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2014年10月20日 (月)

〈移転&再掲レポート1〉 ニールプライドBAYAMO2013 「本気でKONAを目指す方へ」 

NEIPPRYDEの国内代理店が今秋、トライスポーツから変更され、僕が去年寄稿した文も消えてしまった。この週末も以前読まれた方から質問いただいたばかりで、1年経ってもそれほど考えは変わってないので、ここに復活させておく。横風に対するスリムなフレームの優位性はより確信してもいるし。(たとえばCANNONDALEの最新SLICEやDimondのブーメランみたいなのは良さそうだけど、人気TTフレームの幾つかはどうかと思う。最新の機材流行の一部は、ちょっと行き過ぎているような気さえするよ)

以下、同内容で再掲します。

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ニールプライドBAYAMOレポート 「本気でKONAを目指す方へ」

アイアンマン世界選手権2013日本人総合4/Bike3位 ハッタリくん(??)

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こんな熱気を、私は今まで経験した記憶がない。IRONMAN World Championship/アイアンマン世界選手権。競技としてのトライアスロンの実質的な起源であり、今も最高峰であり続けている「聖地」だ。20131012日、ハワイ島西岸KONA。延べ約6万人が参加したという予選を勝ち抜いた約2,000名と共に走った。自身初のアイアンマンレースだ。ハワイ島の美しく荒々しい大自然の中で、世界中から集まったトライアスリートに囲まれ、自分の力の弱さを圧倒的に突き付けられる。同時に、ささやかながらも自分の強さを感じることもできた。私は今まで、このために走ってきたのだと思った。

まずはKONA出場を目標としている方々に言いたい。それだけの価値があると。そして、私が感じた、アイアンマンレースを戦う条件、とりわけKONAで求められる要素とは何か、参加者は何を準備すべきか、その中で器材はどうあるべきか、説明しようと思う。

 

結論の1つを先に書くと、BAYAMOは、KONAに向いている。事実、この2013年大会バイクパートの日本人1位と3位とがBAYAMOだった。その空力、ポジション設定の幅広さ、さらにメンテナンス性が、力強く私を助けてくれた。

 

<レ−ス結果>

  • Total226km 9:35:33 総合311(参加2134)/ 40-44男子カテゴリ39(305)/日本人総合4位(59名)
  • Swim 3.9km 1:00:19  総合300/部門41位(日本人7位)
  • Bike 180km  5:07:23 通過順位総合493/部門89位(日本人3位)
  •  Run 42km   3:21:57(日本人7位)

初アイアンマンで、このタイム、カテゴリ順位もほぼ上位1割という成績は、今の私にできるほぼ最高のものだと思う。

 

<使用器材>

  • フレーム;ニールプライドBAYAMO2013Sサイズ なお私は身長165cm股下忘れた)
  • コンポ: アルテグラ主体のDi2。スイッチ付ブレーキ・167.5mmクランク・スプロケはDura
  • ホイール:BORA-One(ハブをセラミック化) 
  • 歯数: 前55/44、後11-27(たぶん)
  • タイヤ; ビットリアCORSA+コンチネンタルGP
  • サドル: ISM(種類忘れた)
  • TTハンドル: TNI
  • バーテープ: スペシャライズド厚型・ジェルパッド付き(廃版商品)
  • ボトルケージ: スペシャライズドZケージ(横入れ式)DHバーの間にタイラップ留めで右入れボトル1、サドル後ろにXLABアルミ製マウントで左右1つづつ
  • パンク修理:チューブラータイヤとCO2ボンベ2本、サドル下にテープで巻き付け(ただし、エイドやメカニック車でも修理可能なため、応急処置用のシーラント剤で十分。飛行機輸送できる。ちなみにCO2ボンベは空輸できないので現地購入。レース後、購入店で買い物をする際に同額分の値引きをしてくれるので、損はしない)

ちなみにホイールを除く合計金額は、他社ハイエンドTTフレーム単体価格程度だ。

 

<補給>

前の主ボトルには現地で多数タダでもらったジェルから10本を選んで、水に溶かす。1,000Kcalと珈琲12杯分のカフェインを含むエネルギーの塊で、バイク後半にガツンと投入予定。結果的には、もう5本余分に入れておけばよかったと思う。ジェルはエイドでも貰えるが、ドリンクと水を走りながら取ると他のものを取る余裕はない。

後ろ2つはエイドのボトル保管用。ペットボトルだがケージに合わせた太さなのでそのまま入れられる(少し緩く段差では落ちる)。よって自前のボトルに入替える必要はない。スタート時は現地でもらったペットボトルを入れておいた。

フレームに何も付けないのは、横風を考慮してのこと。

つまり合計3本のボトルケージで十分で、それ以外にストレージケースの類いは不要。(ただし固形物がどうしても食べたい方は別だろうが)

 

