にとっての意味はある。苦手克服できたかを実戦で確かめておくのは、必要なステップだ。ただし、他の選手に迷惑をかけない=気付かれない範囲内でやるべきだ。そこを指摘されたということは、その失敗を意味する。

つまり、佐藤選手にとってのコーナリングは依然として課題であり、引き続き練習していけばいい。課題のない選手はいないし、チャレンジは常に必要。スポーツとはそうゆうものだ。

 〜信頼の問題〜

ここからは、一般論として書く。

そこには、選手にとってもリスクが残る。「信頼を失う」ということだ。

その帰結を、自転車レースに詳しい方はよく知っているだろう。欧米での(新城・別府選手を除く)日本人選手の扱いを。「ふぁっきnジャパニーズ!」と怒鳴られながら体当たりされ倒される、なんてこともありうる。

ArashiroやBeppuは、高卒後すぐに海外で活動することで、そんな文化を肌感覚で吸収した上で、その中で勝ち上がってきたので、「弱い日本人」枠には入っていない。欧州シマノでアシストとして集団を引っ張りまくった土井雪広選手も「日本人ということで不愉快な思いをしたことはない」と言う。そこは実力で決まる世界だろう。

海外トライアスリート達も、その同じ文化の中で育っている。そのつもりで見ると、コーナーで外側にいるジョーゲンセン(金色の「1」シールを腕に貼った細くて長くて白い選手)は、佐藤選手を避けて大きく回っているようにも見えるけど、それは気にし過ぎかな? だとしても、バイク集団での位置取りは大きく不利になるだろう。

大集団の中でも、ジョーゲンセンは出ようとすればスペースを空けてもらえるが、悪いイメージがついた選手はブロックされ、不利な位置にしか付けない。

集団では、前の10人くらいが最も落車リスクなどの安全性が高く、またコーナー立ち上がりのストレスも低い。動きの無いうちは後ろで構わないが、レースが動き始めた時に、後方にいること自体がリスクとなる。またバイクゴール手前では、トランジションは混雑することもあり、ランスタートで軽く10秒以上の差がつけられる。

 〜語学力の問題〜

あと1つ付け加えると、 こうした場面では、英会話力が大きな差となりうると思う。

英語が十分に話せると、レース中に怒られた時に、その場でコミュニケーションが取れるだろうから、信頼低下はそもそも起こらない。またレース後に話しかけて、「あの時ああいったのは、詳しく教えて」と会話できれば、信頼回復できるだろう。

しかし、NHKのナレーションでは、「外国人に攻撃されたが、跳ね返した」的なニュアンス。方向がまるで逆なんだよ。この描き方は、ちょっと悲しいくらいだ。

 

<4.戦術としての重要度>

番組で描かれた点に戻る。上記4.の問題とは、その位置で抜いても大差無い、ということ。コーナーを抜けた時点で3m前に出てても、どうせ集団内に居るのなら無駄。むしろ、より力を使わずにやり過ごすことで、ランを伸ばすことができる。

それでも、個々の選手にとっては、実戦経験を積む意味で攻めてみたい場合はあるだろう。問題は、こうした戦術的価値のない細かな技を、重要な戦略として扱ってしまう番組の描き方は、強引だと思う。

<1.コーナリング技術>

そもそもの物語の発端(?)である去年のバイク落車についても解説しておく。

番組ナレーションの「ツバ競り合い」とは勇ましいけれど(NHKの主な客層である高齢者に合わせたのかな)、単にレースの基本ができなかっただけ。コーナーで前車真後ろに付けての「ハスり」は、位置取りの基本的ミスだ。

重要な基本なので説明しておくと、

  • 速度一定の直線なら、前車の後輪に、自分の前輪を出来る限り寄せるのは基本技術。近いほど力をセーブできる
  • ただし、絶対に接触させてはいけない。方向が固定され体重も乗った後輪に、動きやすくて軽い前輪が、お互いに高速回転しながら接触したら、後ろは一瞬で転ぶ(これがハスり落車、佐藤選手のケース)
  • 直線であれば、お互いの速度が一定である限り、問題はないはず
  • コーナーでは、減速と方向転換があるため、接触のリスクが高い。そこで少し位置をずらし、前がブレーキをかけても、自分の前輪が接触しないようにする

ドラフティング禁止のレースでも、Uターンなどで起こる可能性があるので注意しよう。この基本を破ればたとえサガンでも転ぶだろう。サガンなら触らせないだけだ。

<2.対策>

このことに限れば、自転車レース、特にエリート・トライアスロンのバイクと似ているクリテリウム競技での経験が、直接の対策となるだろう。ベルギーやオランダで生活する友人によると、彼ら、毎週末そこらへんの公道をつかって自転車レースが普通に行われている。トライアスリートも、子供の頃からそうゆうのに出てたり、あるいは、そうゆう出身者と一緒に揉まれている。

日本には、その環境がない。本当は、日本選手権に出るレベルの選手は、オフに実業団クリテリウムレースの上位争いくらいしてくれると良いのだけど。

このことと、佐藤選手がコーナリング練習をしているのは別の話で、コーナー単体での練習は当然必要なのでやるわけだ。ただしそれは番組で用意したストーリーラインの上ではない、ということ。

