カテゴリー「◆* 長距離ランニングの技術」の15件の記事

2017年5月 6日 (土)

キプチョゲ2時間切りまであと26秒! NIKE ”Breaking2” プロジェクト

構想4年、僕の初の書店刊行本、『覚醒する身体 ー トライアスリートのエスノグラフィー』(仮題)夏に東京ハーベスト社より発行決まりました。待ってろ世界。
 
さてさて、本日昼にネット中継されたNIKEのフルマラソン2時間切りプロジェクト ”Breaking2” 、ほぼフル視聴。いきなりキプチョゲが2:00:25、2時間切りまで、あと1マイルあたり1秒をきってきた! もうあとは、時間の問題だろう。
↑ 動画は44:40あたりから開始。
 
<シューズ>
ランニング・クリール誌が現地取材している。その情報では、シューズ ”Vaperfry Elite” は「驚くほど軽く、手で曲げたくらいでは曲がらないほど、カーボンファイバーのプレートが硬い構造」だそう。
トップ選手には、アディダスの反発素材よりも、この剛性で攻めるほうが向いてると思う。そして、世の市民ランナーの99%以上は使いこなせないだろう。
 
またアーチ型のソール形状は、典型的なフォアフット走法での、前側一箇所の反発力で、シュ、と鋭く進ませる。トライアスリート人気の高いNewtonと形状的には似てるようでもあるけど、原理、想定するフォームは違いそうだ。
 
<エアロ効果>
もう一つの秘密兵器が、空力の最大活用。平均時速が20kmを超えるので明らかな効果があるはずだ。
 
ペース設定は電動のテスラ、ルーフに必要以上に巨大なタイム表示板を載せることで、中型トラック並の大きな空気の渦を作る。後方から大きく巻き込む流れに、背中から押されるようなポイントがあるはず。(おそらく、先導車との位置関係は、国際陸連が今後ルールを作ってくると思う。ちなみに自転車レースではたしか35m?とか空けるルール)
 
さらにペースメークのランナーが6人、「1-2-3」のフォーメーションでクサビを作り、空気を切り裂く。何人いるのかなとゼッケンNoを見ると、全員1−3、色だけ違う。色別に3人チームを作っての交代制だ。
チャレンジャーは3人、常にイン側を走るのは一人だけ赤ウェアのキプチョゲ、エース設定だ。大きなフォームが特徴のデシーサが背後につき、さらなるエアロ効果を狙う。(たしか、自転車では後ろについてもらったほうが、抵抗が減る)
結局、ランナーは「1-2-3-2-1」の流線型フォーメーションを作り、エースのキプチョゲを、空力的に最大アシストする。この人的アシストなら公認レースでも可能だ。
 
1つおもいついた、常時追い風のコースを選定する! ハワイ島北西岸の貿易風を受け続けるとか!笑
 
<キプチョゲ>
2016リオ王者、キプチョゲの安定感はハンパなく、前半は風のごとくスムーズ。負荷感がまったくみえない。
 
彼の走りは、前後軸でみた時に、後方への動作が大きく力強いと感じた。
上体をすこしだけ前に傾けて、前に倒れこむ位置エネルギーを常備させ、後方への腕振りで制御しながら、脚を大きく後方に投げ出してゆく。
上下動も活かしていて、体重が落ちる位置エネルギーを接地&キックと同期させ、推進力に活かしている。(※上下動がないのが理想の走りではない)
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25kmまではマイナス1秒。
25km〜35kmにかけ、5kmあたり4秒落ち。やはり90分を過ぎるあたりから、運動の質が変わってゆくのだろう。
35−40kmでさらに10秒ほど。ペースカーとの差も開き、アシストランナーも心配そうに後ろを振り返り声をかけて、苦しそうな現場感が映像からも見える。集音マイクで中継してほしかった!
最後は、軽やかさが失われ、重力に抗いながらもペースを保って、2:00:25。
あと1マイルあたり1秒を切ってきた(マラソンは26.2マイル)わけで、初チャレンジにしてこれだけ迫るのは、キプチョゲほぼ最高の結果といえるだろう。世界記録も2分以上を上回り(公認記録ではないが)、みんな嬉しそうだ。
 
<大きな一歩>
これで、みんな、いける!と確信を持ったはずだ。
キプチョゲ級の世界トップを3人揃えれば、次のチャレンジにでも2時間突破するだろう。
高速コースでのマラソンでも、できる、と自信を持って突っ込んでくる選手も出てくるはずだ。
 
運動生理学者が主導し、シューズもそれに合わせて用意されたようだけど、環境をコントロールしきった実験室のようなF1サーキットで実施したのも、このプロジェクトの大きな成功要因だろう。環境って大事だ。
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・・・ おしらせ ・・・
 
『渥美半島の風』第二号も発売開始。
昨年の創刊号が増刷&2,000部が売れた好評の地域誌です。今号は僕は書いてませんが、エッセイ集『潮の騒ぐを聴け』が出久根達郎氏に激賞 された小川雅魚編集長登場、しかも二本!!
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2017年2月 5日 (日)

フルマラソンでは堂々と歩け! 〜ある"ガラパゴス記事"へのツッコミ

※おことわり: 標題「ガラパゴス」とは、日本独自の発展を遂げたという意味であって、それ以上でもそれ以下でもございません。ちなみに僕はガラパゴス携帯の愛用者です。
※なお問題は雑誌自体ではなく特集記事なのでタイトル文言を変えました。批評は人格ではなく個々の行為に対するもの。
 
こちら人気ランニング雑誌の最新号特集: "フルマラソンは「最後まで歩かない」がホントの完走!"
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悪い予感は図書館で確認、的中した。"フルマラソンは歩いたら負け、痛みに耐えて走りきれ!"  てトーンの内容だ。これは危険であるのみならず、(日本以外の)世界では普通な技法「ラン&ウォーク」もしくは「ウォークブレイク」を、人気競技誌の編集部が知らないってことではないだろうか。 全6ページでの実質3つの記事ではあるが、誰もが目にする巻頭特集。"日本語の壁"が作り出したガラパゴス状況でなかろうか?
 
 
<歩いていい、ただし日本以外では> 
レース途中で歩くのは、名著『ギャロウェイのランニングブック』で、英語圏では1984年から説かれ、2002年の改訂版ではさらに重視されて、その日本語訳も2015年5月に出版された。日本人コーチが同様のことを書いた本も幾つもある。
トライアスロンでも、大御所Joe Friel先生もTwitterやブログで推奨しているし、他の記事でもよく見かける。少なくとも英語圏では常識といっていい。アイアンマン世界選手権KONA2015でも、圧勝したフロデノはランのエイドで歩いていた。フロデノはハワイの酷暑下で確実に身体を冷やしたいという理由で、毎回歩いているわけではないようだが、この根拠があったから歩けたといえる。
 
途中で歩くことのメリットは、こちら過去記事2つご参照:
エイドだけでも歩いて確実に補給しながら、筋肉をリラックス&リセットするのは、完走目的の初心者にこそ試してほしい方法だ。同時に、エイドの方にお礼を言うことも(やろうと思えば)でき、励ましの言葉も頂けたりもする。こうすることで精神的にもリラックスし、エネルギーをもらうことができる。
 
こうして心身と対話しながら余裕を持って進むことで、故障リスクを減らしながら、身体のポテンシャルを最大限に引き出すことができるだろう。
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<知ってて選んだのか、ただ知らないだけのか> 
念のため、個々人がこうした情報を踏まえつつも、「自分は最後まで歩かない」と決意し、レースで実行するのは、立派なことだ。自分自身で目標を決めて、達成することで、自分だけの勝利を得ることができる。それが市民耐久スポーツの魅力。
あるいは、一定スピードを維持した方が楽だという場合もある。特に2時間台のどこかで勝負しているレベルではこのタイプが多いだろう。たしか宮古島トライアスロン2016で二連覇の戸原選手は、蒸し暑さの中で確実にエイドを取ることを重視して歩きを入れていたけど、ちょっとリズムが崩れがちになると言っていた。こうゆうのは個々の、場面ごとの選択だ。
 
でもこっちは、不特定多数に向けた人気メディアでの特集だ。主要な選択肢は提示した上で、「それでも歩かないと、楽しみが深まるよ」という提案型アプローチなら構わない。しかしこの特集は、「他に選択肢のない絶対正義」という前提で書かれている。無知と精神論の融合であるのなら、なおさらタチが悪い。
 
