2017年9月13日 (水)

Apple Watch3の発表、そしてスポーツ時計の3条件について

昨夜発表のApple Watch3、昔のSFみたいな腕時計通話できるのはすごいなあ。同時にスポーツ機能も進んでいて、NIKEブランドのスポーツ対応の筐体&ストラップ も出ている。こうした動きはスポーツGPS各社(Garmin, Polar, Suunto)(+seikoで複数形)も警戒してるようだ。
 
ただ、僕が思うに、アスリート目線で必要なスポーツ時計の条件とは3つだけだ。
  1. GPS最高精度での連続稼動時間
  2. 胸着用の心拍ストラップ 
  3. 数個の重要指標だけを直感的に見られる操作性(心拍とその分布・速度・距離・ケイデンスorピッチ・トータル疲労度的なもの=SUUNTOだとPTE)
それ以外ほぼ全て不要だと思う。
音楽も通信通話も、少なくとも日本の都市部でのトレーニング中には危険でしかないし、着信を気にしているような練習で速くなれるとは、あるいはケガ故障を防げるとは、どうにも思えない。
まあ、お昼休み1時間をたっぷり使って流行りの皇居ランってものをやってみよう、帰宅時に少し前の駅で降りて走ってみよう、てレベルの初心者さんを楽しませるにはいいと思う。
 
心拍の手首計測機能は、現時点では初心者向け玩具、て評価で確定だよね。シリアスアスリートのみなさんならば異論はないですよね。ちょっと前の研究では、安静時は問題ないが、運動はじめると簡単に毎分20−40拍くらいの誤差が出る。トレーニングでこの誤差は、見ないほうがまだマシだ。
 
で、この3条件をApple Watch3でみると、
  1. GPSを使用した屋外ワークアウトで最大5時間 (GPS精度と更新タイミング不明)
  2. 外部心拍モニターとBluetooth接続はできるらしい
  3. スポーツ分析ウェブサービスのSTRAVAなどが(2向けに)画面アプリを発表している
と考えると、結局、GPS精度とその持続時間が、ほぼ唯一にして最大の問題ということになる。
 
フルマラソンだけ、4時間で走れる、というランナーなら、HRストラップを買い、Stravaとかメインで、通話機能なしのを使う、という手はありうるかなと思う。まあいずれ勇気ある人柱さんたちが表れることだろう。
 
この充電性能とは二律背反で、時間はサイズ&重さに比例する。エリート技術者たちが最先端技術を投入してる電気自動車だって、唯一まともな走行距離を確保できてるのは大きくて高いテスラだけだ。(日産リーフの新型は、真夏にエアコン効かせながら実際どれだけ走れるのだろう?)
本当に軽量化したいのなら、GPS機能のないシンプルなスポーツ時計にすればいいと思う。
 
なお、日本のGPS衛星「みちびき」対応については誤解、もっとはっきりいえば過大評価が目立つ。以前のFacebook投稿ご参照:
 
<結論>
 
結局のところ、Apple Watch独自の要素は、少なくとも目的がレース成績なのであれば無効てことになり、ただ最新の玩具で遊べるって程度に落ち着くだろう。そのうちポケモンGOの対応アプリとか出てきたりするかもなので、まあ、この要素を否定するものではないが笑
すると、価格的にも、スポーツ専業メーカーの主要ラインとだいたい同じになってくる。自分に必要な充電時間をどう見るか、がその大きな判断要素だ。
 
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僕のSUUNTO Ambit2sは2014館山大会での捕獲から3年でダルマ化しており、、
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修行し過ぎて腕がもげてしまったこの達磨大師さまはまだまだ現役続行なんですが、、いくらなんでもなんなので、僕は"Spartan Sport" を新たに入手したのでした。手首計測なし&最高GPS精度で10時間持つの。この話はまたいずれ。
SUUNTO最新製品スパルタントレーナーは、手首計測が付きながら、電池が小さいので、3万円台と大幅に安い。この価格差はアップルウォッチ対策もあるだろうが、機能の価値を表すものと見るべきかと思う。電池>>>手首計測、だ。
 