・・・

このブログの読者は、自転車を競技で使う方が多いはず。これらのことはぜひ見抜いて欲しいと思う。とりわけ、知識・経験ともに不足しがちな日本のトライアスリートには。

<ランの失速の原因>

こうしたBike実戦技術の不足は、筋力を非効率に稼働させるため、Runの失速に繋がる。これはトライアスロンの超基本、バイクパートはランパートの一部でもある。けして心が弱いからではないし、持久力が足らないこととイコールでもない。

番組では、佐藤選手が「スイムとバイクが強い」と順位のグラフで紹介されていた。しかしグラフは時に真実をごまかす道具として有効となる。

事実は、「スイム得意だがバイク苦手な選手は、バイクではなく、ランの順位を落とす」のだ。スイムが速ければ’(集団走の)バイクの通過順位も自ずと上がる。上位集団はバイク単体のスピードも速いことが多い。順位が上であることは、得意を意味しない。

本当にバイクが強いかを知るには、バイク単独のレースとか、1時間タイムトライアルとかが必要だろう。

僕がまじかに観戦したエリート男子では、同じバイク集団を走っていた日本人選手は、ランでははなから勝負に乗せてもらえていなかった。上位争いの選手は、走り方が全く違う。目に見えない勝負が、同じバイク集団の中で繰り広げられているのだと思う。こちら過去記事ご参照→ シカゴ大会BS放映みどころ〜 トライアスロンRun10km28分台!その技術を解説しよう

<その他の注意点>

  • 1日8時間練習は、週に1日とか、特別な強化合宿とか、ふつう限定的なものです (番組の練習風景は合宿中)
  • 低酸素ベッドも、日常使用はしてないと思う。製品はたぶん "Higher Peak" 3,149ドルで買えます→ http://www.higherpeak.com/
  • クロールのストレートアームは、そうすることで「陣地が空く場合もある」という程度。海用の泳ぎは別にあるので、真に受けないようにね(なお僕はストレートぽいです)
  • ストレートアームは、同じ技を繰り出した同士では、より重くパワーのあるほうが勝ちます。スタン・ハンセンのウエスタンラリアットのようなもんだ
  • 脂肪分を控えた食事は、「ある日の晩ごはん」だからかな。少なくとも普通の耐久アスリートの、特に朝昼には、良質な脂肪は逆に必要なので、まんまマネしないようにね

・・・

<スポーツ・ドキュメンタリーについて>

僕はNHK大好きなのだけど、彼ら、わかりやすいストーリーへの強引な誘導を、一見シリアスなドキュメント番組でもやってくることがある。2015年5月に書いたブログのも一例→ 「アスリートの魂・萩野公介選手」の解説の欠陥と、より正しい理解 で、かつては、フェルプスの泳ぎの比較対象として「引退した選手をいきなり撮影」ということもしていたらしい。そら巧く見えるわ。

NHKがそうするのは、視聴者の大半が、「オリンピックのメダル」には興味があっても、「水泳やトライアスロンそのもの」にたいした興味はないからだろう。

そんな中で、「平均的な視聴者の頭の中にもともと存在しているストーリー」に沿って、取材した素材を編集する。NHKの取材力は見事なもの。実際、ブログにも書いた取材当日の仕事ぶりには感心した。だから、組み立てる材料、つまり説得力は十分だ。ただしその編集は、時に、行き過ぎる。

以上、全体に、番組に対して批判的に書いてきたけど、これは結局、多数派の日本人の意識の問題だとも思う。スポーツにドラマを投影しないと気がすまないという。

NHKのスタッフともなるとみな優秀で、こうした客観的事実を理解する力はあるはず。その上で、「どうすれば伝わるか」と考えた結果、こうなっているんだろう。

ただ、スポーツ・ドキュメンタリーというものは、別に結論というか、物語の完結がなくても、「ただ苦しんでいる途中です」と実態をただ正確に描くだけでも、意味はあると思う。それで視聴者がついてくるかどうかは、また別の問題だけれど。

選手やコーチは、いろいろな課題を抱えながら、いろいろな取り組みを試し、その多くは綺麗な物語として語れるようなものではない。ただ、視聴者はそのままには理解しきれないし、また満足もしない。その制約の中でも、より真実に迫ろうとするTVであって欲しいと願う。

・・・

それでも、「多少は歪んでいたとしても、伝えられないよりは、遥かにマシ」だから、全体として番組自体は評価したい。

その上で僕は、僕がより正しいと考える情報を、こうして届けてゆく。こうした積み重ねが、最終的に、日本のスポーツ理解力の向上へと繋がるだろう。

真に優れたスポーツドキュメントとは、視聴者の頭の中にあるストーリーに沿ったものを届けることではなくて、知らなかった新しい世界を見せる驚きにあると思う。

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・・・

追記:10/24韓国トンヨンでのワールドカップ最終戦で佐藤選手みごと優勝!