この雑誌は、もっぱらカジュアル&ファンランナーが読者層かと思う。より速さを求め始めると、より理論を重視した別の人気雑誌などに行くと思う。こうした分担は良いことで、入門層に対して適切なガイドをするメディアの役割は大事だ。ここに優劣はない。
問題は、こうした初中級者層がこの根性我慢系アプローチをすると、故障確率が確実に上がることだ。頭で考えたことに身体の感覚を服従させるということであり、いわば "現場を無視した会議室の決定" になりかねない。
 
 
<ランニングの精神論> 
「キツい努力が報わることが多い」のは、耐久スポーツの1つの真実であり、また魅力でもある。なんらか精神的なものをそこに求めること自体は、よいことだ。正しい情報の中から選択されたものであるかぎりは。
ただし、「キツくすることで(安易に)達成感も高めることができる」という側面もあり、そこにハマると、怪我故障のリスクを大幅に高める。そのリスクが現実化するまでアクセルを踏みがちなので、発生確率はかなり高いのではないだろうか。もしくは精神的バーンアウトか。
 
伝統ランニング界は、こうした競技自体と関係ない部分での「こうあるべきだ」という教条的な縛りが強いように感じる。それは箱根駅伝にも表れていて、水の補給は1997年、スポーツドリンクは2016年にようやく提供が認められた。水からスポーツドリンクまで20年を要する謎の組織文化。年長世代の価値観を継承することを目的とした、ある種の宗教的情熱の産物だろうか?
同じランニングでも、新興のウルトラやトレイルはより自由だ。トライアスロンも同じく。これらは1970年代の自由な雰囲気の中で生まれ育った競技。コース設定がキツいこともあり、レース途中で歩くのも当然の戦術だ。なぜ42kmレースではそうではないのか? という説明は、歩かないことを呼びかける以上は必要だと思うのだが。その検討をしなくて済むほど、フルマラソン界の教条は強いということだろうか。
 
マラソン中心のランナー達にも、歩くという方法論を知った上で、それでも 「意地でも歩かない」という方は多いようだ。それは個々の自由なのは、先に書いた通りなんだけど。ただ、「ウォークブレイク党員」が「絶対歩かない党員」たちを後半に抜いてくことは、しばしばfacebookで報告いただいている。
 
例: 歩く勇気。ハーフマラソンで5回歩いたけれど、自己ベストを出した話  ("情報活用・プログラミング教育研究所"ブログ, 2016.04)
 
この時、歩かない党の方々は「歩かなければ彼らもっと速いのに」くらいに誤解してるのではないだろうか? 知らないことには、何も始まらない。
 
僕にとって耐久スポーツにおける努力とは、「あらゆる手を尽くして、最も速くゴールすること」に尽きる。歩かないのも、歩くのも、幾つでもある勝利のための選択肢の1つにすぎない。それがトライアスロンの複雑性。
 
 
<悪例> 
こちら、せっかくスタッフさんが用意してくれた紙コップをなぎ倒す2012蒲郡大会のワタシ。。
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まあエイジ優勝をかけた(失敗したけど)ショートの10kmのランパートなんで、そうそう歩くわけにもいかないのだけど、すこし緩めるだけでも、こうした悪行は防げるのだ。
 
これはこれで、みんなが走っている中で一人だけ歩くわけにはいかない問題もあり、特に人数の多いマラソン大会では、みんなで一斉にでないと、逆に混乱を招いてしまう。
 
 
<良例>
僕のウォークブレイク事例を書くと、2016伊良湖トライアスロン、20kmランのうち平坦区間9kmの平均が1km4:30。途中4回のエイドを全て歩いて確実に身体を冷やした。黄色ラインが落ちてる部分だ。その部分を含む1kmラップの落ちは各回ともせいぜい数秒以内。
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それよりも、折り返し地点を間違えてもう一度戻ったことによるタイムロスが推定10秒〜15秒で大きかった。泣。全体ではかなり余裕あったので、ロングのランパートでのサブスリーにも十分対応するという印象だった。
 
 
<最後に>
日本のランナー達には広く知ってほしい。世界のランニング界では、途中で歩くことのほうが普通だということを。
それを踏まえつつも、歩かないことを選択し、実行しきるのは自分に勝つということ、素晴らしいことだ。自分の身体を痛めない範囲で、かつ他人にその価値観を押し付けるのでもなく、自分だけの勝利を目指してほしいと願う。
 

2016年7月24日 (日)

トライアスロン用ランの「腕振り」とは骨盤起点の「振り子」 〜上田藍&ジョーゲンセン選手フォーム分析

トライアスロン用のランニングでは、「腕振り」が3つの意味で重要。
  1. もともとスイムで鍛えている上に、
  2. レースでは、バイクパートで脚筋を消耗し、
  3. かつスイムでの上体疲労がバイク中に抜ける
から。こうゆう身体感覚は自分なりに掴んでいただくほかないのだが、それ言っちゃあオシマイなんで、今回はITU公式Youtubeサイトの動画「2016 ITU World Triathlon Yokohama - Elite Women's Highlights」より、今春横浜の上田藍&ジョーゲンセン先生にお出ましいただこう。
ランは1:26から。
 
なお上田藍選手が真っ先にランコースに出ているのは、バイクを先頭位置で終えたから。これは集団内でのアイ・ウエダ個人に対する信頼がないと実現しない。ホームゲームなことも影響してるかな。以前、 「NHK「アスリートの魂〜佐藤優香」 Bikeの描き方には大きな問題がある」  で指摘させていただいた話ね。そして、この差を守ることで表彰台に上がった。エリート・ショートでのバイクは、マネジメント要素が強い。
 
その上でランニングフォームを見ると、
  1. 肩の回転量が大きい
  2. 上下動はけっこうある (GarminやJinsのデータを気にし過ぎないようにね)
という印象をうける。これは追撃の巨人ジョーゲンセン選手も同じだ。
 
こちら1:28〜からのキャプチャー、巨人の捕食から逃れる我らが藍選手にMacプレビュー機能で補助線を引いてみた。迫るジョーゲンセン選手も、まったく同じ線で理解することができる(けどハイレグウェアを強調してしまうので、、)
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腕振りの「動作原理」について、僕の理解は、
  • 大目的は、骨盤を回転させること
  • そこで骨盤の中心を起点に「逆の振り子」をイメージし、
  • その中間点が肩で
  • 腕は、一度、まっすぐ上に(逆三角形に)上げたあとで、折りたたむイメージで理解する (ヒジでさらに折り畳むと、腕振りの形になる)
ここで「振り子」とは、背骨中心の「回転型の振り子」運動であり、骨盤を中心とした「ねじれ動作」(のように表面的に見えるもの)を通じて、「モモの振り子」へと受け継がれるものだ。
 
こう理解すれば、腕の動きはどうでもいい。そこじゃない。動画を見れば一目瞭然で、上田選手は、とにかく肩のローリング量=回転移動の距離が大きい。巨人ジョーゲンセンも実は同じで、長身なので目立たないが、肩の移動距離はかなり大きい。
 
つまり、腕振りの目的は、まず「中間目標」として、肩を移動させること、と考えられる。これにより、胸郭(=肩甲骨+鎖骨)が大きく動かされ、骨盤に回転力を与えることが「ほぼ最終目標」だ。ほぼ最終、とは、本当の目標は「足のキック」であり、その手前の「モモの前後運動」であるわけだが、それらは、骨盤回転の結果として自ずと導き出されるものだから。
 
以上を言い換えれば、ランでは脚筋は(ほぼ)使わない、ということ。
 
これにより、バイクで疲労した脚筋でも、回転を落とすことなく、高速ランニングを実現することができる。
 
そして上田選手は、小さな身体のハンデを、この大きな肩移動(=腕振り)によって克服し、高回転かつ身長の割には大きなストライドを実現している。それを支えるのは、この上側の大きな動きを受け止め、制御する腹筋・背筋のパワーと調整能力だ。
 
ジョーゲンセンはといえば、肩の前後の移動距離は、実は同じくらい大きい。身長が高いのでバランス的に「ねじれ」が見えにくいだけ。それから、これは僕の想像だが、背筋系がとても強く、小さな動きでも大きな力を引き出すことができている。
背中全体が、剛性の高いカーボン製の1枚の板バネ的な働きのイメージだ。前半で、骨盤を中心とした「ねじれ動作」(のように表面的に見えるもの)、と書いたのはそうゆうこと。ネジる意識ではなくて、結果的にネジられる。
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こうして、腕振りの「役割」とは、以下2点に集約される。
  1. 「ピッチを作る」ことが第一だが
  2. 「ストライドを作る」こともできる
「腕振りは、ヒジを引け」とよく言われるようだけど、こうした動きを引き出すための「1つのトリガー」にすぎないと僕は理解している。経験あるコーチがいろいろ指導する中で、引くことで改善した事例が多い、ということ。だから、それはそれで試してみればいい。
 
