2018年7月15日 (日)

サッカー評論界の新星、林舞輝コーチ(23)の存在・行動・思考

<すごい若者はなぜ生まれるのか?>

「今の若者トップ層は、僕らの頃と比較にならないくらい超すごい!」と最近あちこちで見聞きする。ニュースとかでなくリアルで接して驚いているのは、40代以降の社会的にそれぞれ成功しているといえる人達が多い。(リアルで接する機会がある時点で既にそれなりの立場であることが推定されるともいえるが)

スポーツとか将棋とか、実力が数字ではっきりあらわれる分野で目立つけど、氷山の一角であるわけで、僕らに見えないところでも、いくらでもいるわけだ。

そんなことを思ったり言ったりしている時に、サッカー2018ワールドカップで、すごい記事を連発してるのが23歳と知ってまたびっくり。月刊footballistaオンライン版での
 

ベルギーとの差は高さではない。「抗プランB」がなかった日本 (2018.07.06)

 
とかのシリーズ。僕は4年に1度だけ湧いてくるニワカなワールドカップファン(=サッカーファンとは書かない)だけど、これら記事の論理の的確さ、現場感覚の確かさは、理解できている気がする。
 
それが林舞輝コーチ。彼のインタビュー記事(2018年4月)がおもしろい。
 
 
おもわずニワカ解説したくなる言葉が続く。「すごい若者はなぜ生まれるのか?」という視点から、引用していこう。
 
<キャリアの視点>
すごいものには理由があり、彼のここまでの過程もやはり納得:
  1. 両親はサッカー選手&留学や海外在住経験あり
  2. 生まれた時からずっと両親がサッカーの話してる家庭
  3. 14歳から小学生相手のサッカー指導開始
  4. 高2で選手引退し指導専念
  5. 大学からイギリスへ
  6. イングランドの有力クラブのJr.コース指導インターンに
  7. チームを3つに分けて強豪チームと練習試合をした時に、自分が指導するチームが全勝、正スタッフ昇格
  8. 大学を首席卒業
  9. 指導者養成の名門であるポルトガルの大学院へ
  10. ポルトガル1部リーグのU-22のアシスタントコーチ
  11. モウリーニョの指導者養成コース(実質15枠)に日本人初の合格 ←今ココの23歳\@@/
前半だけみれば、家庭環境に恵まれていた、と言える。ただそれもせいぜい5.イギリス行きまでの話だろう。それぞれの転機で、
 
「サッカーを職業にすることを考えたら日本の大学は選択肢から消えた」
 
「イングランドで肌身で感じていた『チェルシーユースのような選手たちに、日本のユース世代が10年後にどうやったら勝てるんだろう』という思いに対する答えを、どうにかして見つけたかった」
 
と、目標像が明確に見えているがゆえの大胆な選択をされている。こんな行動ができている時点で、既に、家庭環境が恵まれていた点は完全にリセットされている、といっていいだろう。だとすれば、そこから先は条件は同じ、できないことの言い訳にはならない。
恵まれた環境を活かせない人間は幾らでもいる。その環境の中で得たものを、別のものに転換することで、ステージを変える。それが自分でできるかどうか、が差をつけるのだと思った。
 
<日本との文化差>
 
「大学でも元プロ選手とそれ以外の生徒は完全に平等ですね。同級生と食堂に集まれば、いろんなものが机の上に並べられ、机を戦術ボード代わりにして議論が始まります。逆に、日本では年功序列的な文化がありますし、自分より優秀な若者を評価するのは簡単ではない。」
 
も大事なところ。グローバル化の中で、地球上の最適地にストレートに向かう、という選択を普通にとるようになったことが、今の若者層の一部に共通するかなとも思う。将棋ならそれは日本だし、「日本語のネットサービスの起業」でも日本だし。
 
「日本だとコンビニに行けば何も言わなくてもお弁当を温めてくれるし、お箸も一緒に袋に入れてくれますよね。でも、海外だと違う。彼らにやってほしかったら、ハッキリと『今から説明するから、よく聞け。アツアツの弁当が良いから、そこの電子レンジで30秒間加熱してくれ。それにすぐに食べたいから、箸も一緒に用意してくれ』と強く主張しないと伝わらないし、対応してくれない。」
 