ただ、リオに向けて必要な情報なので書いておくと、年間ランキング30位以内の海外トップ選手は出場していないと思う。トップ選手が最後に集ったのが、9月のシカゴ。だからこその「グランドファイナル」であり、そこで上位に入ることが必要だった。シカゴで年間ランキング確定させた選手は既にオフに入り、リオに備えている。

こちら公式記録から、選手名をクリックすると、ランキングや戦績など選手情報を確認できる。主要メディアの報道は、残念ながら、少なくともトライアスロンに限っては、真に受けてはいけないということが判るだろう。

信頼できる情報源を持とう。

・・・

自転車レースを知るには「エスケープ」佐藤喬(2015)を。傑作。  

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2015年10月16日 (金)

【英語教室】世界はヒロム・イナダ(83)をどのように称えているのか?

アイアンマン世界選手権2015公式動画 が発表された。10分ちょっと。稲田さんは最後の方、9:50から登場する。以下写真はそちらから、ゴール1−2mくらい手前の最後の転倒の瞬間:
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このカイルア・コナというのは本当に小さな田舎町で、もしもこの大会がなければ、マジで超ド田舎なままだったと思う。そこに作られたこの花道も実際かなり狭い。そこに応援者+自分のゴール後に応援に回った人たちが密集し、深夜24時の閉門前はすごい熱気となる。らしい。
 
僕が出た2年前は、当日までそれを知らなくて、自分のゴール後に知らされ急遽いこうと思ったのだけど、夜に強めの雨が降り、せっかくシャワー浴びたあとに濡れた靴に足を入れる気がしなくて、23時頃だったかに寝てしまったのだった。当時81歳の稲田さんが制限の数分遅れでゴールに入られてかなり盛り上がったらしく、もったいなかった笑
 
今回の稲田さんゴール前の状況は、現地応援でまのあたりにした日本人からコメントいただいた。以下引用:
 
「彼の一度目の転倒(写真のシーン=ゴール100〜200m手前)を目の前に見ました。その後立ち上がって一心に前を見る姿に私が受けた感銘は文字に出来ません。
 
その場に居た誰もが、その時、彼の記録について知っていたわけではありません。しかしその場に居た誰もが、彼の転倒に嘆き、立ち上がる姿に勇気づけられ、そしてフィニッシュしたときには大いに歓喜しました。
 
私は確信しています、私を含め、あの時彼の走る姿を見た者誰もが、口を揃えて"Yes!! He's an IRONMAN!!"と答えることと。」
 
Facebook写真への英語コメントをざっと眺めて、現場目撃証言は3つ見つかる:
 
"We were there cheering him on, from where photographer took this pic. Very heart tugging moment. We all wanted to go over to help him up. His amazing efforts touched all of us."
 
"Thank you sir for being the most inspirational story of that day. I was there and I saw you and it brought tears to my eyes just to see your determination and will! You are definitely an Ironman and we all hope you return to Kona next year!! Congratulations to you."
 
"The crowd was roaring him home, he got up and jogged the last 200m with the screaming crowd behind him, no help.
He got to the top of the ramp and stumbled on the flat section falling again, mike Reilly called him home an ironman and helped him up a little and he crossed the line. Last fall was on the top of the ramp about 1m from actual line."
 
苦手な方はGoogle翻訳でどうぞ、先の日本語のとだいだい同じに、応援する側がちょー感動してる様が伝わる。そして、これら英文は、アイアンマン完走者をどのように褒め称えるのか、という英語表現のお勉強にもなる。
 
というわけで本題。今回は英語をお勉強しよう。
 
て、僕は教えられるほど英語を知る者ではないのだけど、これら知識があれば、この競技をより深く理解しやすいと思うから。
 
まず、前回紹介した公式Facebookコメントは、かなり気合を入れてポエムしていると思う。全米放送の人気番組であるNBCの総集編で、渋い低音の男性ナレーションで読まれる原稿のような。(NBCで実際どう扱われるかちょっと楽しみ!)
 
まず冒頭:悲劇としての側面を、勝者と対比させることで強調している。
 
With stories of great personal victories also come stories of immense heartbreak. Hiromu Inada, merely seconds past the cut-off time, would have officially become the oldest male Kona finisher.
 
「仮定法過去完了」は、ほんの数秒差で逃した残念さを強調する表現でもある。ここは大学入試みたいだ。
 
大学入試ではまず出ない表現、それが次の
 
He's certainly an IRONMAN in every sense of the word,
 
大文字ひと続きの「IRONMAN」は登録商標であり固有名詞。ハリウッド映画のは「Iron Man」と普通名詞を使っているので、映画会社側は商標違反を問われることがない。たぶん。
 
そして「IRONMAN」の定義とは、Swim2.4mile, Bike112ml, Run26.2mlを所定の制限時間内に自力で走り切った者をいう。稲田さんは数秒差でDNF=記録抹消!という扱いなので、形式的にはIRONMANではないのだ。
 
そこで、”in every sense of the word”=「アイアンマンという言葉が持つ、あらゆる意味において」、という表現が登場する。「意味」、つまり、「歴史と文化の理解」から考えることによって、むしろ彼こそが「本質的なIRONMAN」である、と捉えることが可能になる。これは前回書いた話と同じ。
 
続く、
 
(He...) embodies everything amazing about our sport.
 