ここで書いているのは、では、なぜそうなるのか? という根本。
 
ランニング単体の世界では、「青学駅伝チームのコアトレーニング&ストレッチ」などで、(体幹コアを安定させた上で)肩甲骨を動かすことの重要性は言われている。
ただトライアスロンの場合、より大胆な補助線を引いて、より大きく動かしてみるといいと思う。まずは大き過ぎるくらいの動きで、過去の運動感覚をリセットしてみる。そこから適正動作に戻していくイメージで。
 
その上で、脚の動きは、前後での振り子運動。これは時計の振り子と同じ。引き上げではヒザ曲げるけど蹴りではヒザ伸ばすから、蹴る時だけ地面に接地する。
ここで「蹴る」という表現を便宜上使っているけど、実際には蹴らない。地面に接地するだけ。上体からのパワーが伝わっていれば、それで十分。
 
足の着地は、上田選手がカカト、ジョーゲンセンはフォア気味かな。そんなのは、どっちでもいい。末端は気にしたらダメ。(まあ、そうゆうのをキッカケに中心側の動作を改善できるケースもあり、気になれば、やってみればいいとは思うけど)
 
・・・
 
腕振りについて、過去ブログでは、 
 
〜 遠心力を高め その波動を、肩&肩甲骨を経由し骨盤に伝える
 
〜 その原点はたしか、1-2年目かのどこかのレース中、終盤でギリギリ粘るために編み出した苦肉の策にある。その活用技術は、細かな起伏のあるオフロード中心にラン練習するようになってから、さらに上がった。
 
〜 腕振りがピッチを作り、それにより速度を上げる (長距離トライアスロンでストライド走法は無理)
 
〜 重量を活かした大きめの振り子運動をさせている。僕はお腹も太いので大きな動きに耐えやすいのと、腕振りも多用することで振り子運動をサポートしている。
 
など書いている。お時間あればご参考に。
 
 
<おしらせ:「渥美半島の風」>
僕のランニング技術と、それを支える哲学について、しっかり書いてます。こちら販売サイトから購入いただけます:
 

読者さん感想は、例えばこちらブログなどご参照  
 
八田哲学に触れよ!「渥美半島の風」面白い!!!  「オカン、アスリート始めました」
 
渥美半島の風、宮崎に届く 「完熟マンゴーの、トライアスロン奮闘記」
 

2016年3月 1日 (火)

「ウォークブレイク」Vol.2 〜東京マラソン成果と、ラン技術向上について

ゆっくり歩きをランにはさむ「ウォークブレイク」を紹介したのは、先週末の東京マラソン2016の前日。もう少し前に紹介できればよかったけど、まあ、選択肢は多いに越したことはないよね。

<報告いただいた成果>

自信を持って臨めたのなら練習どおりに走るべきで、実際やってみた友人&読者さんは皆、練習不足などそうせざるをえない事情がある方。それでも一定の成果を報告いただいた:

  • エイドでは早くからゆっくり歩いて補給し、大崩れなく無事に完走できた
  • レース直後も、翌日も、ダメージが激減した
  • 3度、10秒歩くだけ大幅タイム向上し、いつもの痙攣も起きなかった(※42kmペース走の事例)

    東京が勝負レースならなんてこともないだろうけど、トライアスリートにとっては、ダメージの残らないフルマラソン完走法を獲得できるだけでも十分な成果だ。その走法は、そのままロングレースでのRun技術となるだろうから。マラソンとトライアスロンを両立させるためにも使えそうだ。

    ただ、いつも一定ペースでの距離走だけしてる方には「練習でやっていない動作」となり、リズムに乗りにくかったようだ。分かれ目となったのは、 「レースは練習のように」という基本中の基本のように思う。この手法で得られる技術向上効果は大きいと思うから、練習からの活用を強く推奨したい。

    <ラン技術は「変化」で上がる>

    この、「歩いて脚を緩め、もう一度再加速」という過程は、「動作の変化」を含んでいる。

    変化を感じ、考える繰り返しが、技術を向上させる。

    ペース走的な「◯◯km1本」という練習が中心の市民ランナー&トライアスリートは多い。ただ、これを「動作の変動幅」という視点から見れば、「変動幅ゼロ」の練習だ。上げてゆくビルドアップ走なら「変動はさせるが、抑える」練習といえる。これらは「十分に上がった技術を定着させる局面」で最も有効だと思う。基本動作の改善余地は改善し尽くして、あとはレースペースでの動作をわずかでも磨き上げ、そしてフィジカルを極限まで上げるための練習。つまり上級者向けだ。

    だが「これから技術を上げる局面」なら、大きな動作変化を繰り返した方が、体内センサーの性能を高められるだろう。ペース走偏重によって技術向上チャンスを逃していないか、考えた方がいい。

    初心者の場合、始めの1年くらい(=期間は人による)は何をどうやっても速くなるだろう。周りがペース走ぽいことををしてるのを真似しても速くなるだろう。でも、初心者ほど、途中で歩きを混ぜるべきだと思う。(詳しくは 「ギャロウェイのランニングブック」 読もう)

    そこで起きうる問題は、そこでの動作に安住しはじめてしまう「ペース走の罠」だ。ここからの脱皮には、スピードが必要だと思う。これはSwim、Bikeも同じく。

    僕は練習ではいつもゆっくり歩きを入れてきたので、その効果はよくわかる。インターバル的な練習では、僕はつなぎをゆっくり歩くことが多い。川内優輝選手などのメニューでは、つなぎはkm5分台で200mなど、早め短めで行う。でも僕のレベルでそれをやると、身体を追い込み過ぎ、技術向上にエネルギーを向けられなくなってしまう。(同じことを、ショート主体の強豪エイジ選手も言っていた)

    Img_0598(IM Kona'13 Run41km)

    <速度と距離を変える効果>

    「動作変化」とは、「技術向上の出発点」なのだ。そこでまず行うべきは「ペースを変える」こと。耐久系の場合、「スピードを上げる」ことになるだろう。すると距離は当然に短縮=小分けすることになる。

    先日、Facebookで紹介したアメリカの強豪エイジ女性の1時間未満メニュー→ https://www.facebook.com/Masuyuki.HATTA/posts/10205636665891631 は好例。短距離インターバルっぽい構成だが、個々のスピードは必ずしも限界域ではなく、レースペースに合わせて抑制されている(インターバル=無酸素領域ハアハア、的な思い込みがもしあれば今ここで捨てましょう)。具体的には、10km-1kmでの最高速ペースを、10-12分の1に分割した距離で、各6−3本、合計距離が7.5km=75%になる量。レースペースでも1割弱の距離でなら、十分に身体をコントロールできる。

    欧米にかぎらず、国内でも強豪エイジはこうしたレースペースを上回るスピード練習を、週1くらいはやっていることが多い印象。ロング専門でも、やってる人はやっている。

    こうした「細切れメニュー」を採り入れたら、感覚が変わった!という実践事例を「おかん」氏が書いている: その初回 → 2回め 成績急上昇中の彼女も、先の「ペース走の罠」からの脱却にまずSwimで成功し、同様のブレイクをRunで狙い始めた。

    まずはやってみて、違いを感じることから始まる。

    <短時間高負荷

    ここからは、個々人の諸々の「スタイルの選択」の問題。

    このように細切れ化してゆくと、「短時間高負荷」型にシフトしてゆく場合が多いと思う。

    東京マラソンでは、30分以上短縮してサブスリー達成、というトライアスリートからの報告もあった。1kmあたり50秒近い大ジャンプ、聞くだけで嬉しい。この1年間、短時間に集中し、「5kmインターバルと10㎞ペース走中心、 20km以上は練習せず、直前月100km未満」という練習だそう。

    高負荷走に慣れていると、長距離化は、アクセルを少し緩めるだけで、あるところまで高速巡航しやすい(今回事例では30kmあたりまで)。距離走を増やせば、その先が少し楽になるだろうけど、するとバイク・スイム錬との兼ね合いが出てくる。長い練習時間を確保できるなら、バイクを優先させた方がいいと思う。