 
<手首HR計測タイプの場合>
 
速くなるための心拍トレーニングなら、Apple Watchを含め、手首計測機能はないものと思って、別にBluetooth規格のHRベルトを買った方がいい。SUUNTOの最新「スマートベルト」の装着性はかなり良い。安いのはストレスが残り、避けた方がいい。
そして9/14本きた! 
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2017年9月12日 (火)

9/29法政大で出版記念セッションやります☆無料

 私は二〇一二年から法政大学大学院キャリアデザイン学研究科で教育学などを学び始めました。そこで本書の共同制作者である田中准教授と出会い、また彼のカリフォルニア大学バークレー校での師である世界的社会学者ロイック・ヴァカン著作『ボディ&ソウル』(ヴァカン, 一九八九=二〇一三)に出会いました。同書は当時二〇代の大学院生であったヴァカン氏が、治安の悪いシカゴのスラム街でボクサーとしてデビューするまでの日々を、社会学の視点からエスノグラフィーの手法により綴ったものです。私は思いました。こうやって現場に踏み込んだ泥臭い調査と学問的な知とを融合させる手法でなら、私なりのトライアスロンを描くことができるかもしれない。私は「トライアスロンの社会学」を研究テーマとすることにしました。第二章と第三章のあいだには、こんな経緯があります。それは伊豆の苦行から四年後に訪れた、新たな難敵との遭遇でした。あれから四年、どうやら、私なりに全身全霊を込めて綴ったこの一冊を、みなさんにお届けすることができるようです。

〜『覚醒せよ、わが身体。〜トライアスリートのエスノグラフィー』 「あとがき」より

田中准教授の社会学の講義に出てからまもなく5年。この出会いなくして、この本は出ていません。彼に加えて、出版社の社長さんや装丁デザイナーさんまで交えた無料セッションを開催します。

  • 9/29(金)18:30-21:00くらい
  • 東京・市ヶ谷の法政大、ボアソナードタワー11F
  • 無料

参加希望の方は、田中研之輔准教授のFacebook:https://www.facebook.com/KennosukeTanaka から参加表名ください。

私からお伝えしたいことは  に書いてあるので、私担当分はリクエスト&対話中心に進めたいなと思ってます。

先行予約は14日中に初回発送予定、引き続き受付中です goo.gl/gX1u4F

なおこちら『ボディ&ソウル』が本書の最初の原型です。大物社会学者ロイック・ヴァカンによるボクシング体験のエスノグラフィー。学術書プライスですが・・・

2017年9月10日 (日)

新著「はじめに」解説 〜ついに明かされるハッタリくんの正体!?

「三ヶ月後より処遇を最低ランクに改訂させていただきます。ただし、それまでに相応の成果を出された場合には改めて検討しますが。」

つまりは執行猶予付きのリストラ通告だ。入社時に期待された成果を出せないままに一年ほどを過ぎた頃、大きな経済状況の悪化があり、収益管理のプレッシャーもきつくなっていた。だが、刃が私の首に突きつけられるとは。

逃げようか。でも転職カードは二度切ってこれで二連敗、職務経歴書に傷をつけている。しかも転職市場の限界とされる三十五歳は目前だ。私は、ここで終わるのか?

思い返すと、特別さに憧れ入学した大学では、周りの優秀さに圧倒され、資格試験に新たな特別さを求めて、失敗した。なんとか外資系IT企業に就職できたが、やっぱりこんな仕事したくなかったと腐り始めた。成果を出せるようになり居心地もよくなってゆくと、今度は華やかな活躍を始めるかつての友人たちが気になり始めた。大きなチャレンジを求めて、ベンチャー企業に転職した。ITベンチャーによるプロ球団などの買収劇が世を騒がせていたころだ。入社後の経営悪化、無理な役割への期待、言い訳はあるにせよ、次第に行き詰まりを感じていった。こんな時は転職カードだ、と別のベンチャーに移った。だが切ったつもりのカードは空振りに終わろうとしている。