では、embodies=「Bodyの内にある」という言葉を使うことにより、「トライアスロンという競技のあらゆる意味、魅力、感動は、この身体1つを見れば伝わるよね」、という身体感覚を強調している。
 
最後の一文は、simply overwhelming =超スゲー!と締めるわけだが、それでは普通すぎるので、The emotion in the photo captured とポエムな主語を使う。ここでは、「稲田さんがembodyするもの」が、観客達を感動させ、その場に「巨大な emotion のカタマリ」が生まれている様子を表してる。ここから、応援者も一体となってつくり上げるのがアイアンマンであることも読み取れるだろう。
 
・・・
 
もうね、競技主催者の言葉として、これ以上の賞賛表現は無いですよ。
「我が社が提供する価値を知るには、この写真1枚だけご覧ください」と言ってくらいの意味を込めている。
 
僕が前回書いたのも、この数行の文章を、背景を知らない方に向けて説明する歴史の授業のようなものだ。今回は英語の授業を書いてみた。(というか、おもわず書いてしまった。。)
 
以上の理解があれば、公式ページの写真→ https://www.facebook.com/IRONMANWorldChampionship/photos/a.512314138901624.1073741827.181824205283954/733468220119547/?type=3&comment_id=733484183451284&notif_t=like への英文コメントが、スムーズに理解できると思うから。いいね!8千に迫っている!
 
“He's still an IRONMAN!!” 的なコメントが目立つのもわかるだろう。そこに ”in my book!” “in my eyes!” “by heart!” などを付けるのも目立つ。これは、客観的には失敗なのは仕方ないけど、私は認めます、ということ。
 
それだけ、「このKONAという地において完走してIRONMANという称号を得ること」の重さがあるということだ。多くのトライアスリートが、その価値を心から信じている。
 
“Legend!” ”You are a true leader in our beloved sport!” など歴史に残るよ、という表現もちらほら。
 
同じ写真が、アルバムの一部として後から追加されている。こちらで目についたのは:
 
 
もしも巨大な写真プリントで、自由にメッセージ書いて、と置いてあれば、何千も書かれるだろうと。まあ、それはネット上で実現してるわけだが。
 
完走者一般への賞賛表現としても使える。ただし最大級の:
 
"I love this picture... pushing your body to the extreme limits of pure exhaustion!"
 
"This picture is the epitome of strength, courage and determination. He is my hero."
 
I"ronman is not just crossing the finish line, it's about you crossing the end of every endeavor in your life."
 
僕にとって新鮮だったのは、"inspiration” という表現。結構目立ち、最大限の賛辞として使われているようだ。単なる勝者ではない、人を心から熱くさせる者、ってとこかな?
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本当に。
 
姿1つで、多くのものを伝えている。
 
・・・
 
このように、トライアスリートは情報源を英語に拡げると、圧倒的に見える世界が変わります。
英語は慣れです。ジョギングと同じ。しかもレベル的には、ランニングの1km8分ペースで1km走れれば十分(=40代男子の場合で) Google翻訳で楽しながら、こまめに接していくのをオススメ。
 
日本語に無い情報なら、使うモチベーションも上がる。Joe Frielのこの2冊は (該当する人にとっての)重要性が高く、しかも翻訳が出てない。僕も時間が空けば読んで報告したい(けど空かない、、)
そして来季への準備を:半額セール中→

2015年10月13日 (火)

16時間50分走った先の世界記録に「 あ と 5 秒 」届かなかった稲田弘さん(83)は、世界のアイアンマンの新たな伝説を作っていると思う

10月の第2日曜日、2015年なら10/11は世界のトライアスロン界ではいわばクリスマス、日本ではさらにお正月まで一緒に来たような1日。

日本の午前1:25にハワイ島でアイアンマン世界選手権KONAがスタートし、そのトップがRun後半に入る8:25にお台場で日本選手権女子がスタートし、KONAでプロ男子が9時半過ぎにゴールして、11:00にはお台場の日本男子がスタート。同じ頃、KONAではエイジ選手のトップレベルが表彰台を決めてゆき、「完走すれば表彰台確実」という高齢カテゴリでは、男子18:45、女子19:00にゴールをくぐれるかどうかで決着する。

僕は、プロ男子でフロデノが史上初のオリンピック(北京2008)とアイアンマン2015の二冠を達成したのを見届けるや否や電車で田町へ、レインボーブリッジ歩道を経由してお台場まで4km走り、途中の橋の上で男子Swimの後半から観戦開始。いろいろな人とお喋りしながら、華やかなお祭りを楽しむ。この1日を終点かつ起点として、日本のトライアスロン界は回っている。

このKONAとお台場の同時観戦記?は、また改めて書こう。纏めて言えば、Swim高速化がえげつない。それから、「トライアスロンとはドイツ人が最後に勝つゲームを言う」的な。

それより真っ先に書きたいのは、83歳のリビングレジェンド、稲田弘=Hiromu Inadaさん。16時間50分の制限時間に、あと5秒だけたりなかった!