    もちろんこれらは、本人の集中力と自己管理の成果。方法論とは、せいぜい助走路の一部に過ぎない。

    ただ、高負荷錬ほど集中力を要するもの。迷いが混ざらない方がいい。その際に、 「これでいい」と確信できる材料を提供できたのなら、その範囲内では貢献できているかな。モチベーションも時間も、有限な資源だ。

    こうゆう練習が成果をだしてゆく過程では、技術を向上させやすいと思っている。というか、僕はそうゆう経験をしてきた。そしてこれらスピード系の負荷は、加齢と共に重要度を増すはずだ。

    ・・・

    詳しくは「ギャロウェイのランニングブック」2002年改訂版、それを受けた(と思われる)英語のJoe Friel “Going Long”(2009)あたりをどうぞ。基本、ロング走の手法なので、51.5レースでの10㎞ランでは不要だと思うけど(40分未満の場合)、急坂、エイド、Uターンで使う手もある。その生理学的な仕組みは次回にでも。

    2016年2月26日 (金)

    マラソン&ロングRunパートへ、世界の常識?「ウォークブレイク」の勧め 〜 名著『ギャロウェイのランニングブック』より

    "少なくとも最後まで歩かなかった"
     
    とは村上春樹の名エッセイ「走ることについて語るときに僕の語ること」を締める有名なフレーズ。日本人はこの種の「継続の美学」を無条件に好む。ただこれは、文学表現としてだけ楽しむのがよさそうだ、て話をこれから書く。
     
    フルマラソンは自覚以上に消耗するもの。つい最近もシリアストライアスリートからレース後の疾患報告がきた。ケアとリカバリーへの意識はかなり高い方だけど、それでダメージ自体がなくなることはないのだ。東京が勝負レースのランナー系なら構わないが、3ヶ月以内に別のレースを見据えるトライアスリートなら、どうだろうか? と1年前に書いた→ 「トライアスリートは、フルマラソンしないほうがいい」
    感謝や賛意を直接に幾つもいただいているから、(多少は嫌われたとしても)はっきり書かなきゃいけない、と思う。そのリスクを知った上で、どう判断するかは自由。市民アスリートならではの自由だ。
     
    そして東京マラソンは出場自体が幸運、走るからには最高にエンジョイしてほしい。そこで全米60万部超のバイブル、「ギャロウェイのランニングブック」(by ジェフ・キャロウェイ)より2点紹介:
    1. レース中にゆっくり歩く「ウォークブレイク」
    2. レース後3-4週間はハードな練習を避ける
    この本は1984年初刊、2002年改訂の基本書の1つ。去年ようやく日本語版が出た。表紙は80年代風味だが、中身は決して古くない。2002年といえば、NZの神コーチ、リディアードが今に至るランニング理論を確立してから40年以上。手法は十分に洗練されきっているはず。出版部数と年数から、英語圏では常識とみていいだろう。英語圏でそうなら世界もほぼそうだ。日本語圏などを除いて。
     
     
    <1. 歩く>
     
    強調されているのが、レース中にゆっくり歩く「ウォークブレイク」。歩き休み。1998ロッテルダム・マラソンでファビアン・ロンセロは途中、このウォークブレイクを数回入れながら当時世界記録2:07:26で走っている。アイアンマンKONA’15の世界王者フロデノも、途中エイドでは歩きまくりながら(もちろんゴール前も歩いて)ランパート42.2kmを2:52だ。
     
    歩くことによるタイムロスは、ペース×距離で計算してみれば、実は微々たるものだ。かわりに得るメリットは:
    1. 筋肉疲労をレース中に回復させ
    2. 筋エネルギーの枯渇を防ぎ
    3. オーバーペースを防ぎ
    4. 故障を防ぎ
    5. リカバリーも早める
    実際、同条件化でベテランランナーでフルマラソンが平均13分早くなったというデータが紹介されている。苦しい減量で4㎏とか落とすよりも、途中ゆっくり歩いた方が速い?笑
    これFacebookで紹介したらアイアンマンのRunを歩くようにしたら20分以上短縮したよーという声がベテランさんから届いた! なるほど、脚筋負担の大きいトライアスロンの方が、有効な気がする。彼は日本人だが、英語情報にも通じているので、少し前に知ることができたそうだ。(日本語の壁)
     
    <方法>
    早めにとるほど効果的で、疲労を感じる前に、というのが基本ルール。
    本では、「1kmからでも始めるべき」、なんだそう。まあ実際レース、とくに東京マラソンあたり始めは密集集団で、ペースを変え難いだろうけど。また、「6分ごとに1分歩くのが快適なら、25-30kmまでは5分ごと、32kmで4分ごと、35kmで3分」とも書かれている。かなり歩くよね。
     
    ゆっくり歩くことが大事で、一般的なランニングペース(どれくらいかは書いてない)と比べ、「1分間の早歩きによるロスは15秒、ゆっくり歩きでは20秒」なんだと。このわずかなロスに焦ってはいけない。
     
    実際、個々の走力によるし、できれば、ペース走的な練習の中で試行錯誤しておくべきだ。
     
    生理的/医学的な仕組みはおそらく、歩くことで筋繊維の使用箇所が変わり、その前使ってた繊維が回復する、てとこかな。強度が弱まるとこうゆう現象が起きることは、筋トレ理論で確認されている。
     
    ウォークブレイクという言葉は、本書出版の2015年から日本語ネットに出始めている。「マラソンでは歩いていい」という指導なら、完走目的の初心者向けには以前から多い。でも、それで2時間7分で走れる、てトーンは無い。これ、かなりなインパクトではないかな。
     
    <追記>
    実戦ペースは、以下の計算をご参考に。
    • ゆっくり歩く=キロ10分と仮定すれば1分歩くと100m。これで20秒ロスする場合のペースは100m40秒=キロ6分40秒=マラソン4時間40分くらい
    • キロ4分で走るランナーなら1分歩くと36秒ロス
    • km4の力があれば、エイドで20秒だけ歩くだけでいいかも。ならば1回ロスは12秒 (フロデノのアイアンマンRunはこれくらいかな)
    それで巡航に戻ったときkm何秒あがるかの勝負。
    本来は前日付け焼き刃ではなく練習しておくべきだけど、マラソンを「本番前リハーサル」として気楽に臨めるのなら、試す価値ありそう。
     
    <2. リカバリー>
     
    3週間リカバリーを入れても、そこから宮古まで4週間ある。その前半の2週間で、対策ロングライドなどを集中させ、それまでは焦らずスイム技術に集中すれば、よいのではないだろうか。
    あるいは、マラソン中の負荷を落とす手もある。でも、せっかくの大会で、わざわざパフォーマンスを落としにいくのも、もったいなくもある。
     
    ウォークブレイクで、両取りを狙うのは、試してみる価値ありそうだ。
     
    この本の上級者向けパートでは「やり過ぎるな」と強調している。練習量を積んで中級から上級レベルに上がった時、過去の成功体験から、さらなるヘビーな練習を求めてしまいがちだ。しかし、実際必要なのは逆。正しい知識は重要だ。
     
    今年は天気よさそうだけど、少なくとも故障だけはしないようにしよう。
     
    本の翻訳は、ランニング学会の大御所、有吉正博先生らのチーム。それで出版元も大修館書店というマジメ系で、書棚でのインパクトは、モデルさんや有名エリート選手の写真を流行のデザインに載せまくる類書には劣る。でも本は中身、こうゆう本こそ売れるべきだ。やっぱり古典や基本書は大事。
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    僕の初マラソンは 2013アイアンマンKONAのRunパート 、記録3:21:57。
    この時にこの知識があれば、15kmあたりの急坂を笑いながらダッシュするようなマネは決してせず、25km過ぎからの急ブレーキも幾らか抑えることができ、もっとマシなタイムで走れたことだろう。シューズも薄すぎるし(AdizeroーSen)、入りも1km4分ちょいで速過ぎるし、反省しかない。。
     
    ただ、練習では一貫して歩きを挟んでいた。こまめにゆっくり歩きを挟むことは、練習全体のパフォーマンスも、またランニング技術も、かなり上げてきた実感がある。これはバイク錬も同様。
    ノンストップでペース走的なのは、2013のKONA前まで殆どやってなかった。その頃には、ランニング技術はかなり上がっていた。あとは、レース中にもやるだけだったなあ。レースは練習のように!笑
     
    ・・・
     
    別件ですが:ココナッツオイルはクエン酸で水に溶かせるそうです。
     

    2016年2月 6日 (土)

