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2015年7月21日 (火)

死の危険も招く「過呼吸」の誤解と対策、そしてトレーニング意識について

トライアスロンは、国内30年ちょっとの歴史の中で、毎年平均1名の大会中の死亡事故が起きてきた。大多数はスイム中だ。今年は既に5名が水死、ちょっと多過ぎる。さらに僕が目にしたニュースだけで2件の危険な救出事案があり、うち1つは館山で僕の目の前をタンカで心臓圧迫マッサージをされながら運ばれていった。翌日には無事に回復したようでよかったけれど。

なおアメリカでは2011年に12件のトライアスロン中の死亡事故、とのブログ記事がある→ 「〜トライアスロン中の死亡事故に関して、アメリカでの話〜」 また国内マラソン大会では年間37名もの心肺停止が報告されている。

オトコが4-50代にもなれば、ゴルフでも心臓発作死し始めるわけで、加齢とともに自然に高まる健康リスクを、トライアスロン、とりわけスイムパートは「大きく増幅する」のは間違いない。

JTU医科学担当チームでも、情報収集と分析はしているが、個々の原因はわからないケースが多いとのこと。つまり犠牲者の方が、「練習不足、睡眠不足、前日飲酒、当日の無理」等々の落ち度があったかも、わからない。軽々しく自己責任論を語れるものではないのだ(一部で目につくけど)。確かに言えることは、一人ひとりが、正しい医学知識を持ち、リスク要因を徹底回避すること、に尽きる。リスクはゼロにはならないが、極小化を目指すことなら出来る。

奥井識仁医師のコラム「水泳中の突然死」 (2012年か?)は、原因となりうるものを整理される。昨日Facebookで紹介して過去最高いいね500超の反響。JTUサイトには2002年頃から同様の内容が載っており、標準的な見解だろう。このレベルの知識は、参加者全員が持つべきだ。

 

<「過換気」がもたらす「過呼吸」>

特に、5.の「過換気」=スタート前の深呼吸禁止は、知らない人が多い。もちろんスイムに限らない話だ。

ただ、説明が医学的で難しいので、まずはNHK「ためしてガッテン」サイトを読むといい。

過呼吸は激しい呼吸を繰り返すうちに血液中の二酸化炭素が不足してしまう状態。二酸化炭素は体にとって必要不可欠な物質で、不足すると頭痛、めまい、手のしびれ、筋肉の硬直などの症状が現われ、最悪の場合は心肺停止することもあるのです。
この二酸化炭素不足を解消するために、脳の延髄は呼吸そのものを止める命令を出し、二酸化炭素の放出を食い止めようとします。しかし、私たちの意識を司る大脳皮質は逆に息苦しさを感じて呼吸を続けようとする・・・これが過呼吸の状態です。
 
つまり、レース前に深呼吸を早いペースで繰り返すと、Co2濃度を下げ過ぎ、「過呼吸」のリスクを高める。
 
Co2濃度が下がると、苦しいと感じるまでの時間が延び、「息を止められる時間」なら延びる。ただし運動能力は上がらない。ここが勘違いのもとだ。蓄積酸素は6秒間しか運動効果がもたないので、耐久レースで行う意味は全くないのだ。呼吸で無理がきくと、突然の意識消失を起こしやすい。
 
これ私中学3年の時にプールで経験あり。水泳部を引退して2週くらいあとに、潜水75mにチャレンジして、50mのターンをしてそろそろ息が苦しくなってきたなあと思って、その次に気付いたら顧問教師が捕まえて水面に引き上げられていた。水中でバタバタし始めたらしいが、その記憶はない!
 
これ本当に直前までは苦しくなく、突然に意識消失が来た。「気がついたら意識消失」、と書きたい感じだけどそれは言葉の矛盾というものでw。水面に引き上げられたことで意識がふっともっどた感じ。
 
そもそも引退後に無謀であることはおいといて、、このイベントはみんな注目してて、即救助体制がある中でのこと。逆に言えば、この状況で、自分から助けを求めることは不可能だ。
 
これは極端な例だとしても、スイム初期に頑張りすぎて、脳が低酸素のまま、酔ったような気分で泳ぎ続けるケースは十分起こりうる。

またスタート後でも、後発の速い集団に抜かれたり、うねりがでてきたり、またそれが岸から離れて水深も深くなってるのに気付いて、後から呼吸過剰を起こすケースもあるだろう。

 
<過呼吸への対応>
過呼吸の原因は「二酸化炭素=Co2不足」であり、「酸素の過剰」ではないから、もし起きたら、袋を口に当てて呼吸制限するようなことは無意味で、窒息死の危険すらあるのは、ガッテンに書かれてるとおりだ。でも、こんな致命的に重要なことは知られておらず、僕が今年本人から聞いた例だけで、2名が間違った対応をしていた。しかもふたりともかなりの実力者だ。
一般的には、ゆっくり落ち着いて呼吸していれば、自然と戻る。なので、水中でもそうすればいい。トライアスリートに向けた奥井医師の推奨も、「スイムでの呼吸技術の向上」だ。
 