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写真は公式Facebookより

この写真は掲載後1日ちょっとの18時時点で、いいね6,936、シェア923、コメント347(このうち僕の英語コメントへの「いいね」は5番目に多い、世界5位?笑)。アイアンマン公式Facebookでの最大反響は男子プロ優勝のフロデノ1.2万いいね。それに続き、女子優勝もアンダーパンツランも(笑)上回る。僕の経験上、Facebookでは「いいね!」のおおよそ10倍の露出があるので、Facebookのこの写真だけで、10万を超える人達が見ることになるだろう。

世界中へ広がる感動を確かめるには、下記の写真リンクでのコメントをご参照:

"With stories of great personal victories also come stories of immense heartbreak. Hiromu Inada, merely seconds past the cut-off time, would have officially become the oldest male Kona finisher. He's certainly an IRONMAN in every sense of the word, and embodies everything amazing about our sport. The emotion in the photo ... is simply overwhelming."

「栄光の影の敗北。わずか数秒差で彼は史上最高齢でのKONA完走記録を逃した。しかし彼はまぎれもなくアイアンマンであり、この競技の素晴らしさの全てをその身体で表現している。この1枚の写真に込められた感動にただただ圧倒される」

上の写真はゴール100m手前らしい。その後再び立ち上がり、現地23:45の男子エイジ制限時間ギリギリでの通過を目指して走り始める。しかし、ゴールのほんの2-3m手前か、スロープを上がる途中で崩れてしまう。つまり少なくとも2度倒れている。最後の数mのスロープが、17時間を走り続けた83歳の脚筋の限界を超える巨大な壁として立ちはだかった。

こちら動画では、3−40秒あたりから右側の日本人応援団が気付いたようで日の丸が振られ始め、稲田さんは59秒あたりに表れ、1:03で倒れ、その「 5 秒 後 」に再び立ち上がって、ゴールされる。このあいだに、世界チャンピオンと最高齢完走記録とが逃げていった。ほんの3m先で待っていたのに。

※タイトルでは「世界記録」という言葉を使ったけど、トライアスロンには、「タイムでの世界記録」というものは存在しない。トライアスロンでは距離の厳密性が要求されていない(ITU=五輪ルールではBike誤差は10%以内まで許容している、意外と知らない人が多いけど)。あるのは「コースレコード」だけで、それも正式に表彰されることはない。今回逃したのは、厳密には、「世界選手権における最高齢での完走記録」となる。わかりやすく省略させていただいた

でも、稲田さんは替わりに、新たな伝説を作ったのかもしれないと僕は思う。なぜか。歴史と文化から紐解いていこう。

・・・

1970年代のアメリカは、ベトナムのゲリラやら日本企業やらに打ちのめされ、自信を失っていた。そんな時代に表れたのが、勝利を求めず、最後までやり抜くという愚直な行為そのものを目的とする行動だ。

その先駆けは、ヒーローなのにボロボロに打ちのめされ、ただ最後まで戦い抜いただけ、という異色の映画「ロッキー」(1976)だ。その舞台フィラデルフィアはアメリカ建国の地、アメリカの本来的な価値観を再生させる象徴的な意味があったと言われる。

ちなみにロッキーの原作・脚本はシルベスター・スタローン。そんな時代の変化を捉えた文学的センスが凄い。実際、大手映画会社は驚き、人気俳優を主演させる前提で数千万円で脚本を買い取ろうとし、しかしスタローンは「無名俳優である自分が主演しなければ意味がない」と拒絶して、低予算で制作された経緯がある。「無名のヒーロー」というコンセプトは、時代を先駆けていると思うし、この点でアイアンマンレース的だとも思う。スタローンは次作以降、クスリで筋肉を盛るようになり、きんにくVaca的なイメージで見てしまいがちなのだが。。

その後数年で、「最後まで走り切る」ことを目的とした奇妙かつ過酷なレースが次々に生まれる。アラスカ1,800km横断犬ぞりレース「アイディタロッド」、100マイルのウルトラトレイル「ウエスタン・ステイツ」、そして当時オアフ島の「アイアンマンレース」(1978)などだ。アイアンマンの発起人はベトナムから帰還して3年目の海軍将校たち。ある面では、失った自信を、自分自身を、取り戻す過程でもあったのだろう。

ただし、当初はあくまでも奇人変人だけのイベントだった。しかし1982年、より過酷なハワイ島に移って初めてのアイアンマンで、24歳の女子大生ジュリー・モス =Julie Mossが「伝説」を作る。初出場し、勝利を目前にして倒れ、這いつくばってゴールする。勝利は逃したが、ロッキーが現実化したかのような感動が全米、そして世界に広がった。

ついでに、アイアンマン競技規則に「Runでは、走る、歩く、もしくは、這って進むこと」との一文が追加された。

こうした歴史は、クリストファー・マクドゥーガル新作「ナチュラル・ボーン・ヒーローズ 〜人類が失った"野生"のスキルをめぐる冒険」に書かれている(32章)。前作「Born to Run」前半と併せて理解しよう。著者インタビューは最新「Number Do」で読める。