なんて文化差もおもしろい。 
 
「この世界は、結局は結果だと思います。国籍や年齢なんて関係なく、結果を残せば認めてもらえます。」
 
という世界にあって、「オールジャパンチームになってどうだったか?」(NHK中継での記者質問)「次期監督は日本人がいいか?」なんて20世紀なことをいまだにいってる場合じゃない。
 
<試合のように練習する>
トライアスリート目線でのポイントは、(あれ八田さんトライアスリートでしたっけ?笑)
「試合のように練習する」ということ。
 
「日本人選手は練習の中ではトップクラスに正確なプレーをします。ただ、ユース世代もトップも欧州の選手たちは強烈な速さとプレッシャーの中で『普通に止めて、普通に蹴る』能力がある。その差」
 
「モウリーニョの有名な言葉: ピアニストは、ピアノの周りを走らない。だから我われもグラウンドの周りを走る必要はない。サッカーは、サッカーをすることによってうまくなるのだから」
 
日本的な(サッカーをプレーしない)練習では試合で使える技術は鍛えられない・・・練習において常にボールを使ったりプレッシャーを与えたりといったことを非常に重要視して・・・いるからこそ、欧州の選手たちは猛烈な速さや激しいプレッシャーといった中での技術が磨かれている」

日本は、徳川300年の平穏な農耕&職人文化のせいか、時間をかけて基礎を丁寧に積み上げることを善しとする。それはそれで美徳でもあり、一部では世界的な強みともなりうるのだけど、サッカーとは日本でうまれた競技ではないので。(トライアスロン=とくに自転車とクロール泳もね=スイムは海の集団とかね)

 <まとめ>

「地道に階段を登ってゆく」ことの効果は大事にしつつも、そこに洗脳されすぎたいないか、「ほしい結果にダイレクトに迫る」というアプローチに気づけているか、時折ふりかえってみたいものだ。

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そのためには、トップレベルの話を直に聞いて理解することが一番ですよね。(←突然敬語に変わってCMのお時間)

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2018年7月 7日 (土)

「クロールのバタ足、速くなる効果なし」との虚構タイトル記事を解説しよう

事実が「抵抗となる可能性がある」であるものを、「速くなる効果なし」と表現したのなら、虚構と呼んでも虚構ではないだろう。7/4朝日新聞デジタル掲載 「クロールのバタ足、速くなる効果なし むしろ水の抵抗増」 との記事がこの数日、スイマーに限らず、ネット内で話題になった。ただし多くはタイトルに反応しただけ、中身を読んでいない(or 読めていない)。へんな誤解が広まらないよう、解説しておこう。
 
<ネットあるある>
その前に、社会的背景に触れさせていただこう。昨今のネットニュースでは、おおげさなタイトルで注目を集めるために、事実をねじ曲げたタイトルで「釣る」のが多い。僕はこれを「フェイクタイトル」or「虚構タイトル」と呼んでいる。
 
それを読む方はというと、タイトルだけ見て動物的な反応をして、中身はマトモに読んでないことがまた多い。投稿やコメント内容から明らかにそうとわかる。僕はこれを「一行さん」と呼んでいる。ドラゴンアッシュのボーカルのお父さんの名前ではなくて、いちぎょうさん。一行しか日本語を読めないから。わりと有名な学校とか卒業してても見受けられる現象だ。小学1年生の国語の教科書でも何行か書いてあるんだけどなあ。
 
つまりはみんな、「わかった気分」を消費したいんだろう。スマホ画面にあらわれる刺激的なフレーズみて、一瞬、「世の中を理解する賢い自分」を感じ、気分をちょっとだけ上げて、次の瞬間には忘れ、何も残らない。笑
 
この記事も、そこへの反応も、その好例。
 
<クロールの常識>
「下手なキックは抵抗になる」のはクロールの常識の1つ。だから抵抗の少ないキックを練習する。
ということは、
「抵抗になるような下手なキック」で実験すれば、「キックは抵抗になる」という結論が得られるのも当然。
 
実験画像をみると、腰位置よりもかなり深くキックを打ち下ろし、ふくらはぎのアップキックも水を受けて、「抵抗になるキック動作」に見える。
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トップスイマーはというと、たとえばレデッキーはキックが浅い(画像は2016Rio800m)。これには、「腰を高く浮かさない」という技術が効いている。(4月にブログに書いた話→ 「リオ五輪からのクロール姿勢の変化」
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※ついでに解説しとくと、両者の差となりうるのは、「腰を浮かすフラットな姿勢」だ。腰は浮かさない、沈めにいく、のが最新泳法。この研究が説明しているのは、「腰を浮かせてもキックが抵抗になるよ」ということだ。アップキックも1つのカギになる。(もっとしっかり説明したいけどいろいろ忙しいので、知りたい方は、せめて三浦広司コーチのFacebook フォローしておきましょう)
 