自分なりに歩んできたつもりのビジネスパーソンとしてのキャリアは、たんなる迷走だったのか。今、逃亡への足場すらぐらついている。いや、そもそも私は何をしたいのか?こう自問したとき、本音の答えが見つからない。成果以前に、目標を、いや、もっと本質的なものを見失っている。頼れるのはこの身体だけだ、そんな気がした。身体を動かしている時だけは、前へと進めている自分自身を感じられた。
 
私がトライアスロンに出会ったのは、そんなときだった。
 
(『覚醒せよ、わが身体。〜トライアスリートのエスノグラフィー』 冒頭「はじめに」より引用)
 
・・・
 
はい、まあだいたいそんなかんじで、ハッタリくんはトライアスロン始めたのでしたー。
個人的体験、といえばそうなんですが、ここに表れる「特別な自分」とは、現代社会学の最重要キーワードの1つであり、そこには、現代先進国の典型的な姿が表れてもいるのかもしれない。
それが、この本が社会学書として誕生した、そもそもの出発点です。
 
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その探求のため、筆者(八田)は自ら競技者として現場に入り、トライアスリートへの聞き取りを重ねるフィールドワークを行った。筆者は六年間にわたり国内外の計三〇を超えるトライアスロン大会に出場し、後半の三年以上は社会学の視点からの参与観察を行っている。 (同、引用)
 
本書執筆プロジェクトは、2012年末頃に始まりました。もう5年も前だー。そこで、2013年以降は、書くことを目的にトライアスロンしてきた面もあったのでした。とかいって、単純に速くなってゆくことが楽しかったのが大きかったのですが。でも、おおもとの目的は常に裏にあって、表現と発信にこだわってきたのもその1つ。
 
こうして得られた市民トライアスロン独自の現場感覚に、学術理論とを対話させるエスノグラフィーの手法により、その内的世界を浮かび上がらせていく。本書がテーマとする身体、精神、その現代社会との関係性とは、文字や数値の分析によるシンプルな因果関係として表現しきれるものではないためだ。それは、自らの身体を賭けて入り込み、その身体感覚を通じた全体的な考察により、はじめて迫ることができる。 (同)
 
サブタイトルにもなっている「エスノグラフィー」という社会学(および文化人類学・経営学等々の文系学問)の手法とは、
  1. 自ら研究対象としての現場に入り込み
  2. 自分だけの体験を獲得して
  3. 学界で蓄積された学術理論と、経験とを対話させる
もの。つまり、個人的経験という主観を、専門家たちの議論によって磨かれた学術理論によって、客観化するもの。これは僕の師であり、共著者である法政の田中研之輔准教授の考えに即してます。
 
読者のみなさまも、一問一答のような正解を探すのではなく、本書全体から感じられるものの中に、自分なりの、自分だけの解を探っていただければと思う。 (同)
 
情報社会の昨今、世間では、「一問一答」的な単純な情報が溢れておりますな。書店に並ぶ本も、こうすればこうなる、とインスタントな効果を強調するものが多い。そうでないと、出版社さんは企画を通せない現実もあるんだろうな。
 
でも、本当に大事なことが、そんな単純なインスタント情報から得られるはずがないと僕は思うのです。自分で感じ、考えた結果としての、自分なりの体験でなければ、大事なものは得られない。スポーツでいえば、十分に速くなることはできません。
 
するとそれは「哲学」へと行き着くだろうと。
 
本書は、読者それぞれにとっての哲学へと導くことを目的に、書いています。
 
・・・
 
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9/13中の振込終了で、最速のお届けが可能となる予定です。
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2017年9月 9日 (土)

【先行予約開始】 本だします。『覚醒せよ、わが身体。〜トライアスリートのエスノグラフィー』1944円

ついに!!!本出します。
 
トライアスロンとは何か? を、社会学、哲学、キャリアデザイン学の視点から捉える学術書、というコテコテな位置づけですが、内容は、これまでブログ・Facebookで書いてきたことの延長線上にあり、当ブログをお読みの方々なら、おもしろく読んでもらえるはず。
 