つまり、当時の欧米先進国における「もう勝ち続けることができない」という価値観の転換期に表れ、ジャストミートしたのが、過酷さ自体を特徴とするこれらの長距離耐久レースだ。

日本(=当時は勝ち続けていられた) でも受け入れられたのは、1,000年続く千日回峰行などの修行僧文化、そこからのマラソン文化の存在ゆえだろう。

トライアスリートたちの苦闘は、こうした価値観を体現する、いわば「生身のロッキー」として、あるいは「無名の私と、ヒーロー&ヒロインとを、つなげるもの」として、語り継がれ、伝説となってゆく。実際、アメリカNBCのアイアンマンKONAの編集番組はエミー賞スポーツ部門の常連だ。この積み重ねの中で 「アイアンマンというブランド」が育ってきたのだ。

稲田さんは負けたけれど (記録上はDNF=失格の一種)、世界最高の記録をかけて、17時間、最後の瞬間までギリギリの挑戦を続けた。それは過去の伝説たちと同じ系譜に連なるものだ。
 
僕はこの写真を見てすぐ、「歴史に残るであろう1枚」とFacebookに紹介した。ちょっと大袈裟かもと思いつつもその言葉を選んだのは、こうした歴史を踏まえてのこと。それから1日間の反響の大きさは、実際そうなりつつある気もする。

でも、きっとご本人にとってはどうでもいい話で、稲田さんはただ、次のレースでもっと速く走ることに集中しておられるのだろう。レース2日後かな、ご本人ご挨拶動画はこちら→ 
 
参考:稲田さんインタビュー http://www.value-aging.com/interview/vol003/index.html 60歳で水泳を、69歳で競技自転車を始め、3年前の80歳でアイアンマン年齢別世界王者。曰く、
 
「スポーツされる方は、80歳までやり続けることを目標にされている方が多いのですが、僕はすぐに80歳になってしまった。その時に「いつまで続けられるのだろうか」と考えましたけど、まだまだできそうなので挑戦していきます。僕はいまトライアスロンをできること自体が楽しくて、「やればできる」ということが嬉しいんですよね。」
 

この謙虚な、そして淡々とした態度に、彼の本当の強さを見るべきだろう。戦前生まれの強靭さでもあるかな。走り続けるという本質的な意味において、世界最強のトライアスリートとも言えるだろうか。
 
本当の伝説ができるのは、1年後かもしれない。
伝説は「生まれた」のではなく「いま作っている」、過去形でなく現在進行形が正しいかな。

2015年10月 8日 (木)

シカゴ大会BS放映みどころ〜 トライアスロンRun10km28分台!その技術を解説しよう(少しね)

10/8 20:00よりNHK-BSにて、トライアスロンITUワールドカップ最終戦シカゴ大会のエリート部門が放送される→ http://www1.nhk.or.jp/sports2/etc/index.html#onair ※翌日の自転車世界のサガンも注目!

僕が出たのはエイジ部門は対象外だが、男子の最後の噴水裏を走るのが映るかも。(エイジ=陸上と水泳と自転車競技でのマスターズ。組み合わせた競技で名前が変わるのは、アメリカ人がハワイでそう名づけてしまったからかな) 写真右を走る影↓20150922_02631

Chicago4日目、9/19(土)13時過ぎ、僕のレースが終わる。

ホテルに戻ってシャワーを浴び、15時過ぎにバイクなど回収、ホテルでウェットスーツなど洗い、床置きエアコンの風を最強に設定、送風口に敷いたバスタオルの上へ。落ち着いてからエキスポ会場へ。選手用の無料チケットで肉とドーナツとビールを貰う。肉がカモメに襲撃されるが、湘南のトンビのような窃盗技術はシカゴのカモメどもにはなくギリギリセーフで無事に食べることができた。やれやれ、と観戦へ。

レースはちょうどBikeなかほど。コースの末端で、展開を最も見渡すことができた。

・・・

退屈になりがちなITU系のBikeだけど、今回は派手な展開が続き、第二集団が第一集団へ追いつき、そこからの2名アタック、さらに2名追走、合流して4名逃げが成功。

この攻めの走りは、TVでも見る価値があると思う。ダイジェストで十分には伝わらないだろうけど。

この逃げグループ4名は、54名ほどにまで膨らんだメイン集団に33−37秒差を付けたが、ランでは伸びず、最高でアメリカ選手の20位。さすがに脚を使いきったかな。それでも日本人選手でRun1位選手より1分速い。それに、地元開催で見せ場を作るのはプロ選手として十分な仕事だ。

・・・

Runに入ったタイミングで、僕は大きな日の丸をフェンスに掛けるグループへと移動した。そしたらそれがエリート日本代表チームだった。

左にはU23男子代表の谷口&小林選手。1年前には箱根駅伝メンバー入りをぎりぎりまで争っていたトップランナー小林選手が、トップ選手たちの動きを解説してくれた。(というか質問しまくって答えさせた的な)

ロンドン'12銀のハビエル・ゴメスは筋肉質のトライアスリート特有の、新興のマリオ・モーラは細身のスピードランナー的、 対照的なフォーム感だ。ゴメスはロボットのようにシャキーンシャキーンと音たててそうで、モーラはぴょんぴょん。