これら前提知識がないと、タイトルで盲信してしまいかねない。
そんなとき=メディアが信用できないときには、原典にあたるべきだ。
 
<実際の研究>
このプレスリリースのPDFによると、ポイントは
  1. これまで困難とされてきた自己推進しているスイマーの抵抗測定に関して、独自に開発した測定法
  2. クロール泳におけるキック動作の役割は泳速度に伴って変化し、速い泳速ではかえって抵抗になる可能性
  3. 速く泳ぐためには、いかに抵抗要素にならないキック動作ができるかが鍵
と、朝日のタイトルとは全然違う。
 
筑波&東工大のチームにとって、最大の成果は、1つめのポイントにあるだろう。流体力学という科学は、船、飛行機など、動かないものが対象。せいぜいプロペラやスクリューのようにシンプルな回転運動をするくらい。泳ぐという動作はそれらよりもはるかに複雑だから、これまで全体の抵抗を計測できなかったわけだ。それが「自己推進しているスイマーの抵抗測定」というキーワードの意味。
 
そんな知見をゲットできた学者さんとしては、世界に発表したい。それで海外の権威ある学会誌に英語で論文を出したわけだ。採用されるのはごく一部で、載るのは学者としての大きな成功になる。とくに共同研究で名の上がる筑波の院生さんにとっては、これで将来が大きく変わったりする。(おめでとうございます)
なお当の論文 "Effect of leg kick on active drag in front-crawl swimming: Comparison of whole stroke and arms-only stroke during front-crawl and the streamlined position" 読むには単独$40, 年間登録$584かかる。海外の学会ビジネスなかなかにえげつない。
 
その技術を使ってみたらわかったのが、「速いほどキックが抵抗になる可能性」であり「キック動作の抵抗をいかに低減できるかが大事」ということ。けっして、「速くなる効果なし」ではないのだ。
 
学者さんは、こうした表現を間違えることはまずない。(実験そのものを捏造しない限り)
 
大手メディアさんにはその信用にかけて、日本語の正確な運用をお願いしたいものだ。とはいえ、この虚構タイトルを駆使することで注目を集めたのだから、目的は達せられたともいえるか。
 
そしてスイマーのみなさん、キックは抵抗少なく打ちましょう。(てことも、この虚構タイトルの強烈さによって強く意識付けられるから、やはり目的は達せられているのか、笑笑)
 

←アウトプット術を今読んでるけど著者の成毛眞さんもよく大手メディア記事にツッコミいれておいでで、結局大事なことほど自分で調べないといけませんな

2018年6月30日 (土)

辰巳渚さん事故状況にみる「左コーナリング」の危険

ミリオンセラー「捨てる!」技術(2000)などの著述家、辰巳渚(加藤木綿子)さんが2018.6.26、モーターバイク事故で亡くなった。ミニマリスト=持ちすぎない生活の端緒を作り、そこからコンマリさん(世界で高額講演料を稼がれてます)はじめ世界的な片付けブームが拡がっていった。
 
事故は、東京から軽井沢経由で、故人が大好きだったという北軽井沢へと向かう国道146号。僕も何度かクルマで通った箇所。知人が高校の同級生だったり一緒に仕事してたりもして、なにより二輪〜エンジン有無の違いはあるとはいえ〜での事故、ひとごとではない。
 
今わかる範囲でも事故状況から学ぶものは大きく、その知識により防ぐことのできる事故は確実にあると思うため、ここに記しておきたい。まとめて言えば「左コーナリング特有の危険性」だ。
 
NHKのニュース動画 から、事故現場は軽井沢町長倉の難所「29号カーブ」 (←Google地図)らしい。こちら地図の左上、矢印の先の左ヘアピンカーブを曲がりきれず対向車に衝突、意識を失ったまま5時間後に死亡確認。この時期の平日に交通量は少なく、自損で済まなかったのは不運としかいいようがない。でも事故とは常に不運なものだし、同様な事故はこれからも起き続ける。
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この国道146号は、はじめは狭くて細かいカーブが続くが、事故現場の手前では、右下(中軽井沢方面)から登坂車線の広い路面で緩やかめなカーブが続く。そこにブラインドの右カーブが現れ、直後に左のUターン的急カーブ。
 