延長線上で、その圧倒的に高くて遠いところへと、届かせました。
 
『覚醒せよ、わが身体。〜トライアスリートのエスノグラフィー』 八田益之・田中研之輔著, ハーベスト社、9月下旬より一般書店で発売予定。
 
いち早くお届けするべく 先行予約サイト を用意しました。
価格は2244円(定価1944円税込+送料300円)。複数購入、海外発送等は個別にご相談ください。
 
【オリジナル特典】
  1. 9月14〜15日に直接送付(申込順)
  2. 著者八田への質問を優先回答(※全て回答するとは限りませんが努力します)
  3. 希望者には著者八田のサイン、文言リクエストも受付
【お手続き】
  1. 仮申込: リンク先より、メールアドレス、発送先を入力ください
  2. 連絡: サイト運営担当の八田益之G-mailより、代金お振込先等をメール連絡します (@gmail.com からのメールが迷惑メール扱いされないようご確認ください)
  3. 注文確定: ご入金により確定、9/14ー15頃(予定)より、順次ゆうメール等で発送します
【ご質問等】
八田益之Facebookよりメッセージください→ https://www.facebook.com/Masuyuki.HATTA
先行予約サイトはこちらです→ goo.gl/gX1u4F  (リンク切れ修正済)
 
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Amazonでも予約可能です。共著者の社会学者、 田中准教授は、私が2012.04-2014.03まで学んだ法政大学大学院キャリアデザイン学研究科の師であり、ポップ音楽でいうところのプロデューサー的な役割です。椎名林檎と亀田誠治、ミスチルと小林武史、GLAYと佐久間正英的な。
 
田中准教授 にとっては<身体のエスノグラフィー3部作> の完結という位置づけでもあり:
  • 『ボディ&ソウル: ある社会学者のボクシング・エスノグラフィー』(2013) 〜田中准教授のバークレー校時代の師であり、世界的な大物社会学者によるボクシング体験の翻訳
  • 『都市に刻む軌跡: スケートボーダーのエスノグラフィー』(2016) 〜田中准教授自身の大学院生時代からのライフワーク
  • 本書(2017) 〜こんどは師匠の立場で、社会人大学院生の八田の論文を指導しての書
 
価格を比べると、本書の安さが際立ちますが、これは法政大学からの出版助成金をいただけたことによるもので、内容が薄いからではありません!たぶん!笑
 
詳しい内容は、追って、お伝えしていきます。

2017年5月 6日 (土)

キプチョゲ2時間切りまであと26秒! NIKE ”Breaking2” プロジェクト

構想4年、僕の初の書店刊行本、『覚醒する身体 ー トライアスリートのエスノグラフィー』(仮題)夏に東京ハーベスト社より発行決まりました。待ってろ世界。
 
さてさて、本日昼にネット中継されたNIKEのフルマラソン2時間切りプロジェクト ”Breaking2” 、ほぼフル視聴。いきなりキプチョゲが2:00:25、2時間切りまで、あと1マイルあたり1秒をきってきた! もうあとは、時間の問題だろう。
↑ 動画は44:40あたりから開始。
 
<シューズ>
ランニング・クリール誌が現地取材している。その情報では、シューズ ”Vaperfry Elite” は「驚くほど軽く、手で曲げたくらいでは曲がらないほど、カーボンファイバーのプレートが硬い構造」だそう。
トップ選手には、アディダスの反発素材よりも、この剛性で攻めるほうが向いてると思う。そして、世の市民ランナーの99%以上は使いこなせないだろう。
 
またアーチ型のソール形状は、典型的なフォアフット走法での、前側一箇所の反発力で、シュ、と鋭く進ませる。トライアスリート人気の高いNewtonと形状的には似てるようでもあるけど、原理、想定するフォームは違いそうだ。
 