「クロールなら、左右両方で呼吸できるようにすることや、首をあげて呼吸ができる技術をみにつけてください。」

落ち着いて、ゆっくり呼吸をすること。それがレース中に出来るような「呼吸技術」を持つこと。

これは、「がんばることでタイムを上げる」というトライアスリートに多い練習法では、身につきにくい。「がんばらなくても楽に速く(=ほどほどに)進む」という技術重視のスイム練習が必要なのだ。

そしてそれは、他のリスク要因の対策にも効果があるだろう。原因が過呼吸ではないトラブルでも、落ち着いて息ができるだけで、和らぐものは多いだろうから。そして、速さ自体の追求にも。

 

<「錐体内出血」による「平衡失調」>

もう1つ注意すべき原因がこれ。呼吸の際に誤って鼻から水を吸い込み、吸い込んだ水が耳管の中で行き来して、圧変化により内耳の中にある錐体内に出血を起こし、平衡失調を起こすもの。これ自体で死ぬわけではないが、水中では泳げなくなってしまう。これは泳力に関係がない。(実際には、泳力のある人は、呼吸で鼻から水を吸い込むことはまず無いが)

また、冷水を気管内に吸引してしまうと、迷走神経反射で心拍数が低下し、意識消失につながる。これは過呼吸による「ノーパニック症候群」でも同様。
 
これも、呼吸技術の徹底によって防ぐものだ。
 
 
<アルコールと睡眠> 
酒を飲める体質の場合、ビール1-2本なら翌日に残らない、という人は少なからずいるだろう。僕もそうだ。でもこの場合に考えるべきは、睡眠の質を落とすこと。
 
眠れないからと酒を飲むのは、少量ならともかく、神経を麻痺させて意識を失わせるようなもので、寝たつもりになっていても、脳が休まっていない。
逆に、眠れないつもりでも、目を閉じて暗いところでじっと横になっていれば、レースに必要な休息は十分に取れる。これは瀬古利彦さんはじめ、ランニング系の情報源に幾つもでていると思う。
 
ただ、レース前夜に、睡眠不足の蓄積を持ち込んでしまうと、そうもいかない。そこで直前週からアルコールを控えることで、睡眠の質を維持し、コンディションを保つことも有効だろう。特に忙しい人の場合には。
 
 
<実戦的な対応: スタートで無理をしない>
レース中の対応としては、落ち着いてスタートすれば、たとえバトルになったとしても、より安全になるだろう。
 
本来バトルとは、ぶつりかりはするが、それでスピードを落とすことなく(ドラフティング効果でひっぱってもらえているはずだし)、自分の泳ぎができるべきだ。スイム上位でのバトルはそうゆうもの(僕が体験した限りでは)。それが出来るのは、それぞれが姿勢制御技術が高いから。
 
それが出来る技術がないのに、スイムバトルの中にいるのは、本来は極めて不合理なはず。当たり前で仕方ないものという認識があれば、改めたほうがいい。バトル自体が問題なのではない。その中での各人の認識と行動が問題なのだ。
 
そして、みんながそうゆう行動を取れば、バトル自体も沈静化される。
 
<対応2: 練習を変える>

  • 脱力してきちんと浮ける
  • 弱い力でも水を確実に捕まえれる
  • 姿勢を制御できる
等々が大事なわけだ。これらの基礎技術にたって、いろいろな状況下で落ち着いて呼吸できるようになる。

つまり、トライアスリートはまず「フォーミング」=ゆっくりと綺麗な姿勢で泳ぐ技術を、まっさきに身につけるべきだ。バイクやランのように、心拍数を上げて距離を稼ぐような練習は、レース直前2ヶ月で十分。でも、そればかりしている人も多いのではないだろうか?
これは、少なからぬトライアスリートにとって、大きな意識展開になるだろう。たぶん「自分が思うほど出来ていない」ものになる。
 
そして、スタート時を想定したダッシュ錬も必要。上記と矛盾するようだけど、練習では最悪のハードさを想定し、本番は最良のリラックスで。
 
 
<ちなみに奥井医師>
趣味が嵩じて健康ウォーキング、ランニング等々の本まで出す、スポーツ医学に通じた婦人科医さん。「15分間の速歩き」は、運動習慣のない人は本当にやるべきだ。また、糖質制限で痩せたい人は、原始人=パレオ式ダイエットがいいと思う。
 
<スイム技術>
今後しばらく、スイム中心に書いていこうと思う。OWS実戦テクなど次あたり。
20150715_143229
ところで、この撮影時に履いてたのはたしか20年前(笑)からのellesse(さらに笑?)。もさっとしてる(失笑)
ただいま最新のフランスZ3R0D-ゼロディ社のものに切り替えた。かっこいい!
 やはり2016五輪のブラジル!
 
なお次回の代々木プール練習会は7/26(日)午前、初の日曜都心開催。

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コメント

26日の練習会、都合がつけば参加させていただきたいと考えていますが、初参加でも可能でしょうか?

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