自転車なら、ダウンヒルで想像するとわかりやすい。「気持ちの良い緩斜面から、右ブラインドコーナー、抜けた先に10°超の急斜面(=強いエンジンとはそういうこと)、直後に逆ヘアピン」的なのが近いと思う。
 
この連続ヘアピンは、地図上では同規模だけど、実際の危険性は全く違う。
  • 右カーブ: 外側車線だからカーブが緩く、ミスったらコースアウトの自損事故
  • 左カーブ: 内側でカーブ急、ミスると対向車がありうる
自損ならコンクリート壁か鉄柱にヒットしても走行速度分(十分に死ぬけど)、でも対抗車なら衝突速度2倍×轢かれることもある。
 
辰巳さんのマシンは 本人Facebook から、DUCATI 959 Panigale , サーキット仕様の150馬力、斜度数%の上りくらい一瞬でスピード出るはず。
 
大型モーターバイクは走行安定性が高く、通常はむしろ安全性は高い。DUCATIは扱いづらいイメージもあるようだけど、インプレ https://news.webike.net/2016/06/24/61112/ 読むと、ストリートでの扱いやすさも考慮された機敏なバイクであるよう。最新トラクション・コントロールは、コーナリング中、転倒しないギリギリの速度管理をしてくれる。
ただそれは熟練ライダー目線の話。
 
辰巳さんは1年前にバイク免許をとり、4月に大型免許に上がり、事故直前に大型車が納品され、今回が実質初のロングライドであったようだ。ルート状況を考えても、このマシンでの最大の難所がこのカーブだったようにも思われる。小中型マシンより簡単にスピードが出て、かつクイックな操作が重なると仮定すれば、最新機能でも制御しきれるものでもない。あくまでも一般論だけど。
 
直前はこんな景色。
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見通しは一見よさげで、カーブ抜けた、と強力エンジンを吹かしたくなってしまいそうでもある。この景色が人生最後に見た数秒間となってしまった。
 
NHK動画から推測すると、曲がりかけたが曲がりきれずに衝突、路面の荒れ方からはセンターライン手前くらいかでスリップしてるかもしれない。軽自動車の右前輪あたりの急ブレーキ跡がセンターラインに沿っている。点状なのはABSの挙動かな。
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事実解明は警察調査に委ねるとはいえ、この状況は、今後も十分にありうること。自転車のダウンヒルふくめて。

自転車の下りであらわれる左ヘアピンの恐怖は、僕もはじめて理解した瞬間の絵をいまだに覚えている。2009年春のロードバイク初心者時の(無謀な)伊豆一周のことだ。斜度10%くらいかの急な下り、目の前にコンクリート壁、左側から現れる巨大トラック。
二輪車は注意を向けた先に向かうもの。「もしもこのまま直進してこの壁にぶつかるとどうなるだろう?」と想像すると、その思考は現実化し、バイクは直進を始める。そのことは知識としてあったけど、実地で理解することになったのがその伊豆のカーブ。

もちろん、その場ではブレーキで20km/hくらいに減速し、安全性100%で回ったわけだ。この間せいぜい数秒間。ただ、その後何度か通った時に、いつもその瞬間を思い出して、記憶に焼き付くことになった。
 
確実にできることは、サーキット的な状況でない限り、コーナーは十分に減速してから入り、安全過ぎるくらいに抜けること。そんな区間の平均速度は見ない方がいい。コーナリングで速度を稼ぐ誘惑にかられないように。集団練習でコーナーで遅れたって何も問題ないはずだ。速さを見せるのはレース場だけでいいのだから。
 
ブラインドの左コーナリングはその最たる状況。
その意識1つで防ぐことのできる重大事故は多いはず。
 
・・・
 
辰巳さん、今月には「日常生活を通して課題を見いだす「生活哲学」に基づき、「生活する力」を育成する教育事業などを展開していく」という会社設立のニュースなどもあり、最近のインタビュー記事などみても、人生これから、という時だったのだろう。北軽井沢は僕も大好きだし、僕が自転車を始めたのも、この地を僕なりに楽しむためだった。トライアスロンもその先にあったもの。辰巳さんにとってそれがモーターバイクだったのだろう。
 