<エアロ効果>
もう一つの秘密兵器が、空力の最大活用。平均時速が20kmを超えるので明らかな効果があるはずだ。
 
ペース設定は電動のテスラ、ルーフに必要以上に巨大なタイム表示板を載せることで、中型トラック並の大きな空気の渦を作る。後方から大きく巻き込む流れに、背中から押されるようなポイントがあるはず。(おそらく、先導車との位置関係は、国際陸連が今後ルールを作ってくると思う。ちなみに自転車レースではたしか35m?とか空けるルール)
 
さらにペースメークのランナーが6人、「1-2-3」のフォーメーションでクサビを作り、空気を切り裂く。何人いるのかなとゼッケンNoを見ると、全員1−3、色だけ違う。色別に3人チームを作っての交代制だ。
チャレンジャーは3人、常にイン側を走るのは一人だけ赤ウェアのキプチョゲ、エース設定だ。大きなフォームが特徴のデシーサが背後につき、さらなるエアロ効果を狙う。(たしか、自転車では後ろについてもらったほうが、抵抗が減る)
結局、ランナーは「1-2-3-2-1」の流線型フォーメーションを作り、エースのキプチョゲを、空力的に最大アシストする。この人的アシストなら公認レースでも可能だ。
 
1つおもいついた、常時追い風のコースを選定する! ハワイ島北西岸の貿易風を受け続けるとか!笑
 
<キプチョゲ>
2016リオ王者、キプチョゲの安定感はハンパなく、前半は風のごとくスムーズ。負荷感がまったくみえない。
 
彼の走りは、前後軸でみた時に、後方への動作が大きく力強いと感じた。
上体をすこしだけ前に傾けて、前に倒れこむ位置エネルギーを常備させ、後方への腕振りで制御しながら、脚を大きく後方に投げ出してゆく。
上下動も活かしていて、体重が落ちる位置エネルギーを接地&キックと同期させ、推進力に活かしている。(※上下動がないのが理想の走りではない)
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25kmまではマイナス1秒。
25km〜35kmにかけ、5kmあたり4秒落ち。やはり90分を過ぎるあたりから、運動の質が変わってゆくのだろう。
35−40kmでさらに10秒ほど。ペースカーとの差も開き、アシストランナーも心配そうに後ろを振り返り声をかけて、苦しそうな現場感が映像からも見える。集音マイクで中継してほしかった!
最後は、軽やかさが失われ、重力に抗いながらもペースを保って、2:00:25。
あと1マイルあたり1秒を切ってきた(マラソンは26.2マイル)わけで、初チャレンジにしてこれだけ迫るのは、キプチョゲほぼ最高の結果といえるだろう。世界記録も2分以上を上回り(公認記録ではないが)、みんな嬉しそうだ。
 
<大きな一歩>
これで、みんな、いける!と確信を持ったはずだ。
キプチョゲ級の世界トップを3人揃えれば、次のチャレンジにでも2時間突破するだろう。
高速コースでのマラソンでも、できる、と自信を持って突っ込んでくる選手も出てくるはずだ。
 
運動生理学者が主導し、シューズもそれに合わせて用意されたようだけど、環境をコントロールしきった実験室のようなF1サーキットで実施したのも、このプロジェクトの大きな成功要因だろう。環境って大事だ。
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・・・ おしらせ ・・・
 
『渥美半島の風』第二号も発売開始。
昨年の創刊号が増刷&2,000部が売れた好評の地域誌です。今号は僕は書いてませんが、エッセイ集『潮の騒ぐを聴け』が出久根達郎氏に激賞 された小川雅魚編集長登場、しかも二本!!
日本の地方の魅力を感じたい方、そして伝える側の方も、ぜひお読みください。
こちら公式ショップより→ https://spike.cc/shop/user_3986276548 ←各号1,100円、1-2号セット2,000円(送料無料)。
 
『覚醒する身体 ー トライアスリートのエスノグラフィー』共著者、法政の田中研之輔准教授の最新刊先生は教えてくれない大学のトリセツ』
は手軽な新書、大学生&親なみなさま是非一読を