    福士加代子選手の腕振り、米500g、そして名古屋ウィミンズマラソン参戦についての考察

    先週の大阪女子マラソン、福士加代子選手と永山忠幸監督とのコンビは、耐久系プロアスリートとして最高級のお手本を見せてくれる。いろんな意味で。

    以下、レース展開、ランニング技術、エネルギー、リオ出場戦略、広報戦術、一発勝負で選考できない理由について書く。

    <レース展開>

    TV見てて、これが長距離レースだ、と嬉しい気持ちになったよ僕は。狙いを定め、それを実現するためのトレーニングを考え、継続し、そしてレースで狙い通りに展開して、先頭に(あるいは目標通りの位置に)立つ。耐久レースの真髄は、そこから始まるもの。

    その儚い時間のために、日々のトレーニングはある。僕もこうゆうレースができるなら今年の宮古でてたんだけど(苦笑)

    (※ちなみに僕は宮古キャンセルしてます。そうゆうレースが今年の宮古でできない=そのためのトレーニングができないことがわかっている以上、出る意味を見つけられない。僕にとってレースとはそうゆうものです)

    <ランニング技術>

    技術的には、腕振りが効いている。そのリズムの良さは、誰でもTVで一目でわかると思う。

    • 腕を広げ、低く位置させて、二重に遠心力を高め
    • その波動を、肩&肩甲骨を経由し骨盤に伝える
    • その伝達経路である胴体は、身体の割にずしっとした印象で、その強い力を受け止めている

    と見る。物理法則に叶っている。

    後方への引き角はおおよそ45°。これ続けるのは結構たいへんだ。実際、速くない市民ランナーさんは、腕が全然引けてないことが多い気がする。思い当たる方は、いちどやってみよう。特にトライアスロンならば腕振りは生命線だ。腕さえ振り続けていればゴールまで生き延びることができるはず。

    なお、「腕が引けてない」のは、「押せてない」からだ。ランニングとは振り子運動なので、押し引きが同等に必要。ただ、引く動作の方が目立つだけだ。福士選手の腕は、押し引きが同じくらいに効いている。これも一目でわかると思う。

    Profile_photo写真は ワコール女子陸上部サイト より拝借。やってやりました福士さん!

    <エネルギー>

    これらはトラック時代のスピードあっての走り。その分、長距離になると危うさもあったのだが、ついに克服したか。

    と感心していたら、昔の3倍の米を食べるようになった、という報道が翌日だーーーと出てた。米500gを3食だと。て炊飯前なら3.3合、後なら1.5合。どっちだ? こうゆうのを確かめずに載せちゃう記者たちは米を炊いたことがないのか?? 

    後の週刊新潮によれば、炊飯後の500g=1.5合だと判明。て1日平均30km走るならそれくらい食べるでしょ?? 以前は毎食0.5合だったわけで、(かわりに油1合飲んでるとかならともかく)そんなんでマラソン走れるわけがない。ケニア人だのフォアフットだの言う前にメシを喰え!!と声高に主張したい僕です。日本の女子長距離を弱くしてる一因は軽量信仰だと僕は確信している。スポーツとはカロリーを筋肉でエネルギー化するものだ。福士さんは正常化してよかった。

    ちなみに、重友選手は体重を活かした走りができるイメージだったけど、今回は痩せすぎな印象を受けた。かつて高橋尚子選手がアテネ予選だったか、食べる量を減らして大失速したのを思い出す。どうなんだろう?

     

    <リオ出場戦略 〜名古屋ウィミンズマラソン出場プランについての考察>

    さて、レース後から話題沸騰のこの話。

     

    はじめに、リオ出場への(もっといえばプロアスリートとしてのキャリアの)戦略として考える。

    福士選手にとって、名古屋で日本人2名に2時間19分内とかで走られたら、リオに出れない可能性が高い。もしもそれで出たら、それはそれで揉めるのは必至だ。その状況下で、

    • 「五輪でのパフォーマンスを落としてでもリオに出る」
    • 「五輪のベストパフォーマンスを狙った結果、選考落ちた」

    とを比較したとき、34歳の福士さんは、後者の可能性を限りなく0に近づけたいだろう。僕がやってたJTUランキングレースでも、「ライバルに高ポイントをとらせないための大会出場」というシナリオは常に考えていたし。レベルはかなり違うけど。(そのカレシと噂される方とも)

    名古屋でのレース戦術としては、日本人2位選手にベタ付きしてプレッシャーかけながら、通過タイムが2時間20分ペースかを見極めるだろう。ただ、今の野口選手などに、おそらくそこまでの力はない。

    「ランニング・クリール」樋口編集長は、「名古屋で福士選手が日本人2位になるには2時間27分=1km3分30秒でいい」と予測していた(※若手ホープの前田選手の欠場決定前の話=欠場によりさらに下がっている)。大阪では3分21秒だったので、+10%ペースだ。これくらいなら練習の延長として出場してもダメージを残さない。なんなら30-35kmあたりでやめたっていい。公務員ランナー川内選手は毎週のようにフルマラソンを走るけど、たいていはベスト+10%ちょっとで余裕を残している。

    仮に2:20を上回りそうなら勝負続行。2時間ちょっとのレースを6週間隔で走る場合、勝負する力は戻すことができるかもしれない、とは思う。(もしも戻ってなければ、それに気づいた時点で棄権すればいい) むしろ、ダメージが残るリスクが大きくなる気がする。これはリオの成績を落とす。これが事実上の最悪シナリオだ。それでも、このシナリオでは放っておけば福士さんの方が落選してしまうわけで、出れないよりはいい。

    それは個にとっての部分最適解であって、日本チームとしての全体最適解ではないけど、「そこ考えるのは陸連さんあなたの仕事でしょ?」とボールを渡すことができる。

    ここまでのシナリオには、福士選手にとっての現実的なマイナス要素は、実はあまりない。 それを見越して、まあ現実には「ブラフをかけた」のが、永山監督の作戦だろう。

     

    <広報戦術 or プロアスリートは競技成績だけではダメ>

    さらに俯瞰して言えば、ワコール陣営の広報戦術も素晴らしい。

    普通は優勝しても報道のピークは翌日だけ。そこを、名古屋までの6週間、関心と露出とを引っ張り続けることに成功している。

    選考を巡っての極めて強烈で刺激強いメッセージをかましているわけだが、少なくとも表面上は、誰を批判しているわけでもない。福士さん個人にはプラスイメージしかない。つまり露出増がそのままプラスの効果を生む。

    福士さんのスポンサーはワコール社。この支援の目的は、日本国内の女性消費者、さらに男女ランナーに人気のスポーツウェア「CW-X」ユーザだ。リオでのパフォーマンス最大化「だけ」に集中するより、国内レースを徹底的に盛り上げることによる売上向上効果の方が高い、という判断は十分にありうる。

    さらに、出ると言ってるのは永山監督であって福士選手ではないので、どのようにでも変えやすい。永山さん泥をかぶる覚悟だろう。

    そんな方向性は、長年の関係の中で、会社・監督・選手間で十分に共有されている気がする。「リオ決定だべえ」と叫んだ福士選手は、自由気ままにそうしたのではなく、それがスポンサー利益になることをわかっていて(or そう感じられるような信頼関係があって)、あれだけ叫んだはず。ちなみに永山監督との師弟関係、13年前の増田明美さんコラムより→ http://www.akemi-masuda.jp/es/es0212.html

    こうゆうのは、プロアスリートの大事な仕事だ。

    時々、「プロアスリートは試合で結果を出すことだけが仕事」だと思っている(らしい)人を見かけるのだけど、それは必要条件ではあるが、十分条件ではない。たとえば中国選手は、競技成績(というかメダル数か)にもっとも集中できているように見えるけれど、「国家の利益になる」という明確なスポンサー利益が存在する。あらゆるプロアスリートにとって、試合結果によってスポンサー側の目的を実現するまでが、プロフェッショナルとしての本当の仕事だ。

     

    <「一発勝負」にはできません!>

    「一発勝負で五輪代表を選べばクリアなのに」という意見は根強い。不透明で嫌、て気持ちはよくわかる。

    当の陸連にとって、「マラソン以外の全種目」ならば、たとえば日本選手権一発勝負で決めても構わないだろう。問題は、マラソンだけは、選考対象の男女6大会に大新聞+TVグループが付いているということ。

    それはまず収入面に影響する。アメリカの「スーパーボウル」のように、一発勝負ならではのブランド価値を高め、スポンサー料金を高騰させる手は、考えてみることは可能だ。でも、実現可能だろうか? 日本では大会ごとに大メディアグループが威信をかけて営業しているはずで、一発勝負化するとは、男女で延べ4グループ分が手を引くということだ。総収入は大きく落ちるだろう。