その美しく軽やかな人生を完成させるために必要だったのは、あとほんの少しだけの、マシンへの慣れ、慎重さ、だったのだろうか。残念です。

合掌
 

2018年6月17日 (日)

やはり日本の市民アスリートは練習し過ぎ? - 世界標準Dave Scottセミナー2

「長距離だから長距離そのまんまの練習」なのではなくて、「必要な要素を分解し、それぞれに対策する」要素分解の1つのあり方を、先週デイブ・スコットの"KONA Challenge supported by MAKES" 講演は示していた。世界の市民アスリートにとっての標準の1つであり、かつ、少なからぬ日本人アスリートが気付いていないと思われる部分を含めて。

< 速筋の重要性 >

その核心部が、速筋(2a=中間型)の重要性だ。

稼働時間は25秒〜2分、最長5分。それをトップ選手でも8時間かかる226kmレースに向けて鍛えるのには理由があり、つまりはメインエンジンである遅筋をセーブできるからだ。

2a速筋は遅筋(1型)よりパワー5倍=エネルギー消費も5倍で、乱用は危険なのだが、トレーニングしていれば消費されたグリコーゲンはレース中に回復される。

つまり、長距離レースを高速で展開でき、途中で回復させてタフなレースもできる。それがHIIT系の速筋トレーニング。伝説のマーク・アレンとの死闘も、これ抜きにはありえなかっただろう。

「ウォークブレイク」と併用すれば、さらに効果あるだろう。(とまではDaveは言っていなかったが)

ウォークブレイクについてはこちら過去記事ご参照:

< 高負荷トレーニングのメニューつくりかた >

その練習法は、高強度での稼働時間で25秒〜2分、最長5分。レスト抜きのトータル時間は8−12分でOK、上級者でも20−24分が上限

間のレスト比率は、高強度2:休1、とか。レストの目的は心拍を下げることなので、蒸し暑い日本の夏では時間がかかり、1:1とかでもいい。メニューの数字に縛られたらダメ。

ということは、本体部分が、上級者で36分間くらいが上限となり、ウォーミングアップ&クールダウンを含めて、1時間あれば完了する。

参考メニュー: 

  • アップ12分
  • 2*50s + 6*30s + 3*40s (計6:40)×2、セット間5分イージー
  • ダウン6分=計45分

週あたりでの実行頻度は、Bike-Runは各週1、Swimは2回まで(回復が速いので)。つまり週合計4回=4時間ほどに相当する。

< 長距離トレーニングのメニューつくりかた >

では、長距離専用の練習は? というと、毎週やるのは75分間まで。それ超えると故障が一気に増えるし、疲労の蓄積が動作の質を落とすから、トレーニングとしてのコスパが低すぎる。

その頻度は、BikeとRunでそれぞれ週1として、ウォーミングアップ15mとして、計3時間だ。

4時間のロングライドとかは3週置きくらいでいい。かつての女王、クリッシー・ウェリントンでも、Bikeロングライドは最長4.5時間、2-3週に1度くらいだったとのこと。

参考ロングライド用メニュー(うろおぼえ): 

  • ウォーミングアップ30m
  • 20分ごとにペース変えて、はじめハーフの90kmレースより速いペースで20分
  • 同じく5mを4本(同じだけ休息、だったかな?)
  • 同じく2.5mを8本
  • この set間20m
  • 最後Easy=エアロビックペースよりちょい遅

この時間の短さをおぎなうのが、前回に書いた高脂肪食だ。この点は(僕の考えでは)マフェトン理論の最新形であり、いまだ2018年になってマフェトンをそのまんま実践しようとする危険性でもあるだろう。

< 結論 >

てことは、コアの練習は週に7時間。計算あってる?と3度くらい検算したくなるくらいの時間数だよね。

あとはリカバリー&つなぎの軽めの練習(=これはこれで重要)で埋める。

日本人のトライアスリート、ランナー、長距離志向の人ほど、練習し過ぎではないだろうか?

週当たりトレーニング時間・月間練習量といった総量の数字を気にし過ぎではないだろうか?