共通するのは、どちらもピッチが速い。体幹を一切ブラさずに走るので、あたりまえのように見えてしまうのだが。

そして、脚を運ぶ位置が高い。これは、速さの「原因」か「結果」なのかは謎だけど(=こうゆう場合はたいてい両方の相互作用だと思う)、物理現象として観察すると:

  • 蹴り上げた足が後方で高くハネ上がり
  • その勢いを回転させて
  • ヒザが勢い良く前へと運ばれるので
  • 脚の振り下ろしも、開始位置が高い
  • 高さによる重力エネルギー、移動距離の長さによる加速の両面で、着地時点での力が大きい

と考えられる。

この「脚の運びの位置」は、後続の遅い選手ほど、低くなってゆく。彼らと同じバイク第一集団に居た複数の日本人選手は、比べると、足を引きずるように走っているよう見えてしまう。(もちろんそれでも十分に速いのだが)

これが彼らの「ランニング・エコノミー」=技術だろう、と左隣でU23代表の小林選手が解説。鶏か卵かは問題で、速いから脚が上がるのかも、とも。

なぜ、エコノミー=効率性の問題なのかというと、普通、脚を高くピッチを上げる、とは短距離の走り方だから。それを10km続けられるのは、その「反発のさせ方」になんらかの効率性があると考えられるからだ。

右隣には、リオ五輪代表候補、当時で次点の加藤選手、次々点の高橋選手。こちらは

「クリちゃんがんばってるー」 (=クリサント選手、髪型もクリクリしてるメキシコ人)

「ハスは王子様よねー」 (=ギリシャ彫刻風の金髪長身フランス選手)

とまたカラフルな雰囲気。この観察眼により世界上位を争っているのだ、笑。

こうゆうトップ選手との距離の近さが、ITU世界選手権などのグローバル大会に出る、1つの楽しさでもある。もちろん保証されたものではなく、近くに居る、というだけなんだけど。

・・・

レースは、ゴメスとモーラの一騎打ちが延々続き、ゴール勝負となりそうだ。加藤&高橋選手が、「最後ゴールスプリントかなー、見たいよねー、でもゴールていつも人多くて、いつも見れないんだよねー」と。

なるほど、ゴールはそうゆうものか。ならばどれくらい混んでるのか見てみよう。と、走って移動することにした。まあせいぜい1kmくらいかな。

すると選手が追いついてきた。人垣の隙間から、モーラがゴメスに2-3mくらい先行したのが見えた。僕の走る歩道は広く、人はコース沿いに固まってて、結構な速さで走ることができる。しばらく並走して見ていられた。少し近道して、写真の噴水で再び合流。

ワールドカップ今季最終戦、オリンピックに次ぐレベルでの世界トップの争いに、一緒に参加できてる気分。これが世界トップのトライアスリートの走りだ。楽しい。気持ちいい。

ゴール直前は、さすがに人が多く、見ることが出来なかったけど、十分。Runパート10kmをモーラのは28:59, ゴメス29:06。記録はこちら、展開を知るにはExcelダウンロードしてT2通過時刻たして並び替え(最初から出してくれればいいのにw)。トライアスロンはタイムを問題とする競技ではなく、距離も厳密なわけでもないのだけど、まあ凄いわ。

トライアスロンは、やっぱり、おもしろい。

・・・

* 来年のITU最終戦は "October 29-30: Miyazaki, Japan" ですよー!

** 「Born to Run」のマクドゥーガル新作「人類が失った"野生"のスキルをめぐる冒険」も、おもしろい。前作はインパクト鮮烈で、読後、ラン錬をオフロード中心に変えた。今回の発見は「筋膜」。後で解説 ケア商品なんてあるんだねー

*** ゼロディの長距離系の2ピースウェアがこの値段なのも、おもしろい。こうゆう値段は続かないもんだ→ デザイン的にも独特の美しさがあり、「ユニクロ的なカブり」の心配が薄いは魅力だ!w

2015年10月 4日 (日)

ITU世界選手権Chicago レース#2 〜「世界への関門はBike」その意味を数字で説明しよう

世界レベルでのトライアスロンで日本人が互角に戦うための関門はBike。国内レースのバイクパートなら圧勝できるレベルが必要です、と→ 『 ニールプライドBAYAMO2013 「本気でKONAを目指す方へ」  』に書いたのは2年前のこと。(人気記事の1つ、TTバイク選定の参考にされる方が多い、と有名バイクショップの方にも言われた)

2年経って、また同じ言葉を繰り返す、笑。

<レース過程>

寒さも予想される中、アームウォーマーだけウェットスーツに着込んでおいた。別府フミ選手がスキルシマノを退団された際の余りものを、湘南ワタナベレーシングで頂いた縁起モノ。いいでしょう笑。2012館山アジア選手権以来のレース投入だ。

Bike左側から、左ペダルに固定したシューズを左足で踏んづけながら乗車。すぐ前はジャンプして右ペダルとサドルに同時に乗っかるフライングマウントを駆使する。エリートレース上がりかな? すぐに数m差を付けられる。エリートではこの差により入れる集団が変わりかねず、致命的ミスとなりうるが、エイジでは気にしない。