    それに、日本人て、「ブランド向上による料金高騰」みたいなのを嫌うよね? 特にスポーツ分野では。

    さらに、メディアとの関係性もある。陸上人気がマラソンに依存する日本社会で、

    「国民的超優良商品を毎年配ってあげるから、マラソン以外のお金にならない種目も日々報道してね」

    という長年の新聞TVとの協力関係を崩せないのだと思う。そうゆのが日本人の仕事の仕方だ。

    つまりは、陸連だけの問題ではない。こうした事情を無視して「アメリカではどうのこうの」みたいな評論は無意味だ。

    ・・・

    さらに考えると、こうゆう事態が続出し、そのデメリットまで顕在化してきた場合には、陸連も再考せざるを得なくなるかもしれない。それはイコール、メディアとの関係も見直すということ。大メディアに依存せずに、陸上競技全体が成長できるということ。社会に根付いた文化としての陸上が育っているということ。そんな状況が、いつ実現するだろうか。

    ←さいきん読んでおもしろかった

    ←「ブラよろ」旧シリーズなんと全て0円! 新シリーズもまとめ買いで99円! こちら未読ですが

    2016年1月 7日 (木)

    トライアスリートは「青学駅伝の体幹トレーニング」をどう活かすべきか

    青学駅伝チームの体幹トレーニングが1年ぶりに注目されている。
     
    ネットでは日経Gooday 「箱根駅伝、青学躍進の陰に“理詰め”の体幹トレーニング」 (2016/1/1)が情報量豊富。2編9ページに細分化されてて面倒なので、要点を抜き出してあげよう。(優しいぞオレ今日は笑)
     
    考え方)
    • 成績が上がらない。それは目標を設定しないで、同じトレーニングを繰り返しているから
    • 精神性ばかりに頼り、選手の個性や弱点をわきまえることなく画一的なトレーニングをしてしまうから故障を招き、練習ができない期間を作ってしまう
    • 体幹の筋肉を鍛えるには、まず重要度が高い体の奥深くにある筋肉から鍛え始めて、順に付帯する外側の部位を強化
    • 筋肉について考えさせることです。トレーニングメニューは一切出しませんでした
    3種類)
    • 練習前に行う、肩甲骨や股関節の動きをよくする「動的ストレッチ」
    • 練習後に行う筋肉ケアのための「静的ストレッチ」
    • 就寝前やレース前に行う筋肉と精神をリラックスさせるための「筋弛緩法」
    効果)
    • 体幹が固定されて、肩甲骨が自由に動くと、腕振りがスムーズになって推進力が生まれる
    • 特に腕振りに明らかな変化が出てきました
    練習法)
    • 体幹と肩甲骨を有効に使う走り方を身につけるには、走る練習に入る前の準備運動(動的ストレッチ)と補強運動(体幹の筋力トレーニング)
    • 長距離を走る上ではコア、すなわち体幹の深層部にある筋肉で体を安定させて、肩甲骨を使った腕振りで生まれたパワーを、効率的に下肢へ伝えて推進力に変換する
    • 接触プレーがあるサッカーでは、インナーユニットに加えて、外腹斜筋や大殿筋などのアウターユニットも鍛えることが欠かせない
    以上、独自分類まじえ引用。
     
    コンパクトにまとまってるのがスポーツナビ 「箱根V2最有力、青学大はなぜ強い?トレーナー中野氏が重視する基礎の徹底」  (2015/12/11)
     
    「頭と胴体を動かさず、肩甲骨を大きく動かす。
     腕は引くだけでなく、ひねりを加え、さらに可動域を伸ばした。」
     
    だと。これら、基本(もしくは本質)の徹底だ。「腕振りは、引け」的な局所的・限定的な指導法はよく目にする。わかりやすく実行しやすいので初心者には良いのだけど、レベルが上がるほど遠回りになるものだ。
     
    前回書いた通り、腕振りの本質は、上体側からのパワー発動にある。そしてパワーの起点はより体幹中心部に位置すべきだ。だから本来振るべきは腕ではなく肩甲骨(+しいていえば鎖骨もか)とも考えられる。
     
    詳しく知るには、担当フィジカルトレーナー、中野ジェームズ修一氏のDVD付き著書を→ 
     

    <では、トライアスリートはどう活かすべきか?>

    ただ、あくまでも純ランナー向けの方法論なので、トライアスリートにはアレンジが必要だ。
    指摘しておくと、
    1. 「肩甲骨の柔軟性」は、トライアスリートなら、そもそもスイムで実現しているはず(だよね??)
    2. 念のため、肩甲骨の柔軟活用は、バイクでも活かしてるよね??(DHポジションでもノーマルでも)
    3. 鍛えるべき体幹筋力につき、「インナーユニット」をブラさず固定させる、としているけど、長距離走に限った話だよ
    4. スイムでは、むしろサッカー選手向きのような、アウター側の体幹筋力が推進力の主体だよ(インナーユニットも使うけど)
    5. 「インナーユニット」は、バイクとスイムでも十分鍛えれると思うよ
    6. 「筋弛緩法」は、スイムが一番だと思うよ(時間を使うけど)
    7. 「インナーユニット」を鍛えるのは、「呼吸法」を変えるだけも効果あるよ
    なんだか不要論みたいになってきた、、なことはなくて、
    正しい方法を理解しながら、3種目の基本に沿ったトレーニングができている限りは、特別な「体幹トレーニング」と呼ばれるものをしなくとも、自ずと鍛えられる、と思う。
     
    <僕がやってること>
    まずは「意識」が大事で、それ次第ではママチャリをクルクル回してるだけでも十分に腹筋(というか「インナーユニット」周辺) に筋肉痛を入れることができる。
    意識ってなんだ? という方は、本とDVDを試しながら、考えてみるといいだろう。
     
    インナーユニットを鍛える呼吸の要点は、「腹圧」をかけるということ。スイムとバイクでは重要な技術として知られているもので、トライアスリートなら基本の一つだ。
     
    その上で、オフロード、できれば(整った芝生とかよりも)路面が荒れて起伏のあるトレイル系のランを重視している。一歩ごとに身体が揺さぶられるので、自ずとコア制御力も高まる。これは何度も書いてきたとおりだ。
     
    3種目以外にいいと思うのは、「ノルディック・ポール」を使ったオフロードでのランだ。
    上体パワーを直接に推進力として走ることになるので、スイム錬にもなる優れものだ。
    全身の筋力を活かして走ってみる経験は、遠回りだが、走技術を上げる、と思う。
    1897804_10201403282339688_84698494_1618526_10201398730905905_154112814大雪の半袖男@2013冬
     
    僕は2012秋のバイクレース負傷時に、松葉杖のかわりに購入したのだが、治癒後、トレーニングに使えるのを発見した。そして2013年にランのパフォーマンスが大きく上がっている。
    僕のはLEKI最安モデルの「SPIN」だが、今だけ上級モデルが安くてオトクだ ↓↓↓
    あと、バランスボール的なもの ↑↑↑  を日常づかいするとかね。椅子を撤去して替えてもいいが、なかなかそうもいかないだろうから平べったいのとかで。「呼吸法」と合わせればさらに効果的。デスクワーク中に鍛えられる? 運転中だと危険か笑
     
    それから、「古典的儀式的」といわれるタイプの腹筋もたまにやってます。少々のアレンジはあり、「意識」を正しくもてていれば、説明不要な範囲内だと思う。バランスディスクがあればやりやすそう。
     
    ・・・
     
    <考える、ということ>
    ついでに、記事でおもしろいと思ったのは、流行りのグループワーク形式でガイコツ人形で遊びながら、学生に考えさせる指導法がイマドキだ。こうゆうのは、21世紀に入り教育界で急速に普及した手法だが、トップスポーツ界にも入ってきたんだなあ。
     
    この重要な(正の)副作用は、自信だと思う。練習量が自信につながる、とはよく聞く話だけど、「考えた量」だって十分に自信につながる。しかもこちらは、波及効果が大きい。

    2016年1月 3日 (日)

    箱根駅伝にみる「腕振り技術」、2×2=4パターン

    トライアスロンのバイク直後のランをエリートランナーと比べた特徴は:

