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2009年2月 8日 (日)

野田秀樹、脱英国かぶれが生んだシンプルな怪作?「パイパー」観ました

資源も、人も、希望も、極限まで失くなった荒廃した世界を描く、野田秀樹の新作。

 

設定は1000年後の火星。

同時に、既におきた「歴史」の再現でもある。
資源を食い尽くして壮大な遺跡だけ残してて壊滅したマヤ文明のティカルやイースター島がそうだろう。
アメリカに新天地を見出す他なかった抑圧の国、アイルランド移民もそうかな?

そして今、現代世界のどこかで起きていること、でもある。
今ここ、かもしれないね。

野田秀樹いわく・・・  

「若い頃に書いていた神話的な世界のように、着地点を決めずに大風呂敷を広げた物語 ・・・ 海外上演や翻訳を考えない分、自由に書けた」 (朝日新聞 2009/1/19)

その結果を、橋爪功は

「最初は、『何をやっているんだろう』と思うが、それが全部つながって来る」 (読売 2009/1/7)

と語る。

 

そう、最初は、『何をやっているんだろう』と思う。

最初はシンプルに、軽い&寒いギャグを混ぜながら、ダラーっと進む。
斜め上のちょいビミョーな席なせいもあって、文字通り、斜に構えて「こっからどうする気だ?」と観下ろす少し覚めた僕がいる。

 

少しづつ背景が明かされ、説得力を増しながら、加速してゆく。

 

「シアワセ度指数」に一喜一憂して、現実を見ない、タカ&トシなら「金融か!」「証券化!」とツッコミ入れてきそうな社会。
過去をふりかえるだけで生きているような、未来への希望のない人たち。

・・・ これらを映像表現する演出テクニックは、さすがに一流のクリエーターの仕事だ。
劇場という1つの空間全体を、過去へと一瞬で移行させる、光の渦。
下がり続ける数字を「ある4ケタ」で止め、点滅させて、「一人ひとりの現実」へとギリギリねじ込んでくる。すごい力技だ。

心拍数が上がる。

ラスト近く、圧巻の言葉の世界。
見捨てられた世界で希望を求めて彷徨い歩く絶望感を、松たか子と宮沢りえがセリフだけで表現する。宮沢は絶望の極みを熱演。松たか子の台詞回しは凄く速いのに落ち着いていて、なにげに技を磨き上げているプロなんだと感心する。

橋爪功は、人間のいやらしさ、残酷さ、強さを、見事に表現してみせる。

これだけでも、観る価値があるかもしれない。

 

とはいえ・・・

強引にハンドルを切り返してねじ込んだハッピーエンドには、キャラメルボックスのような爽快感ゼロ!
ポカーンとした感じは残り、拍手にも力が入らない。。

 

野田秀樹、それをわかっていて、「確信犯」として投げつけているんだろう。そんなイヤらしさが、強烈に残る。戸惑う観客を傍から観察して、面白がってるはずだ。(実際、舞台上から客席の隅々をキョロキョロ見回したりする。それが俳優のやることかっ!)

チケット争奪に勝利して集まった観客は、その「共犯」なんではないだろうか?

 

(続く)

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