< 実例 >

本当にこれでいいの? と思われるだろう。しかしこれが、カリフォルニア大で運動生理学を学び、実践して元世界王者となり、さらにコーチとして複数の世界王者を育てたDaveの教えなのだ。

そしてこの教えは、僕の実体験とも重なる。

僕のRunメイン練習は、1kmのレスト長め(心拍が60−70%域に落ちるまで、時間はみない)での4−6本。3m30s*6で21分間。かなり仕上がってるときでも、これ以上はやりたくてもできない。Bikeでも同様の練習を多用していた。多摩堤通りの2−3kmの直線路を45km/h超目標で、実際にアクセル踏めてる区間が2−3分前後とかになる。ローラーも同じくだ。

実戦での効果は、KONAのレース中に実感したことで、Bikeでレース終了かと思ったくらい消耗してしまったのに、地上に降り立って2分もすれば脚にエネルギーが戻り、Runで暴走を始めることになった。

このあたり詳細は、『トライアスリートのエスノグラフィー』 トレーニング法は2-3章、レースはp205-209あたりご参照。(なお自著の略称を『覚醒〜』から変えてみる、意味がわかりやすいので

逆の失敗例もあって、たとえば2015宮古は高負荷トレーニング不足が主因。3月に出てみた板橋マラソンでもそう思った。

2013年の僕にそれができたのは、51.5kmレース最優先だったのもあるけど、そこからの226km対応法を英語情報から探ったのが大きい。2015年はようするにやる気なかったんだろうな。

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< お知らせ >

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2018年6月16日 (土)

" 短時間高負荷 × 低糖質 "によるアイアンマン226km攻略法 by Dave Scott

はじめに断っておくと、この投稿で「糖質制限が良いか悪いか」という話はしない。そんな単純な問いに価値はない。

今から書くのは、30−40歳から、耐久スポーツで速くなりたい人に向けての、トレーニングの中身と栄養補給との複雑なバランスの話だ。いいかえれば、どのようなエネルギー状態の身体でトレーニングに臨むのかという話。

きっかけは、先週デイブ・スコットのセミナー。

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< "The Man" Dave Scott >
Dave ScottはもともとUC Davis(カリフォルニア大デイビス校)で運動生理学を学ぶインテリな海スイムのエリート選手で、ワイキキ大会(初期アイアンマンのスイムパートと同じもの)でも優勝している。

26歳の1980年、最後のオアフ島開催となった第3回IRONMANに初出場し、前年まで11時間台の優勝タイムを9時間24分へと引き上げ、アイアンマンを完走目的イベントから速さを競うレースへと変質させた。ちょうどABCテレビにより全米TV中継された回で、注目が高まるタイミングでのことだ。で全米が「アイアンマンすげー!」てなり、人気が高まってゆく。以後、通算優勝6回、2位3回、最後の完走は42歳で8h28m(5位)。とWikiに書いてあった→ https://en.wikipedia.org/wiki/Dave_Scott_(triathlete)

彼の生きた歴史がそのままアイアンマン&トライアスロンの歴史になる、正真正銘のLiving-Legend。最近は日本語でレジェント言われる人は多いけど、ここまでの人はほぼいないだろう。日本国内での知名度が(トライアスリート以外では)ほとんど無いと思われ、日本のスポーツ界のシマグニ的状況は残念なことだ。

運動生理学を知るインテリが自ら競技の限界を引き上げていった過程に大きな意味があると思う。だから科学的な=つまりは再現可能な手法によって、トライアスロンという競技を発展させることができた。

そんな彼が、ライブで伝えてくるものは、他では得られない。

まず、64歳と思えない身体が、実に若々しい。過酷な耐久競技で世界トップを40代まで戦い続けるということが、むしろ健康に良いということを体現していると思った。もちろん、それで健康を害する人は現実にいるわけで、そこがDaveの凄さの1つとも言えるわけだが。

 
< 菜食&高脂肪食 >
特徴的なのは、ベジタリアンであること。

(この思想からも、実際の取り組みからも、変なクスリとか使ってないのが強く推測される、と余計なことも書いとこうか)

32歳の1986年、当時驚異的な新記録8h28mを出した頃の著書 『デイブ・スコットのトライアスロン』 を読むと、当時は7割超を糖質(穀物など複合糖類)、タンパク1割、脂質1割、くらいの割合。タンパク質は体重1kgあたり1g要らないと少量だ。

現在では、LCHF=糖質抑制&高脂肪食(※良質な油脂に限る)をトレーニング期に試すことを推奨している。推奨しているのは食事法そのものではなく、試すことの方ね。方法論とは何でもそういうもの。