<バイクの輸送と組み立て>

初の海外輪行のため、事前にネットや店舗で入念に情報収集した結果、「ママチャリ用段ボール」が最強、という結論に達した。近所の自転車屋で2つ貰い、1つを衝撃吸収専用として布製テープでベタベタに加工し、さらに衝撃吸収ビニール(もちろん貰い物)で巻いて、無傷で輸送できた。段ボールは途中で穴が空いたりするので、トランジットごとに補強してゆく手間を惜しんではいけない。カートの使えない場所ではズルズルと押すこともあるので、底の補強も重要だ。

なお現地でこの方式は私だけで、皆専用ケースを使っていた。やはりKONAではみなさん飛行機慣れしているというか、お金を掛けているというか。

梱包時、バイクは分解箇所を事前にマーキングしておく。ただ実際には、組み立て時に微妙なズレは発生する。また現地でコースを走って修正したくなる場合もあるだろう。できる限り、そのコースを想定したポジション設定を事前にしておくこと、なにより現地での試走・調整の時間を十分に確保することがキモだ。

今回、私はレース7日前に日本人一番乗りで現地入りできたのだが、主戦場Queen-Kの試走が3日前にずれ込んだ。初の海外で高速道路に出るのは怖かった。実際には、一度仕組みがわかれば、1車線分以上の広さのある路側帯があり、日本よりずっと安心・安全だ。

下り直線の高速巡航下では、強烈な横風は噂通りの恐怖を感じた。重心を低く、後ろに変えようとしたのだが、十分に対応するには、1日以上足りなかった。

走行中の写真をみれば、サドルが高すぎるのがわかるだろう。

 

TTバイクのメンテナンス性>

こんな時、「自分で分解、組み立て可能な、汎用性の高いバイク」であることにメリットがある。最近流行の特殊なブレーキやステムを組み込んだものは、基本的な分解・組立すら自分で作業できない場合があって、隠れたリスク要因なのだ。現地のショップに十分な余裕を持って依頼できればよいのだが、そこに不安を持つのならば、汎用部品のみで構成されるBAYAMOは現実的な選択肢となる。

ちなみに私が組立時にペダルを左右逆に付けようとして1時間費やしたのは、基本知識が足りないせいで、器材のせいではない。

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<当日朝の準備>

午前2時半(日本の夜9時半)過ぎに自然起床し、パンをトースターで焼いていると、コンドミニアムの火災報知機が誤作動して凄まじい音が響く。リセットボタンを押すが、しつこく、電池も外す。これで完全覚醒。ボトルを用意して冷蔵庫に入れ、4:40家を出て、約1km先の受付へ。ゴール時の安全確認用の計量があり、62.9kg、重さ十分。しかしマーキングのシールを触って剥がしてしまい20分余計にかかり余裕をなくす。6:20に再び会場へ向かう際にボトルを冷蔵庫に忘れ、10分ちょっと走って往復するが、会場手前は観衆の人波で前へ進めない!「アスリート!」と叫びながら柵を超えて無人のコース内を走り、18:42トランジットへ。ボトルをはめながら叫んでボランティアさんにポンプを持ってきてもらい空気を入れる。スタート13分前、無事スイムスタートへ。

このように、当日のウォーミングアップは非常に充実していた。

 

<レース開始>

スイムは2列目からバトル無くスタートし、ゴールまで良い位置を保つことができた。KONAのスイムはさすがに皆レベルが高い。実力相応〜ちょっと上の集団に付くことで、実力以上のタイムを出せる。またスイムのタイム差は総合タイムにはそれほど影響せず、カテゴリ入賞者は私より3分くらい遅い人が目立つ。

バイクスタートでは、乗車時にサドル後ろのボトルを蹴飛ばして拾ったり、フラついて後ろから怒られたり、うまくシューズを履けなかったり、いつも通りのトラブルに見舞われた。でもショートレースと違い、この程度のロスは全く問題ではないので、落ち着いてケガなく走りだせばよい。といって、どうしても結構殺気立ってしまうものだが。僕の初KONAかつ初アイアンマン、周囲を慎重に観察しながら走る。

 

<上り:パワーの差>

いきなりパレード区間の上りで、欧米人との力の差を突き付けられる。デカいが登れるのは、つまり圧倒的にパワーが高いからだ。

前半は追い風なので、空力の要素はより少なく、パワー要素はより大きい。その後も、緩やかな上りの中で、次々と抜かれてゆく。速度差が大きいから「20秒以内にドラフティングゾーンから離れる」なんて心配する必要もないくらいだ。とはいえ、この最高峰の厳しさが、一度出た者の心を掴んで離さない魅力なのだと思う。 

起伏が+ーゼロに近い45マイル地点では総合277位に順位を上げたものの、上り基調の60マイル地点では、394位まで落ちる。この数字が、上りで露呈する僕のパワー不足を示す。

国内エイジレースではバイクで抜かれること自体が珍しい私だが、まったくレベルが違う。KONAで日本人が戦うには、国内バイクパートでは圧勝できるレベルのバイク力が必要だと体感した。

 