    1. バイク走力にラン走力も影響されること
    2. 腕振りによる上体パワー活用の重要性

    2.につき、「パワーの起点としての腕振り」が使えるようになると、レースペースを上げ、後半にありうる大崩れを防ぐこともできる。

    僕は腕振り重視だ。その原点はたしか、1-2年目かのどこかのレース中、終盤でギリギリ粘るために編み出した苦肉の策にある。オーバーペースで終盤にヤバくなってきた時に腕振りで強引に運んだことも何度か。ロングデビューのKONA2013も最後15kmを腕振りで強引に運んだ。

    これら経験から、ランパート後半の持久力は、走り込みよりも、まず腕振り技術を磨いたほうが上がるとさえ思っている。その技術は、細かな起伏のあるオフロード中心にラン練習するようになってから、さらに上がった。これら踏まえ、腕振り技術について、箱根駅伝を見ながら書いてみよう。

    まず腕振りの役割を確認しておくと、脚の回転は骨盤を通じて体幹に伝わり、暴れてしまうので、腕振りの逆動作を返すことで、姿勢を制御する。脚のピッチ=回転数を上げたい時には、まず腕振りを高回転化する。

    分類すると、2×2=4パターンがある。

    パターンの1つめは主従で、

    • A) 普通エリートランナーの腕振りは、脚の縦回転を制御する「従」なものだが、
    • B) 1.まず体幹上部でパワーを発生させ、2.骨盤を横回転させ、3.脚に伝える「主」としの腕振りもある。
    また、どの位置から腕振りパワーを発生させるかで、2タイプ:
    • X) 中心=背骨に近い位置から、求心的な力を発生させるか
    • Y) 末端=手先から、遠心力的な力か

    箱根ランナーは高校時代のトラックのエリート揃い、平坦20kmという規格もあり、みな同じような走りをする。体型もで、170cm56kg的な細身の身体は、一緒に走ると(たまに駒澤さんあたりと一緒になるので)、僕の胴体に肩まで収まりそうな感じ。そこで、基本はAパターン。

    ただ、規格外のケニア系、と5−6区ランナーは、腕振りをよく活用していることが多い。

    この"B × X"型イメージを、まず日本人トライアスリートは試してみるといいと思う。(欧米の長身トライアスリートはY型=腕は動くが胴体が安定している場合が目立つ)

    好例は、2区山梨学院ニャイロ選手。他と比べて動作の起点がより背骨=体軸側。後ろからの映像では肩甲骨がよく動いてるのがわかる。クロールでいえば、肩を回すのではなく、鎖骨と肩甲骨から起動している感じ。1km入り2:40=100m16秒!はやりすぎで、終盤に落ちたが、この攻めの姿勢がケニアンの真髄かもしれん。世界で戦えるのはああゆう超高速レースを仕掛けられる選手だろう。

    上りはパワーが必要なので(軽いだけではダメ)、みな腕振りをよく使うから、トライアスリートは注目しがいある。「山の神」系で卒業後伸び悩む選手は、デュアスロンに適性高いだろう。実業団を引退する前に一度チャレンジしないかなあ。さらに泳げればKONAで優勝してほしい笑

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    写真はITU世界戦シカゴ'15のU23、順天堂駅伝出身トライアスリートの小林大哲選手と、奥はたぶん先頭集団。彼も体軸駆動のみごとなフォームで、バイク走力向上によりさらにランが伸びることだろう。

    "B ×  Y" の末端駆動(もしくは遠心力の利用)では、2区でたまたま目に入った駒澤工藤選手は中間スパート、上りへの入りなどで、手先を大きく振って加速していた。箱根ランナーとしては身体が大きく、トライアスリートが参考になる動きだと思った。

    遠心力活用タイプの代表は青山5区神野。彼は体重45㎏、パワーの絶対量の不足を遠心力で補っているのかな? ただこの場合でも、パワー発生は体軸に近い位置から=Xタイプのほうがいい気もする。その上で、腕が体軸から遠い距離を移動している、という差かな。

    上り下りの走り方は、弘山勉コーチが最近考察している→ http://athlete.evolu.co.jp/wp/9137 全部理解する必要はなく、「腰の活用」という1点に集中すればとりあえずはOKかと思う。 それよりは、起伏のあるオフロードをたくさん走ることが効く。(舗装路の起伏は故障リスクが高い)

    ・・・

    箱根駅伝の観戦は、実家居間のエアロバイク(エアロなTTバイクではなくてTV通販アルインコ)回しながら、駒澤の大八木監督が去年出した本をパラパラ読みながら。これを読んで速くなる系の本ではないだろうけど、こうゆう当事者の生々しい語りは、観戦を楽しむのにいい。青学の原監督の本はこれから。

    箱根スペシャリストのライター酒井さんはこの業界の激しい競争をよく取材している。日本中の高校の5,000m記録上位ランナーは関東の30大学がごそーーーっとかき集めている。過当競争な面もあるだろう。

    僕の理想をいえば、距離のバリエーションを増やして、より多彩な選手に活躍の場が与えられると、日本のエリート陸上のレベルが上がると思う。5kmくらいの区間があれば1500−5000mのレベルも上がるだろう。長距離も、まずはスピードだと思う。

    2015年4月 1日 (水)

    「30kmの壁」を「30km走せずに」超える方法

    30km走を否定するからには、対案も示しておこう。当記事では、長距離トライアスロンのランパートにおける主な失敗要因の1つ「動作の崩れ」について、ランニング動作の基本を踏まえながら、その改善への考え方と練習法を記す。
     
    〈ランニングの基本〉
    ランニングとは、身体と地球さんのパワーとを、喧嘩させず調和させる遊びだ。自分の身体を痛めつけ苦しい思いをしても、それは地球さんには預かり知らぬこと。重力と体重のあいだの関係性の探究こそがランニングの技術だ。
     
    じゃあどうすればいいのか、というと、アイアンマン元世界王者、Pete Jacobsがラン技術を語る動画を紹介しよう。
    1. 姿勢を正す: 上方向にすきっと伸ばそう (おしりが後方下側に落ちるとブレーキ化する)
    2. 着地は重心の真下に
    3. ピッチが大事: 腕振りがピッチを作り、それにより速度を上げる (長距離トライアスロンでストライド走法は無理)
    4. 身体、特に末端ほどリラックスさせるが
    5. 体幹のスイッチは入れておく
    その通り。いろいろなランニング本があれこれタイプ別とかで解説してるけど、9割がたこれに尽きると思う。(1km3分とかのスピードなら別)
     
    「Drills」編はごく普通のことを言ってて、動的ストレッチで身体ほぐしたり、「流し」を強い腕振りでやってたり。まー見ての通り
     
    〈動作の乱れ〉
    実際、マラソンなりロングトライアスロンなりで聞こえてくる失敗例の多くは、上記5点の1から順番に、動作を乱したケースではないだろうか?
    1. 姿勢・骨盤角度が乱れ
    2. 重心がブレて
    3. 脚のキックに変な力が入ってゆき、その脚の動きを基準にピッチが落ちて
    4. 力が中心軸から周辺へ移ってゆき
    5. 安定が失われ、動きが鈍り、止まる。停滞したコマ回しの原理だ
     
    〈対策〉
    そこで、「最後まで技術の基本を外さずに走り切ること」が30kmの壁を超えるための、現実的な急所となる。そこで僕の方法は、
    1. 60〜90分などの「短め速め」ランで絶対走力を上げ
    2. 動作は最後まで乱さない
    3. 最後の1kmで最高の技術を発揮して終わる
    1.でスピードを高めて、レース本番で抑える=稼働率を下げた走りをする。単純な作戦だが、レース本番と共通する動作でこのトレーニングができれば、効果は大きいはずだ。
    なぜなら、高速なほど筋力が鍛えられるから。耐久スポーツにおける技術とは、筋力と表裏一体なもの。筋力の高さは、技術的な安定につながる。
     
    2.筋力向上を技術的安定につなげるためには、動作が乱れた練習は一切するべきではないと考えている。これが30km壁対策にもなる。
    30km走(=1km6分ペースなら3時間走と書いた方が正しいが)が悪いわけでもなく、ただ、やるとすれば、「乱れない動作を最後まで通すリハーサル」と位置づけるべきだろう。
     
    3.の最高とは一番速いってことでなく、耐久的な動作として最高、ということ。
    その意味は、2.を担保するための基準であり、またその日の練習距離をどこまで伸ばすか、の判断基準にもなる。日々、距離を伸ばすことにこだわらず、今が最高、という時に止めてしまう。 (クールダウンはその後やります)
     
     
    そうゆう練習なら、10kmでも十分効果はある。ただしメインの距離が短い場合、「頻度」を上げることが大事。日常生活の中で、1kmでも走れるなら走って、筋肉を細かく育ててゆく。それで僕は、練習出来てない時には5km離れたプールにランで行くし、500m先のスーパーを素通りして1.5km先の八百屋へと走る。
     
