« 真夏の耐久スポーツ2 〜対暑トレーニングは「100分以内」 | トップページ | 真夏の耐久スポーツ4 〜「熱中症ビジネス」に騙されない? 補給製品の選び方 »

2015年7月14日 (火)

真夏の耐久スポーツ3 【一発ビジュアル理解!】 低Na・脱水・熱中症の関係

2つ前に書いた「低Na症・脱水・熱中症」の3者の関係を、図に描いてみた。こんなのブログ開設以来初の大サービスw。まあ単純な理解ではあるけど、レースやトレーニングで本当に使える科学知識とは、シンプルなもの。レース中なんて小学2年生の計算すらおぼつかないから、正確厳密なものほど無意味なのだ。

この図では、1)体内の水分量は多いか少ないか、2)塩=Na量は、という2つの軸により、「今、自分はどの区画にいるのか?」を直感的につかむ仕組みだ。昨日Facebookで議論しながら思いついたばかりのアイデアなので、修正点などご指摘くださいな。

1
すると3つの関連症状は、以下の位置づけで理解できる:
  • 低Na症 ・・・上図の斜め左上。体内の「比率」として、水たくさん(※NHK「あまちゃん」のではない)&塩すくない、という状態。体内Na(=塩)比率は正常の0.9%よりも下がっている
  • 脱水・・・ 図の下側。水の体内での「絶対量」が少ない状態
  • 熱中症・・・ 本来はどちらとも無関係に、身体に熱がこもった状態。ただし、脱水により汗の冷却機能が落ちることで起こりやすくなる(だからTVニュースでは脱水とセットで説明される)
各症状の発生メカニズムは順に:
  1. 発汗により、まず水から減る。なぜなら、汗のNa濃度は0.05〜0.5%、身体全体のNa比率0.9%より常に低いので、汗が出るほど、身体の水分比率が減る=Na比率が高まるから。よって、はじめのうちは、塩を残しながら水が減る 
  2. こうして脱水が進んでゆく。すると体内Na比率が高まっていき、それを低下させるために、汗のNa比率が高まる。この時ウェアは「塩を吹いた」状態だろう。こうしたバランスを常に維持しようとする作用が、「恒常性=ホメオスタシス」だ。暑いほど汗そのものも出続けるので、トータルでのNa排出量が増えて、「水とNaの同時不足」へと進んでゆく
  3. だからといって水をガブガブ飲んでいると、Na量は減る中で水量が増えるため、Na比率が低すぎる「低Na症」になる
  4. 低すぎるNa比率を、水を排出することで戻そうとする → 汗が大量に出る(事例報告あり)など体内の水の絶対量が減り、やはり「水とNaの同時不足」へ
そして、「水とNaの同時喪失」は、発汗量の大幅減少につながる。暑さの中でそれが起きている場合、体温の急上昇=熱中症を招く。ただしそれは、「そうなる場合が多い」というだけの話で、冷却ができていれば起き得ないので、直接の関連性ではない。(だから5.という番号はふらなかった)
 
同様の図で、「対策」も理解できるだろう。  
2
上図と同じ順に:
  1. 体内にNa貯蔵が十分なうちは、水お茶ジュースを美味しく楽しく飲んでれば十分 (発汗初期のNa濃度の低さとも関係=後述)
  2. 脱水が進んでゆくと、上記2の結果、体内のNa貯蔵も枯渇へ向かうため、Na濃度が高いOS-1などにより、水とNaの同時補給が必要となる
  3. 低Na症なら、水を断つことで、体内Na比率を上げる
  4. 脱水と低Naが同時進行していると、その程度により、0.9%生理食塩水、さらには3%高濃度水(=て海水そのもの! )により治療される。それは病院で、かもしれないね
ここで、補給すべき水分のNa濃度は、発汗の進行と共に上昇する。汗のNa濃度は個人差・状況差が大きく、0.05-0.5%くらいの幅がある。発汗が進むほど「体内Na比率」が上昇し、それを下げるために「汗のNa比率」が高まる。それに見合った濃度の水を飲むべきだ:
  • 始めのうちは、ただの水や、ポカリスエットのNa濃度でも十分
  • 発汗が進むと、トータルでのNa損失も拡大し、0.3%の 「OS-1」などが美味しく感じるようになる。このとき多分ほぼ脱水手前レベルだ。身体は、必要とするものを美味しいと感じるものだ
  • 低Na発症後は、海水濃度の3%水が効くそうだ。切実に塩がいる状況で、母なる海水レベルまで先祖返りしちゃう
  • もっとヤバくなると、マジで先祖そのものになっちゃうかも
「熱中症」への対策はこれらとは別で、身体を覆い水を掛け、気化し続ければいい。 
以上、2つ前に書いた話のおさらいだ 。理解できてました?
 
なお、ここでの「塩」は、カリウム、マグネシウムなど微量ミネラルも含む概念と捉えてもいいだろう。つまり、水とミネラル群の話であり、ミネラル群の中で圧倒的に重要なのががナトリウム、という理解だ。
 
ここで1つ強調しておきたいのは、冒頭に書いた、今自分はどこにいるのか? ということ。
 
僕が2つ前に書いたのを表面的に受け取ると、「あんまり水は飲まなくてもいい」という短絡的結論をとりかねない。しかし実際トライアスロンは、身体の極限状態を長時間維持する危険なもの。計算通りにいかないことも多い。さらに、その計算そのものが間違っていることもある。医学の限界を僕らは受け容れるべきだが、特にこの分野は、競技自体の歴史も、参加人数も、また研究資金も、薄い。
だから、「・・・すれば十分」という発想は、実はとても危険なのだ。せめて、その選択によって新たな発生するリスクには、気をつけるべきだ。
LUMINA誌でも 「あまり水を飲まなくていい」というトーンで書かれていた。おそらく情報源は僕のと共通するアメリカの学会論文。僕自身もその方向でレースしているのは書いた通りだけど、僕らが本当に理解すべきは、
 
「飲み過ぎによる低Na症を避けることは大事。ただしそれは、上図の斜め左上に限った話で、下側に入っていけば別。そして塩と冷却も大事」
 
ということ。ややこしーよねー! でも真実は常に複雑なもの。だから僕のブログは、いつも長く、また難しくもなる。それだけの説明が必要だと思うからね。その理解の上に立って、よりシンプルな視点を持つ。その結論だけではダメ。
 
かくして僕らは、科学の成果は知りつつも、自分の体感を最後は信じるしかない。
それは、「自分だけの教科書」を、自分の身体に書き込んでゆくということだ。
 
少なくともこの件に関しては、LUMINAさんより僕、いや、「チームぼくたち」のほうが、よっぽど「使える」だろう。ぼくらチームの戦闘力の高さを、読者のみなさんは信じてもらって構わない、微笑。
とはいえ長いブログ、 夜おうちでゆっくりと、キリっと冷えた炭酸水にレモンでも混ぜて、あるいは麦の発酵液などと共に、楽しみくださいな。

« 真夏の耐久スポーツ2 〜対暑トレーニングは「100分以内」 | トップページ | 真夏の耐久スポーツ4 〜「熱中症ビジネス」に騙されない? 補給製品の選び方 »

◆** 耐久スポーツの暑さ対策」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 真夏の耐久スポーツ2 〜対暑トレーニングは「100分以内」 | トップページ | 真夏の耐久スポーツ4 〜「熱中症ビジネス」に騙されない? 補給製品の選び方 »

フォト

全て公開設定

おかいもの

Blogランキング

無料ブログはココログ