2017年2月 5日 (日)

フルマラソンでは堂々と歩け! 〜ある"ガラパゴス記事"へのツッコミ

※おことわり: 標題「ガラパゴス」とは、日本独自の発展を遂げたという意味であって、それ以上でもそれ以下でもございません。ちなみに僕はガラパゴス携帯の愛用者です。
※なお問題は雑誌自体ではなく特集記事なのでタイトル文言を変えました。批評は人格ではなく個々の行為に対するもの。
 
こちら人気ランニング雑誌の最新号特集: "フルマラソンは「最後まで歩かない」がホントの完走!"
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悪い予感は図書館で確認、的中した。"フルマラソンは歩いたら負け、痛みに耐えて走りきれ!"  てトーンの内容だ。これは危険であるのみならず、(日本以外の)世界では普通な技法「ラン&ウォーク」もしくは「ウォークブレイク」を、人気競技誌の編集部が知らないってことではないだろうか。 全6ページでの実質3つの記事ではあるが、誰もが目にする巻頭特集。"日本語の壁"が作り出したガラパゴス状況でなかろうか?
 
 
<歩いていい、ただし日本以外では> 
レース途中で歩くのは、名著『ギャロウェイのランニングブック』で、英語圏では1984年から説かれ、2002年の改訂版ではさらに重視されて、その日本語訳も2015年5月に出版された。日本人コーチが同様のことを書いた本も幾つもある。
トライアスロンでも、大御所Joe Friel先生もTwitterやブログで推奨しているし、他の記事でもよく見かける。少なくとも英語圏では常識といっていい。アイアンマン世界選手権KONA2015でも、圧勝したフロデノはランのエイドで歩いていた。フロデノはハワイの酷暑下で確実に身体を冷やしたいという理由で、毎回歩いているわけではないようだが、この根拠があったから歩けたといえる。
 
途中で歩くことのメリットは、こちら過去記事2つご参照:
エイドだけでも歩いて確実に補給しながら、筋肉をリラックス&リセットするのは、完走目的の初心者にこそ試してほしい方法だ。同時に、エイドの方にお礼を言うことも(やろうと思えば)でき、励ましの言葉も頂けたりもする。こうすることで精神的にもリラックスし、エネルギーをもらうことができる。
 
こうして心身と対話しながら余裕を持って進むことで、故障リスクを減らしながら、身体のポテンシャルを最大限に引き出すことができるだろう。
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<知ってて選んだのか、ただ知らないだけのか> 
念のため、個々人がこうした情報を踏まえつつも、「自分は最後まで歩かない」と決意し、レースで実行するのは、立派なことだ。自分自身で目標を決めて、達成することで、自分だけの勝利を得ることができる。それが市民耐久スポーツの魅力。
あるいは、一定スピードを維持した方が楽だという場合もある。特に2時間台のどこかで勝負しているレベルではこのタイプが多いだろう。たしか宮古島トライアスロン2016で二連覇の戸原選手は、蒸し暑さの中で確実にエイドを取ることを重視して歩きを入れていたけど、ちょっとリズムが崩れがちになると言っていた。こうゆうのは個々の、場面ごとの選択だ。
 
でもこっちは、不特定多数に向けた人気メディアでの特集だ。主要な選択肢は提示した上で、「それでも歩かないと、楽しみが深まるよ」という提案型アプローチなら構わない。しかしこの特集は、「他に選択肢のない絶対正義」という前提で書かれている。無知と精神論の融合であるのなら、なおさらタチが悪い。
 
この雑誌は、もっぱらカジュアル&ファンランナーが読者層かと思う。より速さを求め始めると、より理論を重視した別の人気雑誌などに行くと思う。こうした分担は良いことで、入門層に対して適切なガイドをするメディアの役割は大事だ。ここに優劣はない。
問題は、こうした初中級者層がこの根性我慢系アプローチをすると、故障確率が確実に上がることだ。頭で考えたことに身体の感覚を服従させるということであり、いわば "現場を無視した会議室の決定" になりかねない。
 