レース中は吸収できる範囲内で(※超えて失敗する人が多い)エネルギー摂取するのだが、その補給食も最近は高脂質化させていて、あるケースでは補給ドリンクの7割が脂質であるという! 油に糖類とか混ぜてる感じ。

ここで重要なのは目的。耐久スポーツのための高脂肪食であるということ。

この目的が無い場合に、、低糖質食が常に良いものだとは、僕は思っていない。実際、2014年発表の海外大規模調査では「糖質制限食による体重抑制」の効果が否定されている。体重は結局のところ総カロリー量で決まるとシンプルに理解しておくのがいい。

このテーマは、 鈴木功医師 が僕の情報網内での最先端で、興味あればFacebookフォローおすすめ。著書『ボーンフロスでやせる間ファスダイエット』も参考になる。(ちょうど今読んでる途中)(ちなみに推奨の地鶏の骨の煮込みスープは昔から僕よく作ってる)

鈴木先生の方法論とは、脂質を極限まで制限して、病的な状態を脱すること。そして糖質を積極的に摂る。

Daveとの違いは、身体性能偏差値70以上の世代最速を目指す耐久アスリートか、偏差値30-40の病的状態か、といったところだろう。

背景や目的が違えば、方法論が変わるのは当然。ただし、なぜそうなるのか? という理由を理解することは、どちらにも有効だ。だから、「糖質制限が良いか悪いか」という単純な問いには、なんの価値もない。

 
< 高脂肪食で速くなる理由 >
「若いフルタイムのプロ選手」であれば、長時間の練習により、長距離レースへの対応ができる。古いトレーニング理論はこのことを当然としているものが多い。なぜなら対象が若いエリートアスリートばかりだったからだろう。

だが少なくとも「35歳以降の市民アスリート」では、それは無理。一瞬できたとしても続けられないだろう。限られた時間での成果を最大化せねばならない。

このテーマは最近現れたもので、最新情報をチェックするメリットが大きい。これは日本語だけを追っていると遅れてしまうのは、英語情報と比べてればわかるだろう。

そんな中で注目されているのが、低糖質食により、トレーニングの初期から血糖値が低めな状態=つまりレース後半の状況をはじめから作ること。
これと、HIIT=高負荷インターバル系トレーニングとを組み合わせる。
すると、短時間でも長距離用のトレーニング効果を出せる、というわけだ。

これら、若いプロ選手も活用している方法ではあるのだけど、市民層がもっともその効果を享受できるだろう。

こうした背景から理解することが重要。低糖質食にはパフォーマンスが落ちるデメリットもあるからね。どちらをどれくらい重視するか、が大事。それは結局、自分で考え、感じて、決めていくしかない。

 

< アイアンマン向けの高負荷トレーニング >

トレーニング内容としてDaveが強調していたのは、高強度トレーニングにより、25秒〜5分間ほど有効な2a型速筋を鍛えること。つまり20秒のタバタ式とは違う。この手法も、僕が2013年に多用していたものと共通する。

長くなったので、この話は次回にでも。

・・・

以上まとめて、「長距離だから長距離そのまんまの練習」なのではなくて、「必要な要素を分解して、それぞれに対策する」という要素分解の発想といえるだろう。

 

< お知らせ: お子さんの大学進学&就職に関心ある親のみなさんへ>

このDave講演の会場は、"KONA Challenge supported by MAKES" でトライアスリートにおなじみの不動産のメイクス社。同社の「トライアスロンのさらに向こう側」への取り組みを僕は支援していて、その最初のセミナーを7月14日、東京・渋谷・桜丘(←会場変更)にて開催します。

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2018年6月15日 (金)

セミナー開催します→ 「教育投資のレバレッジ術 - 学費を”掛け算”で取り戻す親の心得」 7/14@渋谷無料

ウェルビーイング/well being --- 総合的な幸福。心・体・人間関係・お金の全てがバランスよく良好な日々。

「ポジティブ心理学」を打ち立てたマーティン・セリグマン教授によれば、そのための5つの要素があり、1.    ポジティブな感情、2.    何かに没頭できていること、3.    良好な人間関係、4.生きる意味と目的、5.達成感

たとえば、市民スポーツに参加することで始まる、明るく、目的をもって、仲間たちと、なにかに熱中しながら、達成感を得てゆく日々もそう。去年刊行の 『覚醒せよ、わが身体。トライアスリートのエスノグラフィー』 で私が描いたのもそんな世界の一面。