乗車方法がなんであれ、僕以外の男子選手は、シューズに足を入れた後の加速がすばらしく、あっという間に消えてゆく。こちら写真はおそらくそのあたり、速いなー、と前を見てる。

12028749_890500170985564_3572075190Posted by (公社)日本トライアスロン連合 JTU on 2015年9月19日

時折、後ろからゴーーーとディスクホイールの振動音がやってきて、くるな、と思うやいなや結構な速度差で抜かれ、抜かれた、と思ったらもう離されている。そうゆう抜かれ方を3分置きくらいで次々と。ほとんど1人づつ、たまたま2人重なった雰囲気のはあるが、集団ではない。3分後の後続ウェーブからの追い抜きも多いだろう。

こういう経験、海外レースならでは。せっかくなので、離れてから視界に入っているうちに、ペダリングのタイミングを合わせてみたり。長い脚のわりには短めのクランクで、浅めのヒザの曲げで、90回転/分くらいしてる感じ。自分の回転数表示はDHポジションでは見えないので、テキトーな数字だけど。ほーなるほど、と思うまもなく、すぐに視界から消えてゆく。追い抜けるのは、女性か高齢カテゴリのみ。

国内レースでしつこく問題になるバイクのドラフティングは、彼らレベルの走力があれば、自分がされることは、まずないだろう。

斬新な地下通路コースは、直線基調だけど、方向転換は立体的で、坂を上り下りしながら90°や180°ターンをする。地下迷路っぽくもあり、1周めは方向感覚が全く掴めなかった。DHバーに巻き付けたGarmin310の距離表示は、目から近すぎて見えず、あっと気づけば前半終了。

Bike前半終了時点の順位はこちら:
20150928_32158

右端はBike1周目のタイム。この数字が意味するものは明白で、

  • 優勝者は25分台
  • 2-3位は26分台
  • 4−6位が27分台
このように、Bike力が総合結果に大きく影響するのがトライアスロンだ。

僕は12名に抜かれて30位。3分近くに1人づつ抜かれた形だ。1位と僕とは3分差、100m毎にほぼ1秒差、もしくは10m差だ。もしくは、1割の速度差。こっちが平均38kmhなら相手は42kmh。

後半、上位は無いな、という悟り?が入る。さらに悪い事に、回転を上げるのか、トルク上げるのか、方針が定まらない。これら心的な問題を引きづったままでなんとなく過ぎ、Bike終了。

周回タイムはさらに1分25秒落ち、8人に抜かれて38位、 タイム落ちて順位減少が抑えられたのは、もう抜かれるような速い相手は先に行ってしまったからだ。。

20150928_32407

上位組は2週目でもタイム一定か、むしろ伸ばしている。強い人たちってそうだ。2周目ラップは1位と4:23、速度差15%にもなる。スローサイクリングだ。2-3位と4分ちょっと差。

Bike Finishタイムは、1位Harmsさんは後続と2:43差をつけたぶっちぎり、バイク通過の2-3位が6秒差、14秒空けて5人が5秒間にかたまる。1秒10mを超える平均速度なので、きっちりドラフティングルールを守る距離で進行し、計測ライン通過が固まった形かと思う。バイクマーシャルも多かったし。KONAで観られるような光景かな。とはいえ追い抜きのタイミングでの加速効果があり、こうゆう合法集団は有利。

2周目ラップの順も、最終ゴールでの順位とほぼ一致するのは、先に書いた通りだ。

<3つの考察>

1つめ。2年前と同じことを考える。世界レベルで戦うなら、バイクは根本から見直す必要がある。

まずはリミッターを外すことから、ではないだろうか。

僕の場合、国内レースの感覚から、「これくらいの練習をしとけばこれくらいの成績が」という練習の相場観のようなものが出来ていて、脳と身体に染みこんでいるはずだ。それは安定した成績を生む一方で、ある種の安心感、コンフォートゾーン化している面もあるかもしれない。

今後、このレベルを再び目指す時に、それを捨てることが、まず必要なのかもしれない。

レース中に感じたポジション設定の問題などは、その過程の中で、自ずと見出されるものだろう。

2つめ。一方で、スイムを上位で上がることのメリットも実感する。特にバイクに弱みがあるトライアスリートにとって、バイク強者にスイム先行されてしまえばゲーム終了だが、追い付かれるなら、まだ勝機が残る。

とはいえ、今回の4−6位は、2-3位に対してスイム先行し、バイクもほぼ同時ゴールしながら最後のラン勝負では、バイク強者に負けた。つまり、バイク力はラン力を含む。それが3つめだ。

2度あることは3度ある。間違いなく。そのために、三度目の正直という言葉が存在する。笑

・・・おしらせ・・・

今読んでる本→←「筋膜」活用という凄い発見あり!また書きます

次に読む予定→

ウェアは2ピースが絶対良いです(僕のはルールによるので)ゼロディが安いのは多分いまのうち

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『覚醒せよ、わが身体。〜トライアスリートのエスノグラフィー』

  • 初著作 2017年9月発売

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