    その上で、レース本番では、ペース配分の勝負。オーバーペースなら確実に動作を乱す。ネガティブスプリットで30kmまでを十分に抑えることができれば、この練習法でなんとかなるだろう。(と期待する)
     
     
    〈補給の失敗〉
    あと、トライアスロンの場合、バイクで飲み食いし過ぎてランでお腹がガボガボになる失敗例も多いようだ。この根本原因はやはり「距離への不安」だろう。これも30km走では解決しない。
    補給しなすぎによる脱水・低血糖などもありえるのだけど、意外と少ないのではないだろうか? 駅伝とかのスローダウンでやたらと「脱水」と解説してるのはどうかって気もする。
     
    この対策では、エネルギー低めの状態で練習して、脂肪活用力を高めるくらい。
    あと、レースではちゃんと計算して食べる。人体が吸収可能な糖分は1時間に体重あたり1gちょっと。水は1時間にボトル1本、どんなに暑くても1Lは超えない。熱中症が怖いなら、水は飲むのではなく、身体にかける。
     
     
    〈要素分解〉
    これらを「30km走の中で行う」のなら良いことだが(できればレース1ヶ月前までに)、「30km走をすればこれらがカバー出来る」わけではない。課題を要素分解し、1つづつクリアしてゆこう。
    その僕の答が、20km(=90分前後)高付加ランの「頻度を上げる」ことだ。蓄積疲労を避け、良質な、すなわち「動作の乱れ」が少ない、純度の高いトレーニングに集中してゆく。
     
    さあて、4/19宮古は、これでどこまで走れるか?
     
    → レース後に追記しておくと、バイク時点で脚を終了させてしまい、ランは敗戦処理(もしくは3時間半の修業)になってしまいました〜〜
     
    禅的ではあるが修業は嫌!(泣

    2015年3月30日 (月)

    30km走しなくても、ロングレースで勝てると思う

    1ヵ月前に書いた「マラソン30kmの壁」を超えさせるのは、技術だ」 は、1日半で約2,000名から4,000ページほど閲覧があり、僕のブログとしては反響多め。ランニングの話は全般に増える傾向はある。逆にいつものトライアスロンがマイナーともいえる、涙。

    僕がこのブログで書いているのは、とくに最近は「量に依存しないトレーニングの考え方」。量により既に成功済みの方々には要らない情報だろうけど、みんなが量を積めるわけでもないよね。そんな効率重視の方々のために僕は、最新理論を集め、日々の練習で思考を深め、レースで検証する。
     
    <欧米最新理論>
    僕の情報収集先は、今はほとんど欧米発の英語情報になってきた(みなさんのブログとか読んでませんゴメンナサイ笑)。それにより、情報の質も量も明らかに充実してきた。この話は、いずれ書いてみよう。
    それで、 欧米人気コーチたちのいろいろな方法論を総合すると、「Run30km走」のような練習は、226kmのアイアンマンレースにおいてさえ、流行遅れかなと感じている。それら考え方は僕の経験からも納得できるもの。
     
    そこで僕の判断は、連続走なら90〜120分、つまり*20〜25km走で十分、ということ。 
     
    その僕なりの理由は、動作が共通するからだ。あるいは、「長距離の速さ=筋力×有酸素能力」という公式で説明することもできる。2015宮古は、その考えの実証実験の場となる。
     
    <時間基準>
    *僕は「距離ではなく時間」基準で考えるので、90〜120分とは、レースペースが1km6分なら15km〜20kmでいい。(距離が少なくて不安になりますか?)
    このペースで30km走ると3時間、上限120分に対して+50%とダメージが大きい。
     
    これが1km4'30ペースなら所要2時間15分、+13%と誤差の範囲なので、僕は30km走してもOKな人といえる。仮に僕が3時間走れば40kmくらいだろうか。さすがにトライアスリートが40km走はそうはしない。つまり、「30km走」とは、僕とアナタとでは全く違う練習なのだ。
     
    故障リスクも、距離ではなく時間に比例して増大するだろう。遅いほど、フォームに何らかの無駄がある場合が多い。たとえば筋力が体重に対して不足している場合 (=痩せ過ぎの女性や太り過ぎのオジサン) 、上下方向の運動量(=つまり無駄&ヒザ腰への衝撃 )の割合が大きいのではないだろうか。
     
    疲労の蓄積も考えるべきだ。長時間錬による「トレーニング効果」と「疲労ダメージによる練習頻度低下」とには、最適バランスがあるはず。それが30km走を許容するのなら何の問題もないのだが、僕にとっての境界線は、まあ2時間が限界かなってところ。
     

    <実験データ>

    2月のRun距離は過去最高を更新し306km。3月は1-2割減らしている。問題はその中身だ。

    レース系連続走は、宮古68日前(2月10日)から開始、2月中は20km走を繰り返した。その 「宮古まで"X日前"での/距離/@平均1kmペース/(平均心拍数)/5kmごとラップ」 を列挙すると:

    • 68日前) 20km@4'07(HR153)  4'11(148) 4'04(153) 4'07(155) 4'06(156)
    • 66) 22km@4'09(HR150)  4'16(145) 4'13(148) 4'07(151) 4'06(152) +1.5km3'56(161)
    • 64) 23km@4'14(HR146)   4'09(146) 4'13(146) 4'14(145) 4'18(145) +3km4'18(146) (ここまでは2/15投稿の通り)
    • 54) 20km@4'15(HR147)   4'12(146) 4'14(148) 4'16(148) 4'18(149)
    • 50) 21km@4’02(HR155)   4’05(151) 3’59(157) 4’03(157) 4'01(157)=6km分 (エネルギー枯渇状態で実施)
    3月に入り、距離を短縮。
    • 46) 10km@3'59(HR157)  4’02-3’55
    • 26) 10km@3'49(HR154)  後半5km@3'46(157)
    • 24) 16km@3'48(HR160) うち前半に1.6km@3'35(161)、後半に8.5km@3'45(165)
    • 22) 7.5km@4’23(HR138) 高負荷Bike後のスロージョグとして
    • 20) 7km@4’08(145) うち5km4’00(147) 高負荷Bike後の身体ほぐしとして
    46日目からシューズを「BROOKS GHOST7」に変更(型落ちの「6」なら4千円からとオトク)
     
    <データの解釈>
    はじめ3回は中1日で繰り返したため疲労蓄積で遅くなっていき、次は10日後と開きすぎて伸びず、開始18日後の50日前に、低血糖気味な中でタイムを伸ばす。
    この結果から、トレーニング効果は2-3週で表れると解釈してもいいだろう。
     
    「4週サイクルの最終週を休養ルール」からは、その最後は40日前となり、39日前から再び負荷を掛けてゆくべきだ。だが実際の僕は、そこから2週、ランは5km先のプールや2km先の八百屋まで移動して玉葱や林檎を背負って走るだけで、レース系の走りは全く出来ていない。
    それでも、26日前に少し上げて走って身体を戻し、その2日後に、ポンと跳ね上がり、16km@3'48。このペースのまま20kmまで出来そうだったが、動作が乱れそうだったので、手前で切り上げ。これが僕の「頻度重視&技術最優先ルール」だ。 感触として、1km3’35-45域が軽く出せるようになってきた。心拍域は高めだけど自然に上がった結果で、乳酸閾値も明らかに上昇している。1km4'20域はスロージョグ化。
     
    この結果から解釈できることは、身体は寝かせてるうちに適応が進むということ。高負荷走をしたくでもてきない、という時期に焦る必要はない、その前に十分出来ている限りは。
     
    <「多ければ良い」という誤解>

    いろいろ周りを観察していると、「がんばるほどいい、多いほどいい」「地獄を見るほと強くなれる」 的な価値感がしみついた耐久アスリート達は多い気がする。個々のココロは自由なわけだが、そこで気をつけるべきは、「精神論に依存する結果、速くなるための合理的思考から逃げてしまう現象」ではないだろうか?

    それによる負の副産物が、「距離への不安」「練習不足からの不安」により、やり過ぎてしまうこと。それによる動作の乱れ、故障、過労により、逆効果を招くこと。

    しつこく書いておこう。

    不安に駆られての練習はすべきでないし、する必要もない。

     

     

    (といいつつ日本語の本を紹介するのは洋書読まれる方が少ないから、、英語苦手な方は僕のブログ熟読くださいな)

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