 
<ランニングの精神論> 
「キツい努力が報わることが多い」のは、耐久スポーツの1つの真実であり、また魅力でもある。なんらか精神的なものをそこに求めること自体は、よいことだ。正しい情報の中から選択されたものであるかぎりは。
ただし、「キツくすることで(安易に)達成感も高めることができる」という側面もあり、そこにハマると、怪我故障のリスクを大幅に高める。そのリスクが現実化するまでアクセルを踏みがちなので、発生確率はかなり高いのではないだろうか。もしくは精神的バーンアウトか。
 
伝統ランニング界は、こうした競技自体と関係ない部分での「こうあるべきだ」という教条的な縛りが強いように感じる。それは箱根駅伝にも表れていて、水の補給は1997年、スポーツドリンクは2016年にようやく提供が認められた。水からスポーツドリンクまで20年を要する謎の組織文化。年長世代の価値観を継承することを目的とした、ある種の宗教的情熱の産物だろうか?
同じランニングでも、新興のウルトラやトレイルはより自由だ。トライアスロンも同じく。これらは1970年代の自由な雰囲気の中で生まれ育った競技。コース設定がキツいこともあり、レース途中で歩くのも当然の戦術だ。なぜ42kmレースではそうではないのか? という説明は、歩かないことを呼びかける以上は必要だと思うのだが。その検討をしなくて済むほど、フルマラソン界の教条は強いということだろうか。
 
マラソン中心のランナー達にも、歩くという方法論を知った上で、それでも 「意地でも歩かない」という方は多いようだ。それは個々の自由なのは、先に書いた通りなんだけど。ただ、「ウォークブレイク党員」が「絶対歩かない党員」たちを後半に抜いてくことは、しばしばfacebookで報告いただいている。
 
例: 歩く勇気。ハーフマラソンで5回歩いたけれど、自己ベストを出した話  ("情報活用・プログラミング教育研究所"ブログ, 2016.04)
 
この時、歩かない党の方々は「歩かなければ彼らもっと速いのに」くらいに誤解してるのではないだろうか? 知らないことには、何も始まらない。
 
僕にとって耐久スポーツにおける努力とは、「あらゆる手を尽くして、最も速くゴールすること」に尽きる。歩かないのも、歩くのも、幾つでもある勝利のための選択肢の1つにすぎない。それがトライアスロンの複雑性。
 
 
<悪例> 
こちら、せっかくスタッフさんが用意してくれた紙コップをなぎ倒す2012蒲郡大会のワタシ。。
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まあエイジ優勝をかけた(失敗したけど)ショートの10kmのランパートなんで、そうそう歩くわけにもいかないのだけど、すこし緩めるだけでも、こうした悪行は防げるのだ。
 
これはこれで、みんなが走っている中で一人だけ歩くわけにはいかない問題もあり、特に人数の多いマラソン大会では、みんなで一斉にでないと、逆に混乱を招いてしまう。
 
 
<良例>
僕のウォークブレイク事例を書くと、2016伊良湖トライアスロン、20kmランのうち平坦区間9kmの平均が1km4:30。途中4回のエイドを全て歩いて確実に身体を冷やした。黄色ラインが落ちてる部分だ。その部分を含む1kmラップの落ちは各回ともせいぜい数秒以内。
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それよりも、折り返し地点を間違えてもう一度戻ったことによるタイムロスが推定10秒〜15秒で大きかった。泣。全体ではかなり余裕あったので、ロングのランパートでのサブスリーにも十分対応するという印象だった。
 
 
<最後に>
日本のランナー達には広く知ってほしい。世界のランニング界では、途中で歩くことのほうが普通だということを。
それを踏まえつつも、歩かないことを選択し、実行しきるのは自分に勝つということ、素晴らしいことだ。自分の身体を痛めない範囲で、かつ他人にその価値観を押し付けるのでもなく、自分だけの勝利を目指してほしいと願う。
 

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