そんなコンセプトを、株式会社メイクス 主催でライブ発信していきます。初回テーマは大学生の就活、対象は親世代、7月14日(土)渋谷・桜丘(←会場変更)にて。

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  教育投資のレバレッジ術 - 学費を”掛け算”で取り戻す親の心得

 『先生は教えてくれない就活のトリセツ』出版記念セミナー

 詳細&お申込→ https://makes-design.jp/tokyo_20180714

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トライアスリートには KONAチャレンジ でおなじみの不動産会社さんと、「おカネの先にある幸福とは? 市民トライアスロンとはなんなのか?」 そんな議論の中でうまれました。

講師の田中研之輔教授は、『覚醒〜』共著者にして僕の師ですが、法政大ベストティーチャー受賞者、指導ゼミ生は超人気企業へ毎年何人と入っていきます。僕もそんな輩出された一人です。排出か笑

成果の理由、それは 「教育投資からのリターン」を最大化する指導メソッドがあるから。そのノウハウが明かされる新著『先生は教えてくれない就活のトリセツ (ちくまプリマー新書)』 が7月7日刊行予定で、その記念セミナーを兼ねます。主に大学生に向け書かれた本ですが、本セミナーでは、その親・保護者サイドが対象です。大学はまだ先な方も歓迎です。

 

<教育投資のリターン>

親にとって、大学4年間での学費は平均的な私立文系で400万円。出産から大学卒業までに総額1,640万円との試算もあり(AIU保険「AIUの現代子育て経済考2005」より〜やや古いけど2015年にベネッセが引用してるくらいで悪くないデータかと)、大きな投資であるわけです。

家やクルマなら、リターンとはまず、住める、動けること。中古で売れば資産価格は影響するけど、使い続ける限りは瑕疵でもない限りリターンはほぼ保証されています。しかし 大学進学では、1,000万円規模の投資がどのようにリターンを生むのか不透明 ですよね。しかもその度合いが近年増しています。

昭和の頃なら、大学進学率が低くて大卒者の希少価値が高く、かつ経済成長中で、卒業資格自体に確かな価値がありました。しかし平成の30年間にすべてが変わり、少なくとも、有名大学に行けば安心、という時代ではありません。いわんや来たるべき新年号の未来をや。

※ ここで「教育のリターン」とは、単なる就職先の給与額ではなく、人生全体の豊かさの質のようなものがテーマです。(この場合、生涯給与での億単位の差よりも、もっと大きなものを指すともいえます)

 

<親の意識、知識>

にもかかわらず、大学入学までで意識が止まっている親の方々は結構多いのではないでしょうか?

では、なぜ意識していないのか?と考えると、知らないから、という現実的な理由なのかもしれません。

  • 経済の変化の中での「良い会社」のありかた (これは親がそんな企業に勤めていればクリア)
  • 企業側が新卒学生に求める条件(親が企業の人事部・採用業務に近ければクリア)
  • 就活生に必要な行動(ここは大学のキャリア支援課が教えてくれる=意識高い学生ならそんなに差がつかない)
  • これら変化を踏まえた、大学生活での過ごし方
など、親世代の常識が通用しないものが拡大しています。
 
投資に際して、適切な情報を知ることは不可欠。まして、対人業務でもある教育&就活がテーマでは、文字情報だけでは不十分で、ライブ感覚として知っておくことが重要ですよね。
それが、本セミナー開催の意図です。
 
なので親世代向け。法政の学生さんは講義で聞いてください。それ以外の学生さんは、本読んでください。(大学図書館も地元図書館もリクエストすれば普通買ってくれますし、読んでからメルカリで売ればけっこー高く売れます笑)
 

<参加方法>

これだけ大事なものが無料! 田中教授への事前質問もできて超オトク!
詳細&お申込はこちらから→ https://makes-design.jp/tokyo_20180714
 
予定あわない、遠い、という方には、後日、動画ふくめたレポートを予定しています。まずは書籍『先生は教えてくれない就活のトリセツ』 (ちくまプリマー新書)お読みください。Amazonほか予約受付中。お届けからセミナーまで1週間くらい、参加の方は予習できますね。

«モチベーションの3段階と「きっかけ」について

フォト

『覚醒せよ、わが身体。〜トライアスリートのエスノグラフィー』

  • 初著作 2017年9月発売

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