<下り:空力の勝負>

しかし私は下りに強いらしいことが、わかってきた。起伏が続く中で、上りでの遅れを、下りで取り戻し続ける。後半は下り基調で、54×11の最重ギアが数十分間か活躍する。向かい風も吹いてきた。空気抵抗が低いほど有利だ。僕は徐々に前に出てゆく。

僕のバイクの特徴は、高い空力と、まあまあのパワーとを両立させていることだと思う。周囲の欧米人より、頭1つ以上の低さで走り続けることができる。窮屈そうな低い姿勢の割に、背中のバネなど全身をそれなりに使えているつもり。そのフォームを獲得するために、トレーニング時から微妙なポジション調整を繰り返してきた。

ここでは、BAYAMOのヘッドの低さや幅広いサイズ展開が効いている。先述のメンテナンス性も、トレーニング時からの柔軟なポジション調整を妨げない要素として挙げられるだろう。エアロ性能に関して、最も重要なのはこうした人的・技術的要素だと思う。

正直なところ、BAYAMOが謳うフレームの空力性能は、また他社ハイエンド車の特殊ブレーキやステムの空力性能も、私が判断できる範囲を超える。自分が実際に感じ考えたわけではないことを「・・・だろう」と語るのは無責任というものだ。結局のところ私が伝えられるのは、「下りで私は最新ハイエンドTTバイクに乗る欧米選手より速かった」、という事実だけかもしれない。

ただ残念なことに、後半は電解質不足とポジションの無理のため、モモが痙攣寸前な状態が長く続き、そこで力を出し切れなかった。まあ結果を見ると、上手く乗り切ることができたと言えそうだけれど。

 

<横風:空力+姿勢保持の力>

KONAでは、横風でDHポジションを取り続けられるか、が大きな空力の差を生む。その影響度は小さなエアロパーツよりも遥かに大きいことは、風を受ける面積の違いから容易に理解できるだろう。

そのために、横面積が小さいこと自体に、大きな空力効果があるはずだ。これは、とりわけ筋力が欧米人より劣る日本人アマチュアが意識すべきように思う。ツール・ド・フランスやTT世界選手権で優勝を争うトッププロは平坦を時速55km以上で巡航する。空気抵抗は合成の法則により前方向から受けるため、細長いチューブが有利だろう。強い横風を受けても姿勢保持できるだけの強い筋力と乗車技術(私には片手ウイリーなんて絶対無理)もあるだろう。私のような普通の日本人とは前提条件が違う。

私がボトルケージをフレームに付けないのも、ストレージ類を付けないのも、横面積を減らすためだ。横から見れば、DHバー間のボトルは腕で隠れ、サドル後ろの2本は1本分の面積で済む。

Bayamoのスリムなフレームの意味が見えてくるのではないだろうか。

 

<パワー管理の差>

パワーメーターは今年のエイジ参加者の34%もが使用していたという。その割合は上位ほど高いはずで、僕の周りでは、3人いれば1人以上が使っていた計算だ。トップ選手はパワー値を見ながらレース全体での出力の変動幅を3%以内に抑えるという。私は初アイアンマンであることもあるが、ペース配分を掴むのに苦労した。起伏と風の影響を受けるKONAで、欧米選手がただでさえ高いパワーを出力を数値化し、均質に発揮し続けられたら、私などが戦えるわけがない。上位を争うならばパワーメーターは必須になりつつあると思う。

 

<快適性>

ロングレースでは快適性がとても重要だ。今回はじめてバーテープを薄手から厚手に変え、底に衝撃吸収ジェルも貼ることで、DHポジションの維持も、ブラケットポジションも、格段に楽になった。またISMサドルは180kmを最後まで一切のストレス無く座り続けることができた。

 

<器材要件のまとめ>

「限られた予算内で、KONAで戦う」ことを目指す場合のバランスが、これで見えてくるのではないだろうか。

「横風を考慮したスリムな標準パーツ使用フレーム+パワーメーター」だ。他の最高価格帯フレームとの差額で、パワーメータを買ってお釣りが来るのがBayamoだ。

なお変速は、直線が続くKONAでは手動変速でも問題ないだろう。ただし予選突破のためには電動変速のメリットは大きいだろう。

 

<最後に>

2013シーズンの年初の目標は、JTUエイジランキングのカテゴリ3連覇と、アイアンマン世界選手権出場だった。第一の目標は、最高ポイントが与えられる526日の天草大会での総合優勝が決定打となって達成できた。第二の目標は天草の2週後、自身初のハーフアイアンマンであった6月セントレア常滑予選で出場権を獲得し、達成できた。そして辿り着いたKONAのゴールラインの上で、ほんのしばらくの間、立ちつくし、この3年半の全ては、この瞬間のためにあったのだと確信した。

子供の頃から運動が苦手だった私が、この競技の魅力にとりつかれて以来、思いもしなかった成績に恵まれてきた。正直それは、いつまで続くか、続けられるか、わからない。それが社会人にとってのトライアスロンというものだ。だからこそ、やれるときに全力でやりきりたい。だからこそ面白い「大人の遊び」なのだと思う。

・・・おしらせ・・・

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